「この世に神様なんているのかしら?
本当にそんな存在があるなら…一生懸命生きている人間は誰も不幸にはならないんじゃない?
そう…私にエンジェルは微笑みかけてはくれなかったもの…一度もね…」
CV:小山茉美
概要
秘密主義なので単独行動が多いが、命令次第では他のメンバーと行動を共にする。
座右の銘で口癖は"A secret makes a woman woman." (女は秘密を着飾って美しくなる)。
愛車はハーレーダビットソンVRSC、水冷エンジンを搭載したモデル。
組織で唯一、江戸川コナンと灰原哀の正体と居場所を知っている人物だが、誰にも話していない。
人物
プラチナブロンドのロングヘアをしたミステリアスな美女。
黒ずくめのメンバーはクリス・ヴィンヤードとコナンが推理したとき、服部平次は「チチのでっかい、きれいで賢い姉ちゃんか!?」と驚愕した。
正体は1年前に他界したとされるアメリカの大女優シャロン・ヴィンヤードであるが、表の顔はシャロンの娘で人気女優のクリス・ヴィンヤードでもある。クリスとして来日した後に女優を休業宣言、復帰を熱望するサイトが作られている。
20年前から年をとっていない。工藤有希子に「大女優シャロン・ヴィンヤードはただの老けメイクだったなんて…」と言われた際に「あら…結構辛いのよ? 顔だけじゃなく普段から老けたフリをするのって…」と話しているように、人並みに年を重ねていくシャロンの姿は演じていたもので、架空の娘であるクリスとしての姿が本物。1年前までは母と娘一人二役を演じていた。
シャロンの年齢は不明だが、クリスの場合は初登場時に29歳と表記がある。
17年前のラムからは「組織に加わった若い女」と言われている。
特技は変装と声帯模写。敵対者から「千の顔を持つ魔女」と呼称されているほどの男女を問わない変装の達人で、情報収集に攪乱工作、他人を変装させることも得意。変装技術はかつて有希子と共に役作りとして黒羽盗一から学んだものである。変声機を使わずに他人の声を模倣できる人物は彼女の他は怪盗キッドのみ。長い間潜入する際は事前に対象者を調査して性格もコピー、ありとあらゆる言葉を話せると(『名探偵コナンBLACK PLUS SDB』で青山剛昌先生が回答)潜入調査や諜報活動に向いた能力を有している。
『裏切りのステージ』で榎本梓に変装した時は、言動から早々とコナンに正体がバレたのだが、気づかれたところで彼はこの状況では何もできないと見越していた。バレていると知りながら毛利蘭の声で梓の苗字をコナンに尋ねて聞き出したり、本物がしない振る舞いをしていたため蘭にも梓じゃないと勘付かれた。もっとも、それで窮地に立たされたかというと全然そんな事はなかったが。
『工藤優作の推理ショー』では、優作に変装した怪盗キッドのフリをしてコナンと対話したが正体に気付かれなかった(優作たちは事前に組織の潜入を予測して対策を取っていた。彼に黙っていたのは「敵を騙すにはまず味方から」という。ベルモットが彼を気に入っている事を知っている為、最悪の事態にはならないと判断したのだろう)。
『満月の夜の二元ミステリー』で20年前、組織の情報を集めていたFBIの捜査官ジョディ・スターリングの父を殺害して組織の調査資料ごと家を焼き払っていた過去が明かされた。また、毛利小五郎が関わった事件の調査書を警視庁に返却したのは、日本に滞在している目的が小五郎にあるとFBIに思わせて毛利探偵事務所を張り込ませるためだったことも判明。目論見通りに物事が進み、自身が罠に仕掛けられる計画も把握、現場に張り込んでいたFBIをジョディに変装して事前に撤退させていた。『ブラックインパクト』にて、キャンティとコルンからはカルバドスを日本に呼び出して見殺しにした、恋心を利用したと嫌悪されたが(状況を鑑みれば見捨てるのも自決するのも最適な判断ではあった)どこ吹く風で「逃げられそうになかったら弾丸ぶち込んでやる」とキャンティに言われても平然とした態度で「私が関わっていたと世間にバレると色々とマズイから顔を狙って」と頼んだほど。
ジンからは秘密主義にはうんざりされている(「悪かったな、おまえほどの女を呼んだっていうのにとんだヘマに付き合わせちまって」と言われていることから実力は買っている様子)。さらに「疑わしきは罰せよ」が信条なので、あの方のお気に入りだろうと妙な動きをするなら容赦する気はなく、ベルツリー急行ではシェリーを殺すために名古屋駅に爆弾を仕掛け、彼女とバーボンが爆発の巻き添えになろうと構わないと思っていた。もっとも彼女はジンの行動を読んでいたので、ウォッカから爆弾の余りを分けてもらい、シェリーだけを爆死させようと企てていた。思惑通り爆発によって列車は近くの駅に緊急停車、名古屋駅に着くことを阻止。
組織とは無関係な人間を脅迫して無理矢理殺人を実行させる一方、目撃者の少年に接触して情報を聞き出しておきながら口を封じない、ジンの大量殺人計画に巻き込まれそうになった乗客達等については、殺害を阻止するよう動くなどの配慮も見せており(曰く「粉々になるのはシェリーだけで十分」)無暗な殺生はしないことが示唆されている。一度ニューヨークでシャロンとして出会った蘭は「すごく素敵な方だった」と話して(蘭を特別視していない時期)好きな女優の二人の内の一人となっている。また彼女に成り代わられていた新出智明は帝丹高校の校医に復帰した際、先生や生徒の口ぶりから「本当に…本当に…悪い人だったんですか?」と困惑していた。「貴方の性格を恐ろしいほど忠実にトレースした、ただそれだけ」とジョディは考察している(身を挺してコナンを守ったのはベルモットとしてだと認識)。
まぁ、ジョディが「笑って人を殺すような人に、いい人なんているわけないじゃない!!」と新出に言っているように、善良な人間でもないのも確かだろう。
任務を遂行しているものの、組織の壊滅を望んでいるかのような言動が印象に残る。長い間待ち望んだSilver Bullet(銀の弾丸)になれるかもしれないとコナンに期待を寄せ、彼の知らぬところで組織から守っている。しかし、あの方が恐れ、自身も「組織の心臓を射抜けるシルバーブレット」と認識しているFBI捜査官の赤井秀一については「2発なんていらないわ…シルバーブレットは…1発あれば十分よ…」と述べ、自分の胸を貫いたコナンのみに希望を見出しているので、組織が破滅するなら何でもいいというわけでもなさそうだ。
キールがスパイである事に気付いていながら半ば黙認していた。
組織が長きに渡って取り組んでいる研究を「こんな愚かな研究」と断言する。
ある意味あの方と同じくらいに謎が多い存在。行動の真意も非常に読みづらい。
両親を殺されたFBI捜査官のジョディは帝丹高校に在籍していた時期、ベルモットの標的名を聞かれて「腐った林檎(ラットゥンアップル)」と命名。赤井曰く、「大女優シャロンが脚光を浴びたのは、舞台のゴールデンアップル! あの時のままアンタは綺麗だが…中身はシワシワの腐った林檎ってな!!」
ちなみにこの回では、撃たれてアバラが三本折れた状態で車を運転しながらサイドミラー越しに後方の車のガソリンタンクを拳銃で撃ち抜き、赤井を感心させた。
交流関係
- 工藤有希子
黒羽盗一に弟子入りした時に出会い、親しくなった。ミュージカルの観劇に愛車を暴走させてパトカーに捕まった彼女を咄嗟の変装で助け、その後も特別に楽屋に案内するなど親しい友人同士であったが、現在は決別した状態となっている。
- 工藤新一・毛利蘭
組織にとって邪魔となる赤井秀一を抹殺する為に、ニューヨークで日系人の通り魔に成りすましていた際、二人に助けられた。
殺そうした相手に咄嗟に手を差し伸べた蘭の行動、新一の「人が人を助ける理由に…論理的な思考は存在しねーだろ?」という言葉に強く心を打たれた。この出来事から新一を"Cool guy(クールガイ)"、蘭を"Angel (エンジェル)"と呼ぶようになったが、新一については『二元ミステリー』ラストから"Silver Bullet (シルバーブレット)"。私にもエンジェルがいたみたいと語り、どんな時でも二人のことは決して傷付けさせまいと行動しており、逆に自分の身を危険に晒してまで守ろうとする程で、この世でたった二つの宝物だと語っている。通り魔がベルモットの変装であったことを知る由もない新一は、灰原を殺害するために自分を遠ざけた理由は有希子の子供だからと推察していた。
- 灰原哀(シェリー)
『満月の夜の二元ミステリー』で殺害しようとするが、蘭と赤井の乱入によって失敗。
『漆黒の特急』にて、再度「抹殺」を狙う。上記の回で「諦めてあげる」と交わしたコナンとの約束を反故にし「(彼女だけはこの世にいてはならないのよ…)」と独白。組織の存在に気づけば友だちを巻き添えにしないために解毒剤を服用して元の姿に戻ると考えて彼女に恐怖を与え、C-4を設置した貨物車に誘導し爆殺することを計画。だが怪盗キッドに協力を強要したコナンの策略にはまり、ジンに「貨物車ごと吹っ飛ぶ所をバーボンが見てたらしいから」と報告した。直後に生存を知るが責任を追及されかねないからか、灰原の側にいるコナンや蘭に危害が及びかねないからか黙っている。また、薬で幼児化していることをジンたちに隠しておきたい故、ベルツリー急行でシェリーは死んだとジンたちが認識している今は手を出さずにいるのかもしれない。
「組織を裏切った者は殺す」なジン以上にシェリー抹殺に固執しているが「恨むのならこんな愚かな研究を引き継いだ貴方の両親を…」と言っている事から、シェリー個人がどうこうというよりも組織が長年進めている研究そのものが気に食わない様子。
『黒鉄の魚影』では、フサエブランドの数量限定販売商品の購入権を譲ってもらったことで彼女を助けた(原作者・青山剛昌氏のアイデア。『余談』で後述)。無論、灰原は購入券を手渡した相手がベルモットの変装だったことも、ベルモットが世界各地で宮野志保に変装して組織の目を欺いたことも知らない。
- ジン
肉体関係を持っていたことが作中で示唆されている(たたしアニメ版ではカットされている)。単行本83巻収録の原作者インタビューによると、「ジンのことを好きだったことが、昔はあったんじゃないかなあ」で「深く付き合っていたこともあった」とのこと。秘密主義を苦々しく思われているが、一向に気にしていない。
「どうやら私はお前を自由にさせ過ぎたようだ。私の元へ帰って来ておくれベルモット」という文面のメールを送られている。前述だけなら勝手が過ぎた部下に対する物言いにも聞こえるが、後述は単なるお気に入りの部下に対する発言としては重い。
またバーボンの「まさかあなたがボスの…」発言も相まって身内説が有力とされている。
青山氏は関係について「えええ!? そ、そうなのか…って感じです(笑)」とコメント。
- 安室透(バーボン)
彼女の秘密を握っている数少ない人物の1人。組織のメンバーが知ったら驚く、自分の消息が立たれると組織内に秘密がリークされるから「後始末が大変」と彼は語っている。弱みを握られている立場だが、普通に接しており、協力はするが言いたいことは言う。「何があってもあの2人(コナンと蘭)に危害は加えない」と約束させているが、あまり信用していない。
余談
原作者曰く、コンセプトは悪い方の峰不二子。いい方は有希子(笑)。2013年『週刊少年サンデー33号』特別付録で明かされて、単行本83巻に再掲載されている。
ちなみに担当声優の小山氏は風魔一族の陰謀で一度だけ峰不二子を演じたこともあり、キャスティングもルパン三世との縁を思わせる配役になっている。
- 劇場版『黒鉄の魚影』で灰原を助けた理由。
「助けたワケ? それを探るのが貴方の仕事でしょ? シルバーブレット君?」と謎めいた彼女らしいモノローグと雑路の中でフェードアウト。理由は明かされずじまいで、彼女の着物の帯締めに飾られた、フサエブランドのブローチが強調された事で映画公開後、様々な考察が行われた。
灰原を助けた件については、「ベルモットにとって灰原は抹殺対象。そんな相手に欲しかった物を譲ってもらった程度で助けたりしない、ボスや自分、コナンの秘密を守るための行動が結果的に灰原を助けることに繋がっただけ」「映画しか見ないライト層は設定を知らない。そういった層に対して“ブローチの恩返し”という分かりやすい答えを用意した」などの意見が多かったが、2023年『週刊サンデー22・23合併号』の付録『黒鉄の書』にて「助けたワケは、劇場版を観た人にしかわからない、コナンは…!? 観直すとアッと声が出ること間違いナシ!!」と記述されている。
また「ベルモットがおばあちゃんに変装していて、ブローチを譲ってくれた灰原(哀)を助けたというエピソードは、先生が初期の頃に足してくれたアイデア。それを序盤とラストに持ってくるというのは、初めの段階から決まっていました」(『監督・立川譲氏のインタビュー記事から引用』)と公式が言及。
灰原のために老若認証システムを潰したわけではないが、灰原とシェリーは別人と組織の人間を騙した理由は恩返し、貰った優しさへの対価を支払った形となっている。
- 単行本の裏表紙
鍵穴キャラとしては3回、ファンブックを含めるなら4回も登場している。と言うのも、シャロンとして1回、クリスとして2回も登場しており、そのうえ榎本梓に変装した姿として登場しているためである。
- 読者からの評価
敵側で悪いことをしていながら2012年『週刊少年サンデー』で行われた人気投票にて8位(女性に限れば3位)、2021年『緋色の総選挙』15位(女性に限れば4位)、女性キャラ限定の2022年『ハロウィンの花嫁』で4位と女性キャラクターの中では人気が高いほうで、順位も安定している。
関連イラスト
関連項目
おまえのようなババアがいるか…変装こそ得意(それこそ中年男性だったり、自身の娘という設定だったり)だが、ベルモット自身はれっきとした女性である。。