「アー…サイコー……気持ちいい!」
概要
『風都探偵』の第4話「閉ざされたk」に登場するドーパント。身長225cm。
アルコールそのものをモチーフにしており、肥大化した右腕や酒瓶のように短い左腕を持つ半透明のブヨブヨしたアンバランスな巨体で、無色透明の液体(アルコール?)が充満した頭部に浮かぶ単眼などグロテスクな姿をしている。また、涎を垂らしているように見えるだらしない口元や身体を揺らしながら歩く様は泥酔して足元が覚束ない異形の怪物のようにも見える。
アニメ版では白い袋のような体色となっており、血管のような赤い線が全身に入っている。アルコールが全身に回ると頭の液体が血を満たしたように赤くなるのが特徴。
豪雪に閉ざされた「鏡野屋敷」で現当主・鏡野空也の奇妙な花嫁選びの儀式にて突如出現し、次々と集められた花嫁候補たちの命を奪っていく。
能力
ブヨブヨに膨らんだ体とは思えぬほどの腕力を持ち、膨らんだ右腕から繰り出す打撃を得意とする。メモリの性質上、炎の攻撃を浴びせれば燃えるのだが、アルコールによる麻酔作用により痛みを感じないという性質を持つ。
左腕や身体からにじみ出るアルコールは強い可燃性を持っており、眼球から発する熱線を当てれば即引火と誘爆を引き起こして対象を爆破させるという強烈なカウンター能力を誇る強敵。
活躍
吹雪の中、花嫁候補の一人、財前暦が外で変死しているのを発見した翔太郎とフィリップの前に出現、襲い掛かる。
変身したWのサイクロンジョーカーの攻撃ではダメージを受けず、ヒートジョーカーによって火だるまにされてもなお全く意に介さずに反撃を繰り出し、Wを困惑させる。しかし戦闘中に異変を起こして逃走してしまう。
見た目とは裏腹の強さにフィリップは二人が一体化するあの姿にならなければ勝てないと推察している。
その後更に花嫁候補の一人、有藤蛍の死体が発見され、これもアルコール・ドーパントの仕業と見做されるが、フィリップは2人の死体の違和感に気づいていた……。
以下事件の真相につき閲覧注意
事件の真相
使用されているアルコールメモリは実はミュージアム幹部が使用するゴールドメモリに次ぐランクを持つシルバーメモリの1本であり、ウェザー・ドーパントと同じく上位クラスのドーパントと判明する。
変身者として鏡野家の現当主である空也の花嫁候補者である4人全員(久保倉環奈、財前暦、有藤蛍、難波くるみ)がコネクタ処理を額部分に施されていた(バード・ドーパントを連想させるが、あちらは本来の使用者以外に生体コネクタ処理を行っていない。そのため、未処理者が使用したところ副作用で苦しんでいた。)。
そしてコネクタを施された花嫁候補たちは、アルコールメモリを手にすると邪魔者をメモリで殺害しようとする衝動(フィリップはメモリにこもった「『邪念』のような物」と推測している)に駆られ、操られるままにドーパントへ変身するようになる。
彼女達は秘密裏にこの処理を行われており、何者かがシルバーのメモリの実験をしていると推測される。
更に、メモリの毒素が強力すぎて適合しない変身者は急性アルコール中毒を起こして死んでしまうというハイリスクな代物。おまけにある程度適性があっても、使用時の肉体の状態が悪ければやはり死んでしまうという非常に恐ろしい仕様となっている(ガイアメモリというアイテム自体も毒素が強いので身体への脅威は計り知れない)。なお、変身時はアルコール摂取時のように高揚感を与える。
事実財前はメモリへの適合不足により、有藤は「風呂場で変身した結果、血行が良くなり身体中に許容量以上の毒素が回ってしまった」事が原因で命を落とす事になった。一方で最初の変身者である久保倉は適合しなかったものの命を落とす前に変身解除されたため、難波は久保倉を追い落とそうとメモリに手を出したところでフィリップに止められたため難を逃れている。
最初にWが交戦したのは、毒素で死んだ財前からメモリを得た有藤が変身した個体だった事も判明する。またフィリップが感じた違和感(暦の死体の状態ははやにえを思わせる無残な姿に対して有藤の死体は傷1つ付いていない、そして2人の死体が恍惚な死に顔をしていた)については最初のドーパント(久保倉)が最初にメモリを入手して財前殺害を図るがメモリ不適合のためすぐ変身解除してしまいメモリを財前が強奪、有藤殺害に至るが、メモリへの適合不足で死亡、直後メモリを入手した有藤が腹いせに財前の死体を突き刺す。そして難波との口論後難波の殺害を目論むも、逆に風呂場で血行が良くなり身体中に許容量以上の毒素が回ったことで死亡。その後、難波がメモリだけ持ち去ったため有藤の死体はきれいなまま残る。そして恍惚な表情に違和感を覚えたフィリップが検索し直し2人の死因はメモリの強い毒素による中毒死、財前の外傷は死亡後につけられたものという事実が判明した(翔太郎曰く「この事件人は死んでるが殺した奴はいない、死者は全員ドーパントになることで死んだ」)。
難波は環奈を見つけ、変身して始末しようとしたところを環奈に変装したフィリップの蹴りでメモリをはたき落とされ、変身は未遂に終わった(直後「返してよ!」と叫んでいるがフィリップに事のあらましを説明され驚愕していた)。
※以下更なるネタバレ
「言っておくが私のアルコール使いは年季が違う」
真の正体は、鏡野空也の祖母である鏡野キク(声:八百屋杏)。コネクタは花嫁候補達同様額にある。
キクはかつてミュージアムと手を組んでおり、長年のメモリ使用により「力」を得た、「ハイドープ」の先駆けとも言える存在である。
また、幼少(検索能力を手にする前)の頃のフィリップ=来人が家族とここに来たことも覚えており、十数年経ってやって来た際にも一発で「琉兵衛の息子」と見抜いていた。
その行動原理は鏡野家を守るため、ひいては空也のためで、孫に向けた愛情は本物。アルコールメモリはミュージアムに自らを実験体として提供した事で手に入れたもので、その力で多くの裏の仕事を行い鏡野家を守ってきたが、老齢には勝てず自分の後継者を選抜することを決意。謎の組織と手を組んで花嫁候補4人にアルコールメモリを使用させ、メモリを継ぐに相応しい人物を探していた。
(翔太郎とフィリップ曰くこの行為は「人体実験」だったらしい)
つまり、その行為そのものが孫に対する歪んだ愛が生み出した花嫁選びという名のデスゲームのようなものに過ぎなかったのである。
メモリの力を使いこなしているだけあって、右腕に回転と捻りを加え放つコークスクリュー貫手攻撃や、左腕のチューブからアルコールを発射すると同時に目から熱線を照射して対象を爆破させる攻撃などを繰り出しており、意識もはっきりしているなど花嫁候補たちが変身するものとは段違いに強い。
アニメ版では変身前に使用していた物体を浮遊させる能力も使用しており、巨体に見合わない動きでWを苦戦させた。
そしてサイクロンジョーカーエクストリームに変身したWと対決、圧倒された上でビッカーチャージブレイクとダブルエクストリームを受けた事で倒された(なお、キクが高齢者である事を考慮した翔太郎の計らいで、体に負担が極力かからないようメモリブレイクする方法が取られている)。
しかし、自身が倒された場合は屋敷に火を放つようにと執事の木村に前もって命じており、孫の空也に強く生きるよう伝え、燃え盛る屋敷と運命を共にした。
なお、共犯者である木村も彼女に忠誠を誓っていた。
その後、生き延びた空也、環奈、くるみの3人は翔太郎からの報告を受けた後環奈とくるみは友情に芽生え、空也は祖母への供養のため、後に職に就いたら依頼料を払うことを伝える。そして翔太郎は「最後に一杯飲まないか?」と聞くが実は空也は下戸だったことを明かした(仮面夜会で彼が飲んでいた物はウイスキーではなくただのウーロン茶)。
余談
既に「酒の記憶」を内包するサケメモリがW本編に登場しており、一部のファンからは能力が被っているという声も見られるが、サケメモリが有するのはあくまで「酒」という飲料の記憶であるが故に、アルコールの要素は主に飲料に用いられる『エチルアルコール』のみ、それも飲料の酒に含まれる程度しか内包されていないと思われる。
一方アルコールメモリは「アルコールという物質そのもの」の記憶を内包している性質上、『エチルアルコール』の他にも、劇中の描写から毒性を持ち、主に燃料用に使う『メチルアルコール』の要素も内包していると考えられる。
毒性は言うまでもなく段違いであり、加えて飲料・嗜好品である『サケ』と化学物質である『アルコール』では内包する「地球の記憶」も大幅に異なってくると思われる。このため、差別化は充分にできていると言えよう。
実は、制作当時から名前自体は存在していたらしく、特に長谷川圭一氏は大のお酒好きだったことからお気に入りだった。
コミックの巻末付録によると、半透明のボディや液体で満たされた頭部など、実写では実現困難なアイデアをふんだんに盛り込んだデザインとなっているらしい。
また今回の依頼人ポジションである久保倉環奈を演じた菊地美香氏は胡堂小梅/デカピンクを演じたことで知られており仮面ライダーシリーズでは玉井ユキ/ランピリスワームで出演済み。あちらも大金持ちと結婚しようとしようとしたのも共通している(ただし環奈の場合「仕事人間だった自分を変えたい」と一念発起を願っていたのに対し、ユキの場合「ITセレブになる」という個人的な願望を持っていたという違いがある。)
アニメでは第7話において「仮面をつける風習」で翔太郎とフィリップが執事の木村から一応マスクを貰うが、そのマスクがどう見てもW本編第23、24話の仮面シンガーとして『Finger on the Trigger』を歌った際着けていたマスクそのものという小ネタがある。
更に8話では上記の通りフィリップが女装してメモリを蹴ってはたき落とすという『W』本編のライアー・ドーパント回のセルフオマージュと思わしきシーンがあり、フィリップは「ひとつ、弁解させて欲しい。
何故かよく女装を押し付けられるが、僕本人にそういう趣味はない」とこぼしている。
完全に読者と視聴者に向けて言っているやろ。
(なお、8話CMのアイキャッチによるとフィリップを女装させた相手は翔太郎と思われる)
第9話のおまけミニアニメ『亜樹子の危険な遊戯』において鏡野邸で一番酒に強い人は誰かを試した結果、ぶっちぎりで木村が優勝した。
描写をまとめると(一定の酔いが回るとアルコール、ドーパントになる)、
・財前…弱い。ベロベロに泥酔しそのままダウン。
・有藤&くるみ…強い。でも同時にダウンした。
・環奈&空也…下戸。変身せず最初から酔い潰れていた。(しかも空也だけ顔面蒼白)
・木村…ザル。ショットグラスで飲みまくっても平気。ドーパント化せず。
従って、順位は
木村>>>有藤=くるみ>財前>環奈>空也
キクは登場していなかったが酒を飲んでドーパント化しても酔っていなかったため木村と同様ザルだったと思われる。
※最後にフィリップが注意した通り「お酒はほどほどに」。
それと、お酒は二十歳になってから。
関連タグ
バード・ドーパント:アルコール・ドーパント同様、複数の人間がメモリを使って変身していたドーパント、
トライセラトップス・ドーパント:今回の依頼人がかつて演じた同じ戦隊メンバーが演じるドーパント繋がり。
オズチュウ星人イーアル:前述の戦隊関係者2人が戦った戦隊怪人でこちらも常習性のある違法薬物を使い対象者に衝動を起こさせ最終的に殺害に至るというコンセプトに近い物を持ちまた、久保倉も最終的に酔ったような衝動を見せている(ただし、アルコール・ドーパントは急性アルコール中毒を使った間接的殺人だったに対してこちらは直接殺害におり久保倉に対してはメモリの不適合対してこちらはただ単に敵の持っていた酒を奪い取り酒を飲み酔っただけ)。
天装鬼:風都探偵放送時期に放送されたスーパー戦隊に登場した戦隊怪人でネタ元が仮面ライダーWと同じ放送時期、2人の人間が1体の同じ個体に変貌すると同じ要素を持っている。