「なあ、知ってるか?キラパティのスイーツ食べるとセンスが悪くなるんだぜ」
※通常時はビブリーと同じ声なので千葉千恵巳がセリフを担当する。
概要
「キラキラルをうばう存在」の1人、ビブリーが肌身離さず持ち歩いている不気味な人形(ヒプノティ・パペット)。黒い星のマークが入った赤いシルクハットをかぶり、全身は緑色、顔には大きく裂けた口と顔面を縦断する縫い目しかなく、右足には包帯が巻かれているという、お世辞にも可愛らしいとは言えないビジュアル。ノワールがビブリーに与えたもので、黒い星のマークがジュリオのロッドと共通している。
ビブリーが人間の心を操る際、口から唇の形をした黒い言霊を放つ。
なお「イル(ill)」とは、英語で「病気の、不快な」という意味。
作中ではビブリーのための「キラキラル回収用アイテム」として使われている。
イルの口を開くことでスイーツや人間の心からキラキラルを吸収することができる。吸収されたキラキラルはイルの中で闇へと反転。溜め込んだ闇のキラキラルが一定量を超えると巨大イルへと変貌し、低い声で咆哮を上げながら自力で動き出すようになる。
巨大イルがプリキュアに浄化されても人形の姿に戻されるだけでいきなり消滅はしない。ただしダメージは蓄積されているらしく、話数が進むにつれてボロボロになっていっており、第21話ではとうとう帽子の星マークが消えてしまった。
黒い星はノワールによって付与された闇のキラキラルの力を示しているので、これがなくなるとイルは巨大化はできなくなる。
23話ではノワールの力によってイルとビブリーが融合したことで一時的に力を取り戻したがキュアパルフェの覚醒により敗北。それからはイルは一切の力を失っていたが、26話でビブリーが黒い星の力を借りずに自分の「心の闇」を爆発させることでイルを巨大化させている。だが、制御が不安定で暴走させてしまっていた。
しかし、同話でシエルがビブリーに食べて欲しいと純粋に心を込めて作ったアニマルスイーツ「ペンギンかき氷」を、ビブリーがあえてその気持ちを踏みにじって闇に染めてイルに吸収させたことで、結果的に「とても良質なキラキラルを奪った」ことになりイルは力を取り戻し黒い星も蘇った。
イルの会話能力
イルには他者と会話できる能力があり、ごく普通にコミュニケーションが成り立つのでイルには自我があるようにも思える。
しかし、シリーズディレクターの暮田公平によると「イルの言葉はビブリーの心の声です。自分を肯定してくれる、心地良い言葉を放ってくれます。ジュリオにとってのロッドと同じように、イルはビブリーにとって重要なものです」と語っている(アニメージュ2017年7月号より)。
このことは裏設定に近いらしく、本編中で明確に説明されない。ただ、普段のイルの発する声はビブリーと全く同じなのに、イルが本当の意味で自律行動をとる巨大化時は声優が異なる。このことから、通常状態のイルそのものに自我はなく、ビブリーの感情を反映してその時と場合に応じて彼女の望む言葉を選び、機械的に返事する自動人形であることを端的に表現している。
26話ではイルはビブリーの孤独を癒すためにノワールが与えたものであることが回想シーンで描かれている。ビブリーにとってはイルはただの戦闘アイテムなどではなく、自分を支えるためのイマジナリーフレンドなのである。
21話から26話までの黒い星が消え去っていた期間では会話能力も失われており、そのことはビブリーの孤独感を強烈に強めていた。
巨大イル
ビブリーによって闇に染められた大量のキラキラルを吸収したイルが怪物化した姿で、本作の怪物枠の1つと思われる。ビブリーは、この状態のイルを「あたしの愛の化身」と称している。
ただ巨大化するだけでなく、吸収したキラキラルの元となるスイーツをモチーフとした装飾もしくは武装が追加される。
通常状態と違ってある程度の知性が生まれるようで、細かい指示をせずとも命令された目的を達成するために自分で判断して行動する。ただし、通常状態と違って言葉を喋らせることはできなくなり「ノワール!」という鳴き声を発するのみとなる。
巨大イルは体内に取り込んだキラキラルをノワールの元へと届けるための存在であるため、プリキュアと戦うことよりもビブリーが開いたワームホールを通ってアジトへ帰還することを優先して行動する。巨大イルの攻撃手段もプリキュアを動けなくしたり弾き飛ばしたりと「プリキュアを自分に近寄らせない」ものに偏っている。このような攻撃方法の敵を出すことは過去作では「プリキュア側が肉弾戦を仕掛けられなくなる」としてタブーになっていたのだが、プリアラは肉弾戦に限らない戦闘表現が目指されているため、あえての解禁となった。
ただ、イルはあくまでビブリーの操り人形なので、彼女がプリキュアを倒すことを命令すればイルは当然それに従って行動する。
なお、イルが巨大化すると、周りの風景が落書きか抽象画のようなシュールな景色に塗り変わる。
末路
ビブリーは「ひとりぼっち」の孤独に耐えられなくなっていた幼少期にノワールと出会い、イルを作ってもらった。それはビブリーの孤独を癒し、ビブリーはノワールに全てを捧げるようになった。
しかし32話で過去の世界に飛ばされたビブリーは、隠されていた真実を知る。それは、幼少期の自分を「ひとりぼっち」にした真犯人こそがノワールであったということだ。
それはビブリーの心をひどく混乱させ、もうこれ以上ノワールの元に戻ることもプリキュアと戦うこともできなくなってしまう。そんなビブリーにプリキュア達は優しく手を差し伸べるが、その時にイルが動き出す。「ノワール様はお怒りだぜ」という言葉と共に、イルは自らの意思でビブリーを体内に取り込んで巨大化しプリキュア達に襲いかかる。
ビブリーはイルのこの行動に驚愕するが抵抗もできず、そのままイルと同化していく。これはビブリーがが人形となりイルの方が本体になっていくということだ。イルという自分自身が生み出した闇の中に溶けていくことをビブリーは恐れ、ノワールではなく目の前で手を差し伸べてくれたプリキュアについに救いを求める。
そのことでプリキュア達の持つクリスタルアニマルとキラキラルクリーマーが覚醒し、浄化技「プリキュア・アニマルゴーランド」によりイルは浄化消滅し、ビブリーの闇の力は完全に失われることになる。
この流れは表向きにはビブリーの裏切りを許さなかったイルが反乱を起こしたということになるのだが、「イルはビブリーの心の声」という設定を加味するとイルは自らの意思で動いたわけではなく、やはりビブリーの中にある「ノワールへの依存心」が自分自身をイルと同化させたのだと言える。
そしてビブリーが「ノワールへの依存心」を自分から捨てきれない限りは彼女は闇から抜け出せなかったのだということになるのだろう。