概要
共謀とは何らかの( この項目では特に反社会的なものを指す )目的を達成するため、秘密裏に行動することを決意することであり、共謀罪とはそれを罪とすることにより未然にそれらの決意をくじく目的を持つ法律である。すなわち犯罪の計画共謀を防ぐ、規制する法律である。
また、国によっては犯罪組織等法を犯すために設立された団体等の設立や活動を処罰する場合も存在する。
以下は法務省の共謀罪に関する主要国の法制度やwikipediaの記述などを参照して記述したものである。
アメリカ
連邦法 第18編 第371条
成立要件:二人以上の者が、何らかの犯罪を犯すことを共謀し、そのうちの一人以上の者が、共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき
英語の法律用語ではConspiracy( 陰謀あるいは共同謀議 )と呼び、その時点で犯罪とみなせるとアメリカ合衆国最高裁判所では判示しており、州によって異なるものの、例えばカリフォルニア州においては「最低2人の人間の間で犯罪の実行を合意すること」かつ「実行するために何らかの行為をすること」となっているため、通常の重大な犯罪においても適用される。
イギリス
1977年刑事法 第1条、第3条
ある者が、他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき
英語の法律用語ではConspiracy( 陰謀あるいは共同謀議 )と呼び、イギリスではその時点で犯罪とみなせる法律が存在し、「ある者が,他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき」罰することができるとしている。
ドイツ
ドイツにおいては犯罪団体の結成の罪( Verschwörungか? )というものが存在し、犯罪行為の遂行を目的・活動とする団体を設立した者、このような団体に構成員として関与した者,その構成員・支援者を募り又はこれを支援した者を罰する、としている。
フランス
フランスも同様に凶徒の結社罪というものが存在し、重罪等の準備のために結成された集団又はなされた謀議に参加したときとある。ただし、客観的行為がなされることを要するとの但し書きが存在する。
大韓民国
大韓民国の場合1960年に再制定、1980年に改訂された( 1948年から1960年までも存在したがいったん廃止、1980年までは反共法という法律も存在した )『国家保安法』という法律が存在する。
これは宗主国であった大日本帝国時代の治安秩序維持法をそのまま利用したかのような内容であり、残存した理由としては朝鮮民主主義人民共和国などの存在が指摘される。これらの運用のため韓国には全国共通の密告専用ダイヤル( 113番 )が存在する。
ただしこの法律は国内でも「表現の自由を侵害する」との声があり、他の法律との統合が検討されたことがある。
日本
かつて制定された治安維持法( 関東大震災の際に発令された勅令、治安維持ノ為ニスル罰則ニ関スル件などを法律としたものであり、国体の変革および私有財産の否定を目的とした結社結成や加入を処罰する法律、本来は無政府主義や共産主義の抑制が目的であった。大正12年成立、その後昭和3年および昭和16年に改正、昭和20年にGHQにより廃止された )の条文、特に国体の変革が何を指すのかが大雑把すぎたことにより政府や特高警察が拡大解釈しまくり、左派から民主主義、さらには右翼的新興宗教まで政府の意に沿わない勢力の弾圧に利用されたトラウマが存在する。
一方戦後においては日本国憲法の兼ね合いもあり結社の制限は違憲である可能性が高い。
予備段階の処罰や犯罪の計画段階での処罰に関しても一部の犯罪のみが罪に問え、大多数の罪に存在する未遂は犯罪の実行に着手する必要があったが、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の整備により変化するかもしれない。
テロ等準備罪
2000年に国際連合にて採択された国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約( 『パレルモ条約』『TOC条約』とも、犯罪組織に対する処罰や対抗措置が定められた国際条約であり、「犯罪組織への参加・共謀」「犯罪収益の洗浄( いわゆるマネー・ローンダリング )」「司法の妨害腐敗( 公務員による汚職など )」などが対象であり本来の目的は「マフィアや非合法物品の密輸者と等の利益獲得の妨害」とされ、日本は批准したものの批准されていない )においては重大な犯罪の共謀を罪として認めるよう法整備を行わなければならない、と定められたため、重罪のそれぞれに対し共謀を新たに罪として認める、犯罪結社の処罰を行う、あるいは共謀罪を新たに制定する等の法整備が必要が存在するようになった。
しかしこの概念はそれまでの日本の刑法学の体系とは一致しない点も存在する上、「重大な犯罪」の定義もあいまいであるなど、複数の問題があるため、平成11年以降議会内で検討され、小泉純一郎政権下の議会で論議されていたものの、継続審議のうえ実質上の廃案となり、その後議会はこの法案の検討が困難な状況になっていた。
しかし、2017年、安倍晋三政権においてこの法律は与党の強引ともいえる議会進行および野党の劣化した議会運営により「テロ集団などに対して適用」という但し書きをつけ、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律として成立させ、7月11日に施行される。ただしこの法律の改正に関しては計画の段階での規制が物議を醸す状態であり、いまだ賛否両論存在する。
運用等
この犯罪に関しては共謀が認められた場合、合意した犯罪を自ら実行したときと同程度の重さ、あるいはそれより低い罰を共謀者に均一に課すことができるといわれる。
この法律が存在する場合、犯罪を起こした構成員のみを罪に問い、本体に罪を問えない、いわば「トカゲのしっぽ切り」で終わらず、その構成員が存在する組織や団体そのものを調べることができ、場合によっては 組織等を芋づる式に検挙することも可能となるため、組織犯罪の阻止という面では有効である。
一方行政組織や司法組織の腐敗および権力者等による法律の恣意的な運用により、権力者や警察等が都合の悪いと感じた国民に対し不当な拘留や取り調べ、さらには逮捕が行える要因となる、という欠点が存在し、日本の例でいえば治安維持法のような使用法がされる可能性が否定できない。
関連項目
外部リンク
法務省:共謀罪に関する主要国の法制度( PDF )