概要
易経における概念であり、陽を表す「⚊」と陰を表す「⚋」の組み合わせで表現され、以下のような二進数の形を取っている。
以上のように自然や家族との結び付きも考えられており、どちらも陰陽が反転したもの同士が対となるような形となっている。
自然との結び付きは特に強調されており、2つの卦を組み合わせた六十四卦の要素の通称にも用いられている(乾為天など)。
ここでの中男・中女というのは、次男・次女を意味するとされ、少男・少女というのは、末の息子・娘を意味するとされる。
他、動物や身体の部位との対応も存在しているが、諸説有り?
日常的には「はっけ」と読まれるが、正確には「はっか」であるとされる。
図の上ではよく八角形状に配置され、中央にはしばしば太極図が配置されている。
この配置は後述の配置に従ったものであり、太極図の各部分と結び付けられる。
これを八角形の板の上に描いたものは八卦盤、八卦羅盤などと呼ばれる。
⚊や⚋は「爻(コウ)」と呼ばれ、上から「上爻」「中爻」「下爻」と呼ばれる。
⚊は陽爻、⚋は陰爻と呼ばれる。
これらに加えて𝌀を含んだ図像も存在するが、これは太玄経というものの中で用いられる。
こちらは陰陽の代わりに天地人を当てており、⚊を「天」、⚋を「地」、𝌀を「人」としている(𝌀はUnicode名では地となってるが、中国版Wikipediaによれば誤植っぽい)。
八卦の順番
八卦には主に、2通りの並び方が存在している。
上表の「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」という並びは「伏羲八卦次序」と呼ばれ、ちょうど二進数と一致している。
一方、陰と陽が反転関係にあるもの同士を隣接させた「乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌」という並びも重視され、「文王八卦次序」と呼ばれる。
文王八卦次序に基づいた表は以下のようになる。
図像 | ☰ | ☷ | ☳ | ☴ | ☵ | ☲ | ☶ | ☱ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名前 | 乾 | 坤 | 震 | 巽 | 坎 | 離 | 艮 | 兌 |
自然 | 天 | 地 | 雷 | 風 | 水 | 火 | 山 | 沢 |
家族 | 父 | 母 | 長男 | 長女 | 中男 | 中女 | 少男 | 少女 |
八卦の配置、方位との関係
八卦には、3×3のマスに並べる方法が主に以下の2通り存在する。
これらは上を南とし、八方位と対応させられる。
先天図
兌☱ | 乾☰ | 巽☴ |
離☲ | 坎☵ | |
震☳ | 坤☷ | 艮☶ |
これは伏羲八卦次序をS字状に並べた形となっている。
陰陽との関係が合うように、反時計回りに半分並べた後、向かい側に陰陽が反転した卦を配置させた形である。
神話の時代から存在すると主張されたが、11世紀に邵雍によって考案されたものと推測されている。
これに従った八卦の方位は「伏羲先天八卦方位」「先天八卦方位」と呼ばれる。
後天図
巽☴ | 離☲ | 坤☷ |
震☳ | 兌☱ | |
艮☶ | 坎☵ | 乾☰ |
この配置は解り辛いが、実はこちらの方が我々に馴染み深く、八卦の訓はこれに由来している。
例えば艮を「うしとら」と読むのは、艮がこの図において北東すなわち丑寅の方角に位置している事から来ている。
同様に「乾」⇔「いぬい」⇔「戌亥」、「坤」⇔「ひつじさる」⇔「未申」、「巽」⇔「たつみ」⇔「辰巳」となっている。
紀元前から用いられているとされ、名前とは裏腹に、先天図より古いとされている。
これに従った八卦の方位は「文王後天八卦方位」「後天八卦方位」と呼ばれる。
由来は、文王八卦次序を魔方陣に従って(中央を飛ばして)並べたものと説明されるが、その通りならば以下のようになるはずである。
巽☴ | 兌☱ | 坤☷ |
震☳ | 離☲ | |
艮☶ | 乾☰ | 坎☵ |
ここで、離に火が、坎に水が当てられている事と、五行においては火は南、水は北に位置する事を踏まえて入れ替えると、ちょうど後天図となる。
いずれにしても、陽全開であるはずの乾が陰寄りの扱いとなってる。
また、3×3の魔方陣には8通り向きが存在しているが、その内でこの向きが選ばれた必然性は不明。
逆に後天図を魔方陣に従って並べると「坎・坤・震・巽・乾・兌・艮・離」となる。
八卦の生成
以下のように生じたとする理論が存在している。
太極 → 陽(天) + 陰(地)
太陽 → 乾 + 兌
少陰 → 離 + 震
少陽 → 巽 + 坎
太陰 → 艮 + 坤
この理論においては、陰と陽をまとめて「両儀」、太陰・少陽・少陰・太陽をまとめて「四象」と呼び、のように表現される。
「太極→両儀→四象→八卦」という話自体は、易経の繋辞上伝に存在しているが、以上のような具体的な内容は、11世紀に邵雍によって発案されたとされる。
伏羲八卦次序はこれに対応している。
「陽→太陽+少陽」ではなく「陽→太陽+少陰」となっている所に注意が要る。
似たもので「五行の生成」があり、そこでは陽が火と木に分かれているが、木は「陰寄りの陽」という位置づけであるため、「陽→太陽+少陽」という形となっており、八卦の生成とは異なっている。
四象を「陽→陰」という順番で並べると「太陽・少陽・少陰・太陰」となるが、八卦を同様に並べると「乾・巽・離・艮・兌・坎・震・坤」となる。
太極の前に無極を設ける思想も存在。
五行との関係
五行とは以下のように対応するとされる。
この対応は後天図と密接であり、まず、四方については五行と一致している。
斜めのものについては、陽の行(火・木)を持つ方角(南・東)と陰の行(水・金)を持つ方角(北・西)の境目になっている部分の行が、中性的な行である土となっており、後は東西が優先される形となっている。
これは十二支と五行との関係とは逆の方向に傾いた形となっている。
各卦に対応する五行は、各卦に対応する九星の名前にも含まれている。
対立関係にあるとされる事が多い風と雷であるが、ここにおいてはどちらも木行とされている。
風と木は、五行の生成において結び付けられており、雷と木は、セーラージュピター繋がりとなっている。
仮に先天図を同様に対応させた場合は以下のようになる。
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|---|
八卦 | 兌 離 | 乾 | 震 巽 | 坎 艮 | 坤 |
卦の陰陽
八卦の各卦と陰陽との関係はあまり語られないが、伏羲八卦次序においては、生成の理論に基づき、以下のような扱いがされている。
八卦 | 乾☰ | 兌☱ | 離☲ | 震☳ | 巽☴ | 坎☵ | 艮☶ | 坤☷ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
陰陽 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 |
この場合、上爻の陰陽が卦の陰陽となっている。
一方、文王八卦次序においては、陰陽の混ざった卦においては少ない方が支配すると考え、以下のようになっており、「家族」の性別もこれに基いている。
八卦 | 乾☰ | 坤☷ | 震☳ | 巽☴ | 坎☵ | 離☲ | 艮☶ | 兌☱ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
陰陽 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 | 陽 | 陰 |
この場合、陽を+1、陰を-1、これらの組み合わせを掛け算として見た結果に一致している(この理屈では太陰も陽になってしまうが)。
先程と比較すると、震、巽、坎、離の陰陽が逆転しており、火と水の陰陽が五行とは逆となっている。
陽の八卦は陽卦、陰の八卦は陰卦と呼ばれる。
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