「前からお前が気にいらなかったんだ!」
「アンタとわたしは似てる…嫌になるくらいにね」
概要
アニメ『HUGっと!プリキュア』の登場人物、輝木ほまれ/キュアエトワールとビシンのカップリング・コンビタグ。
プリキュアの初期メンバーと敵組織に途中から加入した新幹部が個人的な因縁を深めて明確な宿命のライバルとしてぶつかり合っていくという、プリキュアシリーズでも珍しい組み合わせである。
表裏一体
情緒不安定でメンタル的に幼稚なビシンに対し、その分ほまれのイケメン……もとい、大人びているがゆえの切なさと健気さが引き立つという相互補完。
当初こそハリハム・ハリーを巡って火花を散らす三角関係の恋敵(?)と思われていたが、実際は届かぬ想いに身を焦がす似た者同士だったのである。
叶わない想いの憂さを晴らすかの如く物質的にも精神的にも何かを破壊することで悦楽に浸り、言ってみれば現実逃避しているビシン。
恐らくは自分の恋が実ることはあり得ないと悟りつつ、その非情な現実に打ちひしがれながら、それでも恋を諦めずひたすら想いを抱えたまま力強く立ち上がるほまれ。
同じ『心の痛み』を共有しながらも2人の在り方は対極であり、まさにコインの表と裏。
"破壊の申し子"たるビシンの宿敵が"力のプリキュア"であるほまれという点も、様々なニュアンスが見て取れる。
自分勝手で社長の挨拶にも一人だけ返事せず、感情の赴くまま自由行動を取るなど、およそ会社に所属する組織人としては全く機能していない問題児のビシンだが、他人に危害を及ぼす真似は絶対しなかったという違いこそあるものの、よくよく考えてみるとこれはフィギュアスケートの夢に一度は破れて挫折し、自暴自棄に陥り周囲に心を閉ざして授業のサボタージュを繰り返しながら教師にすら反抗的な態度を取り続け、それでも夢への未練をどうしても捨て去れず燻っていた、はな達とハリーに出会う前のほまれに酷似している。
そうした一方で、徹底的に忌み嫌いながらほまれの心情や内面を誰より理解しているのもやはりビシンであり、「自分が言われたら最も傷つく言葉」を一番効果的なシチュエーションでそっくりそのままほまれに投げつける傾向が見受けられる。同時に、その辛辣な煽りが全て跳ね返ってきているとも気づかずに…。
早い話、ビシンは完全にほまれのダークサイド版と言えるコンセプトのキャラクターなのだ。
そして、ほまれもまたビシンが暴虐の限りを尽くす裏で抱えている苦しみや悲哀に誰よりも共感を示し、相容れることこそないもののその言い分を決して否定はしていない。
「痛みを抱えて生きていくつもりかよ! そんなの…辛すぎるだろっ!!」
「……そうだね」
一歩間違えればほまれはビシンのように絶望と嫉妬の暗黒面に飲み込まれてしまう危険性を抱えており、逆にビシンは一歩踏み込むことさえできればほまれとは最大の理解者となり得る存在。
第32話においてその対立と確執はいよいよ決定的となり、鏡合わせで否応なしに互いを意識せざるを得なくなっていく2人の今後から目が離せない。