「あなたは、誰……?」
CV:中村佳穂
概要
高知県の片田舎に住んでいる、そばかす顔が特徴的な17歳の女子高校生。
通称で「すず」と呼ばれている。幼いころに母親を水難事故で失い、現在は父親と愛犬・フーガとともに暮らしている。
内向的な性格のために物静かで学校でも目立たない存在であったものの、あるとき友人である別役弘香(愛称はヒロちゃん)からの勧めでインターネット上の仮想空間『U(ユー)』にアカウントを登録し、『ベル』(Belle)という名前のAs(アズ)で歌を披露したところ、瞬く間に世界中から称賛を受けて『U』屈指のバーチャルシンガーへと登りつめている。
歌姫『Belle(ベル)』として『U(ユー)』の世界で成功を手にしたすずは、自身にとって最大規模のライブを開催するなかで、突如『U』の荒くれ者である「竜」との出会いを果たす。彼の乱入によってライブは滅茶苦茶にされてしまうものの、その際に彼が見せた孤独と苦悩の姿が気になったすずは、竜の正体とその本心を知るために現実世界と『U』というふたつの世界をまたぎながら彼を探し求めるようになる。
人物
容姿
顔を隠しがちなおかっぱの髪と頬に散らばったそばかすが印象的な、自信なさげに振る舞う冴えない女子高生。自身の親友である弘香(ヒロちゃん)からも「月の裏側みたいな地味な子」「辺境のド田舎にいるダッサい小娘」などといった毒舌混じりの評価で見られている(また、弘香とすずの仲は良く、毒舌が常の親友が言うこととして半ば冗談も含まれていると思われる)。しかし、カヌー部の男子生徒であるカミシン(千頭慎次郎)が自身に好意を寄せているのではと考えて喜んでいるあたりから、それなりに整ったルックスの持ち主である様子がうかがえる(だが、女性関連に初心なところがあるカミシンの言うことなので、彼の視点からみた評価を差し引いても、すずの秘密を考えれば美形である事は確かであろう)。
普段の学生生活では、ネクタイを締めた白シャツに膝丈のプリーツスカート、ローファーといった装いをしており、たまご型のキャラクター『ぐっとこらえ丸』のプレートをつけたスクールバッグを肩にかけている。(小説版、44ページ、68ページ)
性格
内向的かつおとなしい性格で、大勢で寄り集まって楽しむことを苦手としている。また、評価よりも批判の意見を気にしてしまうネガティブ思考の持ち主で、親友の弘香からは「陰キャ」と揶揄(やゆ)されている。
周りと馴染めるほど器用でなく割り切れもせず、かといってひとりぼっちでいることへの覚悟も達観もない彼女は、本心では「昔から少し、自分に自信がないだけ。みんなと仲良くしたいもん」などと現状をよしとせずにじたばたしているものの、結局は自身の押しの弱さによって一歩を踏み出すことができず、たくさんのことを諦めてきている。(小説版、48ページ、174ページ)
しかし、一見すると暗くて無気力に思われがちな彼女であるが、その胸の内には他者に対する温かい優しさや思いやりの心を秘めている。足の不自由な愛犬・フーガの日々の世話やひとりでカヌー部を立ち上げて奮闘するカミシンへの素直な称賛、そして『U』の世界において竜が抱えている苦悩を察して寄り添おうとする姿などに、それらの存在を垣間見ることができる。
技能
後述するように幼少のころから音楽と触れる環境のもとで育ってきたため、音楽にまつわる才能は元来高く、作曲・歌唱ともに優れたセンスを秘めている。過去の辛い出来事(トラウマ)のために現実世界では長らく歌うことができなかったものの、仮想世界『U(ユー)』ではBelle(ベル)というアバター越しに自身の才能を余すことなく発揮でき、多くの評価や評判のもとに瞬く間に世界屈指のバーチャルシンガーへと躍進を遂げている。
また、高校は市内の中高一貫校に高校生になってから編入しており(小説版、43ページ)、学業の地頭はいい様子がうかがえる。
家庭環境
人口減少の著しい高知県の仁淀川(によどがわ)流域の集落に父親と愛犬・フーガとともに暮らしており、毎日バスと電車を乗り継いで高校へ通っている。その通学に使っているバスの路線も1日あたり朝と夕方の2本しかなく、さらには年内の9月末には廃線が決定しており、それらの環境によって彼女は毎日世界の果てにいるような寄る辺のない気持ちを実感している。(小説版、19ページ)
すずの母親は彼女が幼いころに水難事故で帰らぬ人となり、現在は父親とふたりで暮らしているものの、母を亡くしてからは日々そっけない関わりを続けている。すず自身は父親との気まずいやり取りについてなんとかしなければならないとたびたび気にしているものの、現状を変えるきっかけをつかめないまま平行線をたどっている。
また、愛犬であるフーガはかつて右前足をイノシシ用の罠にはまって失い、保護犬として内藤家に迎え入れられた過去を持っている。すずは日課としてフーガの散歩やごはんといった面倒を見るかたわら、右前足を気にせず元気に走ったり跳ねたりするフーガの姿を見てホッとしたような安心感を覚えている。(小説版、15ページ、114ページ)
経歴
幼少時代~高校1年生の冬
幼少時代のすずは現在とは打って変わってとても活発な性格で、しょっちゅう外を走り回っては母親の手を焼かせていた。家が山奥にあったこともあり、休みの日には家族そろってキャンプ場に出かけて川で泳いだりすることもしばしばあった。
また、地域の合唱隊のメンバーであったすずの母は、自室にクラシックやジャズ、ロックなどのさまざまなジャンルの音楽をコレクションしていたほか(小説版、32~33ページ)、自分用のスマートフォンに音楽制作用のアプリを入れるなどしていた。その影響もあって、幼いすずは音楽を作ることに興味を持ち、自分で作った曲を母親に聴かせて褒めてもらうことや彼女と一緒に歌を歌うことなどに転げ回りたいほどの幸福を感じていた。
しかし、そのような幸せな日々は、ある日河原でキャンプをしていた際に、すずの母親が大雨による川の増水で中洲に取り残された幼い少女を助けて亡くなってしまったことで唐突に終わりを迎えることになる。この事故がネットニュースで取り上げられた際に、一部の見ず知らずの人間たちがすずの母親に対して心無い非難の声を浴びせたことや、実の娘よりも赤の他人の少女を助けようとした母親の行動などによって、すずは心に傷を負って苦しんでいた。また、母親の死後は歌を歌う目的を失ったことから、かつてのように歌うことができなくなってしまっていた。
中学生時代には、母親の遺品である音楽のコレクションを片っ端から聴き漁りながら、胸のなかに渦巻く言葉にならない訳のわからない想いを吐き出すために、一心不乱に歌詞や曲、絵などを書き殴っていた。そしてあるとき、それらの無価値さや醜(みにく)さを自覚して「何をやっているんだ」というどうしようもない思いのもとにそれらをビリビリに破り捨てている。
そして高校生になるころには、自分自身がいよいよ無価値な人間に思え、勉強にも部活にも打ち込まない虚ろな生活を送っていた。そうしていつしか冬を迎え、クラスメイトからカラオケに誘われたすずは、歌が歌えないこと、そして皆から歌を強要されることに恐怖を覚えて逃げ出してしまう。その帰り道で、すずは一人でかつて大好きだった歌を無理やり歌ってみようと試みたものの、喉をついて出てくるのは歌にならないうめき声という有様であった(また精神的な体の拒否反応で、その場に倒れるほどの障害がすずへ追い打ちをかけた)。
かつての幸せだったころからの落差を実感し、目の前が真っ暗になったすずは「もう、辛い。何もかも、なしにしてしまいたい。私なんかいなくなればいい」(小説版、49ページ)とうずくまって震えながら泣いていたが、そこに親友・弘香(ヒロちゃん)からメールで仮想世界『U(ユー)』への招待状が届くことになる。
『U』への登録~現在
弘香(ヒロちゃん)からのメールを確認し、仮想世界『U(ユー)』で人生をやり直せると知ったすずは、さっそく自身のAs(アズ)として『Belle(ベル)』を登録し、デバイスを介して『U』の世界へと没入する。ボディシェアリング技術を試す一環で声を出したすず=ベルは、思った以上に体に響いていく嬉しさからそのまま自分で作った曲を歌い始める。自身の鬱屈(うっくつ)とした境遇を込めたその歌は広く称賛されることはなかったものの、最後に小さな天使のAsが褒めてくれたことや、何年も歌えなかった歌が歌えるようになったことなどに喜びを実感していた。
その後、高校2年生に進級したすずは、仮想世界『U』での成功体験によって前向きな生活を送るようになっていた。勉強に談笑に余暇に、穏やかで充実した日々を過ごすことで、彼女は「やっと普通の高校生になれた気がした」(小説版、68ページ)といった満ち足りた気分を味わっている。
そのような日常の延長線上のある日、すずは衝撃的な事実を目の当たりにすることになる。
初めて仮想世界『U(ユー)』に降り立ったときにすず=ベルが歌った歌がさまざまに編曲されて好評を博するとともに、彼女の存在が「抜群に歌の上手い謎の美女」として劇的に注目を集めていた。その勢いは既存の『U』のシンガーたちやそれに付随するすず=ベルへの反感的なコメントたちを軽く引き離すほどであり、『U』ミュージックのグローバルバイラルチャートにランクインするなどといった世界中の注目を一手に集めるほどの名声を得るまでに至っている。
当然、一介の女子高生に過ぎないすずはこの事実に大きく動揺するが、優秀なマネージャーになってくれる弘香(ヒロちゃん)の助けを得て、「平凡な女子高生」と「絶世の歌姫」というふたつの異なる世界を生きていくことになる。
主要キャラクターとの関係
久武忍(ひさたけ しのぶ)
すずは忍のことを「しのぶくん」と呼んでおり、対する忍は「鈴」と呼んでいる。
幼少期に、すずの母親が増水した川の中州に取り残された子供を助けに行った際、忍もその場に居合わせており、すずは自身の母親のもとへ行こうとしたところを彼に止められている。その後、すずが6歳のときにも、小学校の校庭で泣いていたところを「鈴、僕が守ってあげる」と元気づけられており、そのことを彼女は大切な「思い出」としてしっかりと覚えている。(小説版、89~90ページ)
すずと忍は小学校中学年のころに一度離れ離れになり、高校でふたたび同級生になっている。しかし、背が高くスポーツも優秀な彼の隣に立つとどうしても気後れしてしまうために、すずは「もう昔のようにはいかない」などと胸中に秘める彼への好意を自覚しつつも、それを諦めなければならないというジレンマに苛(さいな)まれている。(小説版、93ページ、175ページ)
別役弘香(べつやく ひろか)
すずの親友にしてよき理解者。
すずは弘香のことを「ヒロちゃん」と呼んでおり、対する弘香は「鈴」と呼んでいる。
高校1年生の当時からクラスの端にいたすずとは交友関係を持っており、彼女を仮想世界『U(ユー)』へ招待するというターニングポイントを担っている。すずは時折、弘香の容赦ない毒舌コメントに際して辟易(へきえき)することもあるものの、基本的には学校の昼休みに彼女と購買で待ち合わせて一緒に惣菜パンを吟味したり、それらを食べながら最近読んだ難しい本の感想を説かれたりするなど、良好な友達同士の関係のもとに過ごしている。(小説版、69ページ)
この他、弘香(ヒロちゃん)はすずの前で言葉を言い過ぎた際には、素直に反省しすずへ謝り(すずは本心の言葉でない事は承知しておりヒロちゃんへ理解を示している)、そんな様子からも二人は親友の仲である事が窺える。
また、『U』の世界では大人気歌姫とそれを支える敏腕プロデューサーの関係であり、収益金の管理や衣装デザイナーとの折衝といった仕事やインターネットツールを使った情報収集などで彼女を頼っている。
渡辺瑠果(わたなべ るか)
すずは瑠果のことを「ルカちゃん」と呼んでおり、対する瑠果は「鈴ちゃん」と呼んでいる。
モデルのような美しさや華麗にサックスを吹きこなす瑠果の姿を前にして、すずはため息が出るほどの憧れを覚えている。同時に、瑠果が忍と仲むつまじく話している様子をうかがったり、スクールカーストの最上位である彼女と最下層に位置する自身とを比較するなどして、「しのぶくんに相応しいのは自分じゃなくて彼女だ」というような自身を卑下(ひげ)する想いも抱いている。
ある時すずは、瑠果(ルカちゃん)から「気になる人」についての相談を受ける。(上記のしのぶくん関連もあって)その告白をすずは応援する姿勢でいた。しかし、その「気になる人」とは…。
千頭慎次郎(ちかみ しんじろう)
ひとりでカヌー部を立ち上げて奮闘している男子生徒。
すずは慎次郎のことを「カミシン」と呼んでおり、対する慎次郎は「鈴ちゃん」と呼んでいる。
カヌー部の新規部員獲得のために躍起になって勧誘をしたり、インターハイへの出場のために黙々と練習に取り組む彼の姿をすずは純粋な気持ちで応援しており、彼の空回りする姿を見るたびにその一生懸命さを弁護したいような気持ちになっている(小説版、23ページ)。しかし、ときおり彼の素っ頓狂な言動に振り回されることもあり、すずはその都度ドン引きしたり助け船を出すなどして彼への対応にあたっている。
合唱隊
廃校になったすずの地元の小学校を拠点に活動している合唱隊の5人の女性たち。
すずは彼女たちを名字に「さん」付けで呼んでおり、対する彼女たちは「鈴」と呼んでいる。
すずの母親もかつてこの合唱隊のメンバーであり、彼女の死後はすずを気遣った合唱隊のメンバーたちから毎回練習に誘われるようになっている。歌を歌えないすずは、練習中はいつも物陰に隠れながらぼそぼそとつぶやくようにして合わせており、その様子をほかのメンバーたちにのぞき込まれて「鈴! 表に出て歌いな!」などと注意されている(しかし、これも先述にあるすずの家庭事情を気にかけた、彼女たちなりの慈しい思いやりである)。
すずが生意気にもとれる対応をしてしまった時には、彼女たちから怒られて「怖っ」と身をすくめることがあるものの、人生経験豊富な彼女たちからのアドバイスはすずの身になることも多く、これがきっかけで「ラブソングを作ってみようかな」などといった状況打開のためのヒントを得るなどしている(また、ある出来事ですずが前へ踏み出す姿勢を目の当たりにした際、合唱隊の女性たちは彼女を応援・見守る大人の役割を担っている)。
余談
心の成長物語
細田作品に共通する「心の成長」が「竜とそばかすの姫」でも描かれるのだが、今作はより現実的な要素を取り入れたSFドラマものになっている故、(特に主人公・すずを通して)より視聴者は共感・同感しすい特徴がある。
それは物語に現行(2021年)の世界にも通ずる様々な事情(ネット社会)が織り込まれており、必ずしもフィクションだけの話とは限らず虚実入り混じの制作がされているからだろう。これと共に主人公たちは仮想世界『U(ユー)』と現実世界を行き来する青春を謳歌し、時には心が傷つく出来事にも出遭う。そして最後には、立ち向かわなければならない残酷な世界の片隅にある現実と障害(心の一面に宿る野獣の如き漆黒の恐ろしさ)とも向き合うことになる。
作中で主人公・すずが、親友たちや信頼できる人たちの助けもあって、目の前にある現実に向き合えたのは「偶然」じゃなく、独りだったからこそ理解できる一人として「もう、ひとりじゃない。」と寄り添う心の慈しさ、本作で鍵(キーワード)の一つである「歌」という繋がりなどが大きな糧(ポイント)になっている。それは仮想世界だけでなく現実世界であっても変わらない成長をみせた心の強さと行動力で、主人公・すずの進歩は見守りたいと思えるほどの直向きに前へ進む真摯さと、躓きながらも眩しいお姫様みたいな気高さと美女というに相応しい健美を秘めている。
また現行(2021年)の実情に近い構成がされている故に、自己投影(ロールモデル)の視点で見ると、より一般よりも個人の感性(アイデンティティ)を問われる面として作品に触れることができるかもしれない。
参考
関連イラスト
関連タグ
Belle 別役弘香 久武忍 千頭慎次郎 渡辺瑠果 竜(竜とそばかすの姫)
成瀬順 - 彼女同様に幼少期のトラウマを引きずっている。ただしこちらは発声自体が困難(無理に話すと腹痛を起こす)で歌うことだけができる。
参考文献
- 細田守『竜とそばかすの姫』 角川文庫 2021年6月25日初版発行 ISBN 978-4-04-111056-0
- パンフレット 映画『竜とそばかすの姫』 東宝 2021年7月16日発行
ネタバレ
物語終盤。ジャスティンに囚われ竜の居場所を吐くよう迫られるも、竜の侍女たち・人魚AIによりその拘束から脱する。しかしその際に竜の城にあった薔薇の花びら(電子情報が刻印された物)を落としたことで、竜の居場所が自警集団『ジャスティス』に突き止められ、城が襲撃されてしまう。
彼を救うために竜のオリジンオリジン(ユーザー本来の姿でAsの本体)を親友・弘香(ヒロちゃん)とともに探すと、その中で自身が竜のために歌った歌を口ずさむ「子どもの声」が聞こえ、それをたどった結果竜の正体が14歳の少年・恵であることを突き止める。
恵(けい)と弟の知(とも)は父親からひどい虐待を受けており、それをライブチャットの通話越しで目の当たりにしたすずはふたりに救命を申し出る。しかし、今のすずみたいに援助の動きがあっても、恵と知の兄弟が置かれている現状は改善せず、そんなたび重なる理不尽によって過度の人間不信に陥っていた恵は、彼女の「助けたい」を信用せず一方的に通話を切ってしまう。
そこで偶々居合わせたすずの幼馴染・しのぶから「自身の正体(オリジン)を晒しライブを行うことで恵に信用してもらうこと」を提案され、それに乗り自らジャスティンのアンベイル光線を喰らって『U(ユー)』の歌姫・Belle(ベル)からオリジン(ユーザー本来の姿でAsの本体)になったすずの姿でライブを開催する事を決行する。この行動に関して、親友・弘香(ヒロちゃん)からは過去の悲劇から素の状態(すず)で歌えなくなっていた事を注意されるが、内藤鈴(すず)の決心は固く、自身の辛い過去と向き合いながら一心の気持ちで「歌う」事に繋げることができた。
すずの純粋な姿・過酷な現実を知る一人の女性として真心の篭(こも)った歌声に心を動かされ、ついに恵の信用を得ることに成功する。
すずを信用した恵は自身の居場所を彼女らに伝えようとするも、そのとき事態に感付いた父親にネット配信を強制的に切られてしまう。しかし「偶然」集まっていたヒロ、しのぶ、カミシン、ルカ、合唱隊の大人たちの協力により、録画した映像に記録されていた町内放送の内容(耳が良いルカちゃんが聞き取り、その内容に合致する場所をしのぶが検索)、窓に映っていたビルから場所が東京都の多摩川付近であることを突き止め(カミシンの夏の遠征先が多摩川付近だった)、合唱隊の車や電車などを乗り継いで、すぐさま現地へ急行するすず(この時はすず一人だけで向かったが、極度の人間不信がある恵の事を案じて周囲の人達は彼女ひとりで行かせたのかもしれない)。
現地に到着し、雨の中で恵と知の家らしき場所を探して住宅地を走るすず。ある坂道で、すずは偶々外へ出ていた知(とも)と恵(けい)に念願の対面をするが、そこへふたりを追ってきた父親も現れ、ふたりを庇って彼女は頬を負傷する。そしてすずは彼らの父親から殴られそうになるが、自身の覚悟を見せ付け、彼はそれに怖気付きその場から逃げていった(尚、虐待に関しては恵と知の2人に初めて相対した中継映像を偶然視聴したすずや恵らとは無関係な第三者によってネットに拡散されたことで、この時点で既に世間へ明るみになっている)。
父親が去ると恵とすずは顔を合わせ、彼から「大好きだよ、ベル」と告げられると笑顔でそれに応え、知と3人で抱き合った。
その後、すずは地元・高知へ帰ると、疎遠になっていた父やヒロ、しのぶ、カミシン、ルカ、そして合唱隊のメンバーたちから出迎えられ、河川敷で皆と歩いていた際にしのぶから「もう守るんじゃなくて、これから普通に付き合える気がする」と告げられたことで自身の彼に対する気持ちを表す。
そして合唱隊のメンバーから歌いながら帰ることを提案されると、それに応じBelleの歌を皆と歌うのであった。