人物
CV:銀河万丈。
ゼロ少佐のほか、トム少佐というコードネームを使っていた時期や本名は「デイビッド・オウ」である事が公式で明かされているが、プレイヤーの前で活躍したのは主にゼロ少佐を名乗っていた頃であるため、この名前でタグ登録されていることが多い。
1909年8月12日イギリスに生まれる。
SASの一部隊の創設にザ・ボスと共に関わり、その後CIAに入局。
自身の豊富な経験から人種を問わず選抜した諜報部員と特殊部隊員の両方を兼ね備えた人員により編成された特殊部隊Force Operation X(FOX)をザ・ボスと共に立ち上げる。
初登場時はネイキッド・スネーク(後のビッグ・ボス)の上官であり、彼よりも二回りほど歳も離れてはいるが互いに大切な親友同士であった。
指揮能力は非常に高く、常に紳士的で、スネークをはじめとする部下への思いやりも強い、まさに理想的な指揮官であるが、変人だらけが集結しているFOXだけあって彼も例外ではなく、その人格には重大な欠点こそないものの変なところが多い。
彼が変人であることはFOXのメンバー一同が認めるところである。
1900年代生まれだけあって、基本的に頑固で古いタイプのイギリス人であり、祖国への誇りが良くも悪くも高い。
栄光あるイギリス陸軍の文化を重んじ、アメリカ軍の作戦行動を「適当」「ずさん」と若干下に見ている。
好きな食べ物はシェパードパイ、飲み物ならウィスキー。嫌いな食べ物はハンバーガー。
こよなく紅茶を愛する英国人の鑑で、逆にコーヒーを蛇蝎(だかつ)の如く嫌う。
スネークが「任務が終わったら機内で温かいコーヒーを飲みたい」と発言した事に対し、激昂して放った「君はあの下品な泥水を飲むつもりなのか? 凱旋飛行の最中に!?」という言葉は非常に象徴的である。
例えスネークの任務を指揮している機内であってもアフタヌーンティーは欠かさず、紅茶とスコーンがなかったら怒る。スコーンとチョコチップクッキーを一緒くたにされても怒る。そして一度怒らせると大抵の場合、長々と説教が続くとの事(シギントが「ヤバい、始まっちまった」と言って慌てて通信を切る程)。
趣味は映画(主にスパイ映画や戦争映画)鑑賞と狩り。スポーツならばラグビーが好きなようだ。
特に祖国が生んだスターである007=ジェームズ・ボンドの大ファンで、パラメディック曰く「007の話が出ると1時間は講義が続く」とのこと。ビデオすらない60年代に、個人で映写室とフィルムを所有しているほどで、スネークの装備にペン型拳銃を割と本気で提案したりしている。ちなみにスネークは、007の(女性関係が)華やかすぎるスパイ活動にリアリティを感じられず苦手としている。
また、余談であるが、ゼロのコーヒー嫌いは、ボンドの紅茶嫌いのパロディギャグである。ボンドは「あんな泥水を飲んでいるから大英帝国は衰退したんだ」と言い放つほどの紅茶否定派なのである。
さらに言うと酒ではウォッカも嫌っているらしく「英国ではそういうのは美酒とは呼ばん。硫酸だ」と評している。
他にも映画好きな面は見られる。バーチャスミッションの際に用いていた「トム」というコードネームは、映画『大脱走』で捕虜が掘った脱出用トンネルの名前にちなんでいる。
だが実は、トムは途中でナチスに発見された縁起の悪いトンネルだったと判明し(ちなみに先述の由来に因むならハリーが正解)、スネークイーター作戦では元に戻している。スネークイーター作戦開始前にわざわざ映画会社からフィルムを取り寄せて確認したらしい。(バーチャスミッション中にも無線を繰り返すと、やはり確認して今まで通りゼロでいいと言われる)
さらにUMAの存在を信じており、強い興味を持っている。
その熱中振りは、CIA内部で非公式団体「UMA探求クラブ」を立ち上げ、部下に仕事場での会報の作成を許可するほど(ちなみにシギントがこのクラブの副会長だが、他のメンバーはいるのかどうかさえ不明)。
通信画面のプロフィールによれば、好きなUMAはネッシーである。かつてUFOに連れ去られた経験があると言ってはばからないらしく、その事についてシギントが語っている。
・・・もし『MGSPW』に出てきた火を吐くワイバーンとか恐竜の生き残りみたいな怪物とかが生きているあの島の存在を知ったら間違いなく大興奮すると思われる。
※以下、ネタバレ注意!
作中での活躍
MGS3
当時55歳。この時はスネークの上官である。
後に「FOXHOUND」の前身となる「FOX」部隊をザ・ボスと共に立ち上げ、その有用性を証明するための作戦である「貞淑なる任務(バーチャスミッション)」を指揮した。
しかし、この作戦の失敗で責任を問われ処分されかけるも、その一週間後に、大戦を終結に導いた英雄「ザ・ボス」の亡命を受け、FOXの存亡を賭けた「スネークイーター作戦」の許可が下り、その作戦を成功させて汚名を返上することとなる。
しかし作戦のためとはいえ、肉親よりも信頼でき、親友であるザ・ボスが抹殺されたことに関してはスネーク同様、遺恨が残ってしまった。
なお、物語の中盤あたりで賢者達や賢者の遺産の情報が僅かに出てくるのだが、ゼロはこの時点でどこまでこの背景の存在を知っていたのかは不明である。
後にシリーズの世界観の大きな影となる愛国者達の創立時のメンバーとなるがシリーズに全般的に登場するのは3のみである。
小説版によると、ザ・ボスの息子が連れ去られる事を察しながらも、ソ連の兵士であるザ・ソローとの間に生まれた彼はいずれザ・ボスの弱点になると思って見逃してしまい、その件で彼女に対して罪を償いたいと思っていた。
そのため、反共が盛んだったアメリカでザ・ソローが同じ部隊に居た為に赤狩りの対象になった際や居場所を失った彼女を助けている。
上述のUMA好きがたたってか、ツチノコをキャプチャーした状態で無線すると部下共々興奮しながら「さっさと任務を終わらせて生きたまま持ち帰れ!」だの「絶対に食うなよ!」と無茶苦茶なことを言いだす。
GRUのライコフ少佐をなぜか露骨に嫌っており、かつてライコフに変装してソ連の機密書類を盗むための極秘作戦のためシギントが製作した変装マスクを(作戦が中止になったとはいえ)捨てろと言い放ち、ライコフに変装した状態で少佐に無線すると「何か腹立つ」だの「ウケない」とボロクソに言う。
・・・いったい彼に何の恨みがあるんだ?
実はゼロ少佐がライコフを嫌うのはちゃんと理由があり、前作「MGS2」が関わっている。2は女性にも受け入れられる作品を目指し主人公に美形キャラである雷電を起用したが制作側の思ったよりも反響は芳しくなかったらしい。つまりゼロ少佐が雷電にそっくりの人物であるライコフをあそこまでこき下ろすのは制作サイドの「2での雷電の賛否両論な評判」をそのまま示したメタ的な自虐ネタということだった。
さらにライコフの変装をしてソコロフに会おうとするとゼロ少佐が無線を入れ「その顔はウケない。私には分かる。」と言って変装を取るよう促してくる。当然いきなりこんな事を言われたネイキッド・スネークは困惑するばかりであった。
MPO
当時61歳。サンヒエロニモ半島におけるFOXの反乱の首謀者であるとして、国家反逆罪の容疑で拘束される。その後、スネーク(ビッグボス)の活躍で疑いが晴れ、解放される。
が、本編中での会話で、彼の事件への関与を疑わせる台詞(「ヌルと同じコードネームを持つ男」といったジーンとオセロットとの会話など)があり、実際は潔白ではない可能性もある。
また、オセロットにCIA長官を殺害させ、ED後の会話でオセロットに電話をかけたのはおそらく彼だと思われる。
事件後にスネークをFOXHOUNDの初代司令官に任命する。が、サンヒエロニモ半島事件後、スネークはコロンビアで国境無き軍隊を組織していたので、どの様な経緯でFOXHOUNDを組織し脱退したのかは不明。
初期装備はM870。
スキルは他のユニークキャラと違ってずば抜けたものはない代わりにキャリアは4つあり、特にレスキュー隊(気絶した敵兵を引きずる速度が速くなる)と配達員(不要なアイテムなどをトラックに運べる)のキャリアの両方を持っている数少ないキャラなので、潜入任務での貴重な戦力となる。
MGSPW
本人は登場しないが、パス・オルテガ・アンドラーデを影で操るCIPHERとの関係を匂わせている。
クリア後、カズヒラ・ミラーとの会話の記録を再生できる。
その内容とはやはり今回の事件にも裏で繋がっていたこと、そしてCIPHERという組織を束ねていたのは彼だったということである。
ちなみに「恐るべき子供達計画」を発足したのも彼であり、その結果本作の2年前にソリッドとリキッドの2人が生まれている。
この件でスネーク(ビッグ・ボス)はゼロと完全に決裂し、彼の元を離れた。
MGSGZ
本人は登場せず、スカルフェイスやパスの言葉に出る程度。
PWの頃から姿を隠していたようで、他者を介して連絡が行われる為に組織の人間であっても出会ったものは居ない。
サブミッションの『ありえたかもしれない世界』においては、「キューバの中のアメリカ」に存在するキャンプ・オメガの施設を利用した尋問施設の設立を狙い、ブラックサイト化の計画を立て、各国の弱みである情報や密約が行き交う収容施設に変えている。アメリカ合衆国でさえ預かり知らぬ計画を隠密に行い、怪しいと思った罪の無い”民間人”をテロリストに仕立て上げ、容疑は「アメリカ市民をターゲットにしたテロ活動」と偽り、”敵性戦闘員”として世界中から拉致させている。『機密情報回収』においては、そのキャンプ・オメガの機密情報をBIGBOSSに渡そうと潜入していたアメリカの調査員の家族を人質に取らせ、計画の全貌を知るスキンヘッドの男に、BIGBOSSの特徴を教え、戦車を忍ばせるなど、この時からスネークを本格的に消そうとしていた。
FOXの鏡写しであるXOFとの関係性は不明。
手先であるスキンヘッドの男からはゼロ少佐の目指す国家を超えた統治世界の目的に賛同されるなど、未だに部下からの厚い信用を得ている。が、サブミッションの一つ『対空機関砲破壊』では、キャンプ・オメガの証拠隠滅の為に、施設に残っていた何も知らない兵士達を見捨てるなど、目的の為に手段を選ばない横暴な行為を働いている。(しかし一連の行為にゼロ少佐が本当に関わっていたのかは怪しいところではある)
スキンヘッドの兵士を尋問、又囚われたMSF兵の話からすると、全ての国家を一つに統治するあの組織の基盤が成立している台詞が聞ける。
MGSVTPP
MSF襲撃の報を受け、犯人であるXOFを懲罰人事気味にアフリカに飛ばす。そしてEVAに連絡を取ってスネークをキプロスの緩衝地帯にある従軍病院まで移送させる。オセロットに病院の警護を頼み、いざという時の為のファントム(影武者)を用意し、その運用をオセロットに委ねるなど、ビッグ・ボスとの決定的な離別を理解しつつもその身を案じる行動を見せた。
しかし、嘗てパスと直接面会をしてしまっていた事が仇となり、スカルフェイスが贈ったザ・ボスの遺品の贋物に仕込んでいた寄生虫に感染してしまう。
これでいよいよ認知症の症状に歯止めが利かなくなり、愛国者達の運営はシギントと彼が管理する代理AIに完全に任せきりになってしまう(ただしシギントにもあくまでAIの管理を任せただけで組織の運営を全て任せた訳ではない)。しかも人間不信と徹底した情報統制により、何処へ逃走したのかスカルフェイスやオセロットにも分からない有様であった。
それでも辛うじて意識がある内に病床で昏睡状態のスネークと面会し、初の共同任務(ヴァーチャス・ミッション)の頃からの変わらぬ友情と、自分の最後の潜伏先を機械の中に遺す事を告げて去って行ったのだった・・・。
METALGEAR MG2 MGS MGS2
全く顔を出さず、彼の代理AIだけが物語の裏で暗躍していた。
MGS4
今作で、メタルギアシリーズ全体に大きな影を落とす「愛国者達」の創設者であった事が初めて明かされている。
親友でもあったビッグ・ボスを英雄に祭り上げ、愛国者達の影響力の拡大と一つの『規範』に基づいた外からの世界の統合と運営を画策したが、後に方針の違い(主に「恐るべき子供達計画」の是非や「ザ・ボスの遺志」の解釈の違い)などでビッグ・ボスと対立し、彼はゼロの元を離れる。
そのショックから人間不信となり、組織の運用を人ではなく「代理AI」に託す事となり、表舞台からは姿を消していた。
それから今作に至るまでの間、ビッグボスが「アウターヘブン」、「ザンジバーランド」での蜂起を起こした件への対応を始め、シリーズ中で世界を裏から操作してS3計画などの計画を押し進めていたのは全てゼロの意思を反映させた「代理AI」だった。
そしてその代理AIも戦争による経済活動や人類が歩むコンテクスト(文脈)の制御による世界運営という方向へと合理的に舵をきり、もはや規範に基づく世界の意思統一というゼロの意志すらも無視して、その規範そのものが命を持ち、戦争経済という独自のコンテクストで世界や人間を管理しようとし始めたのである。
これはゼロにとっても完全に誤算であったが、もはやゼロに自らが生んだ機械やそれによって世界に定着させられた『規範』を止める術は無かった。
物語の終盤まで一応は生存していたが、既に老化と認知症で動くことも話すことも出来ず、生命維持装置に繋がれて機械によって辛うじて生かされている状態であった。
オールド・スネーク達の活躍によって代理AIネットワークが完全に破壊されたことで『愛国者達』は消滅したが、その直前に代理AIの中にあった彼の居場所が特定されていた。
そして最期はかつての親友であるビッグ・ボスの手によって生命維持装置を止められ、命を絶たれた。
享年105歳。
余談
イギリス出身の設定である為かイギリス訛りがあるらしく、海外版のゼロはイギリス訛りがある声優が担当しているという。
さすがに日本語ではイギリス訛りをそのまま表現するのは無理ではあるが、銀河万丈氏の独特の声色で表現していると見られる。
MGS3でソコロフへ「遅れてすまない」という伝言をスネークに頼んでいるが、これはメタルギアを代表する名台詞である「待たせたな」のオマージュである。
デイビッドという名はソリッド・スネークの本名と同じ。
偶然とは考えにくいが、実際どのような意図があったかは作中で明言されていない。
ゼロと言うコードネームは、苗字の「オウ」のイニシャル『O(オー)』を数字の『0(ゼロ)』に置き換えたもの。
これは1909年に英国初の諜報機関が設立された際、その外国部の部長がマンスフィールド・スミス・ジョージ=カミングであり、以来SISのトップはカミングに敬意を表して『C』と呼称される様になった事にちなむ。007の部長も『M』で有り、ゼロ少佐自身も『O』と呼ばれた事が有った為、そこにかかっている部分もあるが、
他にも単独潜入任務の始祖、実態を決して掴ませないゴーストという意味合いもある。
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