概要
コミプレで2024年1月5日から連載されている漫画作品。
2024年10月4日に単行本第1巻が発売された。
作者はツナミノユウ(pixivアカウント)。
一見すると古典RPGを下敷きにした王道ファンタジー漫画のように見えるが、その実一癖も二癖もある登場人物達が織りなす珍道中を主軸にしており、ツナミノユウらしい毒っ気と素っ頓狂なギャグが光る怪作である。登場する魔物(モンスター)のデザインも凝っており、どこか円谷プロの怪獣・宇宙人のような無機質さ、あるいは東映の仮面ライダーやスーパー戦隊の怪人を想起させる造型となっているのも特徴である。
あらすじ
魔王城での戦いで、勇者シュラが魔王ラ・ゴーを討ち取る。
ラ・ゴーはシュラを称えたものの、彼女は「生きる目的を失った」と言って脱け殻のようになってしまっていた。シュラは魔王を倒すこと以外何も教えられずに育ってきたのである。
「こんな情けない勇者に討ち取られたとあっては自分の評判まで落ちてしまう」と考えたラ・ゴーは、彼女を立派な勇者に育て上げることを決める。
かくして魔王の生首を背負った勇者、「くびしょい勇者」の旅が始まった。
登場キャラクター
- シュラ
勇者。1対1で魔王を討ち取った史上最強の勇者。
とある田舎の村で虐げられながら育った為に自己肯定感が極めて低く、情緒も育っていない。
更にその境遇からか、無自覚に相手の尊厳を抉る言動を見せてしまう、自他共に話が通じない状況になると即座に手を上げる等々、コミュ障並びアダルトチルドレンの傾向が強い。
ラ・ゴーとともに「立派な勇者になるための旅」に出てから、様々な人々と良くも悪くも触れあい、クセのある仲間を得て人間的な情緒と主体性を育むのだが、同時に自堕落なダメっ娘になりつつあるが、後述のミュリエルに触れて以降、母性や愛情も芽生え始める。
- ラ・ゴー
魔王。シュラに討ち取られ首だけになった。ラ・ゴー曰く「不滅なので死なないが、これから1000年ほど眠りに就く」。
魔物達は洗脳して操っていただけなので人望がなく、むしろ恨まれている(ただし、洗脳は後述の理由もあり、決して自分本意に行ったわけではない)。
あらすじの通り俗っぽい面を見せている一方、永く人間と戦ってきた経験からか、人間と魔物の強さの違い(=個々では弱いが協力と戦略で補う人間に対し、個々で強い為に個人主義かつスタンドプレーしかできない魔物)を見抜く、シュラの境遇から彼女の情操教育に何が必要か即座に察する等々、超越者かつ年長者としての確かな観察眼を持っている。
しかし、エピソードを重ねる毎に常識がほぼないシュラと、悪い意味でマイペースなレダの言動に逐一ツッコミ(しかも、時折オネェっぽい口調で)を入れると、真面目な苦労人属性を発揮するようになった。
魔王にしては良識的な価値観の持ち主であり、皮肉にも世間常識に疎いシュラの師匠のようなポジションに収まっている。繊細で傷付きやすい性分をしているのもあって、デリカシーに欠けるシュラの一言や、彼女に過保護なボロウズのロジカルな反論に涙する場面もしばしば。
- ボロウズ
人間の男性であった商人。魔王城付近の「変獄の森」で命を落とし、土地の呪いの影響で運んでいた宝物や宝箱と合体してなんとも形容し難い姿(強引に例えるならば『ビスクドールをコアにした宝物のキマイラ』)のミミックと化してしまう(種族については第14話で明言された)。
本人曰く「お店を任せてもらえず 冒険者しか道がなかった落ちこぼれの商人」と悔いる程に強い未練を持ち、それ(とシュラの誤った口上)が原因で上記の姿と化してしまった。
商人だけあって宝や儲け話には目敏いものの、生業に違わぬ確かな審美眼や含蓄を併せ持つ。
強欲な俗物だが、それ故に現実的で地に足が着いた価値観の持ち主であり、仲間に加わってからは浮き世離れしたシュラを生活面・経済面で甲斐甲斐しくサポートしている。薄幸な人生を歩んできたシュラに父性(?)をくすぐられるのか、シュラに対しては過保護で甘やかしがちである。
- レダ
元僧兵の尼僧。エレキギターのようなリュートと共に退魔の旅をしている。
凶悪なアンデッドにして死霊術師・ミクトランの魂が封印されたリュートを用いて、回復演奏「ぶっ生き返す」を奏でると不死者を成仏させ、生者には治癒が出来る。そのソウルフルで破天荒(ロック)な演奏に惚れ込んだシュラ達からスカウトされ仲間に加わった。
姉御肌で面倒見の良い、パーティの肝っ玉母ちゃん担当。
ただし、良くも悪くも中性的な言動に加え、起伏の乏しい衣装スタイルも合わさって、一部の読者からは男性と間違えられているが、実際はナイスバディのお姉さんである。
ヒーラー枠であるが元々僧兵だけあって腕っ節も強く、戦闘でも頼りになる。
一方で、リュートに封じたミクトランに両親を殺されて、その敵討ちに走った過去を持つ故に、自らを「破戒僧」と自嘲する繊細な側面も秘めている。
- 金獅子のアーサー
「当代最強」と称される勇者。
勇壮な戦士だったが、かつてのシュラと同じく勇者として人生を魔王退治に捧げていたのが災いし、シュラに魔王ラ・ゴーを先に討伐された現実に納得が行かず手柄を横取りしようとしてしまう。その醜態を仲間に咎められるや逆上し仲間を殺した上に、錯乱するままに残された魔王の体に自分の首を繋いで魔王の力を奪い取ってしまう。
それ以降、かつての勇者の成れの果てとして、ラ・ゴーと勇者シュラに執着し幾度となく戦うようになった。ある意味、彼こそがこの物語に於ける【魔王】である。
だが、第22話で他の勇者に魔物として討伐され掛けた際に発した命乞いが、魔王特有の洗脳能力として発動し勇者が同士討ちする光景を目の当たりにするや、今更になって「自らが忌むべき魔王に成り下がった」 と痛感、唯一無二に信頼していた大賢者テティスの狂信的な献身を「洗脳による言動」として切り捨て断絶するなど、混乱と絶望のままに自暴自棄に陥った。
- 大賢者テティス
アーサーのパーティーに参加していた魔法使い。
かつては優しく聡明な女性であったが、錯乱したアーサーが目の前で仲間を殺し、自らの首をはねて魔王の体とくっつけるよう強要してきたのを契機に、恐怖のあまり気が触れてしまった。それ以降、アーサーに偏愛を向けるハイテンションな狂人に変貌してしまい、終始アーサーにくっついて彼をサポートしている。
しかし、上記のアーサーの断絶発言により、遂に最後の最後のタガが外れてしまい、元凶であるシュラの殺害を決意するのだった。
- ゼプトス
魔王ラ・ゴーに洗脳されて使えていた〈十二将星〉の一角で、極めて人間に酷似した外見の魔物。ラ・ゴー曰く「半竜の魔物」で、恐らく竜と人との間に生まれた存在であろう。
1人称に「それがし」を用いる、戦闘の前に口上を上げるなどと武人肌に見えるが、シュラとの闘いの最中に自分がラ・ゴーと同じようにされる状況を想像し鼻血を噴き出す姿から、その本質は倒錯したドMと断言できる。
色々な要素が盛り沢山なシュラが性癖に刺さってしまった様で、彼女に惚れ込み敢えて討たれようと執着している。
第21話で再登場し、そこで後述のトラブルを解決した後に鎧を脱いだら、筋骨隆々の女丈夫にして男装麗人(?)であると判明した……。
- ミュリエル
ボロウズの提案でドラゴンの死骸を漁った折に発見した卵から羽化した、ドラゴンの幼生で名付け親はシュラ。
生まれたてなのもあり角や鱗はほぼなく、顔に至ってはデフォルメしたシャチのように見える。
羽化した直後のミュリエルの泣き声を切っ掛けに、それに気付いたドラゴンの群れとシュラ達の間で一悶着が起こったが、上記のゼプトスを介した交渉の末に円満解決した上、群れのリーダー個体からのお墨付きを貰い、シュラ達との共同生活が確定した。