あらすじ
第二次世界大戦でドイツは敗れ、ナチスが野望は潰えたのはご周知の通り。
しかし、ナチスは滅んではいなかった。
月の裏側へ逃げ延び、巨大な秘密基地を作り上げ、子孫を繁栄させて教育を施し、再び世界に宣戦布告せんと軍備を整えていたのだ。
時に2018年。アメリカ大統領の人気取りのために月面飛行士に抜擢された黒人モデル、ジェームズ・ワシントンは、月の裏側でナチスに遭遇。仲間を殺された上、連行されてしまう。
世界大戦時代から価値観の変わっていないナチスは、"劣等種"の黒人が宇宙飛行士になっている事実に愕然とし、ジェームズを勝手に薬物で白人にしてしまう。
さらにワシントンの持っていたスマートフォンの性能に衝撃を覚えると、それを長年に渡って建造していた宇宙戦艦「神々の黄昏」号の中枢に使おうと考えた。だがバッテリーが切れたため起動は失敗。
大量のスマホを確保するため、クラウス・アドラー准将はUFOでアメリカ合衆国に飛ぶ。確認のためワシントンと、アドラーの婚約者レナーテ・リヒターも同行した。そして彼らは大統領に接触するが、事態は意外な方向に……。
概要
「月からナチスがやってくる」という、おまえは何を言っているんだという内容は監督が脚本家の友人とサウナで交わした会話から着想を得たもの。
低予算のインディペンデント映画ながらフィンランド・ドイツ・オーストラリアから予算をかき集め、さらにインターネットを通じて一般の映画ファンにカンパを募るという画期的な方法から一億円(全体の一割)を確保した。これらのリターンとして、制作者側はグッズを販売。さらにファンと意見を交わし、プロットの案を採用するなど、観客参加型の映画制作が展開した。
これで話題性も手に入れたが、今作はそういった出オチに頼らない、風刺としての完成度の高さが魅力であり、世界的にヒットを記録した。
これを受けて前日譚と続編の企画が動いているが、ブオレンソラ監督に別の仕事が舞い込んでいるため、まだ先になると語っている。
登場人物・キャスト
レナーテ・リヒター:ユリア・ディーツェ(甲斐田裕子)
月で生まれ、ナチスに育てられた月面青年団伍長。
普段はナチスの思想を子供たちに教えており、それを純粋に妄信するアホの子。
地球からやってきたワシントンに興味津々。
アドラーの婚約者として"優等種"の子孫を残すことを運命付けられている。
クラウス・アドラー:ゲッツ・オットー(楠大典)
リヒター同様、月生まれのナチス将校。月面親衛隊准将。
リヒターと結婚して子孫を残すことにこだわっているが、かなり短気で強引。
実は野心家であり、独自の意図でアメリカ大統領に接触する。
ジェームズ・ワシントン:クリストファー・カービー(高木渉)
宇宙飛行士だが、本業は黒人のモデル。
月面でナチスの捕虜になった後、リヒター博士の粋な計らいで白人にされてしまう。
ウォルフガング・コーツフライシュ総統:ウド・キア(後藤哲夫)
月面ナチスの現・総統。
他のナチス同様やはりズレているが、作戦行動の手回しは早い。
リヒター博士:ティロ・プリュックナー(岩崎ひろし)
レナーテ・リヒターの父親で、科学者。
かのナチス将校ヨーゼフ・メンゲレと同じ研究をするマッドサイエンティスト。
ヴィヴィアン・ワグナー:ペーター・サージェント(朴璐美)
大統領の女性広報。
大統領にはその腕を買われているが、責任まですべて押し付けられる難儀な人。
アメリカ合衆国大統領:ステファニー・ポール(塩田朋子)
何代目かはわからない女性大統領。
直情的で、言動にはだいぶ問題がある。
スタッフ
監督:ティモ・ブオレンソラ
製作:テロ・カウコマー/オリヴァー・ダミアン/キャシー・エヴェレット/マーク・エヴェレット/サムリ・トルソンエン
脚本:マイケル・カレスニコ/ティモ・ブオレンソーラ
ストーリー:ヨハンナ・シニサロ/ヤルモ・プスカラ(原案)
撮影:ミカ・オラスマー
編集:スレーシュ・エイアー
音楽:ライバッハ
製作国:フィンランド/ドイツ/オーストラリア
日本語字幕:高橋ヨシキ / 監修:町山智浩
製作会社:Energia Productions
小説版
2012年9月19日、本作の字幕を担当した高橋ヨシキによる小説版が竹書房文庫から発売された。小説版ではコーツフライシュやアドラーの過去など、映画には存在しないシーンがいくつか追加されているほか、登場人物の性格や設定も一部変更されている。また、映画ではアメリカ大統領の名が登場しないが、小説ではサラ・ペイリンとされている。
公開日と配給
ドイツ | 2012年2月11日 | 第62回ベルリン国際映画祭 |
フィンランド | 2012年4月4日 | ウォルト・ディズニー・スタジオ |
アメリカ合衆国 | 2012年7月25日 | ポリバンド |
日本 | 2012年9月28日 | プレシディオ(R-12指定) |