概要
ドイツのH&K(ヘッケラー&コック)社が初めて開発したストライカー式ポリマーフレーム拳銃で、同社のP30がベースとなっている。そのため外見はP30に似ており、マガジンも同じものを使用する。40S&W弾仕様の名称は『SFP40』『VP40』。
アメリカ市場では『VP9』の名で販売されているが、欧州やカナダでは『SFP9』という名称になっている。これはVPが"Volkspistole"(国民拳銃)という意味であり、ナチス・ドイツ時代(敗戦が濃厚となっていた大戦末期)の国民拳銃計画と名前が同一なための措置である。その他にも、同時期に発表されたB&T社のVP9との商標問題を避けるためでもあるらしい(参照)。
また、SFP9は『Striker Fired Pistol』(ストライカー発射式拳銃)という意味である。
機構
左利きにも対応したアンビスライドリリースとマガジンリリースレバー、ピカティニーレール、3段階の大きさに調整できるバックストラップとサイドパネルなどの機能はP30から引き続がれているが、左側のスライドリリースの形状などが新規のものとなっている。
スライド後部には新規にチャージングサポートという突起が追加されており、スライドが引きやすくなっている。
最大の変更点はストライカー式となったことであり、トリガーもグロック17のようなトリガーセーフティとなっている。スライド後端にはコッキングインジケータが追加されている。
派生型
- SFP9SF
SFは『Special Forces』の略であり、その名のとおり特殊部隊向けのトリガープルが標準より軽いモデル。
- SFP9TR
TRは『Technische Richtlinie Pistolen im Kaliber 9mm x 19、Revision 2008』の略で、これはドイツ警察の拳銃採用基準であり、トリガープルがドイツ警察の基準に適合するように設計されている。
- SFP9M
耐海水仕様の施されたモデルで、Mは『Maritime』の略である。後述の通り、このモデルが陸上自衛隊に採用された。
- SFP9SD/VP9 Tactical
サプレッサー装着用のネジ切り銃身とサプレッサー用アイアンサイトの備わったモデル。
- SFP9SK/VP9SK
従来のP2000SKやP30SKに相当するサブコンパクトモデル。
- SFP9L/VP9L
銃身が5インチに延長されたモデル。
- SFP9 Match OR/VP9 Match
5.5インチバレルとドットサイトを装着できるオプティカルスライド、装弾数20発のマガジンを備えたモデル。
- VP9B
マガジンリリースレバーがボタン式に変更されたモデル。
2020年1月にはVP9の新型として『VP9 2020』が発表された。従来はP30のマガジンを流用していたため、SIG SAUER P320やS&W M&Pのような他社の主力拳銃(装弾数17発)に比べ装弾数が少ない(15発)という問題があったが、新規製作の装弾数17発マガジンが標準となった。さらに、ドットサイトを装着できるオプティカルスライドが標準となり、アイアンサイトの形状が変更された。
採用状況
ドイツの各州警察及び連邦警察、アメリカとスイスの一部警察、ルクセンブルク大公警察、リトアニア軍で採用されている。
そして2019年12月には、日本の陸上自衛隊のSIG SAUER P220(9mm拳銃)の後継として選定された。トライアルではグロック17のGen5(第5世代モデル)とベレッタAPXと競合した。
また、日本の都道府県警察が2000丁導入したとされ、警視庁、大阪府警察、北海道警察の機動隊銃器対策部隊での使用例が確認されている。
エアガン
台湾のVFC社がH&Kやワルサーなどのライセンスを保有しているUmarex社と提携してVP9のガスブローバックガンを販売している。H&K社にライセンス承認されているため、刻印が実物通り再現されている。さらにコッキングインジケータやサイズ変更可能なグリップ等も備わっている。SFP9とVP40刻印のスライドやネジ切りバレルも販売されている。
陸上自衛隊の制式採用拳銃に選定されたため、今後日本国内のメーカーからリリースされる可能性は高いと思われる。
関連動画
陸上自衛隊の新拳銃「SFP9」実弾射撃(2022年3月)