概要
高松琴平電気鉄道(ことでん)が1998年から2001年にかけて、長尾線および志度線初の冷房車かつ、新性能車として導入した車両群。全28両。
琴平線と長尾線で使用する車両は下二桁が01〜14、志度線で使用する車両は同21〜32で区分される。
種車となったのは元・名古屋市営地下鉄東山線の250形・700形・300形と名城・名港線の1200形・1600形・1700形・1800形・1900形の各形式で、1969年から1974年にかけて日本車輌製造で製造され、1990年代後半に廃車となった比較的新しい形式である。
これらの形式はすべて非冷房車だが、ことでん入線に際し、京王重機整備北野事業所で冷房化改造が行なわれた。冷房能力の関係で、初期改造車は京王電鉄の車両の廃車発生品「RPU-2203(8,000kcal/h)」を中央に1機と小田急3100形廃車発生品の「CU193(10,500kcal/h)」を両端に2機、後期改造車(1999年入線の603-604編成および627-628編成以降)は「RPU-2203」を中央に1機と泉北高速鉄道100系廃車発生品の「CU191P(10,500kcal/h)」を両端に2機という、変則的な組み合わせとなっている。さらに冷房設置に伴い、車内天井は非冷房時代のファンデリア(通風器)からラインデリア(連続した冷房風洞)と吹き出し口に、床下は補助電源が冷房電源供給のため電動発電機(MG)から新品のSIVにそれぞれ交換された。
併せて、東山線と名城・名港線は第三軌条方式、ことでんは架線集電方式と集電方式が異なるため、パンタグラフが奇数番号車の連結面寄りに設置された。これに伴い不要となった台車集電靴は撤去され、車高調整のために台車本体の心皿部分に補助枠が挿入され、ブレーキシューがレジン製から鋳鉄製に交換された程度で継続使用されており、種車時代のWN平行カルダン駆動方式を踏襲する。形式は「KH46CS」または「FS354A」で、軸距1,800mmの小振りな台車である。
主電動機は種車の「HS-830Krb」、「HS-830Grb」及び「MB-3092E」を基本に、架線電圧の違い(東山線および名城・名港線:600V、ことでん:1500V)から昇圧改造がなされた。出力68.75kWで1両あたり4機搭載となっている。
このほか、在来の旧型手動加速車(HL車)との連結運転を行うために主幹制御器(マスコン)が自動加速車用からHL車用に、ブレーキがSMEE(電磁直通制動)から電磁SME-D(発電制動併用非常管付非セルフラップ式電磁給排弁付三管式直通空気制動)にそれぞれ交換されている。
モハ600形、クハ800形
中間車から先頭車に改造された車両。切妻で運転席が広く取られ、非常口扉が車体中心より正面向かって左にオフセットされる前面形状を持つ。元250形は名古屋市営地下鉄時代に既に先頭車化改造されていた車両で、ことでん入線時に運行番号表示機を撤去し、跡を塞いでいる。元700形・1600形・1700形・1800形・1900形はことでん入線時に先頭車化改造が行われた。両者では窓の取り付け方法、乗務員扉形状等に差がある。
2両編成12本24両が入線したが、うち607〜610の4両が電装を解除され、クハ800形801〜804になっており、モハ600形としては20両が在籍する。このうち4両は閑散時に琴平線で使用するようになった。
クハ800形はすべて瓦町駅向きに運転台がある。
編成表
●仏生山検車区所属
運用路線 | ←琴平・長尾 | 高松築港 → |
---|---|---|
長尾線 | 601 | 602 |
琴平線 | 603 | 604 |
琴平線 | 605 | 606 |
長尾線 | 613 | 614 |
●今橋検車区所属
増結用のクハ | ←瓦町 | 琴電志度→ | |
---|---|---|---|
801 | 621 | 622 | |
802 | 623 | 624 | |
803 | 625 | 626 | |
804 | 627 | 628 | |
629 | 630 | ||
631 | 632 |
モハ700形
メイン画像の車両。製造時から先頭車の元300形・1200形のみが区分された。これらは3つ折妻形状で、中央に貫通路を持つ。元300形は前面方向幕が無かったため、これを種車とするモハ701-702(→723-724)は正面向かって左の窓内に京王3000系の廃車発生品の側面方向幕が設置された。元1200形を種車とするモハ721-722は製造時より非常口扉上部に設置されているものが使用される。
2両編成2本4両が入線し、以前は長尾線、志度線ともに1本ずつの在籍だったが、長尾線の橋梁改良により元・京浜急行電鉄のモハ1200形・モハ1300形が入線可能になったため、701-702は志度線へ転属、723-724に改番。これにより2本とも志度線所属になった。
ワンマン改造
2022年4月16日より、志度線のワンマン運転開始に伴い、志度線用の2両編成を対象に方向幕の交換や車内自動放送装置の再設置(ことでん入りの際に一旦撤去されていた)が行われた。なお、3両編成での運転時は引き続き車掌が常務するため、クハ800形はワンマン化改造の対象外としている。
また2023年3月より、長尾線瓦町〜長尾間でもワンマン運転が開始されることから、長尾線用の編成にも同様の改造が行われている。琴平線用の編成については改造されていないが、長尾線と車両の共通運用を行う場合、同様に改造される可能性もある。
なお、ことでんにおけるワンマン運転は都市型であるため、運賃表や運賃箱は置かれていない。