概要
原作版では藤子作品でよく見るいじめっ子のガキ大将キャラの域を出ないキャラだったが、アニメ版では設定が大幅に追加・改変されており、「野菜をこよなく愛する、トラブルメーカーだがここ一番に頼りになる男」という唯一無二の存在へと変貌した。下に書かれている設定も殆どがアニメ化の際に追加された設定であり、これには脚本家の雪室俊一が大きく関わっている。
「キテレツ」アニメ版を藤子作品にてドラえもんに次ぐ約8年間のロングヒットにした立役者と言っても過言ではなく、中〜後半ではブタゴリラ(とその一家)・コロ助・トンガリのトリオが主人公のキテレツを差し置いて実質的な主役状態であった。
(そのためか、本来の主人公であるキテレツはドラえもんのようなお助けキャラのポジションに落ち着いた)
人物
なにかと豪快で少し強引なところがあるが、友達想いの明るい性格である。トンガリとは漫才のような駆け合いをするコンビ。
家は八百八という店名の八百屋を経営(ただしアニメ版のみで、原作は普通の家)している。
家業が八百屋のためか、ことわざや単語、ものの例えにいちいち野菜の名前を使うことが多く(『そんな曲がったキュウリみたいなことができるか!』『腐ったトマトみたいにグジグジしてるんじゃねえ!』等)、その度にトンガリからツッコまれているほか、野菜が大好物で、野菜嫌いは許さない。
野菜が好き過ぎるあまり、肉屋の息子に喧嘩で負けた事を理由に肉嫌いになった事すらある。
太っちょな体形に反してかなりの俊足を誇るなど、運動神経はかなり良く、とりわけ野球に関しては打ってよし、投げてよしの大活躍を見せる。
先述の通り大柄な体格に見合った高い体力を誇るが、ケンカにおいてはアニメ版では彼以上に強い連中が登場しては負けていることが多く、どことなくかませ犬っぽい扱いを受けている。
むしろ、小柄なトンガリや発明道具無しのひ弱なキテレツ相手にも苦戦する描写があり、「弱い」というよりは「ケンカのセンスが無い」という表現が的確だろう。
視力は両目ともに2.0で虫歯ひとつ無いなどかなりの健康児でもある…が、この手のキャラのお約束なのか勉強は苦手らしく、本人いわく「体育以外はオール2」とのこと(むしろ、オール1でない点を鑑みるに、サボっているなどではないことが窺える)。
ジャイアンとの対比
同じ藤子作品でガキ大将キャラの代表格であるジャイアン(『ドラえもん』)と比較すると、外見や物語における役割、設定などに類似点が複数見られ、原作やアニメ初期に限っては言動にも似通った部分があった。
しかし一般に広く認知されるようになったアニメ中期以降のキャラ描写から、ジャイアンとは見た目やキャラ枠が似ているだけで違うポジションのキャラという認識が一般的となっている。
ジャイアンがその腕っぷしと恐るべきジャイアニズムで近所の子供たちに対し高圧的に振る舞ったり、絶望的な味の自作料理を食べるよう強要したり、近所迷惑な歌を無理やり聞かせたりして終始恐れられる存在であった(※一部の劇場版を除く)のに対し、ブタゴリラがそうした粗野なガキ大将の面を発揮したのは原作やアニメの初期に限られている。アニメ中期以降は「強引でトラブルメーカーな面は多々あるものの、友情に厚く野菜を愛する好漢」といったキャラにシフトチェンジしており、後述の言い間違えなどコメディリリーフとしての役割も増え、暴力性を見せることはほぼなくなった。
また、ジャイアンがしばしば家の店番をサボって(挙げ句のび太達に押し付けて)母ちゃんに怒られるなど、商店の息子としての気概や自負が一切みられないのに対し、ブタゴリラは店番をサボったりは決してせず、それどころか配達まで積極的に行い(コロ助達にやや強引に手伝わせることはあるが)、野菜に対する熱い思いを語るなど、八百屋という職業や野菜に対する情熱や誇りを見せており、家業に対する意識の高さはジャイアンとは比較にならない。
アニメのブタゴリラとジャイアンとでは、両親の描かれ方もだいぶ異なっている。
ジャイアンの親といえば何と言っても母ちゃんが有名で、粗暴なジャイアンが恐れおののくほど強靭な体格と腕っ節を誇り、ジャイアンの不始末に対して厳しく叱るのが定番のテンプレート。
また父親も出番こそ非常に少ないものの頑固親父らしき人物で、これまた腕っ節が強いようでジャイアンが学校のテストで不正を行った際にはその所業を本気で嘆きつつボコボコに制裁を下していた(わさドラ版では制裁役は母親に変更)。
対して、ブタゴリラは何と言ってもアニオリキャラである父親が非常に有名。
詳細は個別記事を参照されたいが、野菜へのほとばしる情熱とブタゴリラ本人以上に間の抜けた快活な性格をあわせ持ち、多数のエピソードでコロ助やトンガリとも絡んでドタバタの一端を担い、主人公の両親を差し置いてほぼレギュラーと言ってよい大活躍を見せている。
また母親も個性的なキャラではあるが、家業については明らかに情熱過多な夫や子に比べると一歩引いた常識的な立場をとる人物となっている。
いずれも腕っぷしについてはあまり触れられず、ジャイアンの両親とは全く違うキャラになっている。
(アニメでのこの二人は、藤子作品全体の両親として見てもかなり異質の存在ではある。)
最終的に、ブタゴリラはジャイアンとは外見や学業成績、自営業の息子などといった表面的な設定が似ているだけの、全く異なるテイストのキャラポジションに落ち着いている。
余談として、『ドラえもん』の映画作品の一つである『のび太とふしぎ風使い』では、敵に憑依された状態のスネ夫がジャイアンを度々「ブタゴリラ」呼ばわりしていた (そのほかに「雑魚」呼ばわりもしていた)。アニメ版は放送局が異なる上に、『ふしぎ風使い』の公開は『キテレツ』の放送終了から約7年が経過しており、この前後にアニメへのゲスト出演などがあったわけでもない(強いて言えば当時のスネ夫の中の人は『キテレツ』で勉三さんを演じていたが、勉三さんはブタゴリラのことをブタゴリラくんと呼んでおり、呼び捨てにすることはなかった)ため、宣伝というよりはあくまで両作のファン向けの小ネタである。
呼称について
呼称する人物 | 呼称 |
---|---|
キテレツ、コロ助、トンガリ、五月ちゃん | ブタゴリラ |
みよちゃん、勉三さん、五月ちゃん | ブタゴリラくん |
妙子ちゃん、瀬川さん、五月ちゃん、みよちゃん(最初期) | 熊田くん |
両親 | 薫 |
担任の先生 | 熊田 |
お杉婆さん | ブタコレラ |
プロフィール
対人関係
第66話では、自分そっくりの女の子の乙姫に一目惚れして求婚する場面もあり、乙姫が野菜嫌いなのを知ったブタゴリラは「だったら八百屋をやめてもいい」とまで言うほど惚れこんでいた。ボディコン姿の乙姫を見たディスコの店員たちが気持ち悪さに次々と失神していったのを見ても「乙姫ちゃんの魅力にみんなまいったんだよ」と言って、キテレツたちを呆れさせていた。だが、肝心の乙姫はキテレツにゾッコンなので、その後もブタゴリラは乙姫と会うたびにデレデレしていたが、乙姫からは相手にされなかった。
第135話で初登場した桜井妙子とは、遠距離恋愛のガールフレンドになる。詳細はブタ妙を参照のこと。
未来のブタゴリラ
未来は結婚はしているが奥さんは妙子かどうかは不明 妻は野菜嫌いで 息子の熊田みのりを連れて現代のキテレツの家を訪ねていって息子のみのりの野菜嫌いを治した。キテレツの夢では双子のブタゴリラにそっくりな男児がいるが 未来から来たブタゴリラの子供はみのり一人だった そのみのりもブタゴリラにそっくりだが性格は優しい。
名前について
「ブタゴリラ」などという悪口にしか聞こえないようなあだ名で呼ばれているが、
実は「熊田薫」という本名が女の子のような名前であることが嫌で、元々は実際に悪口からついた名前ではあるが自分からそう呼ばせているのである。
また、薫という名前の理由は、ブタゴリラの父親の熊田熊八が自分がゴツすぎる名前で苦労してきたため、子供には男でも女でも可愛い名前にすると決めていたから。
あくまで「ブタゴリラ」と呼んで欲しいのは友人の間の中だけであり、誰にも彼にも呼ばせる訳ではない。デパートの呼び出しで「ブタゴリラ」と連呼された際は恥ずかしがって止めさせようとしている。
本人なりに「ブタゴリラ」という並びや響きにはこだわりがあるようで、「ブタ」と呼ばれて怒ったりもするし、「ゴリラブタ」と間違えられると訂正もする。
なお、名前や由来の設定は雪室俊一によって考案されたものであり、原作では本名の設定などはない。
先述の通り、ブタゴリラは本名を「女の子みたい」という理由で嫌っているが「かおる」は現代においては現実・創作問わず男女どちらでも使われる名前であり、それほど珍しいものでもない。
例えば男性には俳優の小林薫や、『仮面ライダークウガ』の一条薫、Dir en greyの薫(れっきとした本名)などがいるし、逆に女性には女優の奥貫薫や柔道家の松本薫等、「薫」という名前を持つ人物は男女問わず多く存在している。
余談だが、古くでは同名の漢字による同じ「かおる」読みの「薫」という貴族の男が「源氏物語」に登場するなど、「かおる」という名前は古来より男性名としても使用されていることが確認できる。
そのため、どちらかと言えば「女の子みたい」な名前というよりは「中性的」な名前と言えるのだが、これは言い換えれば「女の子に付けても問題が無い名前」でもある(実際にその人物の職業や経歴等を知らない状態で名前だけを見せられた場合、その人物の性別がどちらなのかを判断する事は容易ではない)。
そんな「薫」という「名前だけであれば女の子と間違えられても不思議ではない」名前だということを年頃の少年であるブタゴリラが「女の子みたい」な名前だとコンプレックスに感じていたとしても何も不思議な話ではないだろう。
言い間違い
アニメ版のブタゴリラを語る上で外せないのが言い間違いである。
本人の天然ボケもあって、とにかく毎回必ずと言って良い程何かしらの言い間違い・聞き間違いを披露して周囲を呆れさせており、最早お家芸レベルと言っても過言ではない。
いくつか例を挙げると、
(野菜好きの癖してベジタリアンを間違えるのはどうなんだろうか?)
- エアロビクス→アロエビックリ
等々、挙げれば枚挙が無い。
こうした言い間違いをしては、トンガリやキテレツを始めとした周囲の者から「それを言うなら〇〇!」とツッコまれるのがお約束。
324話にて、ある理由から卒業式での送辞を読む事になった際には、トンガリは「僕卒業式休みたくなってきた」と言ってしまう程に不安がっていた。
関連タグ
きれいなジャイアン:ある意味、当てはまる。
花山薫:名前が似ているだけでなく、喧嘩が強いが好漢である部分も似ている。
カミーユ・ビダン:中性的な名前がコンプレックスで共通する。