概要
かつてアーリーミイヤによって封印された超巨大オーバーマン。本作のラスボス。
豚と蝙蝠を足したような顔に、阿修羅のような6本の腕を持つ異形の姿をしている。
ブリュンヒルデやキングゲイナーと同じく『アーリーオーバーマン』と呼称される最初期のオーバーマンの一体。特にキングゲイナーとは密接な関係があったとされ、「キングゲイナーは『オーバーデビルの眷属』であった」とも称されている(実際、頭部の目に当たる部分は、キングゲイナーの顔面部に似ているイメージがある)。
有人機としてパイロットの搭乗も可能となっているが、人間のそれとは全く異質な自立意思を有し、世界を凍らせるという野望があり、人間の欲望や葛藤に敏感に反応する性質を持つ。
オーバースキルは「オーバーフリーズ」で、あらゆる物体を瞬時に冷凍してしまう。この冷凍は物質のみならず人の心にすらも有効で、この力で搭乗者や外部の人間の心を凍り付かせて洗脳。操る事が出来る。
オーバースキル以外にも光の反射率を変えて自身の大きさを錯覚させたり、手の先など体の一部を変形させて物体を取り込む、オーバーマンやオーバーコートを実体化させる、取り込んだ生物をオーバーマン化させる、ネットの世界に入り込みそれを通じて現実世界をオーバーフリーズさせる等の超常的な現象を引き起こす等、非常に多彩な能力を持つ。
ただし、その能力を発揮する為には高いオーバーセンスを必要としており、オーバーデビルの意志はオーバーセンスの高い人間を取り込もうとする。
パイロットはシンシア・レーンだが、後に彼女以上のオーバーセンスの持ち主であるゲイナー・サンガがシンシアを救おうとした際に取り込まれ、ヤーパンの天井に対し牙を剥く事になった。
なお、非常に驚異的な力を持った存在であるが、これでも発掘したシベリア鉄道公社に弄られた事で全盛期の機能を失っている状態となっていた。
もし、全盛期の機能がそのままの状態であったなら、あっという間に詰んでいた事になる。
劇中の様相
アーリーミイヤによって各パーツに分かれて分断される形でシベリアの大地に封印されていたが、それをシベリア鉄道公社総裁のキッズ・ムントが発掘。アガトの結晶に動力源として組み込んでいた。
その後はシンシアを取り来んで完全復活を果たし、それを見たアスハム・ブーンの声に鼓動するかの様に暴れ出す事になり、搭乗者の居なくなったシンシアのドミネーターを奪い取ったアスハムは、正に「虎の威を借る狐」となってノリノリとなる(あまりどうするか何も考えていなかった様だが…)。
その後はシンシアを救出しようとしたゲイナーやキングゲイナーをも取り込んでゲイナーとサラ・コダマの心を凍り付かせて支配下に置くと、シベリア鉄道の線路に仕込まれていたたマッスルエンジンのエネルギー伝達経路を利用して自身の野望である「世界の凍結」を果たさんとした。
しかし、プラネッタのオーバーコートをまとったエンペランザの働きでゲイナーとサラが正気を取り戻し、ゲイナーとシンシアの乗ったキングゲイナーの「オーバーフリーズ」の真逆「オーバーヒート」によって体内から焼き尽くされ消滅した。
余談
外見に取り入れられている蝙蝠は、悪魔を想起させるに相応しい物になっていると言えるが、豚もまた七つの大罪の一つである『暴食』を司る動物である為、知っている者から見れば的外れでは無い物と言える。
なお、ゲイナーがヤーパンの天井側に牙を剥いたのは、オーバーデビルに操られたのも事実であるが、エクソダスの旅の中で長らくゲイナーが心の奥底に抱え込んでいた「鬱屈」も原因と言える。
何しろ、ゲイナーは12歳の頃にヤーパンの天井のエクソダス推進派の中心人物達である「五賢人」の陰謀で、隊長のヒューズ・ガウリによってエクソダス反対派の濡れ衣を着せられた上で暗殺されてしまう悲惨な経験をしており、ゲイナーはその事で肩身の狭い想いをさせられ続け、後に自身もエクソダスへの加担を疑われて投獄された挙句、なし崩し的にエクソダスへ本当に加担して戦わねばならなくなる等、彼の立場からすれば「生き地獄」同然の人生を歩まされる事になっている(作中でエクソダスは美化されがちだが、「犯罪」として扱われている)。
にも拘らず、いざ両親を殺したのがガウリであると判明した後は、当事者であるゲイナーを除け者にする形でゲイン・ビジョウ達の手で万事解決したかの様な扱いをされてしまい、両親の事で苦悩していたゲイナーの心境を知っていたサラでさえ、「エクソダス成就の為には必要な犠牲だった」と勝手に自己完結されてしまう始末であった。
結局の所、聡明で心優しいアナ・メダイユを除いて、ヤーパンの天井の人間達は、彼等の勝手な都合の為に家族を奪われてエクソダスに協力させられたゲイナーへの理解や気遣いが、何だかんだでおざなりになっていたのである。
その為、オーバーデビルに取り込まれたとはいえ、「お前らが欲しいのはキングゲイナーだけなんだろ!?」「サラ、君が一番僕を使うのが上手だったよね。僕の気持ちを知っていて、いつも期待を持たせるように振る舞った…。最初は鼻にもひっかけなかったくせに!」とゲイナーが心に溜め込んでいた鬱屈を爆発させて心を閉ざしてしまうのは「当然」であると言えた。