概要
主に西日本に伝わる妖怪だが、悪霊の類とも。近くを通りかかった者に取り憑いては強い空腹感に襲わせる。行逢神、または餓鬼憑きの一種ともされている。
地方によっては「ダラシ」「ダリ」「ダル」と、呼称が様々。
飢えて死んだ者が化けた存在とされており、自分が受けた苦しみを他者にも与えようと襲いかかる。山道や峠を歩いていると取り憑かれる事があり、これに取り憑かれると前述の強烈な空腹を感じる他、疲労や手足の痺れ、その場から動けなくなるなどといった症状が現れ、最悪の場合は死に至る事も。取り殺された者は新たなひだる神となり、その数をどんどん増やしていく。
かの徳川家康も、本能寺の変の際に峠を通った時にひだる神に襲われた事があると言われている。
取り憑かれた時の対処法としては、何か食べ物を一口でも口にする、手のひらに指で米の字を書いて口に入れる動作をするといったものがある。また、地方によっては道端に生えている草を口にする、食べ物を近くの藪に捨てる、身に付けている衣服などを後ろに投げ捨てるといった方法もある。
あらかじめひだる神が現れると分かっている場所を通る時は、十分な量の食糧を持ち歩く、山道で弁当を食べる時は全部食べずに取り憑かれた時の為に一口分だけ残しておくといった方法で被害を事前に防ぐ事もできる。
創作における扱い
「だるい、ひもじい、ひだるい……」
アニメシリーズ5期に登場。名前表記は「ヒダル神」。元ネタに準じて餓死した人間の霊が妖怪化した存在という設定になっている。
食べ物を粗末にする現代人の有様に怒り、近くを通りかかった際に仲間へと引き入れたねずみ男(いつものように裏切ったのではなく、放置されて硬くなった饅頭を捨ててしまったためヒダル神に襲われてヒダル神化した)の案内で人間の町に駆り出す。そして町の人間達を次々にヒダル神へと変えていき、たまたま通りかかった家電量販店のテレビで放送していた料理番組を見かけ(この時、ヒダル神はテレビを知らなかったようだがねずみ男を仲間にしていたため彼から説明を受けていた)テレビ局の料理番組の収録スタジオへと乗り込んで全国の人間をヒダル神に変えようとした所を鬼太郎達と対峙する。
錫杖を持っているのがリーダー格で、彼と彼の傍らで付き従う2体のヒダル神が元々のヒダル神である。彼らの声は食べ物を粗末にした(嫌いな食べ物を残したり、まだ食べられる物をこれ以上食べられないから捨てるなど)者を飢えさせてヒダル神化させるが、好き嫌いせず食べ物を粗末にしない者には通用しない(目玉おやじはヒダル神の近くにいても平然としていた)他、耳栓で防ぐことができる。また、ヒダル神化する前に手のひらに「米」と書いたり、伝承通り食べ物を口にすることで防ぐことができる(猫娘は空腹で「米」の文字がわからなくなってしまったが、鬼太郎が代わりに書いてくれたため助かった)。
生前に受けた凄まじい苦しみを覚えている為、鬼太郎の放つ必殺技を連続で食らってもビクともしないタフさを持つ(霊毛ちゃんちゃんこによる締め付けも「こんなもの飢えによる苦しみに比べれば……」と振り払った)。正攻法で敵わず万事休すといった所に、スタジオ内でまだヒダル神と化していなかった母子の赤ん坊が空腹から泣き叫び出す。そして赤ん坊の泣き声を聞いて母親が落とした哺乳瓶を拾って赤ん坊に与えた所を目玉おやじに説得され、ヒダル神になった人間達を元に戻した後に静かにどこかへと立ち去っていった。
立ち去る際に「我等の耳には、今も世界の何処かで飢えて苦しんでいる人々の声が聞こえている」と忠告し、今回の事件で反省した人間のアナウンサーが「我々が食べ物を粗末にするとまたやってくるかもしれません」とテレビ番組で呼びかけた。
経緯だけを見るとヒダル神が勝手に暴走しているだけのように見えるが、今回の話での登場人物達はわざとやってるんじゃないかと思える程、あからさまに食べ物を粗末にしており、特に普段は「数年前の食べ物」でさえ口にする程に意地汚いねずみ男が空腹であるにもかかわらず放置して固くなったからと饅頭を捨ててしまい、料理番組の出演者に至っては現実で放送しようものなら苦情が来かねない程、食材をやたらとぞんざいに扱っている等、ヒダル神の怒りを買ってしまうのも無理もない有り様だった。主人公の鬼太郎も「食事に出たピーマンを捨てていた」事が発覚しており、目玉親父もその事に困惑と怒りを見せている。
また、ヒダル神は行動こそ過激ではあったが悪意や私欲で動いていたわけではなく、怒りで暴走していながらも、赤ん坊やその母親の声に耳を傾け目玉おやじの説得にも応じる等、決して悪い妖怪ではなかった。
東方projectの公式書籍である東方茨歌仙の36話「天高く神社肥ゆる秋」に登場。
主人公達を飢餓で苦しめたが最終的に除霊された。