本記事では、JRA-VANの表記に倣い「ストラディバリウス」で統一する。
表記揺れ→ストラディヴァリウス
プロフィール
生年月日 | 2014年2月28日 |
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欧字表記 | Stradivarius |
性別 | 牡 |
毛色 | 栗毛 |
父 | Sea The Stars(IRE) |
母 | Private Life(FR) |
母の父 | Bering(GB) |
生産者 | Bjorn E. Nielsen |
馬主 | Mr Bjorn E. Nielsen |
管理調教師 | J. Gosden → J&T. Gosden |
父Sea The Starsは2000ギニー、ダービーステークスなどGI6勝を挙げ種牡馬としても大成功を収めている。
母Private Lifeはフランスで8戦2勝。
母の父Beringはジョッケクルブ賞などを勝利しハービンジャーの母の父としても知られる。
馬名はイタリア製のストラディバリ3父子が制作したヴァイオリンに由来する。
経歴
2歳時(2016年)
デビュー2戦の未勝利は5着、4着と敗退したが3戦目の8f未勝利戦で初勝利。2歳シーズンは3戦で終える。
3歳時(2017年)
緒戦のハンデキャップを勝利すると続くハンデキャップこそ敗れたが、クイーンズヴァーズ(GII)で重賞初勝利を挙げる。
長い距離で好成績を挙げたためグッドウッドカップに出走。道中は中団に構え直線内目をついて脚を伸ばし前を行くビッグオレンジを差し切ってGIタイトルを手にした。
続くセントレジャーステークスでは直線1度先頭に立つも外から交わされ3着。
ブリティッシュチャンピオンロングディスタンスカップ(GII)でも3着に敗れ3歳シーズンを終えた。
4歳時(2018年)
緒戦のヨークシャーカップ(GII)を快勝すると、長距離の大一番ゴールドカップに出走。直線の激しい追い比べを3/4馬身制しGI2勝目を挙げる。
連覇を狙うグッドウッドカップでも直線しぶとく脚を伸ばし、直線の追い比べを制して連覇を達成した。
その後ステイヤーズミリオンの懸かるロンズデールカップ(GII)に出走。直線力強い伸びで差し切りステイヤーズミリオンを達成。
更にチャンピオンロングディスタンスカップも優勝した。
4歳シーズンは5戦5勝、欧州の年度表彰が行われるカルティエ賞で最優秀ステイヤーに選出された。
5歳時(2019年)
昨年と同じくヨークシャーカップで始動し、ここを勝利し連覇を達成すると、続くゴールドカップでも重賞連勝中のディーエクスビーとの追い比べから抜け出し連覇を達成。
更にグッドウッドカップでもディーエクスビーをクビ差抑えて史上初のグッドウッドカップ3連覇を達成。
ロンズデールカップでまたもやディーエクスビーを破り2年連続でステイヤーズミリオンを達成するとドンカスターカップにも参戦し勝利。
チャンピオンロングディスタンスカップでは2着に敗れたが、5歳シーズンは6戦5勝、2年連続でカルティエ賞最優秀ステイヤーに選出された。
6歳時(2020年)
新型コロナウイルス流行の影響で開催がずれ込み、ヨークシャーカップでの始動ができなかったためコロネーションカップを緒戦に選択。久々の12fということもあってかここは3着に敗れる。
前走は敗れたものの、距離が伸びるゴールドカップでは直線圧倒的な伸び脚で後続を突き放し2着ネイエフロードに10馬身差を付けてイェーツ以来史上3頭目の3連覇を達成。
グッドウッドカップでもネイエフロードをゴール前で差し切り自身が持つグッドウッドカップ3連覇の記録を4に伸ばした。
陣営はこの年凱旋門賞を狙う事を公表し、2年連続で出走していたロンズデールカップを回避しフォワ賞に出走。道中2番手から運ぶが前を行く前年の英ダービー馬アンソニーヴァンデイクを捕らえられず2着。
本番凱旋門賞では不良馬場に苦しんで直線伸びを欠き7着に敗れた。
凱旋門賞から中1週で挑んだチャンピオンロングディスタンスカップは見せ場なく後退。12着に敗れた。
6歳シーズンは6戦して2勝だったが、GI2勝が評価され3年連続で最優秀ステイヤーに選出された。
7歳時(2021年)
この年の緒戦はサガロステークス(GIII)。鋭い差し脚を見せ9か月ぶりの勝利。
イェーツ以来2頭目の4連覇を狙いゴールドカップに出走したが、直線前が開かず、ようやく追い出したものの前を捕らえられずに4着。4連覇を逃した。
連覇記録を5に伸ばすべくグッドウッドカップに向かうが、道悪を理由にスクラッチ。連覇中の2つのGIはどちらも途切れてしまった。
その後はロンズデールカップに向かい、自身3度目のロンズデールカップ勝利を挙げる。
続くドンカスターカップも勝利し、カドラン賞で自身が回避したグッドウッドカップの勝ち馬トゥルーシャンと対決する。直線入り口から半ばまで一歩も引かぬ追い比べを展開したが残り200m付近で脚色が鈍りトゥルーシャンに突き放された2着に敗れた。
引退し種牡馬入りすると示唆をしたうえでの5年連続の出走となったチャンピオンロングディスタンスカップでもトゥルーシャンの後塵を拝する3着。しかし、J.ゴスデン師は急遽引退を撤回し現役続行を表明した。
7歳シーズンは6戦2勝。5年連続GI制覇はならず、最優秀ステイヤーの座もトゥルーシャンに明け渡すことになった。
8歳時(2022年)
緒戦は3度目の出走となるヨークシャーカップ。しぶとい末脚でサンダラスを差し切り王者健在を見せつける。
引退・種牡馬入りを発表して挑んだ5度目のゴールドカップでは内目の中団後方を追走。直線じわじわと詰め寄ったが新星キプリオスに届かずの3着。レース後、引退を撤回し現役続行を表明した。
5度目の勝利を懸けグッドウッドカップに参戦。今回も種牡馬入り・引退レースと銘打っており、キプリオスとの再戦になる。直線キプリオスとの激しい追い比べになり1度はキプリオスを交わしたものの驚異の二枚腰で差し返されクビ差の2着に敗れたが、実力を見せつけた。レース後、またもや引退を撤回。
しかし9月26日、脚の打撲からの回復が遅いということもあり正式に引退が決定しイギリスのナショナルスタッドで種牡馬入りすることが発表された。初のGI制覇から足掛け6年、常に欧州ステイヤー界のトップ争いを繰り広げた名馬の種牡馬としての今後に期待が集まる。
複数回にわたる引退撤回について
上述したように、ストラディバリウスは3度引退と銘打ってレースに挑み(1度目は示唆程度だったが)、その全てでレース後に引退を撤回している。その理由は恐らく現在の欧州の種牡馬事情にある。
イギリスで最も馬券が売れるレースがグランドナショナルであることは有名だが、それに限らず欧州では障害競走の人気が高い。つまり障害用の種牡馬の人気も高くなるということである。近年実績を挙げている平地用種牡馬は2000ギニーを初めとした8f~10f戦で活躍した馬が多く、ステイヤーは平地用種牡馬としてあまり好まれない。例を挙げるとエネイブルなどを輩出したナサニエルも最近では平地より障害馬を多く輩出している。
しかし、ストラディバリウスのオーナーの1人であるニールセン氏はストラディバリウスを平地用として種牡馬入りさせることに強いこだわりを持っており、ドイツやフランスから障害用種牡馬としてのオファーが来た際もこれを断り、現役続行の判断を下している。
9月26日という中途半端なタイミングでの引退発表も、平地用種牡馬としてのオファーがようやく来たからと推測できる。
その他特徴・エピソードなど
明るい栗毛の馬体にまっすぐ伸び太さもほぼ一定な細い流星鼻梁白鼻白を持っている。
平地GI競走を4連覇した馬はストラディバリウスを含め6頭目。2021年に東京大賞典4連覇を達成したオメガパフュームを含め全世界で史上7頭しか達成していない。GI5連覇はマクダイナモ、ハリケーンフライ、オジュウチョウサンの3頭が達成しているがいずれも障害競走でのものである。
ステイヤーズミリオンは、イギリスでの競走馬の短距離化を受け、ステイヤー保護を目的のひとつとし2017年に設立された。5月開催の4競走のうちいずれか1つ、ゴールドカップ、グッドウッドカップ、ロンズデールカップという4競走を同一年に制覇すると100万ポンド(約1億5000万円)を賞与するというものであり、非常に高い難易度である(現にロンズデールカップ設立からステイヤーズミリオン設立までの37年間に達成した競走馬は存在しない)とされた。しかしながら、設立2年目にしてストラディバリウスがステイヤーズミリオンを達成してしまった上に、翌年も連戦連勝でステイヤーズミリオンを2年連続達成してしまい、一挙に200万ポンドをBHAの懐からかっさらっていったためか、2019年を最後にたった3年の施行でステイヤーズミリオンは廃止されてしまった。