概要
「ちよだ」は、日本の海上自衛隊が運用している潜水艦救難艦である。潜水艦が事故などにより海中で動けなくなった場合、その乗組員を救助するために活躍する。
- 1985年に就役した1代目「ちよだ」(艦番号AS-405、2018年退役)
- 2018年に就役した2代目「ちよだ」(艦番号ASR-404、現役)
……の2代が海上自衛隊に存在するが、本稿ではどちらも解説する。
艦名は江戸城の旧名「千代田城」に由来しており、この名を受け継いだ日本の艦艇としてはそれぞれ4代目・5代目。先代は幕末期に江戸幕府が建造した旧日本海軍の木造砲艦「千代田」(竣工時の名は「千代田形」)から150年以上続くものである。
AS-405:1代目「ちよだ」(退役済)
AS-405「ちよだ」は、三井造船玉野事業所で建造され、1985年3月27日に海上自衛隊に竣工・就役した潜水艦救難母艦。「千代田」の名を受け継ぐ艦としては4代目。
今までの救難艦が備えていたレスキュー・チェンバーに代わり、深海救難艇(DSRV)と呼ばれる小型潜水艇を初めて搭載した艦で、潜水艦にDSRVを接舷させて乗組員を中から救助する。また、艦内には再圧室があり、飽和潜水作業の支援も行うようになった。
さらに潜水母艦としての機能も兼ねており、洋上で味方の潜水艦に魚雷、燃料、糧食などの物資を補給する能力を有し、潜水艦1隻分の乗組員(約80人)に対する宿泊施設も備えている。このため本艦の艦種は正式には「潜水艦救難母艦」である。
就役から一貫して横須賀基地を定係港に持っていたが、後述のASR-404「ちよだ」に代替され、2018年3月20日を最後に除籍された。
ASR-404:2代目「ちよだ」
ASR-404「ちよだ」は、同じく三井造船玉野事業所で建造され、2016年10月17日に進水、2018年3月20日に就役した潜水艦救難艦。「千代田」の名を受け継ぐ艦としては5代目。
第2潜水隊群の直轄で、定係港は横須賀となる。
既存の潜水艦救難艦「ちはや(ASR-403)」の拡張型となる5600トン級潜水艦救難艦で、上記の1代目「ちよだ」の老朽化が目立ってきたこともあり、同艦の置き換えのため建造された。被代替艦と同じ艦名をつけられたケースはほかにも、砕氷艦「しらせ」及び敷設艦「むろと」の例がある。
本艦は1代目「ちよだ」とは異なり、「ちはや」から採用の遠隔操作可能な無人探査機(ROV)を追加装備し、遭難潜水艦の正確な状況確認を可能とした。深海救難艇(DSRV)も従来より収容人数を増し、さらには大規模災害での医療支援のため、医療設備も充実している。その代わりに潜水母艦としての機能は無くなり、潜水艦への補給能力や、潜水艦乗組員の宿泊施設は持たない。
余談
旧日本海軍では、漢字の「千代田」を名乗る軍艦は3代存在した。
- 初代は、前述した海軍黎明期の木造砲艦。
- 2代目は、日清・日露戦争に参戦した装甲巡洋艦。艦名の由来は4・5代目と同じく江戸城。
- 3代目は第二次世界大戦期の軽空母(設計時は水上機母艦)である。こちらの艦名は2代目とは異なり瑞祥名詞から。
旧海軍~海自を通じ、5代目を襲名するのはこの「ちよだ(ASR-404)」が初のケースとなった。
関連動画
※いずれも2018年就役の「ちよだ」
【命名・進水式】 潜水艦救難艦「ちよだ」命名・進水式 海上自衛隊
【引渡式・自衛艦旗授与式】潜水艦救難艦「ちよだ」
関連項目
むらさめ型護衛艦(新):「ちよだ」ほどではないが、当代が4代目となる艦が7隻を占める(例外は当代が2代目の「さみだれ」と、旧海軍に同名艦のない「きりさめ」だけ)。
戦艦朝日:1930年代の一時期、潜水艦救難艦に改装されたことがある(その後工作艦に再改装され、第二次世界大戦で戦没)。