概要
AV(アダルトビデオ)にて性行為を見せることで対価を得ている女性のこと。
専業の者と兼業の者がおり、中には学生だったり主婦だったりする場合もあるが、総じて「AV女優」と呼ばれる。
法律の関係上、18歳以上でないとなることができない。
ほとんどが事務所(このジャンルでは「プロダクション」「ダクション」と呼ばれることが多い)に所属し、それからメーカーの面接回りをして仕事を得る。
トップクラス人気の「単体」と呼ばれる者は制作会社(メーカー)と専属契約をし、ギャラも高い。
単体女優よりややランクは落ちるが出演数で稼ぐ「企画単体(キカタン)」、さらにそれよりランクが落ちる「企画」と呼ばれる十把一絡げ的に扱われる者達がいる。
AVに否定的な立場からは、エキストラとしての出演や盗撮の結果であっても「ビデオに映っていればAV女優」とする考えもある。
また、ビデオ販売という性質上「仕事」の後も半永久的に行為が保存されることになるため、「一度でも出演すれば死ぬまでAV女優」という考え方も存在する。
そのため賛否両論ある風俗産業の中でも特に風当たりが強く、長年多重債務者や知的・精神障害者等を強制的に出演させたり、盗撮映像を盾に女優になる他ないと脅迫するといった事案が後を絶たない職業でもあった。
反面、積極的ななり手が少なかったことから風俗産業の中でも多くの収入が得られた仕事であり、(日本では法律上性器にモザイクをかける必要があるが)合法的に自らの行為を不特定多数に見せられる数少ない手段でもあったことから、露出系の趣味を持つ者が趣味と実益を兼ねて出演するということも多々あった。
かつてはほとんどの女優が完全な日陰者として自らを扱ってきたが、飯島愛が芸能人への転身を成功させて以降、テレビへの出演やアイドル化、二次元コンテンツとのコラボなど積極的に日の当たる所に進出しようとする者も見られるようになっている。
業界としても「セクシー女優」「セクシーアイドル」などと呼称を変えたり、年齢確認やNGチェックシートの厳格化、業界団体の組織化など職場環境を改善したりといったイメージアップに取り組んでおり、現在は選考落ちも出るほどには人気の産業になっていると言われる。
極一部の成功者の中には一般芸能界に転身、10年前後の長期にわたって活動する者、一般芸能活動と並行してAVを続ける者などもいる。
トップクラスの人気専属女優だとアイドルのような歌手活動を行ったり、ヌード仕事ができるということでデッサン練習用写真集モデルに起用されたり、カメラ雑誌のモデルを請け負う者もいる。
また一部は引退後制作会社スタッフやヘアメイクなど制作サイドに転身する者、作家(例:川奈まり子)や漫画家(例:峰なゆか)に転身した者もいる。近年では真咲南朋のようにAV監督に転業する者もおり、監督と女優を兼業するケースもある。異例なケースでは社会学者となった鈴木涼美がいる。
しかし人気がそれほど得られなかった者に華やかな一般仕事は回って来ないのが実情で、数作で仕事が来なくなって消えたり、先細りの仕事をなんとか繋ぐためハードプレイを解禁しても長持ちしない者も多い。
こうした場合多くはそのまま一般人に戻ったり、中には何度も改名して再デビューを繰り返したり水商売・風俗産業などに落ちて行くものもいる。
また、もともと本業が風俗嬢や水商売のホステスだった者も少なからずおり、特に風俗嬢の場合は「本業である性風俗業の営業のために出演する」ケースも珍しくなく、こうした女優の在籍する風俗店の中にも「AV嬢在籍」を売りにする店もある。
業界の闇
とは言え、元が暴力団も闊歩する風俗産業であることからきな臭い話題が無くなったわけではない。
特に芸能界との関係強化はそのまま芸能人→AV女優という逆の流れが出来上がったことをも意味しており、売れなくなったアイドルやタレントが送り込まれてくる例が後を絶たない。
まともにデビューさせることを念頭に置かず「訓練費」や「宣伝費」の名目で多額の借金を負わせ、それでもAVへの出演を承諾しないと「違約金」としてさらに借金を増やすという、現代の債務奴隷としか言いようの無い手段を用いる事務所すら存在することも明らかになった。
一方で、元が有名であるほど転身後の人気も高くなる傾向にあることから、現役アイドルユニットの中から何人かを強制的に脱落させるという本末転倒な手段も現れ始め、最早二つの業界の垣根は無くなったと言っても過言では無い状態となっている。
またアイドルグループ在籍時に不祥事を起こして実質クビになり、AVに流れて来る者もいる。
最初からアングラな業界だった着エロアイドルやジュニアアイドルはさらに凄惨な状況になっていると言われ、「本番」以外AVと変わらない行為を繰り返してほとんど洗脳した挙句、18歳になると同時にAV転向という販売モデルが既に常態化しているとされる。
撮影外でのわいせつ行為や枕営業の告発も後を絶たず、しかもその多くが不自然な形で取り下げられている現状から業界の浄化を信じることは難しい。
芸能界の背後にはマスコミが付いていることもあって警察も頼りにならず、支援の動きを見せる弁護士やNPOも存在しているものの、その数に対して余りに事案が多くいたちごっこにもなっていないというのが現状である。
そうまでして出演者を集めた所で、同様の事例が多発しすぎたために過当競争が起きており、多くの女優が初回契約で決めた本数を撮り次第引退を勧告されるという厳しい現実に晒されている。
契約更新のためにはよりハードでマニアックな撮影に応じることで差別化を図るほか無く、アナルや輪姦は既に当たり前のプレイとなった。撮影も下請け孫請けの零細メーカーに投げられてゆき、中には撮影許可を取っていなかったためスタッフ諸共公然わいせつで逮捕という笑うに笑えない末路を辿った者さえいる。
当然女優自身の契約料も下降の一途を辿っており、下手をするとソープランドやストリップにでも転職した方がマシというような状況になっている。
かつてはそのような女優を「堕ちる」と評したが、現在ではむしろその方がいい待遇を受けられる可能性さえ出てきた。AV以外の風俗産業は斜陽気味で、例えAV界で二流だった女優でも特別待遇のドル箱候補として迎えることが多いからである。
もっとも、業界としてもその流れは把握しており、先手を打って繋がりのある店を紹介して安く買い叩かせるという事務所も存在しているようだが。
また、事前に撮影本数や出演料を決めておくというシステムはかなりの曲者で、ソフトな内容とハードな内容を抱き合わせにして契約させたり、作品がいくらヒットしようが出演者には1円も入らないと言ったことが広くまかり通っている。
と言うか、この業界に肖像権や著作権は無いも同然であり、一度撮られた映像は販売元が召し上げ、好きに使い回せることになっている。女優のみならず、男優も監督もカメラマンも常に不安定な状態で仕事をしているのであり、それが責任の擦り付け合いと「なんでもあり」なモラルハザードを生む大きな原因となってしまっているのである。
話題作りや面白半分で、スタッフが女優の個人情報を勝手に流出させたという、他の業界ではあり得ない杜撰な事件も起きている。一般人が抱きがちな「肉便器」「何してもいいのよ」という認識を、本来女優を守るべき業界自体が持ってしまっている状況である。
素人の台頭も逆風である。単に競合相手が増えるという問題の他、若くて初々しい反応を好む視聴者が増えたことで「出れば出るだけ価値が下がる」という状況が加速。顔も名前も売れていない彼女達と異なり名前を変えて再デビューというわけにもいかず、「蟻も集まれば象を倒す」を地で行く窮地に追い込まれている。
逆に言えば、始めから業界に長居する気が無く、趣味や小遣い稼ぎとして出演する分には悪目立ちせず好きに出入りできるいい時代になったとも考えられるが、今度はバックに何も付いていない弱さに付け込もうとする輩が狙っている。
先述の状況から、この業界にいる人間の多くは不本意ながら仕事しているか、悪い待遇でも構わないと考える真性の変態。彼らがそのストレスやあり余る性欲を女優で発散するということは大いにあり得ることなのである(→バッキー事件)。
なお、リンク先の事件は上層部こそ逮捕されたものの、実行犯の男優を始めとした多くが不問とされ、現在も同様の作品を作り続けている(そして、警察は二度と動いていない)ことを追記しておく。
AV女優は不幸な日陰者でなければならないと考える思想犯みたいな人間も意外と多く、2ちゃんねるなどでは女優としてのみならず実際の生命そのものに影響を与えかねない悪質な嫌がらせが日々考えられてもいる。
また従来多くAVにきていた精神障害や知的ボーダー層が基準の厳格化や業界の改善策でAVに出られなくなり、アングラに近い風俗やAV業界団体の範囲外で歯止めの効かない脱法動画サイトなどに流れるケースも少なくない。
こうした現状には様々な方面からの改善策も出ており、業界内からは元女優の川奈まり子を主催としたAVAN(一般社団法人表現者ネットワーク)も立ち上げられ、弁護士を交えたAV人権倫理機構により「動画配信は出演者の意向があれば5年目以降に削除される」案が提出されている。
しかし、AVの環境改善に関しても各団体の対立も見られ、フェミニズム弁護士を中心とするPAPSやHRNとそれ以外の団体では度々論争も発生しており未だ課題は多く残っている。
pixivに記事のあるAV女優
白石茉莉奈 青木りん Hitomi(田中瞳) 藤原ひとみ 紗倉まな
完全に一般芸能界に転身した者
芸能以外の他業種に転身した者
峰なゆか(漫画家、エッセイスト)