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宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち

うちゅうせんかんやまとあらたなるたびだち

「宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち」は1979年にフジテレビ系で放送されたテレビアニメ。

概要

 ヤマトシリーズ通算5作目で、『宇宙戦艦ヤマト2』の続編。『宇宙戦艦ヤマト2総集編』『宇宙戦艦ヤマトⅢ総集編』を除けば現在のところ唯一のTVスペシャル作品。

 さらば宇宙戦艦ヤマト』で一旦は完結としたヤマトシリーズだったが、同作で誕生した新世代のファン向けに、『ヤマト2』から続く新作として『宇宙戦艦ヤマトⅢ(仮称)』(後の『ヤマトよ永遠に』)が企画された。しかし、仮にも『さらば』で一度完結と銘打ったので、(パラレルの『ヤマト2』ルートとはいえ)続編を作ると旧来のファンが反発すると予想されたため、緩衝材として本作が用意された。

 銀河鉄道999』で忙しかったため松本零士参加比率が低い。なので前作である『さらば』や『ヤマト2』、次作である『永遠に』などに見られる機械化への警鐘や退廃的になりつつある地球などといった小難しく陰鬱なテーマは無く、前日談ゆえに地球自体は平和であるということもあり、(特に前半のヤマトパートは)割と明るくさっぱりとした内容である。

 実質もう一人の主人公として活躍するデスラーや、初々しい新乗組員など、見どころは多い。また、本作で作曲された「新コスモタイガー」や「別離」などの音楽は現在でもヤマト音楽内で上位に入る人気曲である。

 ただ、制作を主導した西崎義展の悪い面も反映されてしまっており、終盤であるキャラを殺したことは今でも物議を醸している。

 そのせいか否か、基本的にキャラを死なせることが嫌いな松本氏は本作が気に入らなかったようで、『永遠に』の時に徳間書店の「ロマンアルバム」にて

「『ヤマトよ永遠に』は、『さらばヤマト』プラスTVのパートⅡの続編的意味合いが強いのです。決して、テレフィーチャ―『新たなる旅立ち』の続きとはみないでいただきたい。」(原文ママ)

とまで言っている。そのせいなのか直系の続編なのに繋がりが結構薄い。本作から引き継がれた要素と言えば、敵が同じであること(なのだが劇中でそのことに触れられず、全く新しい敵に出会ったかのように振る舞う)、それと山崎奨徳川太助サーシャ古代守というキャラクターくらいである。

あらすじ

 白色彗星帝国との戦いから1か月後。修理を終えたヤマトは訓練学校を卒業した新たなクルーを迎え、訓練航海へと旅立っていった。

 一方、移住先探しの旅を始めたデスラー一行は、その第一歩として母なる星に別れを告げるためガミラス星を訪れる。しかしそこでは謎の勢力が地下資源を盗掘しており、怒ったデスラーはこれを攻撃するが、戦闘中に地下資源へ誘爆してガミラス星は爆発・消滅してしまう。さらに双子星であるイスカンダル星が、二重惑星の片割れを失ったことで軌道を外れ暴走を開始する。スターシャを救うべく、デスラー艦隊はこれを追跡するが、イスカンダルの地下資源を狙う敵もまたイスカンダルを追っていた。

 デスラーから知らせを受けたヤマトは、スターシャと古代守を救うため、イスカンダルへ向けて出撃する。

登場人物

太字は新キャラ。

地球

ガミラス

イスカンダル

暗黒星団帝国

ゲーム版

 PlayStation2でゲームが発売されている。PlayStationで発売されていたシリーズの直系の続編。

 前作までは比較的原作に忠実で、細かい設定や描写を肉付けしたり合間のストーリーを補完したりするという作風だったが、本作からはシナリオに大幅な改変が加えられている。

 オリジナルよりも尺に余裕があることを活かして、新乗組員の成長譚やガミラスの苦悩と奮闘など細やかなエピソードが多く追加。それだけでなく、クライマックスの展開をまるっきり別物にして希望のある終わり方へと改変しており、評価は高い。

 もちろんオリジナル展開が全てが称賛されているかというとそういうわけでもなく、特に松本氏の持ちキャラであるトチローをベースにして作られたゲームオリジナルキャラ大山歳郎の大活躍振り(技術者なのだが、その分野ではシリーズ随一のチートキャラである真田さんすら上回る能力の持ち主)には、度を越えているとして難色を示す人も一定数いる(ちなみにゲームパッケージ裏にはわざわざ「このゲームに登場する“大山歳郎”は、松本零士先生オリジナルのキャラクターです」と注意書きされている)。

 とはいったものの、概ね当時の視聴者が「こうだったらよかったのに」と思っていたことを叶えてくれているため、プレイ環境があるならやってみる価値のある作品である。

余談

 冒頭でも述べた通り本作は『ヤマト2』の続編であって『さらば』の続編ではないのだが、『さらば』の続編と勘違いしてしまう人も結構いる。

 なぜかと言うとそれは『ヤマト2』の知名度の問題。近年はネット上で容易に調べることができるのでかなりマシになってはいるが、『ヤマト2』は『さらば』に比べるとやや影が薄い。というか『さらば』のネームバリューが強すぎるのである。

 当時、地域によっては公開時期などの関係で『ヤマト2』よりも『さらば』を後に見たというファンがいたり、そもそも『ヤマト2』を見たことが無いファンもいた。インターネットはおろか家庭用ビデオデッキさえ普及していない時代ゆえと言える。

 後年の世代についても、劇場版DVDという括りで『さらば』と『新たなる旅立ち』が同列に扱われているということや、『ヤマト2』の方は商品展開があまりされていない(ソフト化は現状2001年のDVDボックスが最後で、配信サービスでもほとんど扱われていない)せいでやはり知名度が『さらば』に劣っている。

 なので存在を知らないとまでは行かずとも、『ヤマト2』の内容をちゃんと把握していないという人は割とおり、『さらば』と結末が違うことを知らなかったり、場合によっては1作目と同じく『ヤマト2』を劇場版化したのが『さらば』と勘違いしているという例も。

 そんなこんなで本作を『さらば』の続編、あるいは『さらば』と同じ結末(つまりヤマトの特攻)からの続編と勘違いする人は少なくない。

 その勘違いをしたまま本作に視聴を始めた場合、大体においてまず展開として予想するのは、ヤマトの復元や2代目ヤマトの誕生などといった、何かしらの形によるヤマトの復活劇である(なんせタイトルが「新たなる旅立ち」だし)。しかし、その予想に反して本作は

  • 艦隊と多数の部下を率いているデスラー(『さらば』では最後のガミラス人であるデスラーの死をもってガミラス人は絶滅)
  • 地球へ帰還するヤマト(先述の通り『さらば』ではヤマトは特攻して消滅)
  • 何事も無かったかのように現れる古代と雪(『さらば』ではヤマトに乗って特攻)

という風に冒頭から『さらば』と矛盾する展開が怒涛のように流れてくる。

 それで驚くだけならまだいいのだが、時には「前作を無視したとんでもない作品」というさらなる誤解をしてしまう人もいる。「ヤマトシリーズは前作までの内容を無かったことにしたり、矛盾した内容が平然と出てくる」とよく揶揄され、実際それは否定できないのだが、これに関してだけは完全な濡れ衣であり、少し不憫。

検索時の注意

 リメイク版である『宇宙戦艦ヤマト2205』のサブタイトルが同じ「新たなる旅立ち」であるため、新たなる旅立ちの部分一致で検索するとそちらのイラストもヒットしてしまうので注意(幸いあちらは「宇宙戦艦ヤマト2205」が主要なタグになっているが)。そもそも「新たなる旅立ち」という言葉自体ヤマトに限らずよく使われるものなので、関係ないものが引っかかりやすい。かといって「さらば宇宙戦艦ヤマト」と違ってサブタイトルを除いたらただの「宇宙戦艦ヤマト」である。

 タグとして使いやすい通称がないのが本作の痛いところ。