※ネタバレ注意
「むかつく」
「死んじゃえ」
「みんな滅びちゃえ。ばーか」
「君のせいで埃まみれ。責任とって」
「ぞんざいに扱わないで。物じゃないっ。あと目が回った! すごく回った!」
「名前っ! まだ変わってないっ!!」
「じゃ……僭主は……」
「私が、なにを欲しがってるって言うの……?」
「……わかんない……言ってること」
「……もらえるなら、ぜんぶ欲しいけど……別に本当に欲しいものなんてない……」
「……君は?」
「僭主は……なにがあるの……? ざまあみろより上のこと……」
概要
災淵世界イーヴェゼイノに存在する《渇望の災淵》から生まれる幻獣の王──アーツェノンの滅びの獅子の一人であり、羨望の渇望を持つ。獅子の両眼であり、義眼をはめている。
幻獣機関所長ドミニク・アーツェノンによって生み出されたが、災禍の淵姫がいないため、完全には授肉できなかった。
また、コーストリアという名は幻獣言語で〝目〟という意味であり、実際には名前ではない。
そのため、アノスからは愛称として、コーストリア・アーツェノンから取り〝コーツェ〟と呼ばれており、それは転生世界ミリティアの古い魔法語で〝義理〟を意味し、渇望のままに振る舞う獣である彼女が、せめて人らしくあるようにと願いが込められている。
初登場
第十一章《銀水聖海》編 §9. 【恨み】にて初登場した。
描写
第十一章《銀水聖海》編
災禍の淵姫を利用して完全体となるために、世界転生後の転生世界ミリティアに入界し、ボボンガ・アーツェノンと共にイザベラを襲撃した。その際にアノスがイザベラの実子だと知ると、ボボンガを強引に引き連れて撤退していった。
また、その時に応戦したアノスに右眼の義眼を奪われ、更に壊されたことで、彼に恨みを抱くようになった。
第十二章《災淵世界》編
転生世界ミリティアが深層講堂になった際の洗礼にて、聖道三学院の元首たちと共にアノスと対峙し、そこでアノスが行使した《理滅剣(ヴェヌズドノア)》を《転写の魔眼》にてストックした。
その直後の六学院法廷会議では、転生世界を支配下におくという発議に最後まで賛成していたが、ナーガ・アーツェノンから送られてきた書状──指示と推測される──を読んだ後、発議に反対した。また、ナーガの指示により、会議の合間にイザベラを襲撃したが、イージェスと人形皇子パリントン・アネッサによって防がれた。
その翌日、二律僭主ノアに扮したアノスが幽玄樹海を訪れた直後、暇つぶしに彼と接触し、雑談をした後、《思念通信(リークス)》にてナーガに呼ばれ、帰っていった。
そのまた翌日、災淵世界と転生世界による、イーヴェゼイノを舞台とした銀水序列戦が行われた。そこでは主にレイやサーシャと戦っており、レイに滅びの獅子の眼のことで挑発された際には、理性を失うほどの激しい怒りを露わにしていた。それ故に、ナーガから使うなと言われていた《転写の魔眼》と獅子傘爪ヴェガルヴを使った。
そして、サーシャとの戦闘では互いにヴェヌズドノアにて打ち合ったが、全ての火露を魔王学院が占有したことで、銀水序列戦が終了したため、決着はつかなかった。
第十三章《聖剣世界》編
二律僭主に扮したアノスと軍師レコルが樹海船アイオネイリアと《赤糸の偶人》を交換した際に再び訪れ、アノスと雑談をした。
そして、アノスが所用でそこから立ち去ろうとした際、「災人はもう目を覚ましてるのかもしれない」と、不穏な言葉を告げた。
その後の災淵世界と聖剣世界ハイフォリアによる全面戦争の際には、イーヴェゼイノの領海に布陣したハイフォリアの船団に対して、多数の幻獣や幻魔族たち、そしてナーガと共に戦いを繰り広げた。
しかし、叡爵ガルンゼストに二本の聖剣に串刺しにされたことで拘束され、その直後に、戦争を止めようとした伯爵バルツァロンド・フレネロスによって胸に魔力の糸が繋がった赤い矢を刺され、それによって身柄を奪われ、そこに更にナーガが彼女を取り戻そうと鎖の盾を巻きつけ、彼と引っ張り合った。
また、その後鎖の盾で拘束されたまま、ミーシャの氷の繭によって更に拘束され、完全に封じられた。
そして、終戦後はボボンガと共に学院同盟パブロヘタラに身柄を移され、捕えられた。
第十四章《魔弾世界》編
パブロヘタラに潜む内通者によってボボンガと一緒に逃がされ、その後、完全体の力を得られるであろう《填魔弾倉》を手に入れるため、レジスタンス・ゼオルムのボイジャー・アロットの協力者となっていた。
そして、魔弾世界エレネシアの銀滅魔法の調査のため、二律僭主に扮したアノスとまた出会った。その際にアノスに協力を持ち掛けられ、それに了承し、第六エレネシアの軍艦を強奪し、その後アノスと共に火山要塞デネヴを強襲した。
そこで、応戦しに来た深淵総軍二番隊隊長アビニカ・ガモンと三番隊隊長ガウス・ジスローに対して、アノスと共闘し、撃破した。
具体的には、《掌握魔手(レイオン)》に対する対策用の術式が組み込まれた《魔深流失波濤砲(ベレニツィア・ノイン)》を、アノスは掴むのではなく、俗にいうオーバーレシーブをし、そしてコーストリアも同じようにトスをして、それにアノスがアタックをすることで、《掌握魔手(レイオン)》に反応して暴発しないようにし、それと同時に隊長二人を戦闘不能にした。
その後は、アノスが大提督ジジ・ジェーンズと戦う際の囮として、深淵総軍の部隊と戦いを繰り広げた。
そして、魔弾世界との戦いが終わった後、二律僭主に扮したアノスに会いに訪れ、雑談をした後、《填魔弾倉》を貰って去っていった。
容姿
三つ編みの少女の姿をしており、瞳を閉じている。女物の制服を纏っていて、肩には髑髏(どくろ)の、胸には泡と波の紋章をつけ、日傘をさしている。
人物
己の欲望に正直なタチであり、アノスからは計画性などとは無縁そうだといわれている。
また、羨むことしかできない自身を、そして己の持つ渇望を極端に嫌っていて、滅びの獅子の魔眼(め)を憎んでいる。それ故に醜い獣の魔眼(め)を隠してくれる義眼を大切にしている。
そのため、それを壊したアノスに激しい怒りを抱いている。
しかし、二律僭主ノア──本当は彼に扮したアノスだが──には度々会いに行っており、雑談などをしている。
能力
魔法
ここでは、コーストリアの扱う魔法について記述する。
また、詳細は魔法一覧(魔王学院の不適合者)を参照。
《災淵黒獄反撥魔弾(レイル・フリーエル)》
傘の親骨のそれぞれの先端から、黒緑の魔弾を放つ深層魔法。衝突するごとにそのものの魔力を吸収し、倍の威力と速度に膨れ上がって跳ね返る。
また、その性質のため、同じ魔弾が衝突すると、共倒れする。
《災禍相似入替(バシュッツ)》
属性が同じ、形が同じといった具合に、相似関係にあるものの位置を入れ替えることができる深層魔法。相似か否かは術者の主観によるところが大きい。例としては、属性が同じ結界と攻撃魔法を交換したり、特徴の似た人と人形を入れ替えたりすることができる。
しかし、同一の物体と見なせるものを切り離しての入れ替えは不可能。
《相似属性災爆炎弾(ゲストラ・エイズム)》
指定した魔法に属性を似せる魔弾を放つ深層魔法。主に《災禍相似入替(バシュッツ)》と併用して使われる。
特殊
ここでは、コーストリアの扱う魔法以外のものなどを記述する。
《転写の魔眼》
その魔眼(め)に映った他者の魔法を複製し、発動することができる。また、それは自らの力と技術が及ばない魔法でさえも転写することができる。
そして、合計八つの漆黒の眼球を象り、その浮遊する魔眼から転写した魔法を放つことができ、最大で十個の魔法をストックできると思われる。
しかし、一度の複製につき、一回きりしか魔法を発動できないため、再び発動するには、もう一度同じ魔法をその魔眼(め)で見なければならず、また、転写した魔法の威力は本物より幾分か劣化してしまう。
獅子傘爪ヴェガルヴ
〝ししさんそう〟と読む。
コーストリアの持つアーツェノンの爪であり、赤黒い傘の形をした、日傘と獅子の爪が一体化した武器──傘爪(かさづめ)である。
獅子の血
アーツェノンの滅びの獅子が持つ黒緑の血で、根源に損傷を負ったときに溢れ出る。
そして、その血は周囲のあらゆるものを腐食させる効果を持つ。
考察
第十四章《魔弾世界》編 §【価値】にてアノスから《填魔弾倉》を受け取っているため、最終章である第十七章でコーストリアが彼の権能にて完全体の力を得るのではないかと推測されている。
余談
二律僭主ノアに扮したアノスと接する時は、まるで義妹のようで、日傘による凶悪な攻撃も、彼が相手ではじゃれついているような微笑ましいものにしか見えず、時折見せる可愛らしい仕草は多くの読者の心を打っており、そのため読者の間では非常に人気である。
また、それ故に、最近では出番が少ないアルカナが義妹の座を奪われるのではないかと心配する声もある。