ゼノン・ゾグラティス
ぜのんぞぐらてぃす
「全てはスペード王国の利益の為に」
冷静沈着だが非常に残忍で冷酷な気性の持ち主でもありスペード王国の発展や利益のためならば手段を択ばず、任務にて目標以外の魔導師が死亡しても構わないと考えている。自身の脅威になると判断すれば、何の躊躇もなく命を奪う事も厭わない。
一方、たとえ直属の部下でも、自身が望むような成果を挙げられなかった時は容赦なく酷評する冷徹さも持ち合わせている。漆黒の三極性の中では特に弱肉強食や実力主義の考えが一際強く、部下に対しては勿論同じ漆黒の三極性のダンテ・ゾグラティスやヴァニカ・ゾグラティスでも例外ではない。
これらの要素を別側面から見れば「弱者を嫌う」という意味合いも持つ。クローバー王国が自身らが行うクリフォト降臨の儀を行う際、トライアドに歯向かうレジスタンスが囮として正面からトライアドへの反旗を宣言した時には伝説の魔神を復活させて仕向けた。この魔神はレジスタンスが現れたから仕向けたのではなく元々城下町の住民諸共始末するために使うつもりだった。
その時に言った言葉を要約すれば「スペード王国には魔力の低い弱者は必要ない。我々のような強者だけがスペード王国民だ」と言っている。
所謂「マキャベリスト(どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家など共同体の利益になるなら許されるという考えの人間)」である。同時に見事なまでのリアリストでもある
初登場はアスタたちがハート王国に訪れている頃、同時期にダイヤモンド王国を単騎で襲撃し、魔導騎士を含む数多くのダイヤモンド王国の軍を壊滅状態に陥らせた。その後、ダイヤモンド王国はスペード王国によって残虐に侵略されており、半年の間で殆どの領地がスペード王国の支配下となっている。
ダイヤモンド王国襲撃の半年後にダンテからの許可が下りたため、直属の配下「暗黒の使途(ダークディザイプル)」のガデロアとフォヤルを率いてウィリアム・ヴァンジャンスを誘拐するために金色の夜明けの本拠地を襲撃。
目的のヴァンジャンスを除いた団員たちは連れてきた2人の部下に任せて(その2人だけで半数近くの団員を大量虐殺している。)自身はヴァンジャンスに勝負を挑む。途中、ヴァンジャンスを守るために自身に挑んできたサンドラーを瞬時に倒し、その後は直接戦闘に入りヴァンジャンスに勝利。
無力化したヴァンジャンスを連れていかれまいとするユノ、クラウス、レトゥアも自身の魔法で瞬時に致命傷を負わせた後に退散した。(尚、最後に向かってきた3人含めまだ生存してた半数の団員はある程度の時間をおいて発動したヴァンジャンスの回復魔法により命は繋ぎとめたことを察知できなかった模様)
その後、魔力の乱れを察知しダンテと激戦を繰り広げた黒の暴牛の前に現れ、気絶したダンテと疲弊し戦闘が出来ないヤミを自身の魔法で抑えながら回収しその場を離脱。
この際、アスタの腕の変化を見てユノ同様摘むべき相手と認識したが、ユノに付けられた傷から”時間切れ”となったため、不本意の離脱となった。
ヤミとヴァンジャンスの2人がハンデを抱えていたとは言え、一人でクリフォトの樹を完成させるのに必要な生贄を確保してしまった。
スペード王国に帰還した後にクリフォトの樹生成が始まると、スペード王国のレジスタンスに対しては古の魔神を嗾けるがナハトの策によりメレオレオナ・ヴァーミリオンによって倒され、更にクローバー王国の精鋭の侵入を許してしまい、侵入してきたユノ及びランギルス・ヴォードと対峙。彼らの金色の夜明け団のプライドを賭けた戦いの中でランギルスの空間魔法を完封するが、進化したユノのスピリット・ダイブ・ボレアスにより致命傷を負う。しかし、戦いの最中でクリフォトの樹により冥府の門が開かれ、悪魔の力を100%引き出したことで傷が治癒し更にパワーアップする。その上ユノに大半の魔法騎士団長がスペード王国にいる状況でクローバー王国にも魔神を差し向けたと伝え不安と恐怖を煽った。
そんな中、ユノは必殺技を放つ準備をする時間稼ぎにランギルスを囮と防御を担い、ゼノンはユノを潰すために攻め立てる。しかし、自身の空間魔法を掻い潜れる条件をランギルスが持っている事と執念で耐えられた事で難航する。それでもランギルスを手にかける所まで持っていくが、ユノの”風精霊創成魔法 スピリット・オブ・エウロス”を放たれ食らってしまう。
一時は倒れかけるも、すんでのところで自身が契約する悪魔ベルゼブブに悪魔の心臓と自身の命を天秤にかけた取引を行い成立させた事で、ベルゼブブの心臓を体内に埋め込み復活と凄まじいパワーアップを果たした。その姿は悪魔の力を100%開放した時よりも更に悪魔に近づき、一層禍々しい容貌へと変わった。(ユノは初めて現世に顕現したザクレドの姿と恐怖心を思い出させ、ランギルスに至っては「悪魔の力を使い悪魔の心臓を持つ そんな人間はもう・・・悪魔じゃないか」と戦慄させたほどである。)
同時にゼノンは”風精霊創成魔法 スピリット・オブ・エウロス”を決める際、ユノはランギルスに当たる事を避け、心臓をギリギリ外した箇所に当てていたと指摘しており、ランギルスごと自身の心臓を貫いていたらユノの勝ちだと皮肉を交えて認めていた。
ほぼ完璧に悪魔の力を引き出し使いこなすゼノンは劣勢だった状況を一瞬でひっくり返すばかりか、戦闘を見かけ加勢した黒の暴牛団員であり、ランギルスの兄・フィンラルのコンビネーション攻撃さえ容易く返り討ちにして見せた。
完全勝利に思われたが、ユノの決して諦めない心に呼応するかのようにユノの元にスペード王国の魔導書が現れ新たな魔法を手にした事で再び戦闘となる。
ユノは風魔法と星魔法と精霊に選ばれた力、自身は骨魔法と空間魔法と悪魔と取引して得た力、それぞれの力と想いがぶつかり合い、最後の力を振り絞りユノに止めを刺しかけるも、ユノの仲間達が繋いできた力と強い心が上回り悪魔の心臓を破壊した事で、遂に戦闘不能となった。
同時にゼノンの敗死を以て、漆黒の三極性は全滅する事となった。
お前が弱いのではない 俺が遥かに強いというだけだ
悪魔と契約し自身の「骨魔法」を更に強化しており、悪魔の力を解放すると頭に山羊のような角、背中には無数の骨が生えてくる。最大開放率は80%と高い。
生成される骨は凄まじい強度を誇り、ほぼ全ての物理攻撃を封殺する。その上、生やした骨は削られたり折られたりしても瞬間的に再生する。
その戦闘能力は、たった一人でダイヤモンド王国の多くの魔法騎士(中にはクローバー王国の魔法騎士団団長クラスがいた)をほとんど無傷で倒し制圧しており、現場を見ていたラックですら、「アイツとは、戦いたくない。」と心から戦慄させている。また、ダイヤモンド王国に侵略し単騎でダイヤモンド王国の軍勢を全滅させた時は悪魔の力を40%しか開放していなかった事実がアニメ版158話で明かされている。
作中でもトップクラスで魔法騎士団の団長であるヴァンジャンスとヤミを単独では傷すら負わずに完勝(ただし、ヴァンジャンスは団員達にトドメを刺されないように庇いながらで戦い、ヤミはダンテとの戦闘後で疲労困憊とそれぞれ明確なハンデを抱えていた)し、その後のユノ相手にもユノを強者と認めながらも開放率55%と最大には程遠いながらも上記のセリフを言い放った上で、ユノはなすすべなく敗北している。
また、悪魔憑きゆえに宿った悪魔の持つ「空間魔法」を使用することも可能。
その能力も強力な魔法さえほぼ完封する制圧力を持ち、攻撃型空間魔法のスペシャリストであるランギルスさえ嫉妬と戦慄を隠せないほど。(そのランギルスに対しても「自身がいなければランギルスが最強の空間魔導士」と皮肉交じりに断じている。)
作中ではどの程度の時間差があるか不明だが、スペード王国からクローバー王国までの長距離を特に疲労を感じさせることもなく移動してきており、移動距離は相当なものと推測される。
前述の金色の夜明けが突如として前触れもなく襲撃されたのも、ヤミ達黒の暴牛が不意に襲われたのも、彼の空間魔法による奇襲とも考えられる。
自身の兄によると、ダンテやヴァニカを含めても悪魔憑きの才能があると認められており、最上位悪魔の心臓を借り受ける事さえ可能にして、その時に得る力と耐久力は、正に悪魔的である。
- 骨魔法 無間骨牙(むげんこつが)
自身の身体から鋭い骨を大量に生やし相手に対し攻撃する。その攻撃速度と量は相手に回避する余裕を与えないだけでなく、威力も大抵の防御手段は意味をなさず、ユノでさえ「風精霊創成魔法 スピリット・オブ・ゼファー」で辛うじて捌き切るのが精一杯だった。
ユノ、クラウスとレトゥアもヴァンジャンスの最後に残した回復魔法が間に合わなければ、確実に命を落としていた。
防御力も非常に高く、余程強力な魔法でなければ、あらゆる物理攻撃を封殺してしまい、破壊や突破も非常に難しい上に自身の空間魔法と組み合わせればほとんどの相手に対して圧倒的優位に立ててしまう。
- 空間魔法 空魔掌握(くうましょうあく)
範囲内の魔を支配することで相手の魔法を完全に無力化する。その範囲は大広間一つ分に匹敵。そんな魔法をモーションがほとんどないまま発動可能にしており、その凄まじさにランギルスでさえ嫉妬と戦慄を隠せないほど。
一方、「自身と同格かそれ以上の魔力を持つ者」・「魔(マナ)に愛された者」・「マナゾーンに至った空間魔導士」と3種類がいずれかを満たしていれば抜け出される欠点が存在する。
しかし、最上位悪魔と契約している自身の魔力は絶大な上に魔(マナ)に愛された者は作中でも少なめである事、ただでさえ希少な空間魔導士でマナゾーンに至っているのはランギルスのみなので、搔い潜れる者は相当少ない。
昔のゼノンは、最初から才能に恵まれたわけでも冷酷非情で残忍だったわけではなかった。
むしろ実力で言えば魔法が使える少年にもすぐに負けるほど弱く、兄と姉にも馬鹿にされるほどだった。
性格もどちらかと言えば大人しくて内向的であり、悪魔憑きにもほとんど興味を示さなかった。
そんな中で出会ったのは「アレン」と言う少年であった。
アレンは正義感と情に篤い少年であり、当時は極寒で閉鎖的なイメージが強く残り、内乱やダイヤモンド王国からの侵略も珍しくなかった状況を憂い、将来は魔導防衛隊総隊長を目指すと言う確固たる目標と信念を持った人物であった。
そんな彼に触発されてゼノンも瞬間的に感化されたのか、自身も総隊長の座を目指す目標を持つようになった。
そのシーンもまるで、物語開始当初のアスタとユノが「どちらが魔法帝になるか勝負だ」と目指し合う事を誓った場面とよく似ている。
それからは互いに切磋琢磨に実力を磨き合いながら成長していき、アレンと共に魔導防衛隊に入団を果たし、ゼノン自身も上司から「天才だな!!」と太鼓判を押されるほどの実力者にまでなった。互いに任務に勤しむ中、とあるダンジョンの出現によってその場所へアレンと共に赴いた。
だがその場所は悪魔が封印されていたダンジョンであった。
階級は不明だが、調査に向かったチームを全滅に追い込みかねないほどの強さから、下級~中級悪魔と思われる。
ゼノンは自身の全魔力を込めて放った魔法ならば倒せる可能性はあるものの、当てる隙がない状況である事から使えないでいる中、アレンは諦めずに悪魔へと立ち向かう姿を見て止めるように呼び掛けるも突っ込んでいく。
その状況を見てゼノンは死ぬ確立が高いと察するが、同時にアレン諸共攻撃すれば悪魔を斃せるとも踏んでいた。一時は躊躇うゼノンだが、自分達が悪魔を葬らなければ、生き残っているメンバーは全滅し国や街に甚大な被害が出る事を感じ、本能的にアレンを巻き込んで悪魔へと魔法を放ち、結果悪魔を斃すもアレンはその命を落とす結果となった。
いくら国や人々を守るためとは言え、アレンを自ら殺めてしまった自責の念に苦しむ事となってしまうと同時にゼノンはある答えに辿り着く。
力が無ければ
想いも執念も 無意味だ
弱い者は切り捨てるべきだ
圧倒的な力こそが 絶対
そうして弱肉強食や実力主義な思想を確固たるものとし、いつも目にかけられていた自分たち4人兄弟の長兄に興味のなかった悪魔憑きについて教わるように懇願した。
そして契約したのが最上級悪魔「ベルゼブブ」であった…。
ゼノンが求道者のように力と強さに拘るのは、理想や夢だけでは叶わない事がある事実と現実にするためには力が何よりも必要である事を親友を手にかけてしまった事件を通して痛感した事が何よりも大きな理由である。
自身の悪意(もっと言えば欲求や不純な理由)を満たしたいがために悪魔の世界を作る事に命をかけるダンテ、快楽と楽しさのために悪魔の力を振るい弱い者がいなくなる事に何の躊躇いもないヴァニカと違い、ゼノンはかけがえのない存在を失った事を通して「誰も死なない世界」を作りたいと言う歪みはあれど信じた事に邁進しようとするゼノンの行動原理は二人と違い、ある種の純粋さを感じさせそれが力の原動力となっている。
敵サイドではあるものの、ゼノンもまた、哀しき悪役である。
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