概要
機体の上部についているローター(回転翼)を回転させることで揚力と推進力を生み出し飛行する。
ただし、ローターを回転させるだけでは、機体がローターと反対回りで回転を始めてしまって飛ぶどころではなくなるので、機体の後端に付けたテイルローターを回転させるか、2つ(まれに3つ以上)のローターを別々の回転方向で回転させるかして回転を打ち消す必要がある。
近年では、テイルブーム内から送り込まれた空気を噴射することで回転運動を打ち消すテイルローターを用いないノーターと呼ばれる方式も登場している。
ヘリコプターのアイデア自体は、かのレオナルド・ダ・ヴィンチも考案しているほどに歴史は古いが、飛行機と同様に「適切な動力がない」というだけでなく、「複数のローターで機体の回転を防ぐ」という案がなかったせいで、長年に渡り日の目を見なかった。まともに飛べるようになったのは、第一次世界大戦よりも後である。
短所と長所
滞空するだけでもエンジン出力の多くを使っている関係上、非常に燃費が悪く、運航コストが高い。それゆえ航続距離も短くなり、長距離路線には利用されない。
事故リスクも高い。原理上ローターに異常が発生すると墜落に直結する。離着陸が頻繁なこともあって飛行時間当たりの事故率は固定翼機の10倍以上にもなり、航空機事故の約75%をヘリが占めるといわれる。固定翼機に比べると速度も遅く、対気速度で400km/hが限界(一般的な機種の最高速度は300km/h程度)である。
しかし、垂直に離着陸でき「点から点」へのピンポイントの移動が可能である。非常に低速で移動できる上、空中の同じ地点に留まる「ホバリング」も可能など、他の航空機では到底不可能な柔軟性を発揮する。これらの特性から地上や海面近くでの利用に適した航空機となり、輸送、監視、報道、捜索救難の他、農薬散布や救急(ドクターヘリ)などに幅広く利用されている。
ただし、空気の密度が希薄な高空での飛行は困難であり、富士山(3776m)程度の高度には到達できてもエベレスト(8848 m)の高さに到達できるヘリコプターはない。
メカニズム
それぞれのブレード(羽)は角度を変更できるようになっており、上昇、下降はこれに一定の角度変化を与えて、ローター全体の揚力を一様に増減させることで行う。誤解されがちだが、回転速度は基本的に一定である。水平方向に移動する場合は、これの角度を周期的に変化させて(ブレードが機体右側に来るときに角度大、左に来るとき角度小、といった具合)、ローターの揚力を偏らせる。
水平方向に回転する場合は、シングルローターであればテイルローターのブレード角度を変化させ、タンデムローターであれば前後のローターの揚力を互い違いに偏らせることになる。周囲の状況や操縦によって自らが送り出した空気(ダウンウォッシュ)に入り込んでしまうと浮力が生じずに墜落してしまう(セットリング・ウイズ・パワーもしくはボルテックス・リング・ステート)。
オートローテーション
固定翼を持つ航空機と異なり、飛行中のエンジンの停止は即墜落に繋がると思われがちだが、十分な高度や前進速度があればオートローテーションという技術で比較的安全に降下して着陸できる。(高空では降下する速度をローターの回転に変換して減速し、地表近くで一気にローターの角度を変えて着地のための揚力を生む。極めて高度な操縦技術が要求される)。
テイルローターが故障した場合、回転の反動を消すためにエンジンを止めねばならず、この場合もオートローテーションが必要になる。
固定翼機の失速からの回復と同様に免許を取得する際には必ず練習する操縦技能である。(ただし練習には壊しても安く済む機体で行われており、軽いヘリでもあるので実際に操縦するヘリとは勝手が異なる事が多い。また、高価なヘリでは訓練の度にクラスA事故を起こすわけにはいかないのでほぼシミュレーター訓練となっている)
しかしながら高度、速度の条件が満たなければオートローテーションは不可能となり、墜落する。(この関係を示す図はH-V線図、またはデッドマンズ・カーブと呼ばれている)オートローテーションが働いても安全に着陸できるとは限らず、機体が大破した例は成功例より多く存在している。実際の事故の際には訓練やデモンストレーションとは異なり柔らかい地面に滑らすように着陸するということが出来るとは限らず、エンジン停止等により行われた際には墜落に等しい着地となった事もあり、どちらかと言えば機体を潰してでも乗員の怪我を軽くする方法、といった方がいい。
また、機体構造によってはオートローテーションは難しいこともあり、エンジン停止が即墜落に繋がることもある。(同軸二重反転ローターのKa-50で射出座席が採用された理由と推測されている)
ヘリコプターの種類
マルチコプター
テールローターを持たず従来のヘリコプターより構造が単純な為、故障の際の修理もヘリコプターより楽、軽量な為事故を起こした際の被害もヘリコプターより小さい可能性が有る、構造が単純な分付加機能を付けやすく、安定性も高く操縦が極めて容易。
しかし軽量、操縦が容易過ぎる為ラジコン保険やメンテナンスを侮りかねない危険性が有り、ホビー目的で使用する際はくれぐれも高高度を飛べる物体で有る事を忘れないようにしたい。(同重量の物が高度100メートルから降ってきたらどれだけ危険か想像してみよう)
小型であるためブレードに角度可変機能を持たせることは難しく、操作はローター回転速度の増減によって行われる。
民間ヘリコプター
民生用(軍用ではない)ヘリコプター。
前述の特徴のため、離着陸に広いスペースを取れない用途(救急、山岳地帯への搬送など)で主に使われる。
軍用ヘリコプター
第二次世界大戦中にヘリコプターの原型である「オートジャイロ」が現れた。
この頃は実験機のような扱いで目立たない存在であった。
朝鮮戦争が勃発すると、人員輸送や偵察、救難に用いられるようになった。
ベトナム戦争においてアメリカ軍はベルUH-1イロコイをはじめとしたヘリコプターを大量投入する。
兵員を空中輸送し、前線で展開するヘリボーン戦術が生まれた。
べトコンの攻撃が激しくなってくると被害を受ける機体も増加し、対処するために重武装を施したUH-1を投入した。
ヘリコプターで偵察し、敵を発見すると共に殲滅するサーチアンドデストロイ戦法もこの頃に生まれた。
しかし、UH-1は前方投影面積が大きく、無駄も多かったために対地攻撃専用のヘリコプターが要求された。
そして試作競争の結果、AH-1コブラが繋ぎの攻撃ヘリコプターとして選定された。
これが想定していたよりも良い出来だったので、改修されて現在まで使い続けられることになろうとは・・・・・・
現在のヘリコプター戦術及び軍用ヘリコプター思想はここから継承されたものである。
海上においても、対潜装備を搭載した対潜ヘリコプターやレーダーを搭載したAEW仕様が活躍している。
汎用ヘリコプター
様々な用途に使えるヘリコプター
攻撃ヘリコプター
対地攻撃を行い、地上部隊を支援するヘリコプター
偵察・観測ヘリコプター
偵察を主目的としたヘリコプター
対潜哨戒ヘリコプター
対潜水艦戦に用いられるヘリコプター
輸送ヘリコプター
輸送を主目的としたヘリコプター
救難ヘリコプター
友軍兵士の救難を目的としたヘリコプター
特殊作戦ヘリコプター
特殊作戦に用いられるヘリコプター
加筆をお願いします。
それ以外は「Wikipedia「ヘリコプターの一覧」」などを参照。
ラジコン
人が搭乗するのではなく、外部から無線操縦、もしくは事前に入力した経路に従い自律飛行を行なうヘリコプター(ラジコン)もあり、趣味だけでなく、産業用(農薬の散布、空撮など)にも使われる。
現在この分野ではマルチコプター(ドローン)が急速な勢いで伸張している。
従来のラジコンヘリと異なり姿勢が安定しており空撮能力等様々な点で優れており、警備、輸送等様々な分野における利用の研究が盛んに行われている。
創作におけるヘリコプター
映画や漫画などで移動手段、攻撃手段にヘリコプターが採用されるケースがあり、後者の場合は敵側の誇る強敵という位置づけがされる。
カプコンのゲーム作品、特にバイオハザードシリーズではよく墜落し、その残骸が後々障害物となってプレイヤーを邪魔することも。
また、ローターに接触すると大ダメージ、最悪バラバラになって即死するトラップ的扱いをする作品もある。
実際のケースでも極めて危険なので絶対に真似しないように。
余談
よく「ヘリ」と略されたり、「タケコプター」などの造語への使用例があるが、原語的にはギリシャ語の「螺旋(helico)」と「翼(pteron)」から来ているため、区切って読む場合は本来は「ヘリコ・プター」となる。