オドベノケトプス
おどべのけとぷす
新生代第三紀・鮮新世(だいたい500万年くらい前)の南米・ペルーに生息していたイルカの一種。「ケラトプス」ではなく「ケトプス」。
※3m以下の小型クジラは等しく「イルカ」に含まれるため、こんな珍獣でも定義上は条件を満たす
体長2.5~3m。
名前は「セイウチっぽい顔のクジラ」という意味で、名前通り頭の形はセイウチにそっくり。よく動く柔軟なくちびるを持っていたとされ、食べ物もセイウチと同じ魚、二枚貝類、エビやカニなどだったと考えられる。
目も前向きについているので視力を駆使してエサを探したのだろう。
ちなみに太ましい体格故に泳ぎは遅く、それが原因でサメ等の餌食となって絶滅したらしい。不憫……
何より目を引くのは、オスの上顎の右から斜め後ろに伸びている牙(前歯)。
長さは1メートルくらいあるが、実は左側も伸びている(20~30センチくらい)。見た目は強そうだが大して丈夫ではなく、身を守るとか直接牙をぶつけ合うなんて使い方はできなかったらしい。
オスにしかないので、見せ合って威嚇する・メスにアピールするといった使い方だったと見られている。
生物の体は左右対称を基本とする中、なぜこんなアンバランスな伸び方をしたのかは不明。突然変異で体型や色が違っていても、それに不便がないならそのまま定着していくことが多いので、最初にこれが発現した個体は余程運良く生き延びたのだろう。
オドベノケトプスは絶滅したが、後にこれが前方へ向き、現在のイッカクが持つ角のような牙になったと考えられている。
ちなみにイッカクの牙は左の前歯。中がスカスカで強度が低いのはオドベノケトプスと大差ないが、感覚器官としても役立っているらしい。
オドベノケトプスには2種類おり、一般に知られているセイウチっぽい顔のやつはペルヴィアヌスという。
一方のレプトドンは同じイッカク科のシロイルカに近い顔立ちで目も比較的横向き。
生態も違ったらしく、超音波を駆使して獲物を探したとされる。