毒のゴミが降ってきた…
二郎の飼っていた緑亀やカブトムシの様にみんな死んでしまう
クリーン星へ行こう、カブトムシに乗って!次郎の夢は本当だった
巨大なカブトムシが毒のゴミを撒き散らして
地球を破壊しようとしている!地球を守れゲン!
みんなで見よう「ウルトラマンレオ」!!
放送日
1974年9月27日
登場怪獣
宇宙昆虫サタンビートル
幻想宇宙人クリーン星人
STORY
トオル「水爆だ…!」
トオルはその日、金魚を飼っている友達の家へ仲間と一緒にお邪魔し、水爆実験に見立てて水槽の中へ墨を垂らす光景に感心していた。しかし、一緒に来ていた二郎少年が「何だいこんなもの!!」と急に錯乱したかの様に水槽の中に手を突っ込んだので、みんなで止めようとすると二郎はすぐに部屋を出ていってしまう。残されたトオル達は「変な奴だなぁ」と唖然とし、水槽の中の金魚は黒い霧がかかった様になった水中を泳ぎ回っていた。
(場面転換)
歩道橋の上から車の往来を見つめる二郎。その顔は暗く、やがて彼が咳込み始めると、そこへ偶然百子とカオルが通りがかり、彼を心配して駆け寄る。
カオル「二郎ちゃんどうしたの?」
二郎「僕、体がだんだん弱くなってきたんだ…」
百子「えぇっ?」
二郎「僕ねぇ、僕…」
百子「どうしたの一体?」
二郎「夢を見たんだ、空から毒のゴミがいっぱい降って来る…」
カオル「夢の話でしょそれ?」
二郎「でも本当のことなんだ!僕のミドリガメも死に、カブトムシもいなくなったんだ、きっとどっかで死んでるよ…僕も、僕ももうすぐ…!」
そこまで話して二郎は走り去った。もうカオルが呼んでも彼は振り返らず、明らかに様子のおかしい彼を百子とカオルは顔を見合わせて不思議がるのだった。
その後、二郎は道路を走るマックロディーを発見すると、進路上に立ちはだかって手を振り、呼び止める。乗っていたゲンがブレーキをかけると、二郎は運転席のゲンに駆け寄る。
ゲン「危ないじゃないか、何かあったのかい?」
二郎「マッキー3号は、宇宙へ行ける?」
ゲン「?あぁ、行けるよ」
二郎「僕をどっか、綺麗な星へ連れてって!ねぇ、ねぇ!」
ゲン「一体、どうしたんだい?」
二郎「ゴミが…」
ゲン「ゴミ?」
二郎「窓から毒のゴミがいっぱい入って来る夢を見たんだ」
ゲン「ハハ、なぁんだ夢の話か」
二郎「でも本当の夢なんだよ!」
ゲン「"本当の夢"?」
二郎「うん、僕の体は毒のゴミに弱いんだ…だから僕だけ、だんだん弱っていくんだ…!僕だけじゃない、窓の所に置いといた、ミドリガメも死んじゃったんだ!ねぇ、お願いだから僕を綺麗な星へ連れてってよ!」
ゲン「…よし分かった!もしそんな恐ろしい毒のゴミが空から降って来たら、君を真っ先に綺麗な星に連れてってあげる、約束するよ…でも今は大丈夫だ、君の思い過ごしだよ」
二郎「でも、僕…」
ゲン「本当に大丈夫だって!」
二郎「でも、僕…」
ゲン「本当に大丈夫だって!」
ゲンは二郎こ両肩に手を当てて大丈夫だと教えたが、二郎は浮かない顔でとぼとぼと帰って行った。ゲンはその背中を、困惑しつつ見つめる。
(場面転換)
MAC基地へ帰還した後も、ゲンの脳裏には二郎の言葉が残っていた。近くでは大槻隊員を佐藤隊員と白土隊員が怪談ドッキリでからかっており、ダンもその様子を見て笑っていたが、ふと考え込んでばかりのゲンが気になり話しかける。
ダン「どうしたんだゲン?」
佐藤「変だぞ?おおとり隊員」
ゲン「宇宙をパトロールしてる時、いつも思うんですけど、地球程美しく見える星はありませんよね…」
白土「本当だな、遠くから見れば綺麗なもんだ」
すると、パトロールから帰ってきた梶田隊員がゲンの所へやって来た。
梶田「おおとり隊員、今日パトロール中に二郎って子供に会った?」
ゲン「あぁ」
梶田「トオル君の友達なんだそうだ、その子」
ゲン「どうしたんだい?」
梶田「熱を出しておおとり隊員に電話してくれって言い続けてるそうだ」
ゲン「熱を出して?」
梶田「うん」
すると今度は大槻隊員が通信席から戻り、ダンに報告する。
大槻「隊長、地球防衛委員会発・クリーン星で明朝6時に新型CX137ロケット弾の実験を行うと決定した。尚、地球には全く影響のない模様です」
ダン「うん…」
ダンは頷くが、その顔はどこか晴れないものであった。
(画面が青くなって場面転換)
話に聞いた通り二郎の体調は悪化しており、彼は頭に濡れタオルを乗せられ熱に魘されていた。彼の母に通されてゲンが部屋に入ると、母親によれば二郎の症状は風邪であり医者にも2、3日寝ていればよくなると言われたという。
母親は二郎を起こしてタオルの水を取り替え、ゲンにお茶を入れようと戻って行ったが、ゲンはすぐ失礼するからと遠慮した。
2人きりになると二郎はゲンに弱々しく話しかけるが、ゲンはすぐよくなると慰める。すると彼は机の引き出しを開けてくれとゲンに頼み、ゲンが指差した通りの引き出しを開けると中には箱が。二郎の頼みでそれを持ってきて開けてやると、中には黄色い花に囲まれたミドリガメの死骸が。ゲンが驚き目を見張ると、突如二郎が苦しみ出した。喉の痛みを訴え、きっと毒のゴミだと叫ぶ。ゲンが揺り起こしても二郎の様子は変わらなかった。
(場面転換)
ゲンは車を運転し二郎の家から帰っていたが、その頭の中は二郎の「いつ綺麗な星へ連れてってくれるの…?」という言葉でいっぱいだった。
その頃二郎はやっと眠りにつき、夢を見ていた。
彼が真っ白な部屋の中で寝ついていると、どこからか彼の名を呼ぶ声がする。それに気付いた二郎が目覚めると、部屋の奥の窓際から光と共に謎の少年が現れた。
二郎「誰?どっから来たの?」
少年(クリーン星人)「クリーン星から来た星人さ!君は、綺麗な星へ行きたいんだね?」
二郎「連れてってくれるの!?」
クリーン星人「うん!」
二郎「すぐ用意するよ!」
クリーン星人「用意など要らないさ、さぁすぐ行こう!いいかい?」
クリーン星人は二郎のベッドに座って話すと、何やらパントマイムでもするかの様な仕草と共に手を広げ、触れずに窓を開けてみせた。
二郎「わぁ、すごい…!」
すると、真っ白だった筈の外が青くなり、上から砂か紙吹雪のような何かが降ってきた。
クリーン星人「あ!いけない、また毒のゴミが降ってきた!さぁ、急ごう」
クリーン星人は二郎をマントで包む。毒のゴミは近くの積み木の広場の様な場所にも降り注ぎ、どこからか爆発が起こって広場は砕け散った。
一方、二郎はクリーン星人に連れられて美しい花畑へやってきた。辺りには光る粉が舞い散り、幻想的な光景を作り出す。
クリーン星人「さぁ、ここだよ!」
二郎「わあ…ここがクリーン星?」
クリーン星人「そうだよ」
二郎「綺麗だなぁ…!綺麗だなぁ、すっごいなぁ…あっ!ミドリガメだ…あっ、僕のカブトムシだ!」
そこには死んだ筈のミドリガメが。二郎が拾い上げると、近くの花の影から消えたカブトムシも現れる。
カブトムシ「そうだよ二郎、ここへ来てすっかり元気になったんだ」
ミドリガメ「私なんか、生き返ったのよ!」
カブトムシ「ここは良いよ、地球と違って」
二郎「毒のゴミは降らない?」
カブトムシ「降るもんか!」
二郎「じゃ、目に染みる雨は?」
カブトムシ「降るもんか、二郎もここで暮らせば一変に元気になるさ」
ミドリガメ「そうね!」
カブトムシ「いいよここは!なぁ」
ミドリガメ「えぇ、クリーン星へ来て本当に良かったわ!」
カブトムシ「二郎、みんな呼んでやろうよ」
二郎「お父さんもお母さんも、みんな来ればいいのになぁ」
喜ぶ二郎。しかしどういう訳か、明るいbgmに混ざって暗い不協和音が流れる。すると二郎は母に起こされ目が覚めた。
母「二郎ちゃん、二郎ちゃん!」
二郎「カブトムシが、僕のカブトムシが…!」
母「アハ、夢を見たのね?窓を開けて空気を入れ替えましょう」
二郎「開けないでお母さん!」
母「どうしたの?」
二郎「毒のゴミが…!」
母「まだ言ってるの?大丈夫よ、MACのお兄ちゃんもそう仰ったでしょ?さ、はい休みなさい」
二郎「開けないでお母さん!開けないで、開けないで!!」
二郎は必死な様子で窓を開ける母の前に割り入り、一度開いた窓にしがみついて閉めてしまう。当然毒のゴミなど降っていなかったが、既に二郎は精神的にやられていたのだ。
(場面転換)
MAC基地に鳴り響くサイレンの音。UFOが地球に接近しているとの知らせだった。続けて宇宙ステーションV9からも連絡が入り、ゲンが応答すると救援を求める声が。しかし、相手が「現在V9の…」とまで言いかけた所で爆発音が鳴り響き、通信は途絶えた。ダンは白土を出動させ、ゲンも引き続きV9に呼びかけるが遂に応答はなかった。
その間にもUFOが地球に接近を続けていること、V9が攻撃を受けたことを知らせる伝達や、宇宙ステーションHからロケット戦闘機隊が全機撃墜されたとの知らせも入り、事態は深刻化の一途を辿る。
すると佐藤のレーダーが白土の乗ったマッキー3号とUFOの二機をキャッチし、あと5分で両者が接触すると計算。ダンはゲンを連れて出撃する。
一方の白土は本部の佐藤からUFOがスペースポイント0724を通過したと聞かされ、一直線に向かってゆく。すると、上空から大きな黒い影が姿を現した。
ナレーション「それは、宇宙昆虫・サタンビートルだった!」
(場面転換)
その頃、二郎は怪獣騒ぎを聞きつけたらしくベッドの上で目を覚ましていた。すると母親が氷枕を持って部屋にやって来る。
母「あらあら二郎ちゃん、寝てなくちゃ駄目じゃないの!」
二郎「お母さん、怪獣は東京に来るの?」
母「ええ、家から出ないようにってTVで言ってるわ」
二郎「MACがやっつけてくれるよね、きっと!」
母「でもね、40mもある宇宙昆虫なんですって。カブトムシによく似た」
二郎「カブトムシ…?」
(場面転換)
一方、サタンビートル迎撃に向かったゲンとダンの乗ったマッキー2号が空を飛んでいた。サタンビートルの存在に疑問を抱いたゲンが話していると、白土からの通信が入る。
ゲン「隊長、宇宙のどこから飛んできたんでしょうか?それに、どうしてそんなものが地球に…」
白土「こちらマッキー3号!応答願います」
ダン「モロボシだ」
白土「宇宙昆虫は、間もなく東京上空に侵入します!」
ダン「よしわかった!」
ゲン(ひょっとしたら、クリーン星から飛んできたのかも知れない…そうだ、きっとそうだ…!)
ゲンは例の実験を思い出し、これがクリーン星人の報復なのではないかと推測を立てるが…
(Aパート終了)
母がいなくなった後も二郎は「カブトムシに似た宇宙昆虫」という言葉が引っかかり、部屋で1人考え込む。
二郎「カブトムシ、カブトムシ…僕を迎えにきてくれたのかな!?」
ふと夢に出てきたカブトムシを思い出した二郎は、遂に窓を開ける。そして見上げた空には、宙を舞うサタンビートルの姿が。
二郎「あっ、あれだ!やっぱりそうだ、僕の…僕のカブトムシだ!」
一方のMACは、白土のミサイル発射を呼び水に本格的な攻撃を開始。ゲンも共にサタンビートルを迎え撃つが、サタンビートルは胸のランプを光らせて両脇からロケット弾を次々撃ち出す。街は次々破壊され、道は助けを求める人で溢れかえり救急車のサイレンが鳴り響く。
しかしそんな光景を見ても、あれが自分の迎えだと信じて疑わない二郎は寝衣のままで、両手を振って飛び跳ねながら家を飛び出す。
二郎「ワーイ!ワーイ!!僕のカブトムシだー!!」
サタンビートルも地上へ降り立ち、羽を収納。上空のゲンも無邪気に道路をスキップする二郎に気付き、着陸して助けに向かう。
ゲン「二郎君危ない!戻れーっ!!」
しかしゲンの制止の声も二郎には届かず、大喜びの二郎は一直線にサタンビートルへ向かって行く。ゲンはマックガンでサタンビートルを射撃するものの、サタンビートルもゲンに狙いを定めて爆撃を始める。しかしゲンは怯むことなく、二郎を救うべく炎の中を突っ走る。
だが二郎はそんなことなど露知らず、転んで尚地響き立ててこちらに歩みを進めるサタンビートルを自分のカブトムシだと信じ込み、立って笑顔で見つめる。
ゲンもいよいよレオへと変身し、サタンビートルに戦いを挑む!
ゲン「レオーッ!!」
降り立ったレオの姿を見るなりサタンビートルは再び飛び立ち、空中を旋回しながら突進。レオもその勢いによろけ、工場に倒れてしまう。
体制を崩したレオの上に立ち塞がったサタンビートルは、レオを突き刺そうと何度もツノを振り下ろすが回避され続け、しまいには受け止められて共に地面を転がる。
勢いそのままに立ち上がった両者だったが、レオのキック連打と巴投げを受けてサタンビートルは相手を見失い、その隙にレオはサタンビートルの羽を掴んで振り回し、遂にむしり取ってしまう。
しかしサタンビートルも負けじとロケット弾掃射でレオに迫り、辺りの工場や山を吹っ飛ばして大暴れ。レオもこれには堪らずにひとまず近くの山を跳び越え避難。爆発で飛んできた瓦礫は二郎を掠め、ショックで倒れた二郎は意識朦朧とする中夢の世界へ…
(場面転換)
二郎は夢の中で積み木の城下町を彷徨っていた。しかしどこからか爆発が起こって町は崩れ、更に毒のゴミが降り注ぐ。
二郎「あっ!毒のゴミだ!!」
毒のゴミを避けながら必死に逃げる二郎。すると、彼を呼ぶ声が。
クリーン星人「二郎、こっちだ!こっちだ、こっちだ」
二郎「あっ、クリーン星人だ!」
見れば、クリーン星人がブランコに乗って手招きしているではないか。しかし、そうしている間にも毒のゴミは降り続ける。
二郎「うわっ、毒のゴミが!毒のゴミが!!」
クリーン星人「慌てることはない!さぁ、早くブランコにお乗り。このブランコは普通のブランコとは違うんだ、乗ってみないとわからないよ?さぁ、早く早く!」
二郎「うん!」
言われるがまま、二郎が星人の隣のブランコに乗ると、毒のゴミは消え去って辺りも明るくなった。やがて辺りに、激しくも鈍い音が何度も鳴り響く。
二郎「わぁ、ホントだ!」
クリーン星人「なっ?ハハハハハ…」
二郎「キレイだな…何の音?」
クリーン星人「お前のカブトムシと、レオが戦っている音だ」
二郎「カブトムシは、僕を迎えに来てくれたの?」
クリーン星人「そうだ!」
二郎「やっぱりそうだったのか!ねぇ、止めて?」
クリーン星人「止めなくてもいずれ戦いは終わるさ!…ん!?」
突然、クリーン星人の表情が曇り、一瞬二郎に背を向ける。
クリーン星人「嫌な奴が来た…!いいか二郎、いくら誘われてもブランコから降りるんじゃないぞ?勝手に降りたら、いいか?綺麗な星へは連れて行かないからな」
二郎「うん、分かったよ!約束するよ」
クリーン星人「ハハ、ハハハハ、ハハハハ、ハハハ、ハハハ…!」
するとクリーン星人はブランコで揺れ、何処かへ消えてしまった。二郎が不思議がっていると、そこへ半透明なゲンが現れる。
ゲン「二郎君、二郎君!」
二郎「おおとりさんかぁ」
ゲン「どうしたんだい?お父さんやお母さんが、心配して探してたよ」
二郎「僕は、綺麗な星へ行くんだぁ!地球にいたら、きっと…」
ゲン「そうか、二郎君は体が弱いもんな…でも、体より心の方がもっと弱ってる!」
二郎「だって、毒のゴミが空からいっぱい降って来るんだもん…おおとりさんは、毒のゴミが怖くないの?みんなも、怖くないのかな」
ゲンと二郎が話している後ろで、同じく半透明なクリーン星人が怪しい動きをしながら大笑いいた。やがて2人の影は消え、笑い声と共にクリーン星人がブランコに帰ってくる。
クリーン星人「ハハハハ、ハハハハ、ハハハハハハハハハ…!その調子、その調子!ほら、君のカブトムシが戻ってきたよ」
二郎「あっ!…変だな、僕のカブトムシとレオは、戦ってるけどなぁ?」
クリーン星人が指差した方向にサタンビートルを見たらしく微笑む二郎だが、レオとサタンビートルの打撃音はまだ聞こえてきていた。焦ったようにクリーン星人は言う。
クリーン星人「さぁ、あれに乗って地球から逃げよう!」
二郎「うん、綺麗な星へ行くんだね?」
クリーン星人「そうだ!行くよ?1、2、3!」
二郎「えぇーい!」
二郎はブランコから飛び降り、空を飛ぶサタンビートルの背中に乗った。後ろのツノを掴み、羽をさすって喜ぶ二郎。
二郎「わぁ…!ん…?」
しかし彼はふと、ある違和感に気がつく。クリーン星人がいないのだ。自分が落ちてきた上空へ目をやっても、そこに半透明に映るブランコに星人の姿はなく、自分の乗っていたブランコが揺れるばかりだった。するとサタンビートルはあの夢のカブトムシと同じ声で二郎に呼びかける。
サタンビートル「二郎、さぁ行こう!」
二郎「うん!」
サタンビートルは片方をレオにもがれた筈の両翼をはためかせ、空を飛んでゆく。すると上空で爆発が起こり、毒のゴミが降り注いだ。
サタンビートル「二郎、二郎しっかり掴まってるんだぞ!」
二郎「でも、駄目だよ!落ちるよ、僕落ちるよ!!だって風が強いんだもん、あーっ!!!」
遂に二郎はサタンビートルのツノから手を放してしまい、毒のゴミと共に落ちていった。誰もいない筈のブランコから、あのクリーン星人の笑い声が響き続ける…
(場面転換)
ダン「二郎君、しっかりするんだ、二郎君!」
二郎「カブトムシは…?僕のカブトムシは?」
二郎はダンに助け起こされ、目を覚ました。しかしまだ夢と現実の区別がついておらず、カブトムシがどこかダンに尋ねる。
時を同じくしてレオも山を跳び越え戻り、再びサタンビートルに立ち向かう。その時、サタンビートルは口から紫色の煙と共に信じられないものを吹き出した…
二郎「あぁ、毒のゴミだ…!」
ダン「そうだ、二郎君の恐れていた毒のゴミは、アイツが降らせていたんだ…!」
二郎「誰が、誰が僕のカブトムシ、僕のカブトムシを…」
サタンビートルの口から降り注いだのは、紛れもない「毒のゴミ」そのものだった。猛毒を浴びて苦しむレオの様子を見て二郎は涙ぐみ、自分が今まで騙されていたことにようやく気がつくのだった。
ダン「二郎君、ここは危険だ!さぁ…!」
ダンは二郎を連れ、その場を後にする。サタンビートルは弱るレオに手を叩いて迫り、掴みかかった。
ナレーション「ダンに助けられた二郎は、レオとサタンビートルの格闘を見ながら、その時ハッキリと毒のゴミを撒き散らしているのはクリーン星人に操られているサタンビートルだったことを知った」
サタンビートルは二郎のカブトムシなどではなかった。地球を襲う害獣、いや侵略兵器にすぎなかったのだ。レオはサタンビートルの足を踏みつけ、ジャンプで脱出。逆襲を開始する。
再び毒のゴミを吐き出そうとするサタンビートルの口を狙い、レオはシューティングビームを発射。サタンビートルは悶え苦しみ、辺りに不発に終わった毒のゴミが降り注ぐ。ダンと二郎は安全圏に避難し、レオの戦いを見守る。
レオはサタンビートルの腕を握ったまま地面を転がり、サタンビートルを投げ飛ばす。サタンビートルはレオを打撃で倒し、マウントをとって反撃するが、すぐに体勢を崩され足を払われてしまう。レオもニードロップを背中に打ち込んで追撃し、組み合って投げ飛ばす。そして両足を掴んでジャイアント・スイングでぶん回し、サタンビートルの巨体を地面に思い切り叩きつけた。
尚も立ち上がりランプを光らせるサタンビートルに対し、レオは助走をつけて跳躍し必殺・レオキックを放った!
鮮やかに技を決め着地し、警戒を続けるレオの眼前でサタンビートルはミサイル発射効果から火花を噴き出しながら倒れ、大爆発。二郎を苦しめ続けた悪夢と共に炎の中に消えたのだった。太陽光の反射で、空には丸い虹が光る。
(場面転換)
二郎の部屋に集まったトオルら友達一同。二郎の病気は治り、ゲンもその場に同行した。
二郎「僕もう元気だ、起きるよ!」
トオル「毒のゴミが降ってくるぞ〜?」
友達「ほら!降ってきた降ってきた」
トオルや天井を指差すトオルの友達をゲンが笑いながら嗜めていると、二郎は元気よく起き上がった。
二郎「降るもんか!レオがやっつけてくれたもん」
ゲン「うん!」
二郎「僕ね、体も弱かったけど、心も弱かったんだ!でももう、強くなったんだ!」
ゲン「ようし、その元気だ!その元気で、毒のゴミなんか吹き飛ばせ!」
二郎「よーし、トオル君、いっちょやろうか!」
トオル「よしやろう!」
ゲン「二郎君大丈夫かい?無理するなよ」
二郎「平気平気!」
ゲン「よーし、行司やってやるからな。はっけよい、のこった!」
二郎は腕を振り回してベッドを飛び上がり、トオルと相撲をとる。ゲンや友達2人の応援を受けて盛り上がっていると、人数分のジュースを運んで母親が現れる。慌てて皆正座し、二郎もベッドに戻る。
母「まぁ、二郎ちゃん!」
二郎「いけねーっ!」
ゲン「どうもすいません」
部屋は笑いに包まれる。皆がジュースを取っていると、二郎が叫ぶ。
二郎「あっ、あんな所に僕のカブトムシが!!」
母「あら、ほんと…!」
見れば、柱にかけられた藁のお飾りの上にカブトムシがいた。ゲンはカブトムシを捕まえ、言い聞かせる。
ゲン「隠れていたんじゃ駄目じゃないか…!二郎君も元気になったし、な?弱虫カブトムシめ、えいっ!」
ゲンがカブトムシを指で突っつくと、どこからか声が。
カブトムシ(二郎)「コラ、イタイジャナイカオオトリ」
ゲン「えっ?不思議だ…」
カブトムシが喋ったと勘違いしたゲンは困惑。すると二郎は近くの人形を取り出し、見せる。
二郎「おおとりさん!コラ、イタイジャナイカ」
ゲン「こいつ騙したなー!」
二郎は腹話術がうまかった。またもみんなが大笑い。ゲンはカブトムシを布団の上に置くと、人形を手にとってまじまじと見つめていると、二郎の母にジュースを渡される。
母「さぁ、おおとりさんもどうぞ」
ゲン「イタダキマス!」
裏声を使って人形に礼をさせるゲンにまた皆が笑うのだった…
余談
病気で心身共に弱り、夢と現実の境界線が曖昧になってしまった少年を主軸に据えた物語に環境問題も加えた事で出来上がった、本作屈指の異色回。
そのため話の雰囲気はどこか不気味なものが漂い、演出も奇怪かつ不可解。一言で言えばサイケである。
中でも「ギリギリ…」という毒のゴミのSEは本話の至る所で流され、強く印象に残る。
第3話や第16話、第40話とは別ベクトルでの恐怖がトラウマになった視聴者も少なくない。
「夢の中で怪獣と触れ合い、精神が不安定になった少年」という点では第9話に似ているが、あちらと違い本話のサタンビートルは明確に敵とされている故に二郎が如何に夢から覚めるかが見どころの一つとなっている。
本話で唐突に登場した大槻美也子隊員はあと一回出た後姿を消す。
かつてダンはクリーン星と同じように爆弾の実験台にされた惑星の悲劇を見た筈だが特にリアクションを見せていない。以前より強力な怪獣が現れ、まだ若手のレオが戦わなくてはならない現状から力を求めてしまったのかも知れない。もっとも、本話のクリーン星は結局どうなったのか分からず仕舞いだが…
本話は以下の様に数々の謎を残して終わっている。
- そもそもクリーン星人なるものは本当にいたのか?
- 仮にいたとして、何故二郎の夢の中になど現れたのか?
- サタンビートルはクリーン星人が操って送り込んだと説明されているが、果たして本当にそうだったのか?野良の宇宙怪獣に過ぎなかったのではないのか?若しくはそれこそギエロン星獣の様に爆弾の影響で変異したクリーン星の昆虫が地球へ飛来しただけではないのか?
- これに関してはサタンビートルの体に武器が搭載されていることから「クリーン星人に改造された」と反論ができるが、そもそもこいつが本当にクリーン星の出身だったのかについては疑問が残る。各種図鑑などでは一貫してクリーン星出身と書かれているが、同じ様な境遇のギエロン星獣も色々と謎が深い存在であることから何とも言えない。詳しくは上記の超兵器R1号の記事にて。
- 二郎の空想の産物に過ぎない筈の「毒のゴミ」を何故サタンビートルは吐き出したのか?
- それにダンやナレーターも「サタンビートルが降らせていた」とあたかも元々存在して二郎を病魔で苦しめていたかの様に語っている。
- 最終的に二郎のカブトムシは見つかったが、一体どこに隠れていたのか?普通ならすぐ見つかりそうなものである。