「お嬢ちゃん。いい女になりな。男を選ぶときは………チンポだ 」
「この牛山辰馬を神話に加えなよ 」
概要
作中屈指の巨躯を有する柔道家の大男。その圧倒的な強さから「不敗の牛山」と呼ばれている。日々の鍛錬で皮膚の一部が異常に硬くなっており、額に至っては五寸釘を通さないほど頑丈なはんぺんのような四角いコブができている。
読者からの呼称は「チンポ先生」(なお、漫画の英訳版では「Professor Penis(プロフェッサー・ペニス)」というまさかの直訳がされていた)。
由来は、「男を選ぶときには一度抱かせて、その男のチンポが紳士かどうか確かめろ」という金言をアシリパに残したことから(キロランケも「そのとーり!」と力強く同意している)。これがよっぽど心に残ったのか、それ以来「チンポ先生」と呼び慕われている。
牛山の方もアシリパを年下だからと見下すことなく「お嬢」と敬称で呼んでいる。
後述の項目にもある通り、人格、実力ともに脱獄囚の中では頭一つ抜けているためか、精鋭ぞろいの第七師団と戦うための人員をかき集めていた土方に真っ先にスカウトされ、その後すぐに加わった永倉と共に土方一派を強力に支えている。
明治時代の日本という舞台において、特殊な職業でないにもかかわらず普段着が背広というなかなかのおしゃれさん。また、道着を寝巻(部屋着)として着用している。
人物像
頭のネジが5、6本はぶっ飛んだ変態や狂人が跋扈する本作においては貴重な常識人にして、作中屈指の聖人。
誠実で情に厚く、献身的な紳士であり、元より女好きなのもあって女子供に優しいが、単に優しいだけでなく、きちんと相手との合意の上での関係を結ぶことを是としており、相手が心に決めた人物がいると知れば素直に身を引く潔さもあり、空気を読んだ言動を取れる理知的な性格。
その紳士ぶりは蔑まれることの多い娼婦を観音様とまで言い切るほどで、一般的に見て容姿の優れない女性であっても、それを理由に見下すことは決してない。というか、成人女性なら美人かどうかに関係なくデレる。ただし、女性であろうと裏切りには相応に怒りを見せる(前述の土方が交渉に現れたのは遊女と絡み合っている場だったが、自分の居場所の情報を流した遊女をその場でぶん投げている)。
男に対しても粗雑に扱うような真似はあまりしたことはなく、最低限の礼節をわきまえて接する。
以上の理由から、アシリパが先生と呼んだ現状唯一の人物である。
また、柔道を嗜んでいるからか、格闘技や武道を学んだ者の実力を測ることに長けており、確かな実力を持つ人間に対しては一目置くという武道家らしい一面もある。まさに健全な肉体と精神を体現する人物だと言える。
そんな彼の最大の残念ポイントは、下半身に脳味噌が付いているかのごとき凄まじい性欲。
その旺盛さたるや、一度我慢の限界に達すると理性も思考回路も吹き飛んでしまうほどであり、その性欲が時折酷い暴走を招いている。心を落ち着けるために定期的に女を抱かなければならないほど性欲を持て余しており、囚人時代も暴動鎮圧などの手柄を立てたときなどは特別措置として遊女を宛がってもらえていたようである。
欲求が臨界を迎えると、土方曰く「永倉ですら襲いかねない」というほどなのでマジで見境がなくなるらしい。
実際に、札幌世界ホテルでは酔った勢いでホテルの女将と勘違いして白石を襲いかけている。
そもそも投獄されたきっかけが「師範の妻を寝取り、その制裁を受けた際に逆に返り討ちにしたどころか勢い余って師範を殺してしまい、同行した弟子達にも重傷を負わせたから」というあんまりにもあんまりなもの。
本来は善良な人物なのだが、強すぎる性欲が彼を不安定にしてしまっていると言って良い。その意味では彼もまた、他の囚人達と同様に如何ともしがたい性(サガ)に囚われた存在である。
戦闘力
純粋な接近戦なら、その実力は文句なしに作中最強。
その身体能力はまさに脅威の一言。
例を挙げるだけでも、
- あの日露戦争の英雄として知られる最強の兵士・不死身の杉元と何度も互角の肉弾戦を演じ、未だに決着がついていない
- 突進してきた暴れ馬を払い足で転倒させる
- (空腹で多少弱っていたとはいえ)自身の倍近くある巨大なヒグマを素手で投げ飛ばす
- 夥しい死者を出してきたことで悪名高い網走監獄の劣悪な囚人労働も余裕で耐えきる
- ヤクザを「高い高い」して天井を突き破って屋根裏部屋までぶっ飛ばす
- 倒壊してきた家屋から仲間を庇い、自身も潰されることなく余裕で投げ飛ばす
- 振り下ろしたテーブルの天板が頭を直撃しても無傷
- 陸軍最強と謳われる第七師団の精鋭達をほぼ一方的に圧倒、文字通りちぎっては投げちぎっては投げの大暴れを演じる
- 第七師団最強戦力の月島軍曹を終始圧倒し、勝利を諦めさせ相討ちを覚悟させる
- 正面から飛んできた手榴弾(衝撃信管)を咄嗟の判断でキャッチ、そのまま投げ返す
- ガスが充満し火災の発生した危険な炭鉱に単独で突入し、閉じ込められて卒倒しかけた杉元と白石を救出する
……等々、その活躍ぶりは枚挙に暇がない。
もはや別の世界の住人なんじゃないかと疑われるレベルの超人である。
大勢いる登場人物たちの中で、日露戦争を戦い抜いた師団屈指の実力者達をして「化け物」と言わしめる先生と一対一のタイマンでまともに戦えたのは、
のわずか二名のみである。
こいつらでさえ“掴まれて”しまえば苦もなく拘束されてしまうのだから、いかに先生が規格外なのか理解できるだろう。岩息は「殴り合いに持ち込んで勝ったこともある」とは話しているものの「こともある」という含みのある言葉から、殴り合いに持ち込んでも常に勝てたわけではない可能性も示唆されている。
ただし、いくら腕っぷしが強くてもさすがに銃弾には敵わないため、開けた野外などで武装した複数の兵士に遭遇した場合はやむを得ず撤退する場面もある。
あくまで先生は殺し合いに身を置く「軍人」ではなく、正々堂々の戦いをこそ是とする「武道家」なのである。
ただし刃物の場合はその限りでなく、腕で直に受け止めることもあり、手を貫かれても臆することなく冷静に対処し、刺さりどころによってはそのまま力任せにへし折ってしまう。
なお、上記の通り肉弾戦が強いというのはあまりに有名だが、実は銃の腕も中々のものがあり、五稜郭編では遠方にいる旗手をライフルの一射で射貫く腕前を見せている。初期は護身用に拳銃を保有していたが、当人が強すぎるためか発砲するシーンは見られなかった。
余談
モデルとなった人物は、「不敗の牛島」と呼ばれた柔道家、牛島辰熊である。
「歴史上最強の柔道家」と称えられる木村政彦を育て上げた師匠だが、彼自身も木村に負けず劣らずの剛の者であり、自他共に厳しく誰よりも人情に厚い漢であった。
額のコブに関しては、作者が「牛山はハンペンでも付けないとダントツで格好良くなってしまう。室伏広治みたいなキャラがいたら、全ての男性キャラが霞んでしまうでしょう」とコメントしている。また、実写映画版でも「技術的に挑戦の特殊メイクだった」ことが語られている。
描くにあたって
牛山を描く際にぜひとも注意してほしいのが、彼の指である。原作のジャケット等ではそのボコボコした指関節が描かれているのだが、これは柔道やブラジリアン柔術など、着衣組技格闘技を長年激しくやりこんだ人間にできる変形症である。
そう、この指は牛山が傑出した柔道家である何よりの証拠なのである。気になる人は「柔道 指」などで検索してほしい。
実は耳のタコは体質により20年以上やっている人でも膨れない場合があり(作中でも杉元が「俺はならない体質」と発言している)、決して鍛錬期間の長さを物語るものではないのだが、指についてはそうではない。
柔道やレスラーなどを描く際、内出血によって膨れた耳は顔という非常に目立つ場所にあるため比較的よく描かれているが、指は格闘技漫画ですらあまり細かく描かれない。