概要
テレビドラマやアニメ、漫画、ゲームなどにおいて舞台地を訪れる聖地巡礼やご当地化が各地で盛んに行なわれているが、一方で聖地巡礼の自粛やご当地化が取りやめになった作品や地域も存在する。
このような事態となった理由として
- 制作側が著作保護などを理由に認可しない、または制限を行なっている。...1
- 巡礼者のマナーの悪さにより、住民や管理者などとのトラブルが発生した。...2
- 作品に年齢や自然保護などの制限がかかっており、倫理や環境面などで巡礼やご当地化を断っている。...3
などが挙げられる。
事例一覧
※他にも知っている方がいましたら、随時追加お願いします(解説も)。
※追加時は50音順にお願いします。
作品(権利者)サイドより聖地巡礼の自粛を求められた作品
公式から聖地巡礼を自粛するよう求められた作品を記載する。
※該当事由:2
浜松市を舞台にしている作品であるが、当時は『らき☆すた』による聖地巡礼が一般化する前だったため明確なルールがなかったこともあり、モデルとされている小学校や住宅街をうろつくファンが続出。これに対し保護者や住民から「不審者がいる」と苦情や通報が殺到し、警察が出動して職質を受ける巡礼者までいたことから、2005年12月に掲載元の電撃大王より巡礼を控えるようアナウンスがあり、(確認できる限りでは)日本初のアニメ聖地巡礼禁止令が発令されている。但し浜松市との関係が悪化したわけではなく、騒動が落ち着いた2011年に地元タクシー会社とのコラボレーションが行われている。
※該当事由:3
舞台地は北海道東部の帯広市や釧路市などであるが、モデルとなった場所が畜産主体の農業高校や湿原など伝染病対策や自然保護に厳しいところが多い。そのため巡礼によって伝染病を持ち込んだり生態系を破壊する危険性があるため、アニメ『銀の匙 Silver Spoon』のエンディングで聖地巡礼を控えるよう呼びかけていた。この件は直接的には巡礼者のマナー以外を起因とする聖地巡礼禁止令が発令した類稀な事例となっている。
※該当事由:2
サブカルチャーの街で小説『魔法遣いに大切なこと』や漫画『ホーリーランド』などの舞台となっている世田谷区下北沢であるが、アニメの巡礼地としてはマイナーであった。しかし2022年冬アニメとして放送された『ぼっち・ざ・ろっく!』が大ヒットし、一躍聖地として脚光を浴びることになった。しかし、放送後から「公道を塞いで騒ぐ」や「無断撮影をする」などの迷惑行為があり、下北沢のライブハウスや店舗、近隣住民から苦情があったため、2023年1月に最初の注意喚起がされたが効果がなく、2月に「今一度ご理解・ご協力のほど何卒宜しくお願い致します」と早くも2度目の注意喚起がされてしまう。それでも改善されなかったためか、5月にに3回目の注意喚起がされ、この中で「個人・団体問わず週末・連休でのご来場および撮影は避けていただきまうようよろしくお願いします。」という事実上の休日巡礼禁止令が発令してしまった(外部リンク参照)。なお、舞台地は下北沢以外にも金沢八景や江の島などがあり、注意喚起では下北沢と同様に休日の巡礼は自粛の対象であるが、金沢八景と江の島は他作品の巡礼地にもなっており、「他作品の聖地巡礼」という名目であれば自粛から外れるため、有名無実化している。
なお、これが影響しているかは定かではないが、アニメ1期終了から半年が過ぎても地域コラボが行われておらず、イベント等も舞台地でない別の場所で行われている。
作品(権利者)サイドがご当地化を断った作品
公式からご当地イベントや地域コラボを断られた、または断られたとされる作品を記載する。
- スタジオジブリ作品全般
※該当事由:1
スタジオジブリ(以下「ジブリ」)では『となりのトトロ』(所沢市)や『おもひでぽろぽろ』(山形市)など、実在の地域を舞台にしている作品があるが、ジブリは登場した舞台地とのコラボレーションを一切行っていない。理由としてジブリは著作管理が非常に厳しく、企業系に関しても作品ごとのスポンサー以外とのコラボレーションを行なっていないことから、ご当地化に関しても厳しい姿勢をとっている。
これを象徴するエピソードとして『耳をすませば』のモデル地である多摩市をご当地化しようと有志がジブリに問い合わせたところ、「そのまま使うのは許可できない」との回答があったとされている。但し、「○○風という表現にすれば黙認する」とのフォローもあったことから、「耳すまクッキー」など「耳をすませば風の何かの作品」として現地で提供を行なっている。
なお、スタジオジブリは愛知県長久手市にジブリパークを開設しており、「サツキとメイの家」など作品に登場した施設や風景が再現されている。ジブリパークは『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』などモデル地のない作品も含まれるため、ご当地に関係なくジブリ作品に触れたいのであればこちらへ行ったほうがよいだろう。
※該当事由:3
モデル地は栃木県のある市とされており、市が本作品をご当地化しようとイベントの準備を行なったところ、制作サイドがイベントの自粛を求め、市側も取りやめた経緯があるとされている。理由として本作は元となったゲームがR-18で、アニメに関してもテレビ放送できるレベルにはしたが近親相姦があるなど、子供も来場する可能性があるご当地イベントにふさわしくないと制作サイドが判断したためである。
聖地巡礼やご当地化に厳しい姿勢となっている自治体
作品サイドとしては巡礼やご当地化を許容しているが、舞台地の自治体としては厳しい対応をせざるを得ない状態になっている例を記述する。
※該当事由:2
『スラムダンク』や『スクールランブル』などアニメ舞台地のメッカといえる地域で、当然多くのファンが鎌倉市を巡礼しているが、鎌倉市は公的なイベントを一切開催していない。
理由としては様々な憶測があるが、一番の理由として聖地巡礼者のマナーが悪くトラブルが絶えないことが挙げられ、特に『スラムダンク』は海外でも人気があり、世界各地から巡礼者が多い一方で、鎌倉市を舞台としたアニメの象徴である鎌倉高校前駅の踏切では道路を遮るように記念撮影を行なったり、ゴミのポイ捨てなどの行為が問題視されている。
動画の通り全国ニュースでも度々取り上げられるほどで、地域住民もマナーの悪さに困惑するなど被害を受けていることから、自治体として大々的にPRしたり、巡礼者を積極的に呼ぶ行為ができない状態になっている。これを象徴する例として『TARITARI』のモデル地は鎌倉市と藤沢市であるが、訪れてみたい日本のアニメ聖地88に登録されているのは藤沢市だけとなっている。
但し、ふるさと納税の返礼品として久米田康治『かくしごと』の書き下ろしグッズが用意されたり、西岸良平『鎌倉ものがたり』の看板設置のためクラウドファンディングが行われるなど(ひっそりではあるが)ご当地のPRそのものは行われている。また、江ノ島電鉄など鎌倉市に関連する企業はコラボレーションに積極的である。
聖地巡礼における注意
上記の作品や自治体を見てわかる通り、厳しくなった原因の多くが巡礼者のマナーの悪さとなっている。取り上げた作品や自治体以外でも一部施設や舞台地で巡礼行為を断られたり、制作サイドがホームページやニュースサイトを通じ巡礼マナーの悪さによる注意喚起が行われるなど、今後住民や自治体からのクレームや申し出により巡礼の自粛要請が発生する可能性がある。
元々観光地として整備されていたり、ご当地に積極的で受け入れ態勢が整っている場所ならともかく、住宅地や学校など日常生活の影響が強いところは巡礼を受け入れる態勢を整えているとはいえず、逆に住民でない者が押し寄せて治安が悪化するとなっては「来ないでほしい」となるのは当然である。そうならないためにも巡礼場所がどういったところかやご当地アピールに積極的かどうかを事前に調べ、せめて最低限のマナーを守ったうえで行動してほしい。
おまけ
作品も自治体も聖地巡礼やご当地化を歓迎しているが、別の意味合いで厳しいという扱いを受けている作品についてここに記載する。
- 輪廻のラグランジェ:千葉県鴨川市を舞台にしており、当初より作品サイドと自治体が協力関係を築いて制作に取り掛かっていた。そして2012年1月にアニメ第一期の放送開始。作中で鴨川のモデル地が数多く登場した。しかし作品サイドが気を利かせすぎたのか各話のタイトルすべてに「鴨川」を入れたことや、作中でもあらゆる場所で鴨川を入れたことでSNSでは「オタ舐めるな」「あざとい」などの批判的反応が見られた。ここまでなら他にも例のある話だが、2012年3月7日放送のNHK「クローズアップ現代」ではアニメの聖地巡礼をテーマにし、その中で本作についても取り上げられたが、その内容が先述の批判的反応を強調する内容で、NHKから(ご当地化の仕方が)厳しい作品と認定される事態になってしまった。当然ネットは大荒れで、以降「ご当地の失敗例の象徴」として本作の名前が挙がることが多い。但し同年7月からは第二期が放送され、その後もイベントや巡礼は活発に行われており、2018年には訪れてみたい日本のアニメ聖地88に選定されている。千葉県では舞台地があるのに聖地巡礼やご当地化すらされていない作品もあり、『輪廻のラグランジェ』は現在でも聖地巡礼やご当地そのもにについては活発である。
- のうりん:岐阜県美濃加茂市が舞台で、こちらも作品サイドと自治体が協力関係を築き、特に市長が積極的にPRを行ない、地元住民向けに試写会まで実施された。しかしこの作品は所々でお色気ネタを仕込んでおり、内容を知らずに試写会に来た地元住民を唖然とさせてしまう。さらにスタンプラリー用に作られたポスターが作品随一のお色気キャラを強調したもので、このポスターを知ったこの方々に目をつけられ大炎上、結果別のポスターに差し替えられる事態になるなど、ご当地化について世間から厳しい目を向けられる事態になってしまった。但しこれら逆風にもめげずにモデルとなった高校でのうりんのグッズ即売会が行われたり、FC岐阜とコレボレーションが行われるなど、ご当地に積極的な状況が続いている。