概要
虫などの動物を補殺して消化し、栄養を吸収して成長する植物のこと。
昆虫等だけを餌にするとは限らないため、英語では「食虫植物(Insectivorous plant)」より「食肉植物/肉食植物」を意味する名前(carnivorous plant)の方が一般的。
分類学ではなく肉食という生態だけに基づいた括りであり、食虫植物には様々な系統由来の植物が含まれる。被子植物の中では10回以上別々の祖先から食虫植物が収斂進化したとされる。
主に生息地の栄養分が少ない土壌に適応して進化したと考えられる。
食虫植物とは言うが肉食のみに依存するわけではなく、他の植物と同様光合成もしている(地中の養分も吸収しているが、根が退化的なものが多い)。それでも前述した環境により栄養が不足し、捕食機構でそれを補うのである。多くの場合は葉が捕食器に特化し、その形や機構は登れない落とし穴から開閉する蓋や粘液まで、種類により様々である。多くのものは捕食器に蜜を分泌して虫を引き寄せる。
落とし穴式のもの(ウツボカズラ、サラセニア等)やハエトリソウ等は、過剰に捕食してしまうと消化しきれず、死体が腐る事で葉がダメージを受ける恐れがあるため、捕食葉にやってきた全ての虫を食べるわけではない。前者は開口部で運が悪く脚が滑ったもののみを落とし、後者は感覚毛を数回刺激されない限り閉じないなどで過剰な捕食を防ぐ。
また、すべての食虫植物が虫などの小動物のみを餌にしているわけではない。例として特に高い標高の雲霧林等に住む一部のウツボカズラは、虫よりも哺乳類などの尿を目当てにしている。
虫に対して強いイメージがあるが、無敵というわけではなく、他の多くの植物と同様草食の虫に食害されることもある。
繁殖の授粉は他の多くの被子植物と同様昆虫を媒介にするため、やってきた授粉者がうっかりして捕食しないように花の形に工夫するものが多い(花茎を長く伸ばして、捕食葉から大きく離れた所に花を咲かせるなど)。
主な種類
人間との関わり
多くは人工栽培が可能。独特な姿形や生態はもちろん、特に捕食葉が大きく派手なウツボカズラとサラセニアは豊富な種類と栽培しやすさに相まって、観葉植物としても人気がある。
「家に植えれば虫を駆除してくれる」とよく勘違いされているが、前述した通りを引き寄せた虫を食い尽くすわけではない(ていうかその大半を逃せる)ため、虫の駆除に対してはむしろ逆効果である。それどころか充分な日当たりが必要で、室内栽培に不向きな種類もほとんどである。
いずれにせよ、人間に対する実用性はあくまで趣味や鑑賞までである。
フィクション・創作では
植物モンスターとして有名なモチーフであり、映画やアニメでは巨大な食虫植物が人を襲ったり食べたりしている。ポケモンではある銀髪をことあるごとに食べるウツボカズラやハエトリグサが有名だろう。ただしコジロウの食虫植物系ポケモンは食欲から来る噛みつきではなく一種の愛情表現に近い。(犬の甘噛みみたいなもんである。)
pixivでは転じて「一見おとなしいが、本性は肉食系」なキャラに、このタグが付けられることもある。
関連キャラクター
- ウツボット、マスキッパ(ポケットモンスター)
- パックンフラワー(スーパーマリオ)
- 捕食植物(遊戯王)
- 人食いキラーサボテン(クレヨンしんちゃん)
- ビオランテ(東宝怪獣)
- グリーンモンス、スフラン、アストロモンス、レオゴン(ウルトラマン)
- インセクティバーオルフェノク(仮面ライダー555)