概要
『HUGっと!プリキュア』の主人公・野乃はなのチャームポイントといえば、斜めぱっつんとも言える独特の前髪。しかしこの髪型はヘアカットミスで生まれた偶然の産物ということは、本編をご覧になった方ならばおなじみのことだろう。
本作の第1話ははなが自分でヘアカットをするシーンから始まるのだが、この時にわずか数カットだけ、前髪を伸ばしていた状態のはなの姿が確認できる。
髪を切った後とは印象が全く異なっており、その姿を描いたイラストがいくつか投稿されている。
「ふんわり斜めに流れる前髪」を目指してこの日まで髪を伸ばし続けていたので、右目が隠れるレベルの長さであり、普段は頭の上でまとめてヘアバンドで留めていたようだ。
現在のはなの「斜めぱっつん」の前髪はキュアエールへの変身後も変わらないくらい彼女のデザイン上の記号になっているため、作中で変化することはもはやないと思われる。
前髪を伸ばした状態のはなは、回想シーンでもない限り二度と見られないレアな髪型と言えるだろう。
pixivでは、髪を切る前の髪型も普通にイケてると思う絵師も結構おり、二度と見られないのも勿体無いということで、第1話放映後から早速「髪を切らずに主人公として活躍するはなちゃん」のイラストも投稿されている。
余談
第2話回想で登場した転入届には、転校初日より前に提出されただろうにもかかわらず、散髪後のはなの写真が載っている(おそらく作画ミス)。
以下、本編後半のネタバレがあります
断髪への経緯
散髪前の姿が登場した第1話から約半年たった後の第23話。はなの記憶がフラッシュバックする回想シーンでまさかの再登場。
第1話でラヴェニール学園へ転校する前、中学1年生の頃のはなはシャインヒル学園というところに通っていたのだが、その時期の髪型はメカクレ状態がデフォルトだったようだ。つまり元々は切るために伸ばしていたのではなく、最初から好き好んでその髪型にしていた様子(ヘアバンドも使っていなかった)。
この時に、はながいじめられていた子を庇った結果、自分がいじめられるようになり、ひきこもり寸前にまで追い詰められてしまったことが断片的な映像で描かれ、視聴者に大きな衝撃を与えることになった。
その後の第31話でもう少し細かいことが語られている。それによると、ある日部活のセンター争いが発端で他の部員達からイジメられていた友人・エリを庇ったことをきっかけに、はなはクラス内で無視され孤立してしまう。元々はなと仲が良かったエリはそんなはなを助けたかったのだが、「また同じ目にあいたいの?」という部員たちの言葉が原因で手を差し伸べられず、結果的にはなの孤立に加担する共犯者となってしまった。
一方のはなは、クラス内で孤立したばかりか「余計なお節介でエリに嫌われてしまった」と勘違いし遂に自室で塞ぎこむことになったようだ。
両話共に最低限の手数のみで描写されているが、少なくともはなが在籍していた当時、教員や他の生徒が解決ないし適切に介入できなかったのは想像に難くない。
しかし、最終的にはなは最後まで自分の味方でいてくれた母親、そして「家族」の支えによって立ち直ることができた。
この後にはなは転校することになるのだが、これは新しい環境ではなの状態を改善させようとした可能性もある。
このことから、冒頭の断髪シーンは単なるイメチェンというより、転校前の辛い過去を切り捨てる意味合いも兼ねていたとも考えられる。
ちなみに「散髪前はな」のタグ名で検索をすると、はなの過去が明かされた第23話の放映日である2018年7月8日を境にして投稿されるイラストの雰囲気が暗鬱なものに様変わりしている。
(もちろん、単純に散髪前の方が可愛いというポジティブなノリのイラストもこの後も投稿されているが)
「別の未来」において
「散髪前はな」のタグでは「髪を切らずに主人公として活躍するはなちゃん」のイラストが初期から投稿されていることは上記でも述べたが、本編の終盤になってこれが公式で実現した。
46話でのジョージ・クライの回想で「若い頃のジョージ・クライ」と親密な関係を築いていた「少し大人になった野乃はな」の姿が描かれたのだ。そしてそのはなは前髪を伸ばしたはなの成長後の姿としてデザインされていた。
『アニメージュ』2019年2月号でのキャラクターデザイナーの川村敏江女史へのインタビューによると、これはTV本編のはなが成長した姿ではなく、「第一話ではぐたんと出会う」というイベントが起こらなかった世界線でのはなが成長した姿との見解が示されている。(このパラレルワールドのはなについてはアナザーはなのタグが別に存在する)
ちなみにこのアナザーはなだが、さすがにメカクレ状態ではなく、はなが夢見ていたような「ふんわり斜めに流れる大人っぽい前髪」をスタイリッシュに実現させている。
前髪を伸ばしたままということは、このアナザーはなは過去と決別できていないということである。だがそのような世界でもアナザーはなは闇落ちすることなくプリキュアとして活動したことがジョージの口から示唆されている。
はなはいじめの過去において、他人を恨むとことができなかったがゆえに、自分を責め続けた。その状態がずっと続いていたアナザーはなは、強いメサイアコンプレックスに囚われていたようだ。
アナザーはなは誰一人不幸になることがない希望が満ち溢れる「理想の世界」を作り出すためプリキュアの剣を手にし民衆と共に戦った「英雄」である。不幸や絶望を剣で切り伏せていくあり方を「なりたい私じゃない」と否定した本編の野乃はなとは大きく立場が異なっている。
そして、このアナザーはなは人々の幸福のためにその身を捧げ続け、世界に本当の理想郷を築くに至ったのだが、人類はその理想郷に溺れ堕落し、その人々の欲望が生んだトゲパワワが蔓延したことで世界は急速に荒廃しつつあるということが語られている。
関連タグ
星野みやこ:外の人繋がり。ただし分け目は逆。