イノケンティス七世
いのけんてぃすななせい
・・・・・・臭い
田中芳樹の小説『アルスラーン戦記』に登場するルシタニアの国王。
本編開始の一年前にマルヤム王国を滅ぼして併呑し、次いでパルス王国に侵攻。大陸公路最強を謳われたパルス軍を打ち破って王都を占領した。
経歴だけ見れば比類なき覇者であるが、実務を取り仕切っていたのは弟を初めとする部下たちであり、彼本人はろくに仕事をしていない。
イアルダボード教を熱心に信奉しており、これまでも異教徒や背信者、異端者など何百万人も虐殺を命じてきた。その一方で政治など宗教以外についてはほとんど無関心で、面倒ごとも含めて弟のギスカールに投げっぱなしにしている暗君。現状を見ない勝手な決定を下したり、宗教に傾倒しているために教会の好き勝手なようにさせたりと滅茶苦茶な采配が多く、臣下からの信頼は低い。
体格は良いが、体力は貧弱で、馬に乗ることもできず、輿に乗ってルシタニアからパルスまでやってきた。また、酒を飲まない代わりに砂糖水を飲むという凄まじい食生活を送っている。
容姿はOVA版と荒川弘版とで異なり、前者では細身で生気の欠けた病弱なイメージが強いが、後者では丸々と太り、愚昧な上に呑気さが増している。良くも悪くも性格は純粋。荒川版においてはほとんど座っているか、輿に乗ってしか動かない。一応短距離なら自分で動くことはできる。
宗教に傾倒しすぎており、ある意味で純情とも言える。国王の自覚はあるものの、厄介事は何でも弟に押し付けてしまい、傍らみずからはイアルダボート神に対して、必死に祈りを捧げているだけという始末だった。一方でタハミーネに対する想いは他者の追随を許さず(寧ろ追従したくもないだろうが)、誰の進言をも受け入れずに結婚を宣言するなど、頑迷な部分も持ち合わせている。また純情である反面、乗せられやすい所もあり、自らアンドラゴラスを倒すように差し向けられてしまう。
一個人としては善良であり、難民たちを守って王都まで連れてきたエステルをねぎらい、保護と昇進を約束するなど、イアルダボード教徒に対しては慈悲深い。
良好な関係の人間は皆無といってよい。弟を信頼しているものの、その弟本人は兄に心の奥底から呆れ果て、うんざりされている事に気付いていない。また宗教に傾倒するためボダンに対してすべてを一任していたものの、タハミーネの一件から関係は修復しえぬ程に悪化。王である自分に対して罵声を浴びせかけてくるボダンに狼狽えている。肝心のタハミーネとは何ら進展の一つもない。ひたすらアピールしても無視されるだけであった。
パルスやマルヤムなど版図が拡大し、ルシタニアを王国から帝国に、自ら皇帝になろうと望んでいる。パルスを征服し、王都エクバターナの王宮に入城したが、捕らえられたタハミーネに一目惚れして結婚を望み、異教徒との結婚に反対する周囲を押し切ろうとする。
大司教ボダンを信任しているが、さすがにボダンの無茶振りに困惑することもあり、とくにタハミーネとの結婚の点については不一致が起こった。
ちなみに当のタハミーネは、イノケンティスのアプローチには全く無反応。
アルスラーンやアンドラゴラス三世などのパルスの反撃が始まって、ヒルメスに処断されかかり、狂信に付き動かされてしまう。王都が奪還され、アルスラーンが王城でアンドラゴラス三世と対峙していた際、アンドラゴラスを羽交い絞めにした状態で、塔の上から落ちるという最期を遂げた。このことは「最弱の王が最強の王を倒した」として語り草になる。
これによりアルスラーンはアンドラゴラスとエクバターナの覇権を争わずに済んだ上に「弑逆者」の汚名を被ることなく王位を継承することになり、アンドラゴラスの方も(本人は甚だ不本意であったことは間違いないが)「息子と王位を争い、国を分裂させた愚王」ではなく「侵略者の首領と刺し違えて国を救った殉国の王」として人々の記憶に残ったので、結果的に彼のこの行動がパルスを救った、というのは何とも皮肉な話である。
コメント
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すべて見る諍いとさえ呼べないような
甘そうな表紙に特段甘くはなさそうな表題にやっぱり特段甘くない中身。 とっくにばれてそうですが、ギスカールの対イノケンティス感情が御子時代から既にドロッとしてそうなのがすきっていうそういう話、今回も。 これは昨年12月初め頃に書いてたようなので、戴冠記念日創作と、あと1本くらい何か並行してた感じですかね6,662文字pixiv小説作品16の誕生日に
原作14巻「イアルダボート教にのめり込み、一度ならず俗世を棄てて修道院にはいろうとした」(兄王に関する言及)、同「十五歳で父王に願い出て、国政に参与していた」(王弟に関する言及)より着想。王弟の第二王子時代、12~16歳の話。タグは登場順。 兄が然るべく王太子さらには国王に叙されることに同意する弟が任意の時点で存在したわけよな…というところに、第二王子時代の弟が王政に携わり始めるってどんなことなんだろうなとか、公爵位を授かるのどんな経緯なんだろうなとか、そんなような絵空事もブチ込んだよくばりセットみたい話になっております 作中で1回地の文言及があるだけの父王の存在感が凄いことに() いやだってさ…兄を国王に就け弟をああいう存在として育てる父王がどうしたって存在するわけじゃないですか…別に濃い父王が書きたいんじゃなくて、当方の舞台装置としてはこういうキャラクターが出来上がってくるというだけの話なんですよ… というんでほぼオリジな父王の分量が結構多いです、という但書です15,582文字pixiv小説作品- 解放女王伝余薫
魔女とでも呼ぶがよい
「アル戦できるだけ性転換シリーズ」第三弾、チームルシタニア編です。 当初は、「ヒルメス姫殿下」が「サームお姉様」におめかしを手伝ってもらうなどというかわいい(?)お話だったのですが、それの視点を変えてみた結果――何というか、「30代女子と化したギスカール様が咆える話」になってしまいました……もっとかわいいお話が書けるように頑張りたいです。 また、今回は、何というか女性特有のあれやこれやな話題が出るので、念のため、「PG-12」のタグを付けております。10,538文字pixiv小説作品 あほうの馬鹿力 -Heroic Death-
まあ私個人の発想としては本当はгероическая смертьなんですけどね。 兄王の生き様が如何なものであれ、強大な敵国の王を諸共葬ったその死に様は英雄的なそれと評せるだろう、という話。 あとはまあ、兄王が最期に顕にしたシャーオですら抗えないあの力の正体を掘り下げようとしたもの。 冒頭「六端の聖架」と言っているのは要は縦1本横2本の例の紋章のことなんですけど、東方正教会の縦1本横3本の十字架を「八端十字架」と呼ぶことがあるのと、ルシタニアのあれは元よりそういう形なんだから「十」字架とは表現しないだろう、という辺りから捻ってみたもの。 この話も書いたのは昨年4月半ば頃らしいので1年近く前。先に本に載せたいもんが多過ぎt8,175文字pixiv小説作品突撃!ルシタニア兄弟の朝ごはん
主線「ルシタニア風の、量ばかり多くて味つけのおそまつな野菜料理を、イノケンティス王がまずそうに食べていると」(原作2巻)、補助線「ギスカールは、朝食をすませた直後、兄王に呼ばれた」(同3巻)より着想。 王弟視点で正論を書き連ねることで兄王への同情を誘発する類の話。 読む人の一部がそれとなく腹が立ったり傷付いたりするのを狙って書いている。 まあ終盤で人間臭さが入るので王弟のことも救済してやれてるんじゃないですかね。 要はタイトルはこれしか思い付かなくなっちゃっただけで、それほどほっこりした心持で読める中身にはなってないと思います() 軽めな方の動機としては、原作読んでてもこいつら一緒に飯食ってなさそうだけど偶には一緒しててほしいなぁ…と思ったというくらいです4,009文字pixiv小説作品嘗ての女を想い続ける男の顔
原作14巻「無事であってくれればよいが……」辺りから着想。 業界用語的に言えば、うっっすらギスヒルかもしれず、うっっすらヒルイリかもしれず、そのいずれでもない可能性が高い話。 我流に言えば、銀仮面と内親王の恋路に横槍を入れる王弟の話。 などと言っとき恐縮ですが、内親王は面影くらいの出方しかしません。タグに入れるのは自粛しときます。 あっ重要な点としてこの話のヒルメスの仮面は今般のコミカライズのように左半分が見えてるイメージで書いてます。 原作に準拠した方がいいのかもですが、見えることで書ける話というのもあると思うので… 微妙なとこだけどこれは銀仮面が主役の話ってことになるんじゃなかろうか。 私事ながら王弟以外を主柱に据える話は初めてということになりますかね。 まあ次上げる話はもっとがっつり王弟が脇に下がりますが() 王弟は銀仮面にセクハラすんのやめろ4,120文字pixiv小説作品- 1月1日はギスカール戴冠記念日だそうなので
そもそも「1月1日」の「新マルヤム国王戴冠」とは何なのか
初回 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21310031 は「文字書きとしては『まずこっからじゃね?』」でしたが、 今回は文字書きとして「そもそもこっからじゃね?」という話ですね。 新ルシタニア帝国とか新マルヤム王国とか何なのかというと、多分こういうことなんだろう…という2,851文字pixiv小説作品 男子14年会わずんば
王弟の第二王子時代(5)~(19)中心の話。なおタグは登場順。 原作2巻で大司教が「イノケンティス7世も少年のころは聖職者の言うことをすなおに信じていた。それが大人になるとあのざまだ」と回顧しているところから着想。 そうか大司教は少年時代の兄王と接触が有ったのか…じゃあその時に王弟とも絡みが有ったろうし、その時に犬猿と言われる仲の萌芽めいたものが有ったらいいな、という感じ。 あんま関係無いけど「犬猿の仲」って表現、どっちが犬でどっちが猿か分かり易い二人組だと映えますよね() あとこれも関係無いけど、タイトルの続きは当方の中では「刮目して見よ」ではなく「全然かわいくない」だったりします https://twitter.com/RougaHinomoto/status/1589906042678222848 版権の経験が浅い人間なのでまともにできるか怪しいんですが一応注意書き的なもの ●大司教の年齢は確か出て来てなかったんじゃないか…出て来てないということにして(は?)王弟から見て25~30歳上くらいを想定して書いてます ●お子ギ(5)の一人称は「ぼく」としています。あと戴冠前のイノケンの一人称は「私」としてます ●侍女や給仕といったモブが結構喋ります。まあより重要なのは兄弟の父王捏造ですかね…「恐らく居るだろう」というんで舞台装置として出してます ●そもそも当方の作品受容としてギがまだ総括(婉曲)されてないので(原作13巻読了時点)この先で矛盾が出てくる可能性もなくはない。まあこの話の内容的に無いと踏んではいるんですが… それより何よりぼくは取り敢えず体不に行きたがる癖直した方がいいよ いやまあ体不界隈の底より出でし者としては全力で手加減してるんですけd …まあ次の話は体不要素無いので…ゆるしてくだsss19,309文字pixiv小説作品