※本記事は一部アニヲタWiki(仮)から引用している部分があります。また、当事件のネタバレが含まれています
あらすじ
週末に探偵団のメンバーとキャンプに行く予定の歩美。
キャンプ前夜のちょっとした会話から、「灰原さん」だけ他のクラスメイトの女の子たちと呼び方が違うことに気づく。
歩美はこの機会に灰原を「哀ちゃん」と呼んで彼女との距離を縮めようと考えたのだが、いざ彼女を前にするとなかなかうまくいかなかった。
そんな中、一同は豪華なキャンピングカーで山に来ていたアウトドア同好会の大学生4人組に出会う。
一見仲が良いように見える4人組だったが、コナンはそんな彼らを見て何か違和感を覚えていた。
探偵団はバーベキューをご馳走になったお礼として同好会メンバーを夕食に誘うが、その仲間の1人・白藤泰美はなぜか姿を見せなかった。
もしかしたら近くで行われる花火がとてもよく見える高台に先回りしているのではと思った残りの3人は、探偵団をキャンピングカーに乗せてその高台に向かう。
そこにも泰美の姿はなく、一行はそこで花火を見た後にキャンプ場への帰路につくが、その途中で福浦玲治がキャンピングカーを急停止させる。
何があったのか福浦に聞く一同だったが彼の顔は青ざめており、彼の目の前には頭から血を流して倒れている泰美の遺体があった……。
概要
単行本第39巻に収録されている。テレビアニメでは第329話・第330話として2003年7月28日と8月4日に放送された。この事件におけるテーマは「真の友情とは何か?」になっており、この事件の裏の主人公の歩美とラストでとあるセリフを言った灰原の友情がどう深まるかが必見である。
ゲストキャラ
白藤泰美(しらふじ やすみ)
CV:荒川美奈子
大学生。22歳。この事件の被害者。
アウトドア同好会のムードメーカー的存在。料理が得意。
晴華の事を親友と言いつつも、「肉が足りなくなったら晴華さんの財布を使って買いに行けばいい」などと言って平気な顔でたかっていた。
夕食の頃から行方不明になり、しばらく経った後に山道で遺体が発見される。
現場の状況から暗い時間帯に高台へ来た時に誤って自転車ごと転落した事故だと思われたが、後の捜査で他殺の可能性も浮上する。
福浦玲治(ふくうら れいじ)
CV:難波圭一
大学生。21歳。
元ドリフト族であり、メンバーの中で一番運転がうまい事からキャンピングカーの運転も買って出ている。
泰美は呼び捨ての一方で、何故か付き合っている晴華のことは「晴華さん」とさん付けで呼んでおり、どこか他人行儀である。
天堂晴華(てんどう はるか)
CV:荒木香恵
大学生。21歳。
金持ちのお嬢様であるらしく、彼らの乗っていたキャンピングカーは彼女の伯父の所有物らしい。
彼女がスポンサーになって以降は同好会の活動も豪華なものになったとのこと。
「私には何のとりえもないからお金しか出せない」と言っていたが、そんな彼女とメンバーのやりとりを見てコナンは違和感を感じ……。
飯合拓人(めしあい たくと)
CV:永野広一
大学生。23歳。
山菜採りや釣りが得意な、根っからのアウトドア好き。
キャンピングカーが山道を走行中に歩美と一緒にサンルーフから顔を出し、山間に打ち上がった花火を見て楽しんだ。
恵(めぐみ)
CV:釘宮理恵
冒頭で歩美が電話していたコナンたちのクラスメイトで歩美の飼育当番を代わりに引き受けた心優しい女の子。声のみの登場で今回の事件とは関係はない。
歩美がコナンと出かけた時に巻き込まれる事件の話を聞くのが楽しみになっているらしい。…巻き込まれる事件の大半が殺人だが。
事件の真相(ネタバレ注意)
今回のトリックは、構造をうまく使って最初は泰美の死を事故に見せかけておき、他殺の可能性が浮上した時には福浦に容疑がかかるという二重のトリックを用いる。
まず泰美に「車に登ってサンルーフを拭いてほしい」と頼み、サンルーフを拭いている泰美を背後から石で撲殺。泰美のベルトの飾りの紐の一本に結び目を作り、サンルーフに挟んだ。
次に死体をくの字に折り曲げ、死体と車の間にビニールシートを敷く事で摩擦を減らし、走行中でも死体が落ちないようにした。
後は運転している福浦にサンルーフを開けさせれば、坂道と風圧で死体は落ち、ビニールシートは飛んでいき、天井には何もないように見える。
犯人がが阿笠と少年探偵団をキャンピングカーに乗せたのは、死体が落ちる瞬間を見られないようにする為であった。
ミスリードを用意していた事で一時はコナンの目すら間違った真相へと向けさせていたが、歩美が花火を見た場所が丁度泰美が見つかった場所であると言った事でコナンはミスリードに気づき、更に返り血を浴びて着替えた時にジーパンの後ろの穴にベルトを通し忘れていた事を歩美に指摘された人物がいた。
その犯人は、天堂晴華であった。当初はしらを切っていたが、事件前に撮った写真との矛盾等を指摘されて罪を認めた。
犯行の動機は裏切り。
実は彼女はお嬢様ではなく、田舎から都会に出てきた平凡な大学生だった。上京当時はなかなか友達ができずにいたようで、そんな日々を過ごす中で彼女は「お金持ちのフリをすれば友達ができるかもしれない」と考えるようになる。そのために必死でバイトをし、借金までしてお金を工面する。こうして貯めたお金でお嬢様の振りをしてアウトドア同好会に入り、メンバーを海や山へ連れていって彼らと友情を深めようとした。その甲斐あって自分がお嬢様だと信じ込ませる事には成功して友達もできたが、その反面彼女の生活は徐々に楽なものではなくなっていった。それでも彼女は「初めてできた友達だから頑張れた」と言っていたが、その友情はある日突然崩れ去る事となる。
それはたまたま部室の前を通りかかった時だった。そこには他の同好会のメンバー3人が揃っており、その中の泰美が他の男性陣2人に向かって「晴華は金持ちのお嬢様なんかではない」と暴露していた。どうやら泰美は4年前に出会った頃から怪しんでいたようで、晴華の住まいがボロアパートだと突き止めた事で「晴華=貧乏学生」だと確信したらしい。それを聞いた飯合は「彼女と親友なら嘘はいけないと言ってあげたほうが…」と泰美に言うが、その言葉を受けた泰美はにやけながら……
「親友?ただの金ヅルよ!でなきゃ4年も知らない振りなんか出来ないわよ!笑いをこらえるのが大変だったけどね…」……と吐き捨てた。
そして泰美の話を聞いて事実を知った彼氏の福浦は晴華を擁護するどころか、今後も彼女をお嬢様ともてはやすだけしておいて貢がせ、卒業したらすぐに別れようと残念がっていた(彼も晴華の事を「金だけの女」程度にしか思っていなかったようで、逆タマを狙って彼女と4年間も付き合っていたらしく、真相を聞かされてすぐにその恋は冷め、本当の愛は無かった)。飯合は泰美が晴華の嘘を暴露した際に親友(と称していた)泰美に嘘を止めた方がいいと提案するも「逆ギレされて今までのお金返してなんて言われたらどーすんの」と泰美から言い返され、「そんな子じゃないと思うけど…」と晴華をフォローしつつも何もしなかった(その為か、彼のみ命を狙われたり罪を擦り付けることはなかった)。
ともあれ、そんなやりとりを一部始終立ち聞きしていた晴華は怒りに震え、事実を知りながらずっと金をたかっていた泰美を殺害してその罪を福浦に着せようと決心し、今回のキャンプでそれを実行した。
それを聞いた男性2人はそれに驚き、晴華は涙ながらに「ええ!!望みどおり逆ギレしてあげたのよ!!友情を踏みにじったあの女に!!」と言ったが…。
そんなの友達じゃないよ!そんなの最初から友達なんかじゃない…
歩美が涙ながらにそう叫び、灰原は続けて…
ええ、そうね。缶ジュースの自動販売機と一緒だわ。お金を入れれば喉を潤してくれるけど…。入れなければ何も出してくれないもの…。お金なんかじゃ人の心は買えやしないわよ…。
…と諭す。
その言葉を聞いた晴華はそれ以上何も言い返せずに泣き出し、警察に連行されていった。
また、灰原の言葉に福浦や飯合も罪悪感を抱いたのか、申し訳なさそうな様子であった。
翌日の帰りの車
灰原は晴華たちに掛けた言葉を、探偵団や阿笠から「心がスッとした」などと賞賛されていた。
しかし、彼女は「(あの言葉は)ただの受け売りよ…」と答える。
ここで事件が起こる少し前の回想に入る(原作では上記のセリフを言った直後に入る)。
大学生4人とバーベキューを楽しんでいる時、灰原はコナンの箸があまり進んでない事に気づく。理由を聞くとコナンは、「普通そうだよなあって思ってな」と言って、新一だった頃のとある出来事を話し出した。以前、蘭と園子がスキーに行く計画を立てていたが蘭が金欠で参加を断る(時系列的に1年の2学期の終わりか3学期の頭と思われる)。理由を知った新一は「旅費なら金持ちの園子に出してもらえば…」と言うが、それを聞いた蘭は途端に怒り出し……
「そんなの絶対ダメだよ!!わたし園子と一生親友でいたいから!!」
……と言い返した。
どうやら蘭は、園子とはずっと対等な親友であり続けるために、彼女から都合のいい時にお金を援助してもらうようなことは絶対にしないようにしているらしい。その事もあってコナンには平気で「お嬢様」にたかっている同好会のメンバーの友情が嘘っぽく見えてしまったようである。
そんな話を事前にコナンから聞いていた事もあり、友情ごっこを続けている同好会のメンバーに対し先の言葉をぶつけたらしい。
しかし、それでも歩美は「カッコよかったよ!」と灰原を褒めるも、直後に何かを言いかけて口ごもってしまう。そんな歩美を見て思惑に気づくと、彼女にこれから名前で呼んでもいいと許してあげる事に。許可をもらった歩美は早速「哀ちゃん!」と呼んで屈託の無い笑顔を浮かべた。
流石に灰原からは「歩美ちゃん」と呼ばれなかったものの、この件を通じて更に友情が深まったようである。
元太と光彦も、彼女を「哀ちゃん」と呼ぼうとした時、「あなた達はダメ」と制止される。2人が「哀ちゃん」と呼ぶ日が来るのは、まだまだ先のようである…。
劇場版はテーマと真逆?
『お金で買えない友情』のテーマは上記の通り、「真の友情とは何か?」だが、劇場版ではむしろ園子のコネを利用して(特に探偵団)『異次元の狙撃手』ではベルツリータワーの展望台を貸切にしたり、『純黒の悪夢』ではゲスト待遇で観覧車に乗ったりするなど、園子からの招待もあるものの結果的に何度も「お嬢様」の力を利用している(ただし、『緋色の弾丸』ではコネを利用してリニアで乗ろうと考えた時には園子に一喝された。また、蘭も探偵団の為に仮面ヤイバーのチケットを園子に用意してもらった事がある。)。
余談
某アニメ雑誌の読者投稿コーナーで、この回について「サブタイトル(の時点)で犯人のネタバレをしている」という意見が寄せられたことがあった。
今回の事件の発端は、現代社会にも問題になっている人間関係の破滅やイジメをただ見てるしかないが原因になっており、親友との口実で晴華を金づるしか見てなかった泰美と、貧乏とわかった途端すぐに切り捨てるつもりだった福浦、そしてフォローしつつも何らかの援護もせずに晴華の金でアウトドアを満喫していた飯合。金の力で友人を得ようとし、更に(裏切られたとはいえ)殺人を犯した晴華も晴華だが、彼女をそこまで追い込んだ3人(特に泰美と福浦)が良心や「私たちの為に、自分を偽って、自分を追い込んでまで頑張るなんて…。でも彼女のことを思うと、言い出せない」とでも罪悪感があったり、表立って援護していれば、今回のような事件が起こらなかったと思われる(福浦に関しては、事件後に女性不信になった可能性もある)。仮にも晴華が立ち聞きしたり殺意が芽生えなくても、彼女を金づるとしか見ていない3人(特に泰美)は、本当の友情は無かったのは確かである。もし晴華が別の方法で友達を作ったり、泰美と福浦に出会わなかったら、彼女は別の未来を歩んでいたのかもしれない。どちらにしろ、本人がいるかいないかにもかかわらず悪口を言った泰美の言葉に責任感は無かったのは確かである(彼女の他の友人は居たかは不明だが、仮にいたとしても、内心はよく思ってはいないと思われる)。