概要
アニメ『HUGっと!プリキュア』の登場人物、ジョージ・クライと野乃はなのカップリング。
敵のラスボスと主人公のカップリングという、プリキュアではありそうでいて実は珍しいカップリングである(詳しくは後述)。
度々はなの前にあらわれてはミステリアスな言葉を発しては「またね」と言葉を残していつの間にか消えてしまうジョージ。はなはその不思議な雰囲気に大人の魅力のようなものを感じており、最初の出会いから好意的な感触を見せていた。
これについて、監督やプロデューサーのアニメージュ9月号のインタビューでは「はなにとってジョージは初恋の相手なんです」としている。
だが、第23話でジョージが敵の首魁であることが判明したことで、はなの初恋は終わってしまったのである。
はな自身がジョージへの好意を初恋だとはっきり自覚していたかどうかは微妙なところ。作中ではほまれがハリーへの恋心を自覚して悶々としている様子がわかりやすく描かれているが、はなにそういう描写は全くない。
代わりに、はながジョージに裏切られたことがトラウマ級のショックになっていることが度々描かれている。そして自分がジョージに対してぐちゃぐちゃしたよくわからない感情に支配されていることを、仲間たちには決して見せないようにしていることが24話などで視聴者向けに描かれている。
これが失恋のショックだったとはなが気付けたのは最終回よりももっと後のことなのかもしれない。
恋の喜びを知るより前に、失恋の苦しさを先に知ってしまったとすると、なんとも残酷なことでもある。
一方でジョージの方は、はなと出会う前から、はなのことを知っていた。なぜなら彼は未来人だからである。今までにはなと度々出会っていたのも、実際は「キュアエール」がどのような成長を遂げるかを観察していたため。序盤の話で彼が登場した回は、必ずプリキュア側に大きな転機となる戦いが発生している。
ちなみに、『アニメージュ』特別増刊号にて、ジョージ役の森田氏は公式サイドから「(ジョージは)はながとっても好き」ということだけ伝えられ、その一点で演じてきたことを明かしている。
最初の頃ははなからも好意を持たれていたジョージだったが、上述したように第23話で敵味方として決別することになる。
しかしそれ以降、はなが自分に対して必死に抗う健気な姿にむしろ強く惹かれる様子を見せるようになっている。
第46話、ジョージの回想と写真で、大人になったはなのような女性が登場。ジョージは写真を見ながら「幸せな時を2人で生きよう」と呟いた。
この第46話放映直後に発売されたアニメージュ2月号ではキャラクターデザイン担当の川村敏江氏インタビューがあるのだが、そこでこの女性については「髪が長かった頃のはな」の成長した姿としてデザインされていると発言している。ただし、我々が知る「前髪を切りすぎたはな」とは別人(世界線が違う)であるようだ。また、コンプリートブックの内藤プロデューサーインタビューで、「ジョージは未来で大切な伴侶を亡くしている」という情報が書かれた。(ジョージが2人で生きようと言った際に映ったのは大人のはなとジョージの写真だった。つまり伴侶は…)
ジョージとはなは別の世界線の未来で関わりがあること、そして、はなの初恋はジョージであり、ジョージが永遠に共に生きたいと思うのはただ一人、はなであるというのは公式である。後述する色々な事を照らし合わせるとこんな風にも捉えられるかもしれない。
本編の展開
初登場は第8話。以降、はなの前にちょくちょくと現れては意味深な言葉を告げ、姿をいつのまにか消すミステリアスな役どころとなっている。 はなに対しては好感を持っている様子がうかがわれ、はなの方も彼の意味がよくわからない言葉を笑うでもなく、むしろ感じ入る様子を見せている。
本編第23話にて正体がついに発覚。
彼の夢の話を直前に聞き、共感していたはなは大きなショックを受けるが、一方でジョージの方は止まった時を自力で解除したはなにむしろ喜びすら感じていたようであった。この話を境に明確に敵対しあう間柄となった二人であるが、ジョージが未来を奪おうとする動機は人々の幸福を考えてのことであり、やり方こそ相容れないが目指すところはプリキュアたちと同一である。それゆえに分かり合える可能性が最初からあり、逆に今すぐにでも決裂するかもしれない非常に不安定な関係性といえる。
ちなみに「自身が知っている歴史」を尽く書き変える存在であるはなに対し妄執するかのような態度を取ったり、わざわざ彼女に会う為だけにはなの前に姿を現すジョージや、ジョージに何かしら特別な感情を抱いているようなはなが描かれている等、第42話、第43話で2人の関係に関しての今後の伏線らしき描写が多々目立ち始めていたりする。
第46話では初っ端からはなの夢の中でウェディングドレス姿(ジョージは普段着)になっており、
夢の中でははなはなぜかジョージに警戒を抱くこともなく、彼が愛しそうに頬に触れようとしてもなすがまま…というところで夢は覚める。そして同じような夢をジョージも見ていたという偶然が描かれており、2人の間に何か因縁があるような演出がなされた。
現実の世界ではこの後にジョージは「プライベート」と称してはなにクラスぺディアの花束を贈るのだが、夢の世界とは打って変わってはなは激しく拒絶。この際はジョージはかつてないほど悲しい目をしていた。
なおこの回ではなが自分に抗い続けることに喜びを感じていた理由が、はなが逆境を乗り越えて希望を掴み取ることで「今が充実している」と自己肯定できるようになれば、はなをより幸せな状態で時間停止させることができるからだと判明した。
第47話では、プリキュアたちとジョージの対決が描写された。その際ジョージは、はなを鳥籠に閉じ込め、他のプリキュアたちに攻撃しながら「周囲の雑草が大輪の花をからす」などと言い放ちどこまでもはなしか見ていないことが改めて描写された。
続く第48話でジョージとはなの真っ向対決が行われる。圧倒的な力を持ってはなを変身解除まで追い込み後ろからはなを抱きしめるも拒絶され、逆にはなの未来を信じる意志に固さを見せつけられることになる。
ジョージは、はなとはどうやっても分かり合えないことを悟り、その絶望から全てを消しさろうとトゲパワワを自ら取り込み巨大な怪物と化す。
しかし結局、みんながプリキュアという大技に破れてしまうことに。こうして、ジョージは敗北した。
オシマイダー化していたクライアス社のビルもトゲパワワを失ったことで崩壊していく。
はなは仲間たちに見守られながら一人、その中へと駆けていき、崩れゆくビルと運命を共にしようと無気力に座っていたジョージと邂逅する。
はなは彼に寄り添い、借りていたハンカチを返す。そして彼が立ち上がった際、「一緒に行こう」と声を掛け、彼が未来を拒絶すると「未来を信じていないなら、どうしていつも私に、『またね』って言うの」と尋ね、彼を後ろから優しく抱きしめる。ジョージは抱きしめられ、涙を流すとはなの手を解き、「キミは本当に素敵な女の子だね」「またね」「僕ももう一度」と言って姿を消した。そして、残されたはなは落ちたクラスペディアを憂いを帯びた目で見つめ胸に寄せたのであった。
最終回では、いつかの時代のどこかの国で荒野を一人彷徨うジョージが、懐中時計の針が動き出したのを確認して柔らかな笑顔を見せているワンカットが描かれた。クライアス社の社長であったジョージ・クライだと明確にわかる人物が登場したのはこれが最後となる。
一方、47話の最終決戦展開では、町の人々がプリキュアたちの戦いを見守るシーンが描かれているのだが、この時に2019年時点におけるドクター・トラウムが登場している。これによりクライアス社は数十年程度の近未来からやってきたことが確定された。
この時代のトラウムはどこかの研究所か大学に勤めているようで、側には助手らしき青年がいた。助手の顔ははっきりと映されなかったが長身やせ形の体型や髪型がジョージ・クライと全く同じであった。そしてこの助手は、絶望の化身と化したジョージに対して命がけで立ち向かうプリキュアの姿を目にしたとき、何かを感じとり大粒の涙を流していた。
最終回のエピローグ。歴史の流れは変わりクライアス社が創立されることはなくなった。そして11年後の世界を舞台に大人に成長したはなが子供を出産するエピソードが描かれた。
旦那さんは明言されていないが、
・はなの分娩室にクラスペディアが飾られている
・アカルイアス社をバックに全力疾走するクラスペディアの花束持ちのスーツの男性が映る(髪型はジョージ似だが顔は不明)
・病院に向かうはなの両親の元にそのクラスペディアの花束の男性が到着する
そして極めつけに
・エンドカードにクラスペディアと見られる花にキスするジョージが居る
など色々と期待させてくれる終わり方だった。
本編内の出来事ではないが、後日発売されたコンプリートブックにて脚本の坪田氏がはなの夫をハッキリと書かなかった理由について、こう発言している。
「SDと内藤Pの意向もありますが、見れば分かってもらえるかなと(笑)」
同誌エピソードガイドでも「赤ちゃんの父と思しき男性の顔は映らないが、両手でクラスペディアの花束を抱えている」と書かれている。
やはり期待しても全然良いようだ。
異例尽くしなカップリング
一見するとありふれた敵味方カップリングのようだが、実はプリキュアの長い歴史の中でもかなり異例なカップリングである。
まず、プリキュアの敵首領は本拠地に引きこもり、姿を現すことが滅多にないのが恒例である。
そのためプリキュア個々人との絡みがほとんどないことも珍しくなく、プリキュアが初めて直接出会うのが最終決戦であることすらよくある。
それゆえに、敵首領とのカップリングは作られない、または作られるとしても番組終了間際なのが普通であり、カップリングが中盤で作られるのは非常に珍しい。
また、敵組織からはプリキュアはあくまでも「プリキュアという敵対勢力」として捉えられるのが一般的で、プリキュアに初期から絡む幹部クラスならばともかく、敵の首領クラスがプリキュアメンバーの個人に対し興味を覚えることはこれも非常に珍しい。
そして、プリキュアと絡みを持つ男性キャラは、敵にしろ味方にしろ(外見年齢で)青少年であるのが一般的であり、それより上の年齢層は味方ならば保護者、敵ならば拒絶者として振舞うことが多い。
青少年ではない、大人の男性がプリキュアメンバーと敵対的とはいえ交流を持つのは、これもなかなかに異例なことと言える。
関係者の見解
アニメージュ9月号の座古明史監督インタビューにおいて、ジョジはなの見解を述べている。
インタビューアーの「ジョージは、はなが悩んだりした時にフラっと現れて詩的な一言で励ましてくれる素敵な男性だと思っていたら、無情に裏切れましたね。」に対して、
座古明史シリーズディレクターは
「『とてもいい人と思っていた身近な人にはなが裏切られる』という展開は、早々から決めていました。観ている小さい子にも、あの男性が敵だとは分からない形にして、ジョージが登場するBGMも悪者っぽくない感じでお願いしました。はなにとって、ジョージは初恋の相手なんです。」
また、同誌のプリキュア担当声優5人が繰り広げる座談会でキャラクターの人間関係が語られる際、 ジョジはな要素についても触れられている。
- 引坂理絵(はな役)「はな目線では正直、ひなせくんよりも、今はジョージとどうなるのかが気になるんですよ。裏切られて、その先どうなるのか」
- 本泉莉奈(さあや役)「そもそも、はなのジョージへの思いは恋なのかどうかだよね」
- 引坂理絵「芽生えかけたところで叩き折られた、みたいな感じかなぁ」
- 田村ゆかり(ルールー役)「ちょっとトラウマみたいになっていたのが気になるかな」
- 引坂理絵「好きは好きなんだと思うんですよ」
- 本泉莉奈「同級生のほうがいいような気もするけど」
- 田村ゆかり「でも、同級生だと前の学校で孤立したことを思い出しちゃったりするのかも。だから大人に頼りたくなっちゃうとか?」
- 引坂理絵「はなは自分も大人になりたいと思っているし、オトナな人、不思議な人が好きだから、ひなせくんじゃダメなのかも!?」
2019年4月22日に発売されたコンプリートブックでは、改めてはなの初恋がジョージであることに触れられている。それ以外にもキャストインタビューにて、
- 引坂理絵(はな役)「シリーズ構成の坪田文さんから、『はなはジョージのことをどう思っていると思う?』と聞かれたことがあるんです。私は『好きだと思います』と答えました。(中略)ひなせくんはすごくやさしいし、いい人だと思います。ただ、はな自身、大人っぽくなりたいと思っているから、相手にも大人っぽさを求めている気がしていて。そうなると、同級生のひなせくんは目に入らなかったんじゃないかなと。」
- 田村ゆかり(ルールー役)「パップルさんやジェロスさんが好きな男性が、じつははなに好意を寄せているとか、切ないなぁと思いましたね。」
と語られている。