VVVF-GTO
じーてぃーおーいんばーたーせいぎょ
概要
GTOサイリスタ(Gate Turn-Off Thyristor,ゲートターンオフサイリスタ)を使用したVVVFインバーター制御は、従来型の抵抗制御やチョッパ制御に比べ省エネルギー化を実現出来ることから1980年代から90年代に製造された電車に多く採用された。しかし、90年代以降はGTOサイリスタはよりスイッチング速度を高速化し、更なる効率化を図れるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたVVVFインバータに取って代わられ、2005年頃を最後に新造車は日本で見られなくなった。
このタイプのインバータの特徴として、発進時・減速時の走行(変調)音が現在製造されている車両に比べて大きいというのがある。
その特殊な音が一部の鉄道マニアに支持され、特に東京都交通局5300系など特徴的なものは爆音VVVFと呼称されるようになった。
登場から四半世紀以上経過した現在では、部品(基盤や素子)の確保が困難になり始めていることもあり、先述したIGBT-VVVFインバータや半導体にSiC(炭化ケイ素)を使用し、トランジスタの構造をIGBTからMOSFETに変更した通称SiC-VVVF(SiC-MOSFETとも)に交換されるケースが多くなっている。
JR西日本の207系1000番台や223系0番台(いずれも東芝GTO)に対してのリニューアル時も例外ではなくVVVFの交換や更新を行ってきた。しかし、2020年以降207系では何故かVVVFの交換や更新を行わずにGTOのまま出場した編成も出てきている。
日本で使われたGTOサイリスタは三菱、日立、東洋、東芝、シーメンス、富士電機である。海外では、ABBやアルストムなども見られる。
pixivでは、GTO-VVVFの電車を描いたイラストににこのタグがつけられる。
その音を聞いてみよう
これは東芝GTOを採用した207系1000番台未更新車の音である。
なぜ爆音になるのか
GTO素子のVVVFは、多くは低音寄りでよく響く音を発するが、その理由は許容できるスイッチング周波数が低く、磁歪音が響きやすい帯域になるからである。
登場時は大容量かつ扱いやすい素子として用いられていたが、1990年代前半に高耐圧IGBTが登場すると、
・ゲートが電流制御なのでゲートアンプの容積が大きく、損失も大きい
・ターンオン/ターンオフが遅いのでスイッチング周波数を高くしにくく、スイッチング損失が大きくなりがち
・消弧時の電圧跳ね上がりが甚大でスナバ回路が必須、損失が大きい
・スイッチング周波数が低いので磁歪音の音圧低減に不利
という欠点が目立つようになり、以降徐々にIGBTへと置き換えが進んだ。
VVVFにGTOサイリスタを使用した車両
初採用(日本)
- 日本で最初に採用:東京急行電鉄6000系(試験車として一部を改造・全廃/日立・東芝・東洋)
- 関西私鉄で初めて採用:近畿日本鉄道1420系(三菱)
- 量産車で初めて採用:大阪市交通局(現:OsakaMetro)20系(全車更新済み・順次廃車中/三菱・日立・東芝)
- 新交通システムで採用:西武鉄道8500系(唯一の事例・全車更新済み/日立)
- 長大編成で初採用:新京成電鉄8800形(現在一部編成更新、一部編成廃車/三菱)
- 国鉄で採用:207系900番台(唯一の事例・全廃/日立・東芝・富士電機・三菱だが、ゲート制御ユニットは日立設計)
- 海外製を初採用:JR東日本E501系(全車更新済み/シーメンス)
- 機関車で初採用:JR貨物EF200(全廃/日立)
最後の採用(日本)
韓国での採用
- KORAIL311000系(一部のみ・メイン画像の一番左/東芝)
- KORAIL341000系(一部のみ・メイン画像中央/東芝)
- KORAIL351000系(一部のみ・メイン画像の一番右/東芝)
- 釜山都市鉄道2000系(GECアルストム)
- ソウルメトロ新4000系(GECアルストム)
など。
台湾での採用
など。
GTO-VVVFのようでGTO-VVVFでないもの
シーメンスやアルストム、アンサルドブレーダなどのインバーターにはGTO-VVVFのような音を発するIGBT素子を使ったものが存在する。特にシーメンスのICE3やアルストムのメトロポリス、アンサルドブレーダのミラノ地下鉄用車両「Meneghino」は典型的な例である。
三菱の機関車用IGBTインバーターにもGTO-VVVFのような音を発するものが存在する(今のところEF210とEF510のみ)。
さらには207系1000番台の更新車も東芝IGBTだが、中盤からはGTO-VVVFの音に切り替わる。