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キセキ(競走馬)

きせき

2014年生まれの日本の競走馬。主な勝ち鞍は2017年の第78回菊花賞。同レースは超大型台風が日本列島に接近する雨の中、記録的な不良馬場において行われた泥まみれのレースとして知られる。
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多様なる結晶編集

我が貴石を見よ

代々受け継いだもの

自らの手で磨いたもの

結晶たちに宿る光が

熱源となり推力と化す


我が軌跡を見届けよ

青き芝草をかき分け

先陣を切る姿

あるいは泥を撥ね上げ

背後から襲い掛かるさまを



だから僕は編集

手に入れるのが容易なら

そこに喜びなど見出せない

つまずき苦しみ泥にまみれて

そうして掴めるものだけが

高く掲げる価値を持つ


戦列に加わる資格を得たなら

決してそれを手放さない

たとえ艱難が続くとしても

ここでだけ得ることのできる

清々しい達成感がある


英雄とか脇役だとか

そんな呼び名気にしない

信念と努力を絶やさず

工夫と策略を凝らす日々が

僕だけの物語を作る



プロフィール編集

生年月日2014年5月13日
欧字表記Kiseki
香港表記神業
性別
毛色黒鹿毛
ルーラーシップ
ブリッツフィナーレ
母の父ディープインパクト
生産下河辺牧場(北海道日高町)
戦績33戦4勝(JRA29戦4勝、海外4戦0勝)
獲得賞金7億140万3000円

ルーラーシップキングカメハメハエアグルーヴの間に生まれた良血馬であり、2012年の香港・クイーンエリザベス2世カップ勝ち馬。キセキはその初年度産駒の1頭である。


母父の三冠馬にして2010年代を代表する種牡馬ディープインパクトについては言うまでもないだろう。


母ブリッツフィナーレ自身は未出走のまま繁殖に入ったが、母母ロンドンブリッジは1998年の桜花賞ファレノプシスの2着に入っている。ブリッツフィナーレ以外の産駒に、ダイワエルシエーロ(2004年オークス)、ビッグプラネット(アーリントンカップ・京都金杯)、グレーターロンドン(中京記念)と、3頭の重賞馬を産んでいる。


戦歴編集

2歳~3歳秋編集

2016年(2歳)、美浦トレーニングセンター角井勝彦厩舎からデビュー。12月の新馬戦に勝利し上々のデビューを飾った。


2017年(3歳)、クラシック参戦に向け収得賞金を積んでいきたいところだったが、始動戦の500万円下戦で5着、続くすみれステークス(OP)も3着に敗退。一気の賞金加算を懸けて臨んだ3月の毎日杯(GⅢ)もアルアインの3着止まり。この結果で皐月賞日本ダービーの出走を諦めざるを得ず、夏まで休養に入った。


7月に復帰し、500万円下戦・1000万円下信濃川特別と2連勝。菊花賞トライアルの神戸新聞杯(GⅡ)はダービー馬レイデオロに敗れ2着も、収得賞金を積みオープン馬入りと共に、菊花賞の優先出走権を確保した。


第78回菊花賞編集

日本の競馬界には「夏の上がり馬」という言葉がある。2歳・3歳春までは目立った結果を残せず、皐月賞日本ダービー(牝馬なら桜花賞オークス)、あるいはNHKマイルなどには出走すらもできなかったような馬が、暑く厳しい夏のレースを勝ち上がり、力をつけて秋戦線で一気に開花するパターンを指す。

メジロマックイーンマヤノトップガンなどもこのルートから菊花賞で初GⅠを制覇、そこからスターホースにのし上がっており、こうした上がり馬は侮れない存在である。


2017年の菊花賞は「本命不在の混戦」と予想されていた。日本ダービーを制したレイデオロジャパンカップを目標に菊花賞を回避、同2着のスワーヴリチャード・3着のアドミラブルも回復遅れや故障で不在。

夏以降の好調が評価されたキセキが1番人気(4.5倍)、僅差の2番人気に皐月賞馬アルアイン(4.9倍)、そのアルアインを直前のセントライト記念(GⅡ)で倒し菊花賞の舞台をつかんだ同じく上がり馬のミッキースワローが3番人気(5.2倍)に推されていた。


だが、菊花賞当日10月22日の日本列島には超大型の台風21号(Lan、ラン)がフィリピン東部から北上、接近しつつあった。

結果的に全国で死者8名、農林水産関連被害額660億円など多大な被害をもたらすことになるこの台風の接近により、10月22日の高知競馬、23日の盛岡競馬は開催中止。22日のプロ野球クライマックスシリーズ広島横浜戦(マツダスタジアム)も中止順延など、影響があらわれ始めていた。


京都競馬場のレースは予定通り開催されたものの、降りしきる雨により馬場は不良も不良。早い時間のレースから、泥田のようなコースに脚を取られてまるで時計は出ず、スタミナを使い果たして駆け引きどころではなく完走するのが精一杯の馬が続出する、稀にみる極悪馬場状態であった。


この状況の中11Rメイン菊花賞がスタート。上位人気のキセキ・アルアイン・ミッキースワローはいずれも中団に控えた。

逃げを打ったマイスタイルは早くも向こう正面でズルズルと後退。代わって先頭に立ったウインガナドルも3コーナーの坂を登りきって力尽きる。それをかわしたアダムバローズが……。前に出た馬から順にスタミナを使い果たし力なく後方に脱落していく、地獄のスタミナ勝負となった。


最終直線、半数以上の馬がスタミナが尽きて末脚勝負どころではなく、まともに上がり勝負に残れたのは18頭中7頭。吹き付ける雨と舞い上がる泥でどの馬も騎手ももう泥まみれの中、突き抜けて極悪のレースを制したのはキセキだった。

勝ち時計は3分18秒9。これは前年の菊花賞より15秒以上も遅く、これより遅いタイムの菊花賞というと70年以上前の1946年まで遡らねばならない。どれほどのサバイバルレースだったのかが窺い知れる。


また2着は10番人気クリンチャー、3着は13番人気ポポカテペトル。馬連10660円、3連単は559700円と、馬券的にも大荒れのレースとなった。


キセキ鞍上のミルコ・デムーロはこの勝利により、外国人騎手初のクラシック三冠を達成。


2018年(4歳)編集

一気にGⅠ馬にのし上がったキセキだったが、2017年末に遠征した香港ヴァーズは直前に罹患した皮膚病の影響もあり9着。

2018年も年明けの日経賞(GⅡ)で9着、宝塚記念は8着と敗退。秋はやや復調し、毎日王冠(GⅡ)と天皇賞秋で連続の3着。


11月25日のジャパンカップでは、好スタートから逃げ戦法を取る。前半1000mは59秒9と抑えめにして脚を残し、そこからペースを上げて他馬を置き去りにかかる。

最終直線でも脚は衰えずGⅠ2勝目は目前だったが……これに立ちはだかったのはこの歳の三冠牝馬アーモンドアイであった。2番手追走から驚異的な伸び脚でキセキを捉え勝利。勝ち時計は2分20秒6の2400m世界レコードであった。絶好のレース運びで普通なら押し切り勝ちのところだったが、相手が悪かったとしか言いようがない。

2019年~2021年(5歳~7歳)編集

その後もキセキはなかなか勝ちきれない。


2019年(5歳)始動戦の大阪杯は、菊花賞で破ったアルアインに雪辱を許し2着。

宝塚記念では、2019年・2020年と2年連続の2着。

2019年にはフランス遠征を行い凱旋門賞に挑戦したが7着だった。


7歳になった2021年も現役を続行。

香港・クイーンエリザベス2世カップ4着、宝塚記念5着などしぶとく掲示板を確保。京都大賞典ではマカヒキが激走の復活勝利の中3着に粘り、ベテラン2頭で競馬ファンを沸かせた。


2021年宝塚記念のファン投票でも8位(出走馬中ではクロノジェネシスレイパパレカレンブーケドールに次ぐ4番手)。

2021年有馬記念のファン投票でも9位(エフフォーリア、クロノジェネシス、タイトルホルダーアカイイトに次ぐ5番手)。

この有馬記念10着を最後に、現役を引退した。


結局、あの泥まみれの菊花賞以降、勝ち鞍を挙げることはできなかった。

生涯戦績33戦4勝。だが馬主孝行に走り続けて7億円超を稼ぎ出し、その戦績以上にファンに愛され根強い人気を誇った馬であったことは、ファン投票結果が証明している。


引退後は日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬となる。


関連タグ編集

競走馬 菊花賞 ルーラーシップ

キセキ(その他の「キセキ」について)

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