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ジオニズムの編集履歴

2016-09-07 15:23:41 バージョン

ジオニズム

じおにずむ

機動戦士ガンダムシリーズにおいて、アニメ『機動戦士ガンダム』に始まる宇宙世紀を舞台にした作品に登場する思想。

概要

全人類の宇宙移民化により地球環境の保全を図るべきとするエレズムと、宇宙居住民(スペースノイド)の地球連邦政府からの脱却と独立自治国家建設を目指すコントリズムを統合し、人類は過酷な宇宙環境に進出・適応することで生物学的にも社会的にもより進化した存在=ニュータイプになれるという思想。


宇宙世紀0050年代にジオン・ズム・ダイクンによって提唱され、連邦政府の圧政に不満を持っていたスペースノイドの間で一大ムーブメントを引き起こし、サイド3にジオニズムを国是と称するジオン共和国、及びジオン公国ネオ・ジオン等の国家・軍閥を発生させた。


総じて、宇宙世紀作品において一年戦争を発端とする『機動戦士ガンダム』から『機動戦士ガンダムUC』(または『閃光のハサウェイ』)までの歴史を理解する上で、重要な概念である。


名前の由来は「シオニズム」と考えられるが、「シオニズム」が聖地(エルサレム)への回帰を訴える思想なのに対して、「ジオニズム」は聖地(地球)からの脱却を主張する思想であり、内容としてはかなり違う。


解説

コントリズム

サイド(またはコロニー)の自治権獲得ないし独立国家の建設を目指す思想。

まず背景として、宇宙移民の中心は旧世紀の貧困層または敗戦国の国民であり、富裕層や地球連邦関係者といった特権階級の人々が中心であった地球居住民(アースノイド)に対して本来的に立場が弱く、無理やり移住させられたという意識が強かった。

さらにコロニーの莫大な維持管理費についてもスペースノイドは水や空気にまで重税を負わされていたが、それはコロニー公社を通じて連邦政府に吸い上げられているという搾取と利権の構造が存在していた。


これに対する反発として、宇宙移民の財産や税金は宇宙移民のために使うべきだという考えに至ったとされる。さらにスペースノイドも宇宙移民が半世紀が過ぎる頃にはコロニーのなかで一生を終える者が出始め、自分たちの生活に直接関係しない地球からの独立を訴える声が日増しに強くなっていた。


このコントリズムこそがダイクンの最初の主張であったとされており、地球連邦評議会議員時代の宇宙世紀0046年に最初の骨格を発表。しかし、コロニー利権維持にこだわる連邦政府からは拒絶され、最終的にダイクン自身も評議会を出奔しサイド3に移住し、これが0058年のサイド3独立宣言へと繋がる。

宇宙世紀0067年には最期の妥協案であったコロニー自治権整備法案も廃案となり、経済制裁と合わせて一年戦争への下地が形成されていくことになる。


エレズム

全人類の宇宙移民化を図り地球環境の浄化と保全を説く主張。

これはダイクン独自の思想ではなく、そもそも宇宙世紀開闢以前に連邦によって進められた宇宙移民政策自体が地球の環境保全のための人口解決策であった。


しかし、宇宙移民が進むと地球人口は旧世紀20世紀末の人口(つまり適正人口)に戻ってしまい、環境保全と言う宇宙移民の意義は中途半端なところで達成されてしまった。宇宙移民開始から半世紀が過ぎた0051年、連邦はこれ以上の宇宙移民は不要としてスペースノイドの地球への渡航制限を残して宇宙移民計画を凍結した。

こうしてスペースノイドとアースノイドと言う身分が固定化した結果、スペースノイドの間でアースノイドは財産やコネを使って地球での安楽な暮らしを謳歌していると言う不公平感が高まり、両者の対立が激化して行くことになる。

この不満がいわば「アースノイドを地球から叩き出す」という考え方へと帰結し、それを理想とするエレズムにスペースノイドの支持が広がったと言える。


ジオニズムの光と影

繰り返すようにダイクンの掲げたジオニズムは地球からの脱却・独立を謳うだけではなく、究極的には全人類を地球から宇宙へ移民させる事により、人類の活動で汚染された地球の浄化と保全を進めるものであった。

しかし、アースノイドを生活環境の苛酷な宇宙へ強制移住させることを前提とし、さらに移住後も環境整備のために個人は犠牲になるべきと言う前近代的かつ全体主義的な側面もあったため、アースノイドの多くにとってジオニズムは受け入れ難い危険思想でもあった。


また、宇宙移民を促す意義の一つであるニュータイプの定義そのものが漠然としたものであったことから、後の一年戦争によってニュータイプの存在が実際に周知されるまでは「スペースノイド=宇宙に適応した人類=ニュータイプ」と解釈することもできたため、アースノイドに対するスペースノイドの優位性を主張するある種の選民思想を生み出す基盤となり、アースノイド(及びアースノイドに賛同するスペースノイド)を人類の革新の障害になる『オールドタイプ(旧人類)』として粛清・排除すべしという過激な思想をも派生させてしまった。

特にダイクンの死後、ギレン・ザビらによってジオニズムのそうした部分が『優性人類生存説』のように歪められる形で強調宣伝されたことでジオン公国のナショナリズムへと昇華され、一年戦争におけるコロニー落とし等の大量殺戮行為の正当化に用いられた。

さらにダイクンの理想たるニュータイプ像が「お互いに判り合い、理解し合い、戦争や争いから解放される新しい人類の姿」であったにも関わらず、ミノフスキー粒子散布下での宙間戦闘適性の高さから、ニュータイプは戦争の道具としてその能力を利用されていくことになる。


ダイクンの真意がどうであれ、単にスペースノイドの独立を目指すコントリズムのみの観点で見た場合、ジオニズムの掲げる『人類全体の革新』という理想と視野が余りにも茫漠で遠大過ぎたことが、却ってコロニー国家の独立自治権確保等といった限定的だが現実的な目標を達するだけでは許さなかった遠因となった面があることも否めない。

事実、ジオニズムを信奉する勢力の起こした争乱は凡そ過激で大規模になりがちで、徒な戦線の拡大と泥沼化を招き、結果的に連邦がジオニズムを危険視しその態度を硬化させるという悪循環に陥っている。

こうしたことから、宇宙世紀0096年に勃発したラプラス戦争において、ネオ・ジオン残党(袖付き)の首魁フル・フロンタルは「(スペースノイドの独立を目指すならば)ジオニズムに頼るのではなく、地球無しでスペースノイドの経済は十二分に回る事自体を武器にすべきであった」とダイクンやザビ家のやり方を批判している。


グリプス戦役

一年戦争及びデラーズ紛争終結後は地球連邦による弾圧もあってジオニズムは一時鳴りを潜めるが、連邦内部でも敢えてジオニズムを利用する動きもあった。

その代表格であったジャミトフ・ハイマンは、ギレンの地球環境保全のためのアースノイド粛清及び宇宙移民と言う理念に大きな影響を受け、連邦内の派閥対立を巧みに操ることで紛争を起こしアースノイドを戦争に巻き込むことで地球人口を粛清・管理することを目論む。このために彼が結成したアースノイドによる暴力装置がティターンズである。

一方、同じく連邦軍人であるブレックス・フォーラもティターンズのスペースノイドへの横暴に対抗する形でスペースノイド寄り軍閥であるエゥーゴを結成し、両者の争いはグリプス戦役へと発展する。

皮肉にもジオニズムはティターンズの隠れた理念として、そしてティターンズに対するエゥーゴのカウンター的思想として両者に影響を与えていたわけである。


シャアの反乱

宇宙世紀0090年代、ダイクンの遺児にして一年戦争のエースでもあった新生ネオ・ジオン総帥キャスバル・レム・ダイクン(シャア・アズナブル)はジオン公国のザビ家独裁を否定、それ以前のダイクンの理想であるコントリズム実現を第一に掲げたことで、一年戦争時代のジオン公国に対しては否定的だったサイド3以外のスペースノイドも協力者として取り込むことに成功し、息を潜めていたジオニズムは復興する。

シャアは地球に核兵器を積載した小惑星アクシズを落下させるという危険かつ非人道的な手段によって、物理的に地球を人の住めない星にして一気に全人類を宇宙に上げてニュータイプにすることで、父ダイクンの理想を抜本的に実現しようと画策。

しかしアクシズ落としは失敗に終わり、ジオン信奉者の精神的支柱でもあったシャアが行方不明となったことで、ジオニズムは再び大きく力を喪う。


終焉

その後もラプラス戦争、マフティー騒乱オールズモビル戦役といったジオン信奉者による争乱がたびたび発生するが大局を覆すには至らなかった。


しかし、宇宙世紀0120年代以降は腐敗と度重なる軍縮によって既に連邦には一年戦争の頃よりも多数増加していたコロニーやサイド全てに目を向けるだけの力は無く、その権勢も大きく弱体化し、アースノイドの地位と権限も低下。相対的にスペースノイドとの格差が縮小していった。

そしてコスモ・バビロニア建国戦争木星戦役でこれらの事実が明るみになると、ほとんどのサイドやコロニーがなし崩し的に独立を開始したことで、コントリズムはジオニズム無しで実現してしまい、宇宙世紀140年代にはスペースノイド同士がコロニー間の経済格差や文化差から連邦を無視して紛争を起こすという『宇宙戦国時代』へと突入する。

世代交代もあってスペースノイドはもはや地球を聖視するエレズムに興味を持たなくなり、本来の意義を喪ったジオニズムも連邦と同様に旧時代の遺物として形骸化し、むしろ各コロニーの団結などを削ぐ要因となるだけであった。


やがて宇宙世紀0153年のザンスカール戦争にて生粋の地球生まれ・地球育ちのニュータイプであるウッソ・エヴィンが出現したことで、「過酷な宇宙環境に適応進化した新人類」というダイクンのニュータイプの定義とそれに基づくスペースノイドの優位性を説く選民思想としてのジオニズムは根底から崩壊し、名実ともに終焉を迎えた。


なお、宇宙世紀0120年代には地球連邦の民主主義的性質こそが腐敗の温床であるとして、高貴な精神と高い能力を持つ人種たる「貴族」による新たな階級制度社会の建設と連邦政府の否定を掲げる『コスモ貴族主義』が、宇宙世紀140年代には地球を始めとして母なるものを大切にすることを中心とする『マリア主義』といったジオニズムに通底する概念を持つ思想が出現しているが、そのいずれもが結局は恐怖政治や大量虐殺を正当化する口実へと成り果て、歴史と共に消滅していった。


関連タグ

宇宙世紀

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