解説
正式名称は『Militaires Sans Frontières』。フランス語で国境なき軍隊という意味。
アメリカとある組織から離反・出奔したビッグボスが、カズヒラ・ミラーと共に創設した民間軍事組織。
国家、組織、思想、イデオロギーに囚われることなく軍事力を必要とする勢力に必要なだけ供給し、そして戦うために生きる者達の理想郷となることを目的とした組織である。
1974年までは小隊程度の組織規模で傭兵部隊として活動しながら世界中を放浪していたが、ミラーの提案とコスタリカに侵入してきた謎の武装組織を排除するというガルベス教授の依頼を受けたことをきっかけに、コスタリカ沖の洋上プラントをマザーベースとしてその規模を大きく拡大。
他国や企業からの派兵要請に応じてあちこちに兵士を派遣する傭兵業を展開する他、直接的な戦闘のみならず、装備の整備開発や兵站・物資調達、戦闘訓練など、軍事に関わる様々な業務を遂行できるような後世におけるPMCの走りともいえる組織にまで成長した。
ただし、大型の兵器は自前で開発できる程の資金力や生産力は無いようでもっぱら鹵獲したものを配備するのがやっとであり、ZEKEに至ってはAI兵器のジャンクパーツを用いて建造という有様である。
トレードマークは二億五千万年前に存在した超大陸パンゲアと髑髏を模した物で、国家に帰属せず地球に自分たちの戦力を還元させるというビッグボス達の信念が込められている。
ちなみにレクリエーションとしてサッカーといった球技大会や隊員達の誕生会、お祭りといった行事をたびたび行っており、他にも洋上プラントに移動した際には食料確保ついでの魚釣りをする者もいる。
これらの数少ない娯楽で隊員達の結束力を養っている模様。
これまでのシリーズでは武装組織への潜入だったが、本作とMGSVでは逆にプレイヤーが武装組織を建立していくスタイルとなった。
劇中の動向
MGSPW
当初はコロンビアのバランキヤ海岸のベースキャンプを拠点としており、組織の規模も一個小隊程度のものだったが、ガルベスの依頼の前金代わりにコスタリカ沖カリブ海に建造された海洋温度差発電研究のための洋上プラントを譲渡され、そこを改修・増設してマザーベースとして拡大していく。
人員もCIAから派遣されていた傭兵やクレムリンの意向で派遣されていたソ連兵を拉致・説得したり捕虜にされていたFSLNメンバーを奪還するなどして増強していたが、後に活躍を聞きつけた志願兵(そのキャリアも他国正規軍所属だった元軍人から研究員、看護婦、コック、声優に至るまで様々)も来るようになる。
所属する兵士達はビッグボスやミラーから直接CQC訓練を受けており、個々人によって能力に差はあるものの、ほぼ全員がCQCによる戦闘を行うことができる。
なお、アクセスポイントを利用してやってきた志願兵にはもれなくビッグボスのCQCによる肉弾面接が待ち受けている。
尤も、ミラーによると「ボスの力を見たい」という要求あってのもので、それだけの自信に違わずこちらの方だと割と優秀な人材がやってくる確率が高い。
装備品は鹵獲品の他、MSF内の研究開発班によって様々な武装が開発されて行くようになる。
このMSF研究開発班は何かと優秀であり、人員の強化によって開発レベルが上がっていくに連れて、ダンボール戦車からMP3プレーヤー、ケースレス銃、レールガン、電磁波兵器、メタマテリアルなど1974年という時代設定では完全にオーバーテクノロジーとしか言いようの無いものまで作り上げる。(実在するレールガンに至っては、2014年現在も試作段階にある。メタマテリアルは現在も研究中である)
その技術力の高さで後述のMGSVでは空中投影式の情報端末iDROIDを完成させている。
さらに食料品に関してもボンカレー、ドリトス、マウンテンデュー等を開発するようになっていく。いっそ食品企業でも立ち上げたほうが良いのではなかろうか。
挙句には雑誌までも装備として発行する始末。ほとんどはこの時代に無いはずの実在の雑誌だが大半はゲーム雑誌という謎のチョイスである。MGSPWを特集している雑誌の中で一冊のみ何故かラブプラスを特集している雑誌がある。ちなみに表紙は高嶺愛花。
(勿論、これらは定番の回復アイテムであるレーションや敵兵の注意をそらすエロ本のガワを変えただけのゲーム的なサービス要素、所謂クロスオーバーであり、世界観を壊す程ストーリーに深く関わるものではない)
兵器群に関してもCIAやKGBからの鹵獲品が数多く存在しており、ソ連製BTR-60装甲車やLVTなどに始まり、当時最新型のMi-24ハインドDやT-72(それも最新鋭のERA・コンタークト1を装備している。なお1974年の物語世界から見ればT-72は前年に正式採用されたばかり、ERAに至っては82年にイスラエルが採用したのが世界初なので、時代的にはオーバーテクノロジーである)、試験運用のみのAH-56やMBT-70の機甲兵力など、小国の軍隊をゆうに上回る装備を配備するまでになる。
さらにカットシーンの全力出撃では歩兵揚陸艇から戦車揚陸艦、果ては強襲揚陸艦らしき大型艦艇までもを指揮下に置いている。一体どんな経路で取得したのだろうか……
(余談ながら、MGSVの端末用アプリのゲームではシャゴホッドやピースウォーカーといった既存の兵器に加え、未来の兵器であるメタルギアRAY、月光といった兵器も保有可能である)
さらに平和歩行計画関連の事件が収束した後、ザ・ボスの意志と決別したビッグボスの指示により、一介の民間軍事企業の範疇を大きく超えた存在にまで拡大したMSFの抑止力として、水没したピースウォーカーから回収した1メガトン級の核弾頭を搭載したメタルギアZEKEを建造する。
しかしZEKEの存在を察知した非政府諜報組織『サイファー』がMSFを自らの傘下にすべく介入してきたことをきっかけに、ビッグボスは彼らと彼らが創りあげようとする『時代の規範』に対抗するため、『規範の外側の世界(アウターヘブン)』を築くことを決意。際限無きMSFの戦力拡大へと傾倒していく。
だが、ビッグボスはそう遠くない将来に時代の中で騒音を撒き散らす歯車となったMSFに過酷なものが待ち受けている事を推察していた・・・。
MGSV:GZ
コスタリカの一件で核を手に入れたMSFだが、情報のリークにより、IAEA(国際原子力機関)の核査察団がマザーベースに訪れることになる。
IAEAの議題にも挙がっていない査察であり、NPT(核拡散防止条約)に加盟しておらず、国家ですらないMSFに対する査察に訝しみ、一度は「被査察義務がない」として拒否したが、その後ヒューイが勝手に「やはり方針転換して受け入れることにした」と査察を承諾したことで様々な対策をしなければならなくなった。(一度拒否し、さらに方針転換して受け入れておいて再度拒否というのは核云々以前に武装組織として体裁が悪すぎる為である)
その為、キューバの米軍租借地にある基地で尋問を受けているパスの救助は後回しにされた。
ZEKEは海中に、大型兵器は問題になりそうな東側の兵士と共に陸上に隠され、セシールら民間人はヒューイを除いて帰国させるなどして、ベース外へと出された。
ストレンジラブはZEKEが完成し、AI研究が一区切りついたとして既に帰国。
FSLNのアマンダはキューバに出ていたため、帰還を遅らせることで査察団対策とした。
そんな中、方針に反して独自にパスの救出に向かったチコから救援要請があり、スネークは査察団が向かいつつあるマザーベースを出てチコとパスの救出に向かう。
無事両名の奪還に成功したのも束の間、パスは体内に仕掛けられた爆弾を抱えてヘリから飛び降り爆発、その衝撃でヘリは墜落、乗っていたスネークやミラー、メディックは重傷を負い、チコは死亡した(チコはTPPで再登場の予定があったが没になり、ここで死亡したことになった。)
挙句の果てには査察団と偽った謎の部隊XOFの襲撃により、マザーベースは崩壊し、多くのMSF兵の命は失われてしまう。
XOFの襲撃によるマザーベース崩壊は多くの目撃者がいたが民間武装組織の施設の炎上として報道され、同時に目撃された軍用機の存在は明かされることは無かった。
米国政府は関与を否定、IAEAは核査察の実施を否定、そしてMSFの顧客は取引の関係を否定した。
一方で、このマザーベース崩壊の最中、同じくマザーベースでもう一つのある大事件が発生していた・・・。
この作品では基本武装組織の無力化が任務だった初代メタルギア~MGS4までの武装組織崩壊を今度はプレイヤーが味わうという物となった。
ちなみにXOFが秘匿されており、正確な位置がわからないはずの洋上プラントの位置を正確に掴めた理由はチコがまたしても拷問に屈し、全て暴露したためである。(一度拷問で仲間の事を吐いた前科があるため、あまり詳しくないと「またか」と呆れてしまうかもしれないが、拷問の担当はよりによってスカルフェイスである。死すら脅しにならなかったコードトーカーすら屈した彼の尋問、拷問を子供に耐えろと言う方が酷であろう)
MGSV:TPP
MSFマザーベース崩壊後、XOF襲撃から生き延びたミラーを始めとするMSF残党が集って新たなる組織『ダイアモンド・ドッグズ』の基盤を立ち上げ、9年の昏睡から目覚めたビッグボスことヴェノム・スネークと合流。
スネークとミラー、オセロットの下でダイアモンド・ドッグズはアフリカ大陸東のセーシェル近海に建てられたプラントを新たなるマザーベースとして組織を拡大・発展させながらスカルフェイス率いるXOFとその背後にいるサイファーに報復戦を挑んでいく。
一方、表向きは炎上事故として報道されたMSF崩壊事件であったが、各国の情報機関にまでは完全に隠蔽することができておらず、MSFという『民間軍事会社』が存在していたことと国家に帰属しない戦闘集団である彼らが核兵器を所有していた事実は世界に大きな衝撃を与え、米ソ以外の国家の間でも核開発競争が過熱化するという結果を招いた。
また、金で軍事力の代替や汚れ仕事を任せることが出来るMSFが消えてしまった穴は、それまでの顧客たちにとってはもはや塞ぐことが出来ず、スネークが合流するまでの9年の間、冷戦が終局に向かい、新たに民族紛争やテロといった不正規戦が頻発しつつある世界情勢も手伝って、MSFを模倣した傭兵企業であるPF(Private Force)が次々と生まれていた。(しかしスネーク達が志した理想とは似て異なり、彼らは唯、国の利益の為に消費される駒にしかなっていない。))
そうした状況は『合法的にビジネス化された戦争』という新たなる市場モデル、すなわち『戦争経済』を形成し始めていることが語られており、将来的にサイファーが築こうとする支配構造に対して良からぬ影響を与えるであろうことがオセロットによって予言されている。
さらに歴史の表舞台から抹消されたとは言え、未だビッグ・ボスを信じ崇拝する傭兵達は相当数おり、そうした勢力の間では「ビッグ・ボスは自らを犠牲にする事でサイファーの危険性を知らせてくれた」という誤った解釈の都市伝説すら流れている有様であった。
(MSFの生存者の一部は独自にPFを作り上げたものもいるが、中には襲撃はMSFを捨てるための自作自演だと思い込んで敵対者となり敵対PFである「Mosquito」を作り上げたものもいる)
そしてBIGBOSSを崇拝している傭兵達の間では、” いつの日か核を持ち、自分達もサイファーに対抗する ”とした志した信念も広がっているが、それも戦争市場で生き抜くスローガンとして成り下がってしまっている。
だからこそミラーは、彼らを回収しBIGBOSSの生存と各PFに呼びかける事で、サイファーのBIGBOSSの暗殺への抑止力として成り立つ様にしている。
今作、多くの志願者を受け入れているのと、頻繁に解雇者を出しているのは、その筋で活動しているからだと思われる。
XOFの襲撃を生き延びた生存者のうち行方不明となっているものはAWOL(無断離隊)及びMIA(戦闘中行方不明)として処理されているが、その一部は惨劇の生存者として、殆ど正気を失ったまま彷徨っており、回収することで再び一員として活躍することとなる。(テープでパスのハミングを流す、視界内で段ボールを被る等、MSFやスネークを想起させる行動をとると逃げ回ったり攻撃してくるのを止め、近寄ってくる)
メタルギアサヴァイヴ
GZでのマザーベース崩壊時に上空に巨大なワームホールが発生、兵士らと共にマザーベースの残骸の一部はクリーチャーの徘徊する異世界ディーテへと転送されてしまう。
ワームホールにも巻き込まれず、XOFの襲撃からも生き残った生存者達は残る生存者の捜索をしつつ、無事であったプラットフォームで水葬を行っていた。
主人公であるキャプテンは仮死状態で水葬にされた(死亡したと思われていた)が回収されて蘇生されており、ディーテへと送り込まれる。
ある条件を満たす事で帰還可能だが、なぜか元のMSFの服装に戻って砂漠の中で倒れており、惨劇の生存者としてあてもなくアフガニスタンをさまよう事となる。
メタルギア
ダイアモンド・ドッグズがその後どう変化していったのかは不明であるが、1995年の南アフリカにおいてアウターヘブンが台頭した。当時FOXHOUND総司令官であったビッグボスが裏で暗躍していた武装集団であった事が判明する。
メタルギア2ソリッドスネーク
アウターヘブン壊滅から4年後、1999年に謎の武装要塞国家「ザンジバーランド」が台頭してくる。
その正体はアウターヘブンで死亡したと思われたビッグボスが立ち上げた国家である事が判明。
ここで国境なき軍隊の歴史は一旦途絶えてしまう。
その後の顛末は→アウターヘブン
MSFマザーベース
当初は三つの洋上プラントであり、廃墟に成り果てて海鳥が住み着いて糞と錆だらけのシロモノだったが、拡大を重ねる毎に数が増加していく。現実に存在する洋上プラントでもここまで巨大化したものは無い。構造もハニカム構造を採り入れてより頑丈な造りになっていく。
空母によく似た外観のカタパルトが後に出来るが、ヘリを除く航空機の類は見受けられないが航空機も鹵獲する予定があったのだろうか?
MSF隊員
基本的にはコードネームが付けられており、実戦部隊・研究開発・食糧・医療・諜報の分野の隊員が日々活動している。適材適所に配置する事でよりマザーベースは発展していく。一応はメインキャラクターではない為人物像は曖昧。後の悲劇で犠牲者が多数出てしまったが、それでも生き残りはいた。
関連タグ
とびだせどうぶつの森・あつまれどうぶつの森…拠点を発展させる点ではゲーム性は互いに異なるものの、共通点が見受けられる。