人工言語
じんこうげんご
概要
自然言語(既にある言語;日本語・英語・中国語など)も人が作ったモノなので人工といえば人工なのだが、あえて「人工言語」という場合それは''「『言語を作る』という目的をもって近世以降に作られた言語」''を意味する。
コンピュータのソフトウェア開発に使うプログラミング言語などの形式言語、エスペラントなどの補助言語、架空の物語に登場する言語(芸術言語・架空言語)などがこれにあたる。
分類
「人工言語」乃至「架空言語」という言葉の定義ははっきり定まっていないが、大まかに以下のような概念がごっちゃになっていることが多い。
形式言語
前述した通り、コンピュータによる処理を前提とした言語も「人工言語」と呼ばれることがある。
ただし単に人工言語といった場合は、自然言語に似せた人が話す(設定)で作られた言語を指すことが多い。形式言語を指す場合は「プログラミング言語」などと言った方が誤解を生まない。
換字式暗号
換字式暗号とは暗号の一種で、既にある文章を決まったルールで置き換えたものである。
アルファベットを3~つずらした「シーザー暗号」などが有名。
(例:HELLO→KHOOR、PIXIV→SLALY)
……これがなぜこの記事に書かれているのか。
それは、ゲームや物語の異世界で使われる「架空言語」「人工言語」とされるもの多くがこの換字式暗号でそれっぽくしただけだからである。
具体的には、日本語の文章の子音を濁音等に規則的に入れ替えた『仮面ライダークウガ』のグロンギ語、日本語の文字を決まった規則で変換した『ファイナルファンタジー10』のアルベド語などが挙げられる。
これらはルールだけ決めてしまえばあとは日本語なので容易に製作でき、異世界言語としては十分に機能を果たしてくれる。
また、文字単位ではなく単語単位で入れ替えたものもある(例:『ゼビウス』シリーズのゼビ語)。これは日本語訳が付記されていないと解読は困難だろう。
部分部分で文法や変換ルールを変えたり、日本語に由来しない単語を作ると「ただの暗号」感も薄まって面白いかもしれない。
例えば先述したグロンギ語は、助詞(「の」「が」など)や長音・促音は通常とは異なるルールで変換するほか、強調したい語句を最後に持ってくる:倒置法の逆のような表現を備えている。
架空文字だけ作って日本語をあてはめるのも換字式暗号に近い。これもまた、一見するだけで「異世界感」が出せるという意味で有用。
音重視
日常会話などは描く必要がなく呪文や単語名などに使用したいだけなら、音の響きを重視してフィーリングで決めてしまってもいいだろう。
文法まで考えるのは面倒だけど解読されたくもない・暗号っぽくしたくない場合に用いることになるか。ただし(ものにもよるが)大量の語彙を創作する必要があるためなかなか大変。
特に作詞においては「それっぽい響きになるように書いた(実際は何語でもない)歌詞」が多く見受けられる。完全に無意味であることも多いが、文・歌詞全体としての意味だけ定まっている(=文として翻訳は出来ないが、日本語訳は決まっている)場合もある。
具体的には、梶浦由記の所謂「梶浦語」など。
狭義の「人工言語」
さて、上で述べたものはいわば「言語として描写されている文」にすぎない。
これに対し、「完全に1から作られた人工言語」というものも少なからず存在する。「人工言語」といった場合、狭義では上の暗号型を除いたこれだけを指す場合もあるので注意。
以下「人工言語」といった場合は基本この「作り込まれた人工言語」を指す。
人工言語の創作は、暗号型の製作と比べると非常に大変である。
その原因は設定事項の多さ。
文法はもちろん、どんな音素を使用し発音するのかという音韻を決めなければならない。文字を使用するなら架空文字も用意する必要があるだろう。
さらには「私」「人間」「食べる」といった基礎的な所から大量の語彙の製作も必須。
とにかく、途方もない手間と時間が必要になる。言語の製作に手間取って本題の作品の手が止まっては無意味なので、このタイプの人工言語を製作するか、本当にそのレベルの言語が必要なのかはしっかり考えよう。
とはいえ、手塩にかけて作り上げた自分オリジナルの人工言語はもはや自分の作品と言ってもいいだろう。
実際、中には異世界の描写などが目的ではなく純粋な創作意欲で人工言語を創っている人も存在する。
また、完全オリジナルの人工言語は、さらにいくつかに分類できる。
用途による分類
主に、芸術言語と補助言語(国際補助語)に分けられる。
前者はこれまで述べたような、作品に使用・もしくは作品として創作された言語を指す。
対して後者は、世界中の人々がコミュニケーションをとるための共通語としての利用を目指して創作された人工言語である。
具体的にはエスペラントやヴォラピュク、インターリングアなどがある。
国内各地において部族ごとに異なる言語が用いられている国や、同一言語ではあるものの各地の方言が相互に理解ができないほどに多様化してしまっている国では、既存の言語や方言をもとに文法などを簡略化・均一化させた人工言語が標準語として採用される例がある。具体的には標準フランス語、インドネシア語、現代標準日本語、中国語普通話、ヒンディー語、トルコ語などが該当する。
アプリオリとアポステリオリ
ア・プリオリは『より先のものから』、ア・ポステリオリは『より後のものから』という意味のラテン語。
そこから派生して、既存の言語の影響・語彙を受けていない人工言語のことをアプリオリ言語(先験語)と呼ぶ。
対して、既存の言語の派生形や、複数の言語から語彙を収集したものなどはアポステリオリ言語と呼ばれる。
後者に含まれる国際補助語・エスペラントは、西欧を中心に様々な国の語彙をアレンジして利用している。
別にどちらがすごくてどちらがダメということはないのだが、異世界を描くという都合上地球の言語の語彙があったら普通に変という理由で、芸術言語ではアプリオリ言語が好まれる傾向にある。
人工言語・架空言語の例
暗号であると思われるものは「暗号型」、はっきりしていないものは「その他」に含める。
世に出ている・認知されている言語を載せる。
情報が不足しているため追記編集・訂正等よろしくお願いします。
架空言語も参照のこと。
「作り込まれた」人工言語
タイトルが示されていないものは、人工言語そのものが目的となっているもの。
アプリオリ
アルカ…小説や辞書も出版された、日本の個人製作人工言語の走り
アル・シエラ言語:ゲーム『アルトネリコ』シリーズ
クウェンヤ:小説『指輪物語』シリーズ…独自の文法・語彙・音声を備えた「作りこまれた架空言語」の走り
クリンゴン語:『スタートレック』シリーズ…こちらもかなり初期、かつ非常に完成度が高い
契絆想界詩:ゲーム『アルノサージュ』シリーズ…独自の表音文字、「想音」
ナヴィ語:映画『アバター』…文字無し。一部に英語からの借用を含む
ヒュムノス:ゲーム『アルトネリコ』シリーズ…複雑な文字、「想音」
リパライン語:小説『異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~』…言語が先で小説が後
REON-4213:ゲーム『アルノサージュ』シリーズ
ロジバン:言語学的研究から出発した「最も論理的な言語」