カタログスペック
ノーマル/メガブースト
頭頂高 | 15.0m |
---|---|
本体重量 | 17.5t |
全備重量 | 54.1t |
ジェネレーター出力 | 3,040kW/6,800kW |
スラスター総推力 | 180,000kg/230,000kg |
概要
アナハイム・エレクトロニクス(以下、AE社)が宇宙世紀0111年に、地球連邦軍の要求した『小型・高性能モビルスーツ開発計画』に従い、完成させたモビルスーツ。
同年11月に行われた次期主力機コンペティションに提出された。
ヘビーガンをベースとしたため15m級という小型化要求は達成しているが、用いられている技術レベルに決定的な差が有るため、本機までを『第一期MS』、コンペ対抗機となったサナリィのF90以降を『第二期MS』として明確に区分する。この技術差により、カタログ値の時点でF90に、全備重量に3倍以上も水をあけられてしまっている(物理上の必然として、慣性の不利を大きく背負う)。
当該コンペにおける敗北によって、AE社はMS受注生産企業としての立場を揺るがされる事となり、同時にMS開発の方向性においても大きな転換期を迎える事となった。
機体解説
まず目を引くのがその外観。
(デザイナーは藤田一己氏。)
出す作品を間違えてるんじゃないのかと言いたくなるような禍々しいカラーリングのどこか有機的なデザインラインおよび凡そ人間的とは言い難いバランスの体型が特徴で、連邦系ともジオン系ともまた違う異質な形態をしている。
……と、2000年代以降のデザインに慣れた目で見るとそうなのだが、実は『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』小説挿絵に描かれている、オリジナル版グスタフ・カールやメッサーの延長線として見ると、“在り得なくもない”レベルのため、決して藤田氏は「制約が少ないから好き勝手にやろう」とデザインしたわけではない(と思われる)。
その異形から、別世界の勢力であるヴェイガンのMSだとネタにされる事も。後述するプラモ作例でも、ヴェイガン製MSのパーツが使われている。
連邦軍の次期主力機という目標に従い、開発はAE社においてRGM系量産機など主力MSのほとんどを手掛けたグラナダ工場のジオニック事業部が担当した。しかし、AE社はこの勧告に積極的に対応する姿勢を見せておらず、メガ・ブーストやハイインパクトガン等の新技術こそ投入されたものの、小型MSとしての完成度は決して高くはなかったとされる。
また、別の資料によっては、サナリィが開発したF90と比較して極端に劣るというものではなかったが、機体の小型化とコストダウンの面で、連邦軍が要求するレベルには及ばなかったともされる。
以上のように、概して低評価を受けた機体ではあるが、15m級ながらも単純なカタログスペックでは、ジェネレーター出力、パワー・ウェイト・レシオ共にユニコーンガンダム(ユニコーンモード)や、Ξガンダムと互角の値をマークしている高性能機である。
コンペティション
宇宙世紀0102年にサナリィから提言されたモビルスーツの運用改善プロジェクト『モビルスーツ小型化計画』は、当初はAE社による一種の寡占状態を改善するために発足したもので、当時の閣議によって決定された「軍備拡張」と「軍事費の削減」という相反する目標を達成しなければならなくなった地球連邦軍による苦肉の策であり、元々AE社の関与を受けずに進める予定となっていた。ところが、平時が長く続く軍の機密管理のずさんさからその情報の一部がAE社側に漏洩してしまっため、AE社側は政治的干渉も用いて自社の参画を強く要求。これにより急遽コンペティションという形で、次期主力MSの選考が行われる事となった。
1次審査
「最大出力」「耐弾性」「運用コスト」「機動戦闘力」の4つの評価項目をコンピューター・シミュレーションにおいて比較。
「最大出力」と「耐弾性」はMSA-0120に、「運用コスト」と「戦闘機動力」はF90に軍配が上がった。
2次審査
宇宙空間での模擬戦闘を実施。
F90が1分以内に、MSA-0120に対して撃墜判定をあげた。
この時のF90の圧倒的な勝利には、居並ぶ審査官が感銘さえも覚えたとされる。
以上のコンペ結果により、当初の連邦軍の思惑通り次期主力機のテストベッドにはサナリィのF90が選抜される事となった。
機能
メガブースト
エネルギーCAPの技術を応用したコンデンサによって、瞬間的にジェネレーター出力を増大させる、本機最大の特徴となるシステム。
運動性を大きく高めるとされる。
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて、初めてその一端がお披露目される。キャノンガンダムが弾幕を展開していたにも関わらず全てメガブーストで切り抜け、距離を取ろうと後退したキャノンガンダムの懐に一瞬で加速している。元テストパイロット曰く「メガブーストからは逃げられない」と絶望的な顔で一部始終を見ている。
蒸発式アップリケアーマー
機体表面に施される装備で、耐ビームコーティングのように被弾時に装甲を蒸発させることで本体へのダメージを最小限に食い止める。
後にA.B.C.マントという、ビームを蒸発させて無効化する耐ビーム装備がサナリィで開発されたが、技術的な繋がりがあるかは不明。
武装
ハイパーメガランチャー
詳細不明。
ハイインパクトガン
ミノフスキー・クラフトを利用した、疑似重力(質量)を敵機へ激突させる新機軸の武装。
電力を質量へと変換させる、一面ではミノフスキー・エフェクトを最大限に利用した装備であった。
ビームサーベル
漫画『機動戦士ガンダムF90FF』にて使用。
ガンダムEXA
ガンダムEXAのクロスボーンガンダムの世界においての話でこの機体と思しきMSがリゼルなどと共に一コマだけ登場していた。
機動戦士ガンダムF90FF
コンペの2次審査中のこの機体が1コマのみ登場し、22話ではこの機体の技術を転用したプロトハーディガンのGカスタムが登場した。
24話にて、2機あるGカスタムのパイロットの1人であるヴェロニカ・ヴァーノンがMSA-0120の元パイロットである事を明かすものの、具体的な内容は口止めされた上で「過去の汚点」「MSの性能を引き出しきれない愚図」とまで罵倒されている。一体、どんな負け方したんですか…。
《グポン…》
あれは…
F90にコンペで負けたはずの
なんでここに居るんだ
闇に消えたはずじゃないのか
MSA-0120は!!
『噂をすれば影がさす』
同話では、ファステストフォーミュラを襲う武装集団が所有するMSの1機として登場。
当機体がどの経由かは分からないがネモと共に武装集団に渡ったのかは謎である。
キャノンガンダムが弾幕射撃にて応戦するものの、メガブーストで躱し照準に捉えきれない連続メガブーストで一瞬にて急接近、キャノンガンダムの懐まで辿り着いてビームサーベルでコクピットを貫いた。
後に2機製造されていたことが判明し、1号機は主任テストパイロットのウィリアム・C・オーランドが担当していたが事故で死亡、2号機のヴェロニカ・ヴァーノンがコンペで惨敗を喫した事が判明する。そして、ヴェロニカ・ヴァーノンは武装集団のMSA-0120のパイロット「サイファー」がコンペのF90のパイロットである事に気づくことになる。
立体物
2018年10月発売のホビージャパンムックにおいて、1/100スケールの作例が掲載された。しかもフルスクラッチではなくである。
ガブスレイをベースとして、パラス・アテネ、メッサーラ、シナンジュ・スタイン、バイアラン・カスタム、ジェガン(エコーズ仕様)、そしてダナジンとファルシアのパーツを用いてのミキシングビルドは、読者モデラ―にも再現ができるレベルであるはずがなく、『機動模型超級指南』のコーナータイトルにある通り、一流のプロモデラーでなくては不可能な、「いっそフルスクラッチの方が早いわ!」と突っ込みを入れたくなる作例であった。
……とは言え、頭部にはジェガン(エコーズ仕様)に多少手を入れたモノを使用。外観に見えている有機的な頭部(および肩、背中アーマー)は『蒸発式アップリケアーマー(パージ前提))』として、アーマー部を全て外した“素体”は充分にヘビーガン系列機と見なせるように製作されるという、非常に興味深い解釈・アレンジが成され、実に見ごたえのある作品となっている。
もしもモデラーとしての腕に自信があるのならば、試してみる……のは、絶対にお勧めできないが。
プレミアムバンダイにてF90のMG化が行われており、同スケールで連動して関連機体が出るRE/100での発売が期待されているが、残念ながら現在に至っても立体化の動きは無い。
余談
その妙に既視感のある型番からフリーダイヤルという通称がファンの間で定着している。
シルエットフォーミュラ91の小説版にもウィリアム・C・オーランド(シルエットフォーミュラ91のアイリス・オーランドの父親)の機体として「MSA-120」の名が登場していたが、こちらはあまり知られていなかった(コミック版ではジェガン系のファイアボールと呼ばれるMSが登場している)。
後にF90FFで小説版の設定と統合された際に、1号機の主任テストパイロットとしてウィリアム・C・オーランドが登場している。
ちなみに、コミック版でのファイアボールのテスト事故はU.C.0112で、当時のF90とMSA-0120のロールアウトがU.C.0120で設定されていたが、この二つを統廃合して整理した形となる。