CV:菊地由美
概要
元NASAの宇宙工学技術者でAIの専門家。DARPAにも所属していたことがある。
NASA時代の経験から人間を宇宙に送るのは危険として、代わりとなるAIを研究している。
ヒューイと共にCIA中米支局長ホット・コールドマンに雇われて平和歩行計画に従事し、ピースウォーカーに搭載されるAI「ママル・ポッド」の開発を行っていた。
嗅ぎ煙草の愛用者。
科学的考察の面でもSF映画を好んでおり、彼女の後ろをついてまわるヒューイに映画「サイレントランニング」に登場するドローンから引用したあだ名をつけたのも彼女である。(もっとも皮肉は通じなかったようだが)
ザ・ボスとはNASAの米有人宇宙飛行計画時代に知り合い、それ以降、彼女に心酔するようになった。しかし計画の中でザ・ボスは重傷を負い現行の技術で生身の人間を宇宙に出すのは危険と考え人間の代行を担うAIシステムの開発に没頭するようになる。それ故コールドマンの計画に参加したのも、ピースウォーカーのAI上にザ・ボスの人格を再現し、祖国を裏切ったことの真意とザ・ボスの最後の意志を知ろうとした為である。
ストレンジラブの名は、スタンリー・キューブリックが監督した映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」に登場する同名の登場人物に因んだもの。これは、彼女がDARPAに所属していた際に異性との恋愛に全く興味を示さず、デスクには女であるザ・ボスの写真を貼っているのを見た周りの者がつけたあだ名(「異常な愛情」を持っているという意味。物語の舞台である1970年代頃は、同性愛に対する無理解は現在の比ではなかった)だが、彼女自身、レズビアンの気があり、あだ名で呼ばれる事に関して特に強い否定はしていない。
ヒューイに恋愛感情を持たれていることに気づいてはいたが、彼の消極的な性格を嫌っており、当初はけんもほろろな態度で接していた。一方で内心では憎からずも思っているため、一部のファンからはツンデレっぽくも見られている。
ピースウォーカー事件収束後、行き場が無くなった所をMSFにスカウトされ、メタルギアZEKEの開発を行う。また、その際にはヒューイに「自分1人で歩いてくるよう」と彼に発破をかけている。
その後もMSFで開発業務を担当するが、半年ほどで離脱する。その後はヒューイとの間に関係を持ちハル・エメリッヒを出産する。
出産後も研究を続け、当初はゼロの元で代理A.I.の研究を行っていた(この際にアマンダの協力も受けてニカラグア湖に沈んだママルポッドの機能が移りハイブリッド化したレプタイルポットを引き揚げている)。 その後はXOF(スカルフェイス)の元でヒューイと共にメタルギア・サヘラントロプスの開発を進め、彼女はサヘラントロプスを動かすためのAI開発を担当していた。
しかしヒューイがサヘラントロプスの搭乗実験に息子を利用し、それに反対してハルをヒューイから引き離すという出来事が起こる。
その後、何らかの経緯で(後述)彼女はAIポットの中に閉じ込められた状態となり、結果的にAIポットの中で酸欠により死亡した。遺体は数年後、AIポットを回収し彼女の遺体を発見したカズヒラ・ミラー達ダイアモンド・ドッグズによって葬られた。
ヒューイの証言では、「彼女はAIに否定的だったスカルフェイスと口論になり、スカルフェイスの怒りを買って殺されて、遺体をそのままポッドの中に保存した」と主張していたが、その後ポッドに残されていた音声データが公開されてからは、「自分からポットの中に入って自殺した」と主張を変えている。
一方でミラー達は、AIポットの中に秘匿されていた彼女の音声記録を証拠とし、「息子を引き離され逆上したヒューイが、彼女をAIポットの中に閉じ込めた」と結論付けている。
AIポットに隠されていた音声記録はカセットテープとして保存されており、自分がゼロの計画に加担してしまったことについてのザ・ボスへの懺悔や、一人息子のハルへの愛情などの言葉が遺されていた。
「出ようと思えば出られたのかもしれない」「どうして腕を挟んででもハッチが閉まるのを止めなかったんだろう」「もう ここを出ないことにした」と語っており、自身への贖罪として死を受け入れた(ポットから出るよりも自死を選んだ)ことが示唆されている。
※なおこの時、「殺して……」と発言する前後では不自然な音声のノイズが発生している。このことから、ミラー達か何者かによって音声が部分的に編集・改竄されているのではないかという説も存在する。
ハルに対しては、母親として実際にできた事は少なかったものの、非常に想いは深かった事が判明している。
自分が子供を出産したのは、自分の子供に「ザ・ボスの意志」を伝えたかった、自分の血(GENE)とザ・ボスの意志(MEME)が繋がれば「ザ・ボスと自分の子供」になると考えたからであった(ただし、この考えが当初からのものだったのか、狂気に走るヒューイの姿を見てそういう考えに逃避したのかは不明)。
彼女は、息を引き取る最後の瞬間まで息子の身を案じ、彼が強く生きてくれる事だけを望んでいた。
なお、音声記録の中では "あなた" と度々発言しており、この "あなた" という言葉はハルを意味する部分と、ザ・ボスを意味する部分と、またそのどちらにも解釈できる部分とがある。
この世界をゼロに穢されず "あなた" の望んだ形にするためのコードを埋め込んだと語っており、何らかの形で未来に希望を託した。
AIへの考え方
本編クリア後に視聴できるテープの中で、彼女のAIへの考えを聞く事が出来る。スネークとの「AIと人間は何が異なるか」「AIと人間は見分けられるか」など、なかなか面白いやりとりを聞く事が出来るが、ストレンジラブはこのテープの中で「未来のAIは高度な判断では無く、ビッグデータや膨大なシステム処理を行う方へ進化する」と発言している。
ピースウォーカーに搭載されたママルポッドのように高度な状況判断を行うのではなく、膨大なデータから集団の振る舞いを決めるシステム処理のみに特化したものへ推移していくとしている。ストレンジラブ本人はこのAIを「ロマンの欠片もない」と一蹴したが、彼女の建造したAIポッドは後にある武装組織へ渡り、そこから技術が伝わった事でらりるれろの管理AIの雛形となる。
皮肉な事に、メタルギアシリーズおいて後世の世界に最も暗い影響を及ぼす事になる技術を生み出したのは、オタコンの両親だったのである。
彼女の尋問
ピースウォーカー事件の際に先述のザ・ボスの真意を問いただすべくスネークに拷問を行う。
彼女の手には謎のバチバチと怪しく光る棒が握られていた。またしても電撃かと身構えるスネークだったが、なんとそれは電磁くすぐり棒という斜め上をいくシロモノだった。
いくら「くすぐりの刑」とはいえ耐えないとスネークの命は危ない。プレイヤーは恒例のボタン連打に苦しみ、スネークは意に介さない大爆笑というなんとも傍から見てもシュール極まりない拷問であった。
なお、シリーズでもスネークが大爆笑する光景は初だったりする。
余談
上記の通り、彼女の名前の由来は映画「博士の異常な愛情」に登場するストレンジラブ博士なのだが、「車椅子で活動する精神に異常をきたした博士」というストレンジラブ博士のキャラクター像そのものは、その後の展開を考えても、むしろ夫のヒューイのモデルだと思われる。