孤独のグルメ
こどくのぐるめ
時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき
つかの間、彼は自分勝手になり自由になる
誰にも邪魔されず、気を遣わず物を食べるという孤高の行為
この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高の癒しといえるのである
概要…そういうのもあるのか
「月刊PANJA」にて1994~1996年連載。現在は同出版社の「SPA!」にて不定期に連載。
あらたに『新装版 孤独のグルメ』が出版された。そして、2015年9月末第2巻目が刊行された。
2017年に作画の谷口が逝去した為、「事実上連載は終了した」と原作の久住氏により明かされた。
緻密に書き込まれた背景と料理は、実在の(または過去に実在した)店舗を参考にしている。
グルメ漫画ではあるが、基本的に主人公の井之頭五郎が1人あちこちで食事をしてモノローグが延々と続くだけ。他のグルメ漫画のような「食材や産地がどうこう」「調理法がどうこう」等の蘊蓄は出て来ない。
ステーキを残念そうに食べたり、コンビーフを美味しそうに食べたり、新幹線内をシュウマイの匂いで充満させてしまったりと実にハードボイルドに食べる。
そして何より五郎のあまりにネタっぽい(本人は大真面目なのだが)台詞が一部で話題になる。
いわゆるインターネットで火が付くパターンであり、正連載が終了し単行本が出版された数年後、文庫版やドラマCDが発売される等、じわじわと静かなブームが広がってゆく。
なるほど、これがドラマ版の概要か
2012年1月より松重豊主演で、実写ドラマがテレビ東京系で放映された。
松重氏の豪快で幸せそうな食いっぷりが、深夜の視聴者の腹の虫を刺激し「夜食テロ」なる言葉まで生まれた。
どちらかと言うと痩せ型で強面なルックスであり、漫画版の五郎とはかけ離れていたため「ミスキャストではないか?」との懸念もあったが、(松重氏の役作りの一環が功を奏した)その食いっぷりはまさに五郎そのものであり「これもまた五郎ちゃん」と受け入れられた。
「アニメや漫画の実写化作品に良作無し」とまで言われる程、実写化作品はハズレが多いジャンルではあるが、あえて漫画版を「原作」ではなく「原案」とし、よくある実写化作品のように「原作をそのままなぞる」ような展開をせず(作品としての「最低限の要素」を取捨選択の上に換骨奪胎)、大筋をドラマオリジナルの作風で仕上げた結果、前評判を覆して良作ドラマとして人気を博すに至った。
もとい「実在する店を架空の人物が探訪する」点では、「モキュメンタリー」としても定義でき、実際にそう表現しても差し支えないだろう。
なかでも、作中で腹ペコになった五郎(松重氏)が様々な場所で「( ゚д゚)ポカーン」と棒立ちになったまま(あるいは仕事中に座った状態で)ふと思い出したかのように「腹が、減った...」と呟く(直後、カメラが3段階で引く。背景を見ると歩行者や自動車が動いていたり、周囲の物が風に揺れていたりするので、止め絵ではないと確認できる)演出(通称「ポカーン三段引き」)や、番組の最後に原作者である久住昌之本人が、実際に作中で入店したお店を訪問しては酒を飲んで悦に浸るおまけコーナー「ふらっとQUSUMI」等の、ドラマ版独自の演出やおまけも人気が高い。
尚、「ふらっとQUSUMI」では酒好きな久住氏が毎回のように酒をオーダー(店側が好意で出してくれる場合も)するのだが、別に誰も咎めやしないのに日本酒やビール、マッコリ等をわざとらしく「井戸水」「麦ジュース」「カルピス」とシラを切って言い換えて笑いを取るのがお約束(そして「これらの下りに目くじらを立てる事無く乾いた笑いでスルーする」のが、通なファンの楽しみ方とされる)。
ちなみに、久住氏本人も本編にノータッチという訳でも無く、各シーズンの最終回で何らかの形でカメオ出演している(あまりのニアミスぶりに、近年では五郎ですら「どこかで見た様な…?」などとネタにされている)。尚、ドラマ作中の久住氏の職業についてはドラマ内で本人が店員に質問された際に「ミュージシャン」と答えている。(実際に一部BGMやテーマ曲は久住氏のバンド「Screentones」が担当している。)
もちろん、原作ファンもニヤリとするような小ネタの数々や、松重自身がナレーションを手掛ける「食事中の五郎ちゃんが織り成す独特のモノローグ」等、原作で特徴的だった部分をきちんと考証して作風に組み込んでもおり、原作ファンの視聴者に対しても抜かりは無い。
ちなみにこのナレーション、最初期はロケバスの中で録音機に直接収録するスタイルだったそう。
また、ドラマ作中のBGMはこのドラマに合わせて、作者の久住氏のチーム「Screentones」が作成したもので、二次使用に関しては久住氏にメールで許可を貰えれば自由に使える(久住氏曰く「作品のイメージを損なう」様な使い方でなければ問題無く使用出来る、とのこと)。
この作品のヒットに伴って主演の松重氏の人気も急上昇し、他のドラマやTVCM(特に食品関係)での起用率も上がり、ドラマ放映前に比べてテレビで見かける機会が明らかに増えた。
その為、いつしか別の作品でも「(松重氏演じるキャラクターが)実は1人で飯を食っているのでは?」とネタにされるようになったらしい。
その後同年10月には早くもシーズン2が、その後も2013年7月にシーズン3、2014年7月にシーズン4、2015年10月にシーズン5が放映され、テレビ東京深夜の顔としてすっかり定着した。
尚、松重氏は役柄とは裏腹に小食気味な為、出来るだけ一発でOKが出るように腐心していたと答えている。
実はシーズン3で主演を降りようと考えていたそうだが、評判の声と初主演のシリーズなのもあって、遂に腹を括って続投した。
尚、ドラマに登場した店には放送後に視聴者が訪れる事態が多々あるので、ある程度ほとぼりが冷めてからプライベートで訪れる事があると答えている。
そして、シーズン6では『釣りバカ日誌 Season2 ~新米社員 浜崎伝助~』とのコラボが決定し、出版社の垣根を超えた共演が実現した。
更に2018年4月にはシーズン7が放送されたが、第5話に関しては世界卓球の中継により放送開始時間が極めて大幅に遅れ、「見逃した」「録画失敗」となった視聴者が多数いた為、全12話終了後に「第5話の再放送」を行うに至った。
その後も地上波では2019年10月にはシーズン8を、2021年7月にはシーズン9が、2022年10月からはシーズン10放送されている他、BSテレ東での遅れネット(日曜夕方。2021年11月時点でシーズン9を放送)に合わせ、テレビ東京のYouTube公式チャンネルにて見逃し配信や不定期(新シリーズ開始や長期休暇やそれに準ずる時期)に過去エピソードの傑作選や、運が良ければスペシャル版や過去シーズンの一挙配信が行われている。
最近では夕方のアニメ枠を縮小し、とある刑事ドラマの如くシーズン1~シーズン10までのエピソードをランダムで放送するようになった。テレ東は孤独のグルメに全てを掛けたのだ…。
テレ東はこの時間帯を捨てたなと思いました
2017年、何と大みそかに孤独のグルメのスペシャルを放送した。ちなみに、この項目文は主演の松重豊氏のコメントである。
大みそかスペシャルでは瀬戸内に出張するとの事で、更には生中継パートが用意され、本編ラストで五郎が年越しそばを食する場面には、画面右上に「LIVE」の表示が出ていた。
大みそかと言えば、TOKYOMXがアニメを投入したのが話題となっているが、テレ東は大みそかに飯テロを起こしにかかっていた。
ここ数年のテレ東はボクシング中継がメインだったが、2017年は年越しそばで締めた。放送時間は午後10時~午後11時30分。また、名物となっている『ジルベスターコンサート』も、当番組に引き続いて放送された。
このためなのか、近年のテレ東(及び一部系列局)では「大晦日スペシャルに前後して『過去シーズンの一挙再放送』を実施」している(日によってはほぼ半日が本番組の再放送で埋まる事もある)。
2018年度版も放送。生中継パートでうな重を食した。この回より制作協力している共同テレビのロゴが「共テレ」表記になった(Season7放送後の同年10月に変更されたため)。
2019年度版も放送。令和初の大晦日スペシャルとなったが生中継は無かった。
2020年度版も放送。実際に地上波放送されたバージョンとTVerでの配信用での結末が異なる別バージョンを用意(もっとも、シーズン9開始前の事前番組で「実際には不測の事態に備え『公に放送・配信された2パターン』以外の『没案』が複数存在していた」事が明らかになった)。
2021年度版も放送。生中継は無かったが、90分枠の中で5食分も平らげるハイペースぶりを見せた。
2022年版も放送。前年のゲストにマナカ・ケンゴ(のそっくりさん)がゲストキャラ(五郎のミニを整備した修理屋)として登場したのに続き、今回はシズマ・ミツクニ(のそっくりさん)がゲストキャラ(ジンギスカン屋の大将)として登場するという珍事が発生している。
2023年版も放送。こちらは冒頭で「開運!なんでも鑑定団」とコラボレーションした上、大半を沖縄、そして終盤では台湾で飯を探す事になった(沖縄へと逃げたのは五郎自身の意思であったが、作中で巻き込まれたトラブルの大半の原因は道中で出会った川平慈英演じるゲストキャラが絡んていたものだったりする)。この回よりテレビ東京のロゴが「テレ東」表記になった(同年10月に変更されたため。なお、仮に2024年以降にSeason11の放送がある場合、TVシリーズではそちらからの導入になる)。
そしてドラマの人気は海外にも飛び火し、2015年5月より台湾でもドラマ化され、中国大陸でネット配信された。ただしこの台湾版は「人間ドラマに重きを置きすぎ」との意見が多く、あまり評判が良くなかった模様。
2015年10月放送のシーズン5では第4・5話にて五郎がシリーズで初めて海外(台湾)に出張。同じくシリーズ初となる前後編として、異国の地で通常のように食事をする展開となる。尚、この前後編には先述した台湾版で「伍郎(ウーラン)」を演じたウィンストン・チャオ(趙文瑄)も出演、日台の主役達が同じ店の飯を食う「夢の共宴」が実現した。
ちなみに、原作の執筆時から時間が経っている、実在の店舗をモデルとしている等の事情から、原作のエピソードを忠実に再現した回は無いものの、シチュエーションや台詞等、原作エピソードのテイスト自体はちゃんと盛り込まれている。
尚、原作漫画に出てきた店を舞台としないのは、原作者である久住氏がドラマ化にあたって出した唯一の条件が「マンガに出た店ではやらないでくれ」であった為で、スタッフ陣は12話分の店選びの為200店舗を回る事態も。
また、飲食店サイドから制作側に対して「うちの店はどうでしょうか?」とオファーが入る場合もあるが、自薦した店に対しては丁重に断っているとの弁である(ただし、地方ロケの場合は地元からの推薦が出るケースもある)。
尚、話に出てくる飲食店は実際の店舗で行っているが、店員はほぼ全員役者。概ね実店舗の店員やシェフの容姿は再現されている。ただし、シーズン6の串カツ屋台の女将さん達等は、実際に店員が出演する例も少なからずある。
また作中では五郎がフラフラと街中をさ迷い、直感で選んだ店に飛び込むのがパターンであるが、実際の店舗は普段から行列が当たり前で、予約必須の例も少なくない。聖地巡礼する際は下調べをおすすめする。番組公式ホームページにも「お店からのお願い」が掲載されている。
シーズン9以降(2021年大晦日スペシャル含む)は(放送時点の世相を反映してか)冒頭で右下に「このドラマは感染対策を行なった上で撮影しています」的なテロップを表示している(このテロップは本番組のみならず「ウルトラマントリガー」でも表示されていた為、恐らく「テレ東のドラマ全般の措置」と思われる。因みに「トリガー」でマナカ・ケンゴを演じた主演の寺坂頼我は、2021年大晦日スペシャルに出演している)。
……が、他のドラマなら「現実を想起させない為に敢えて『ノーマスク』で描写する」やり方をする所、本番組は「食べ物を扱う以上『ノーマスク』はあり得ない」と考えたのか、五郎は元より取引先の相手や店員や客等のエキストラ(と撮影スタッフ)の全員がマスクを着用(食べる時は外す)、五郎も店内に入る前にアルコール消毒や検温をしている。更に「ふらっとQUSUMI」でも久住氏が(店によっては酒類の提供が制限されている兼ね合いもあり)、いつもの「お約束」ではなく本当にノンアルコール飲料で凌ぐ「断酒」措置がなされていた(その後、シーズン10より飲酒が解禁された)。
なお、2023年大晦日スペシャルでは久々にノーマスクで食事をする描写がなされた。
実はこのドラマ化の企画、当初はフジテレビに持ち込まれたものだがそのフジテレビ側が断った(ちなみに、実際の番組制作にフジ系の番組制作会社である共同テレビが関わっているが、ある意味ではその名残でもあろう)。しかもフジテレビ推薦で井之頭小五郎役は長嶋一茂でキャスト予定だったらしいが久住昌之氏はTwitterで失敗すると勘付いたのか丁重に断ったそう。
フジは「売れるワケが無い」と判断して断ったらしいが、いざドラマ化されるや否や、本作がテレ東で大ヒットを飛ばしただけに留まらず、断続的な続編製作、ネット上を中心とした流行語を生みだした事実を鑑みると、週刊ダイヤモンドで掲載された「誰がテレビを殺したか?」の記事にてフジ上層部が「逃がした魚は大きい」とスタッフや製作担当者に激怒された内容が記されていた
う……誤植でしくじったか
『ハードボイルドグルメ漫画』と呼ばれる本作だが、原作漫画ではぶっ飛んだ誤植が散見される。その実例は以下となっている。
第1巻
- 「第10話 東京都杉並区 西荻窪のおまかせ定食」にて、『鰯と野菜のカレー』を『鰯と大根のカレー』と堂々と言い間違える(※五郎さんは注文前にメニューに目を通した上、実物を他の客のテーブルで目にしている)
- 「第13話 東京都新宿区 神宮球場のウィンナー・カレー」では、ウィンナーカレーの値段を「普通のカレーライスに『50円増し』」と説明しているが、前のページに載っているメニューでは『カレーライス ¥550』に対し『ウィンナーカレー ¥650』とあり、実際の差額は100円である(※五郎さんは上記の料理と同様、注文前にメニューに目を通している。ちなみにコマ内のメニュー表を見る限り、50円差額の料理は存在しない)
第2巻
- 「第13話 フランス・パリのアルジェリア料理」にて、『ハラル料理』を『ハラス料理』と間違えている。
うおォン 俺はまるで日本のスターだ〜海外の反応〜
中国
ビリビリ動画などでも本作が知られ、特に五郎が烏龍茶を頼むシーンで歓声があがる。中国人によると「バリエーション豊かな中国茶で、あえて烏龍茶をチョイスするのがシブイ。」「日本では中国茶をアイスで飲むのが単純に面白いし、珍しい。(中国では、体を冷やすのは毒だと考えられており、お茶は基本的にホットで飲む。)」まぁ、外国料理の店に寄った時にはその国ならではの飲み物を頼むケースもあるが、和食の場合はほとんど烏龍茶である。
韓国
「一人で外食をする」事をホンパプと呼び、おかしい。と、あまりポジティブではないのが韓国だが、「孤独のグルメ」が知られるようになってから、一人での食事も好意的に捉えられるようになったのだとか。実際に韓国を訪れた韓国回は神回として取り扱われている。
この関連タグは正解だった
アームロック それ以上いけない こういうのでいいんだよ うおォン 人間火力発電所 腹が、減った...
野田圭一:シーズン3とシーズン5以降でオープニングナレーションを担当。またシーズン5第12話では本編にゲスト出演。
孤独のグルメパロ:pixiv内における同作のオマージュ・パロディ作品用タグ。
- ソロ活女子のススメ:同日同枠で放送している深夜ドラマ。一人で好きな事を好きなように満喫するお一人様肯定ドラマ繋がり。こちらも漫画原作であり、食事以外にも様々な「ソロ活動」を行っており、視聴者の間では女性版孤独のグルメと言われている。一度だけ孤独のグルメとコラボした事があり、その主人公と五郎は顔見知りの間柄になっている。主演は江口のりこ氏で、松重氏と共に名バイプレイヤーとの呼び声が高い実力派俳優である。
- 深夜食堂:夜食テロ絡みで、コラボイラストがいくつか見られる。加えて松重豊がダブってくれた。
- ゴローとシャーリー:メイド・シャーリー・メディスンとの二次制作コラボ
- 美味しんぼ:同じく「食」をテーマにしたアニメ。こちらは、どうして食べ物は美味しいのかを分かりやすく説明している。ただし、主人公の山岡士郎および父親の海原雄山は『ひたすら美味なる料理を追求する』『人の作った料理に上から目線で文句を浴びせる』など、井之頭五郎とはまさに正反対である。
- デリシャスパーティ♡プリキュア:同じく「食」をテーマにしたアニメ。こちらも一人でじっくり食事を味わう「楽しさ」を肯定している。
- 妖怪ウォッチ:アニメ版に「給食のグルメ」というパロディコーナーがある。
- ポケモンSV:「食」をモチーフにした街や、明らかに五郎を意識したと思われるサラリーマン兼ジムリーダーのアオキが登場する。奇しくも実写ドラマ版とアニポケは同じ放送局であるため、「アオキのグルメ」というタグが作られた。
- タイムボカン24:放送局は他局だが、上記の妖怪ウォッチと同様にレベルファイブが関係しているため、本編中にBGMが使用された。その際、エンディングには「友情音楽」として孤独のグルメがクレジットされている。