ディア・ハンター
でぃあはんたー
ベトナム戦争の陰が迫る1968年。ペンシルベニア州の小さな町、クレアトンにはロシア系移民が住んでいる。製鉄所に勤めるマイケル、ニック、スティーブンらにも徴兵の手は伸びていた。3人の歓送会とスティーブンの結婚式を兼ねたパーティーが教会で開かれ、翌朝仲間たちは鹿狩りを楽しんだ。穏やかな朝だった。
ベトナムは地獄だった。偶然にも戦場で再会した3人だったが、ベトコンの捕虜にされ、ロシアンルーレットを強要される。隙を見たマイケルが反撃に転じ、脱出には成功したが、極限状態でみなおかしくなっていた。スティーブンは脱出の際、両足を失った。ニックはロシアンルーレットの狂気に憑かれ、夜のサイゴンに消えていった。そして2年後、クレアトンに帰ったマイケルもまた、以前のように鹿狩りを楽しむことはできなくなっていた。
マイケルは、入院生活を送るスティーブンを見舞う。スティーブンの病室にはサイゴンから匿名で送られてきた金があった。ニックはまだ、サイゴンにいた。ロシアンルーレットの賭けに勝ち続け、スティーブンに送金していたのだ。マイケルは友を迎えに、再びベトナムへ飛ぶ。
ベトナム戦争に徴兵された若者たちが負った心の傷を描き出す人間ドラマ。
戦争映画ではあるが戦場の様子がメインではない。3時間の尺のうち、序盤の1時間を戦場に行く前、中盤の1時間を戦闘中、終盤の1時間を戦場から戻った後に割き、変化を重厚に描いている。
第51回アカデミー賞を始め、数々の高い評価を受けたマイケル・チミノ監督の代表作。
メインテーマの「カヴァティーナ」も人気があり、数々のアーティストにカバーされている。
ベトナム戦争を扱った映画としても筆頭となる有名作品ではあるが、アメリカ人を一方的に被害者として描きすぎ、差別的であるという批判も相次いだ。実際、劇中のベトコンに関してはほとんど野蛮人である。その他もろもろの描写も、演出を重視するあまりリアルを欠いている。
しかし、これらはロシア移民の悲哀を描いた寓話であり、決してアメリカ主義的な作品ではないという反論もある。ロシアからアメリカに渡った移民が、ベトナム戦争に徴兵され、ロシア(ソ連)ら共産主義勢力と戦わされる。そういった世界の矛盾を、自分のこめかみに銃口を向けさせられる、ロシアンルーレットというかたちで表現したのが今作であり、ゆえにこれはロシア移民の悲劇なのだ、と。
監督 - マイケル・チミノ
脚本 - デリック・ウォッシュバーン
原案 - マイケル・チミノ / デリック・ウォッシュバーン / ルイス・ガーフィンクル / クイン・K・レデカー
製作 - マイケル・チミノ / バリー・スパイキングス / マイケル・ディーリー / ジョン・リヴェラル
音楽 - スタンリー・マイヤーズ
撮影 - ヴィルモス・スィグモンド
編集 - ピーター・ツィンナー
配給 - ユニバーサル・ピクチャーズ(アメリカ) / ユナイテッド・アーティスツ(日本)