概要
放射脳とは、
1. 放射線恐怖症。
原意。東日本大震災に伴う福島第一原発事故による放射能被害に対し、事実を誇張、あるいは捏造を含めて放射能の脅威のみを主張し、被災者、被災地、被災地の産品等に対する差別行動を起こすまでに至った人々を指す。
正式な呼称は「放射線恐怖症」(ラジオフォビア:Radiophobia)。
2. 上への反論または意趣返し。
放射線・放射能および原発が安全であると盲目的に主張している、あるいは原発推進派とみなされた人物、を「放射能汚染でおかしくなった脳の持ち主」と皮肉った呼称で、1.の後を追うような形で派生した。
「安全厨」「御用学者」「工作員」といった呼称が用いられることもあるが、これらはそれぞれ意味合いが異なる上に放射能関連以外でも使われる言葉であるため、単純な代替にはならない。
本項では2.の立場から1.について解説する。
特徴と傾向
彼らは放射能への恐怖にかられて正常な思考能力を失い、放射能の脅威を誇張した情報のみを信じるようになってしまっている。
原発事故以前の状況と比較検討した様子がなく、関係資料を提示しても読み通そうとせず自分なりに考えようとする意志が薄い。
国や関係自治体、研究機関が発表する情報は、彼らが原発利権と結び付いて情報を隠蔽あるいは改竄しているとして一切信じない一方、海外メディアや個人ブログなどの無責任な報道、情報を鵜呑みにして、それを元に日本国内に根拠のない噂を広めている。
また、その攻撃対象が被災者や被災地に及ぶことも多く、被災地の現居住者(現地農林水産業者)への中傷、被災地産品の不買運動を行ったり、被災地復興を応援する支援者をも攻撃対象にするなど、復興そのものを阻害する存在ともされる。
彼らの暴走を諌める人を、原発(再稼働)推進派にコントロールされていると思い込んで「工作員」「安全厨」「御用学者」などと呼び、最終的にはアカウントを非公開にしたり相手をブロックしたり、ブログ等のコメント欄を閉じてしまったりして、議論を避けようとする傾向が強い。
議論を続けていても自分が参考にした情報を開示出来ないばかりか問題を丸投げする傾向がある。
しかし当人たちは、自分たちの考えや言動に疑いを持つことが少なく、自分たちの言動が被災者を助けることに繋がると思い込んでいる人も多い。従って「放射脳」と呼ばれることを差別、誹謗中傷、レッテル貼りと称して殊更に反発するケースも見受けられる。自分の信念を通す(反原発運動等)ためなら運動にあたって不法行為、モラルに反する行動も辞さず、オカルト・疑似科学を信奉する者も存在する。
中には「放射能除去に効く」などとうたい怪しげなグッズやサプリメントを売りつけたり、怪しい民間資格を取得させようと目論んだり、体に害を及ぼす偽療法へ誘導する悪徳商法・疑似科学系の業者も多数存在するので注意が必要である。公共の電波で、福島県民を愚弄した発言を毎回のように繰り返した某国立大講師すらいた。
「放射脳」という区分
「放射脳」とは、元々解説にあるような放射能に対する過剰反応に走った人々を揶揄する形で発生した呼称であるが、放射能の影響を危惧しつつ、真摯に被災者支援を行う人達とは区別するための呼称として使用されるべきものである。後述の真摯に反原発活動を行う人たちとの区別も然りである。
国の安全基準や安全対策、研究結果等への疑問から放射能や被曝による健康への影響に不安があり、不信感を抱く心理は理解されるべきものであり、それだけで放射脳と呼ぶことは出来ない。
問題となるのは、その度が過ぎてしまい迷惑行為に及んでしまうケース、また自分と意見の違う人の意見を一切受け入れなくなって過度に攻撃的になるケースや、極少数ではあるが本人に放射能への恐怖心はなく、ただ自説の流布や嫌がらせのために風説をばら撒いているようなケースである。
つまり「反原発」と決してイコールではないことに注意したい。
反原発を主張する人々の中にも、放射脳の存在やその主張を苦々しく思っている人は多いのだが、そういった人達も度々放射脳の攻撃対象となり「推進派の手先」「御用」扱いされてしまうことがある。
放射脳的風説の例
- 「被曝の影響で病人や死人がたくさん出る」
⇒その時期も「半年後(すでに経過しているのだが)」から「数世代先」までと様々。さらに最近、その期間がどんどん延長される傾向にある。古くは2001年の狂牛病騒動でも同様の噂が流布され(牛肉を食ったら脳がスカスカになって死ぬ)、近年は反ワクチンの立場からも同様の事象が発生している。
- 「食品は全てゼロベクレルでないといけない」
⇒元来食品に含まれる放射性核種の存在を考慮していない。またこの地球上に放射線ゼロ(ゼロベクレル、ベクレルフリー)の場所等は存在しない。
ちなみに:補足すると特別な環境下にない人間の放射性物質含有量はおよそ108Bq/kgとされている。つまり上記が正当なら火葬もできない。
- 「奇形は全て放射能のせいである」
⇒原発の無い昔から動植物の奇形、先天性の重病は存在する。過去の大規模な事例は、ベトナム戦争の枯葉剤(高濃度のダイオキシン類)やサリドマイド症など、化学的な影響によるものだけである。
- 「被災地の人と結婚すると奇形が生まれる」「被災地の人が献血した血を輸血されると被曝する」
⇒医学的根拠なし。チェルノブイリ周辺の生物の追跡調査から、遺伝障害が起きるほど放射線を浴びた生物は、まず最初に生殖能力そのものを喪失すると考えられる。
- 「○○(タレント名)が病気になったり死亡したりしたのは放射能のせい」
⇒事故前から有名人著名人の訃報は山ほどある。人は誰しもいつか死ぬものである。
- 「放射能は一粒で○万人を殺せる猛毒である」
⇒日本では“毒物”とは“化学的中毒”を起こすものをいう。放射性同位体は安定同位体と同じ化学特性しか持たないので放射性物質であっても毒物とは限らない。放射能と毒物を混同視している時点で論外。放射性物質のプルトニウム(Pu)が高い化学的毒性を持つという過去の定説(現在では否定されている)がどこかで混同されている可能性がある。
- 「食事をしたら変な味がした、放射能汚染されてる」
⇒上記のように放射性同位体の化学特性は安定同位体と同じなので、人間の舌や鼻にも特別な味や匂いは感じられない。
- 「写真を白黒反転したら放射線が白く写った」
⇒放射線はフィルム写真に写る(チェルノブイリの記録フィルムにいくつも存在している)が、これらのフィルムは200レントゲン(2kSv/h)~1500レントゲン(15kSv/h)という非常に高線量下に置かれたもので、福島の最も高いところで1Sv/h程度では通常の感光体を反応させる力はない。また通常は発光現象のように記録され、線状や面状には写らない。
- 「天然放射能は有害でないが人工放射能は有害」
⇒人工・天然と放射能の害は無関係である。そもそもウランも元は天然鉱石である。オクロ天然原子炉なるものも存在。
- 「福島第一の原子炉建屋が爆発したのは水素核融合反応が暴走したから」
⇒あくまでも水素爆発は化学反応。核爆発ではない。しかも核融合と核分裂を混同している。また、爆発時にキノコ雲が立ったことを理由に「福島原発は核爆発を起こした」という話も飛び交ったが、通常軽水炉では物理的に核爆発を起こすのは不可能である(逆に“原発の燃料では核爆発は起こらない”という言い方も現状正しいかはっきりしないので注意。チェルノブイリ4号炉の爆発は即発臨界ではないかとも言われているが、結論は出ていない。ただ減速材に水を使っている日本の原発用原子炉では起こらないのは確か)。ついでに言えば、キノコ雲自体は核爆発どころか原発事故でなくても発生するものである(ざっくりと説明すると、キノコ雲は「爆発の熱によって生じた急激な上昇気流によって爆煙が押し上げられることで発生するもの」であるため、極端な話「煙」と「上昇気流」がそろった環境であれば爆発や燃焼がなくても発生し得る)。後、核融合と核分裂を混同している人たちは、現在実験が続けられている核融合炉は原理上絶対に暴走しない(簡単には起こせない上、反応を安定的に継続させるのは非常に困難)という事を理解しておくべきだろう。そもそも最初から区別も付かないのであれば、迂闊に口外するべきではない。
- 「被曝の影響は未解明な部分が多いのだから厳重に警戒すべき」
⇒「未解明な部分が多い」のではなく、現在では500mSv以下での健康への影響は認められておらず「健康を害する他の要因との区別が出来ない程影響が小さい」という事が解明されて定説となっている。具体的数字を挙げれば100mSv以下の被曝での癌や白血球異常、不正出血などの発症は確認されておらず、遺伝子への影響も認められない。現在の被災地では最高でも50mSvを超える被曝環境は無く、ほとんどの居住地域では20mSv以下と計測されている。こうして「解明されていない」という点を誇張する事が「僅かな放射性物質の混入も許さない」という過剰反応に繋がっている。
ちなみに:補足すると、CTスキャン1回で約20mSvを被爆する。
- 「鼻血が出た、被曝している」
⇒鼻血が出るのは500~1000mSv(=1Sv)以上の線量を一気に浴びないと出ない症状であることは既に臨床データが出ており、現在の被災地では起こり得ない。また、鼻血が出るほど被曝しているのであれば、即座に相応の処置をしなければ出血が止まらないまま死に到る。通常の鼻血の治療をして出血が止まるようであれば被曝ではない。この事例は事故直後に流れた風聞であるが、その後特に話題に上がらなくなった、しかし美味しんぼの福島編で主人公が鼻血を出すシーンが掲載され、直接被曝との因果関係は明記されなかったものの、被曝を連想させる内容であったため物議をかもしだし、また鼻血が出た話題が再び各所から上がるようになってしまった。
- 「事故後、放射能の基準値が大幅に緩和された、引き上げられた」
⇒食品等に対する放射線量基準値は、福島原発事故以前は輸入品に対する基準値(360Bq/Kg)しかなく、国産品に対する基準はなかった。事故発生直後、それまで規制のなかった国産品に緊急対応として500bq/kg(一般食品)の基準を設け(ちなみにこの数値はEUのそれを引用したもの)、その後2012年4月より現行の100Bq/Kgに設定されたため、事実上は段階的基準値の引き下げ(厳格化)となっている。ちなみにアメリカ合衆国の基準値は1200Bq/kg、EU加入前のUKのそれは1270Bq/kgである。
- 「日本の居住許可20mSv/年はチェルノブイリでは強制避難レベル」
⇒一応内容としては正しいのだが、チェルノブイリの現状の避難レベルが政治的に決められた経緯がある事を無視している。チェルノブイリ事故の際は1年目10rem/年(100mSv/年)、2年目5rem/年(50mSv/年)、3年目・4年目が2.5rem/年(25mSv/年)で、5年目が現在の日本と同じ2rem/年(20mSv/年)である。この間にソ連は新しい基準として生涯被曝量35remを報告書にまとめ、ソ連崩壊後、チェルノブイリ事故関係各国がこれに基づいて5mSv/年を設定した。しかしソ連の生涯被曝量35remは西側の批難をかわすためにまとめられた文書の中の数字で、医学的根拠に乏しいとされる。またベラルーシ、ウクライナは国土が狭いためチェルノブイリ30km圏外の再入植を始めているが、汚染状況は福島第一とは比べ物にならず5mSv/年という自国基準が守られているかどうかも甚だ怪しい。
- 測定関連機器の誤使用
⇒事故後の線量への関心の高まりから、手軽に空間線量計(ガイガーカウンター)が入手できるようになったのに伴い、機器の誤使用による誤った測定値や機器の画像がネット上に流布されるようになった。当初は単純な勘違いや誤使用によるものが多かったが、事故より年数を経た現在でも、使用方法の誤りを指摘されつつも誤った使用方法のままの数値や画像を拡散している例が散見される。
放射脳的用語
「放射能汚染される」の意味。「ベクレている」などの活用も可能。
「ベクレル」とは放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位の意味であり、「~れる」という言い回しに似ていることから広まった。
人体への影響に換算したシーベルト(Sv)を用いた「シベれる」とかの方が適切な気もするが、シーベルトより数字が大きくなり、ベクレル→シーベルトへの換算が難しいので、インパクトのあるベクレルが採用されているとの説もある。
- ノンベクレル=ベクレルフリー
主に食材を中心に、放射能汚染されていない=ゼロベクレルである事を強調したうたい文句で、極端に汚染を恐れた結果「食材はゼロベクレルでないといけない」と言う主張から派生した。しかし、地球上の食材で放射能を全く含まない(文字通りゼロベクレル)の食材は存在しない。
- 安全厨/原発安全脳
「放射能は/原発は安全だと思っている」「放射能の危険性を判っていない人達」を指すものとして使われる。なお「放射脳」を揶揄する向きの中には根拠もなく常に「放射能は安全だ」と極論を断言する人や、「日本人は放射能に耐性があるから、チェルノブイリと違って問題はない」などとナンセンスな主張を行う人も見かけられるが、反原発派ないしは放射脳から「原発安全脳」「安全厨」と言われる人のすべてがこのレベルではないことは言うまでもない。
「放射脳」にならないために
- 一次ソースを確認する。
- 特にチェルノブイリ関係。チェルノブイリ当時はSI単位系はまだなく、放射能関連の単位には“R”(レントゲン)、“rem”(レム)、“rad”(ラド)、“Ci”(キュリー)が使われていた。従ってソ連時代の資料で現在のSI単位系(“Sv”、“Bq”、“Gy”)がつかわれていたらそれは一次ソースではない。
- 「誰それから聞いた」「友達のお父さんの職場の上司の近所の人が……」などと言った伝聞情報は鵜呑みにしない。
- 個人ブログ、twitter、Facebookなどの情報を鵜呑みにしない。発信者は素人であるし、釣り目的で「放射脳」を装って奇矯な書き込みを行う者もいる(例えばtwitterでオオサンショウウオの写真に「放射能で奇形化したカエルの幼虫」というコメントを添える愉快犯的書き込みをした者がおり、真に受ける者が大量に出てちょっとした騒ぎとなった)
- メディアの情報は玉石混交であり、ネット上で紹介されている引用情報などは質の悪いソースもかなり混じっている(特に海外メディアは気をつけたい)。個人サイトや掲示板を情報ソースとした、いわゆる「まとめブログ」を真に受けるなどはもってのほかである。
- 震災前に似た事例が無かったか必ず調べる。特に奇形、症例など。
- 基本的な用語を確認しておく。「ベクレル」「シーベルト」「放射能」「放射線」「放射性物質」「検出限界値」などの意味。放射能とは「放射線を放出する能力」のことであり、俗用である「放射性物質」の意味で使うと、素人であることが速攻バレる。また「μ(マイクロ)」「m(ミリ)」などの補助単位も押さえておく。また日本には大きく分けて2種類の原子炉(沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR))があるので、この構造と特性の違いも当然理解しておくこと。
- 学者や著名人の発言の場合、その人の専門および論文の評価を調べ信頼に足る者かを調べる。学者であっても専門外の事は素人と同じである。
- どんな生物(人間も含む)でも奇形や先天性の疾患などはあるものであり、放射能以外の病原も多い。また奇形や肥大化と思ったら別種の動物だった、ということもある。
- たとえ自分自身が「被災地から避難すべき(被災地を放棄するべき)」「食品規制をもっと厳しくするべき(被災地産品は絶対に食べてはいけない)」などと言う考えを持っているとしても、それを被災者や周囲の人に強要しないこと(主張すること自体は憲法で保証された権利であるが、他人の意志に干渉するのは憲法違反であり、場合によっては脅迫罪の適用もあり得る)。避難する、避難しない、食べる、食べない、はあくまで当人の自由意思に基づかなくてはいけない。無論、直ちに危険な場合は自治体ないし国がそれに応じて措置をとる。
- アメリカ合衆国が日本政府に先んじて在日邦人の80km圏からの退避を勧告した件でも騒いでいたが、これは予防的措置である。原発事故に限らず、避難指示領域を広げた場合、そこに外国人がいると混乱を来す可能性が高いためである。これはもちろん、他の国でも行われているし、日本も在外邦人に対してやっている。特に、日本の場合は国民のほとんどが英語を解することができず、日本語しか会話できないため混乱の可能性がひときわ高い。したがってアメリカ合衆国が予防的措置に出たのは妥当と言えるし、それだけを以て日本政府の対応が不当であるとも言えない。
- 原発の爆発は菅直人が原因とか言ってる人は原発推進派であるか反原発派であるかを問わず、もう即座に縁を切ったほうがいい。これは福島第一原発の事故で「海水注入が中断された」とする誤報があり、「菅直人が海水注入を止めた」という噂が流れたことが原因だが、菅直人は海水注入中止指令など出しておらず、また東京電力による海水注入も続けられていたことが明らかになっている。
- 「火のない所に煙は立たない」という言葉が存在するが、意図的にデマを作って火をつける存在がいることを理解する。
空間線量計などの扱いに注意
事故後、一般にも流通するようになった線量計だが、誤った使用方法による不正確な測定値が拡散されるなどの事例が見受けられる。
機器の取扱説明書をよく読む事
機械類を扱う上での基本である
空間線量計は基本的に地面に直に置かない事
空間の線量を測るものであり、地面の線量を測るものではない
機器に土や埃などが付着しないように気をつける事
必要であれば、密閉できる袋等に包むと良い
空間線量を測る機器であるので、食品等の線量測定には使えない
空間線量と食品等の線量では測定方法が全く違う。食品が保管されている倉庫の線量を測ったりパッケージの中に線量計を突っ込んでも食品の線量は測れない。もちろん線量計を食品そのものに突き刺しても食品線量は測定できない
不安商法、似非科学の危険性
基本的に「放射能を除去する」「被曝を防ぐ」という謳い文句の健康食品、薬品は効果がないものである。ヨウ素も大量に放射能を取り込んだ際に緊急処置として服用するものであり、日常的に摂取するのはむしろ有害である。
またある種の細菌に放射能を分解除去する効果があると言う謳い文句で普及させている例があるが、細菌が行えるのは生科学的反応(化学物質としての反応)までである。
細菌が原子核の中まで影響を及ぼすことは不可能であり、放射能除去の効果がないばかりか雑菌を繁殖させて感染症を引き起こす危険性もあるので使用には適さない。
「放射脳」の歴史
ネットでこのネーミングがつけられるようになったのは2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故直後であり、最初は単純な誤変換が元となっている。ネットスラングとして使われるようになるのは、それよりしばらく後となる。
太平洋戦争時の広島・長崎への原子爆弾投下後も(当時は「放射脳」の言葉はなかったが)上記と大差ないレベルの偏見により「ピカの毒がうつる」などと被爆者が科学的根拠の無い差別を受けた事例が多数あり、また「これでピカの毒が消える」と称した迷信や悪徳商法も発生した。
漫画家で自身も被爆者である中沢啓治(彼も原発には反対の立場である)は自作はだしのゲンにおいてこうした被爆者に対する苛烈な差別の様子を描写しており、予定していた続編にもそうしたエピソードを組み込んで発表する構想を持っていたが体調の問題で実現しなかった。
多国籍軍が用いた劣化ウランを用いた砲弾関係で同様のことが発生している。
そして特効薬として効果のないものや未承認薬等を売りつけるといった悪徳商法も発生している。
「放射脳」が関係した訴訟、処分の事例
- 福島県内の市役所前で空間線量を量っている様子を写真付きで紹介した人が「線量計測を誤魔化している」「測定前に地面を水洗いして線量を下げてから計測している(水洗いした程度では線量は下がらないのだが)」などと中傷され、反論した氏の家族を含めて中傷を受ける。更に勤務先などを特定され、周辺をうろつかれたり勤務先の写真などをツイッター上に載せられたりしたため訴訟沙汰となった。
- 福島県から避難してきた人達に対し子供の保育園入園を拒否するなどして人権救済申し立てに発展。
- 福島県内の農家に対し「サリンを製造したオウム信者と同じ(2011,06)」「福島県の農家がやってることはすべて信用できない。(2011,07)」同県の女性に対しては「そのような娘はわが家の嫁にもらうわけにはいかないとのたまうがんこ親父に私はなりそうだ(2011,04)」等と中傷した教授が大学側から訓告処分を受ける。
- 福島県内に残っている人たちを支援する団体に対し「福島から子供たちを避難させないのは非人道的」「被災者を使って人体実験をしようとしている」等、団体とその代表者を非難した自称ジャーナリストが、該当団体に直接関わっていない第三者にまで中傷が及んだため団体代表から侮辱罪で訴えを出される。その後起訴猶予処分となったが、嫌疑不十分による不起訴とは異なるため、事実上の警告となった。
- 「放射能を解毒」と謳った健康食品会社が薬事法違反で神奈川県警より書類送検される(2012年3月)。販売されていたのは「健康食品」であったが、医薬品的な効能効果を標ぼうしたため、無承認の医薬品として薬事法違反に問われることになった。被曝に対する不安に付け込んだ典型的な不安商法の一例。勿論、放射能を除去したり解毒したり出来る医薬品は存在しない。
- 福島県から自主避難した家族の子供が転校先で虐められ、大金を巻き上げられる事件が横浜市で2016年発生。同年に新潟市では同じく自主避難世帯の子供が「菌」呼ばわりされるいじめを受け、担任が加担していた事件が発覚した。
外部サイト
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十和田観光電鉄線・・・こちらは「放射脳」の被害者。東日本大震災に伴う風評被害がもとで、ただでさえ悪い経営が一段と悪化して廃線に追い込まれた。