『死役所』の主人公で死後の世界の役所『シ役所』の総合案内として働いている男性。
概要
本名は市村正道。「お客様は仏様です」がモットーで誰に対しても平等に接する。
常に貼り付けたかのような笑顔(糸目でVの形をした口)を浮かべ、慇懃無礼で皮肉った言い回しをする。そして「聞かれなかったから」と大事なことを教えなかったり、無配慮なお役所対応で済ませたり、お客様の『死』についてずけずけと踏み入ったりしている。そのため時にはお客様から怒りを買い、思いっきり叩かれたことも。
それでいて、恐ろしいほどに核心を突いてくる。"死"に対する恐怖心を「素晴らしい感情」だと考えている。
常に笑顔だが完全に感情がないわけではなく、時々素が出る。
ビジネスライクで生真面目なのかと思えばそうでもなくユーモアも持ち合わせている様子(ほとんどがブラックジョークや皮肉ではあるが…)。その一方で生前や死刑執行直後の件で因縁がある『加護の会』の関係者や非常識な連中にはとことん容赦がなく、後者には直球で「屑」と罵ることも。
三樹ミチルは「違和感がある」「無理矢理貼り付けているよう」「あの笑顔の裏には何かある」と評し、第15条、第16条のお客様で死刑囚時代のシ村と面識がある元刑務官・杉からは「どこか無機質で人間臭さに欠けている」「いつも本当の自分を隠しているよう」と評している。
ちなみに総合案内に配属されたのは本人の希望である。
シ役所で一番多忙だと言われる総合案内を自ら希望しただけあって要領は非常によく、イシ間に「あんたみたいに優秀なのがいてくれて助かる」と感謝されたことも。パソコンも「慣れれば便利」と使いこなしている。
また『冤罪で処刑された元死刑囚』という経歴から本来なら『成仏申請書』さえ提出できればいつでも成仏可能な立場だが、後述の妻の行方と娘の死について探りを入れるために敢えてシ役所の職員として働き続けている。(娘に手をかけたのは『加護の会』の関係者であることはわかっているが、肝心の詳細は松シゲの手により黒く塗りつぶされてしまっていたため不明)
生前
九州出身でまだパソコンがなかった時代のとある市役所に勤務していた市役所職員。実母は市村を生んですぐに亡くなり、実父も戦争に行ったきり帰ってこなかったため養家に引き取られた。「正道」と命名したのは産婆さんとのこと。
養母及び義兄からは疎まれて育ち、逮捕後は絶縁状態になっている。
妻・幸子とは仕事を介して出会い、結婚。娘・美幸を授かった。
だが美幸には絵具や土など明らかに食べ物ではないものばかりを食べる「異食症」の症状が出ており、幸子は次第に精神的に追い詰められた末にカルト教団『加護の会』に入信。家族の前から姿を消してしまう。
市村は妻を取り戻そうと奔走するが、その最中に美幸が何者かの手によって殺害されてしまう。
状況証拠から警察は市村を美幸殺害容疑で逮捕し、厳しい取り調べを行う。この時のきつい取り調べと強要により疲弊した市村は精神的に追い詰められてしまい、遂に嘘の自白をしてしまう。死後にシ役所で見せる貼り付けたような笑顔はこの時に生まれた。
そのまま市村は冤罪を晴らすことなく死刑が執行され、シ役所の総合案内となった。
118条及び119条で「幸子を犯人にさせない」の一心で美幸殺害だけでなく坂口久恵(美幸殺害の2ヵ月前に殺害された美幸と年の近い少女)殺害容疑も被ったことが明かされた。
なお久恵殺人犯は120条で明確にされており、真犯人は犯行後に首吊り自殺をしている。
ちなみに幸子のことはいまだに愛してるようで「どんなに老いても妻の魅力は誰にも負けないと思います」とのこと(シン宮対策かもしれないが)。
実写ドラマ版では生前の細かいパーソナルデータも設定され、享年42。