「こうあってほしいという通りには、絶対にならないものだ」
「僭越ながら……ぶっ殺しますよ? 姫様」
「困るなぁ……うちの姫さんを泣かすなんて、ちょっとやんちゃが過ぎるんじゃない?王子さま方」
概要
ティアムーン帝国軍の百人隊隊長。27歳(初登場時)。
傭兵上がりでその腕を買われて士官した、自他ともに認める帝国最強の剣士。
人物像
飄々とした態度とは裏腹に、敵対行動を取れば子供であっても殺すことのできる冷徹さと、仲間の為には命を張ることも厭わない情の厚さを併せ持った人物。
基本的に「俺より強い奴に会いに行く」「困難に遭遇するほど燃え上がる」系の戦闘民族。何か事あれば、とにかく戦いたがりチャンスを窺おうとする戦闘狂でもある。
とはいえミーアの部下となってからは不殺を命じられる事が多くなる(面倒事が増える)が、本人は殺さずに済むならそれに越したことはない考えもあり、なおかつ「ただ殺すよりも生かして無力化する方がより難しい」ために口では面倒臭がりながら(ミーアに「難しい事を要求している」事を自覚してもらうためでもある)も実はむしろやる気が上がっている。
帝国最強の名に偽りはなく、その実力は作中最強。
鉄をも切り裂く極まった剣術を修めている上、垂直の壁を攀じ登る身体能力や傭兵としての経験から得た軍略も併せ持つ超人。
文官であるルードヴィッヒがミーアのブレーン(頭脳)ならば、武官である彼はミーアの右腕とも言うべき存在であろうか。
作中の動向
以前の時間軸
革命が起こる前、ルールー族の反乱が起こるきっかけになったある事件において、部下が全滅し自分だけが生き残ることになる。この事件がミーアのわがままによって引き起こされたものであったことから、それが理由でティオーナの誘いに乗り、真っ先に革命軍に翻意した。
革命軍の参加時にリオラ・ルールーから兄の敵として命を狙われ、以降も革命の炎の中でフレンドリーファイアのどさくさに紛れて狙われているが、自らの技量により全て回避している。
この時間軸においてミーアの処刑を執行した張本人(死刑執行人)である。というか自らの手でミーアを殺す事が革命軍参加の条件であった。そのためティオーナやシオンがルードヴィッヒによるミーアの助命嘆願を受け入れられなかった原因となった一人である。
そのため本編の時間軸でミーアが偶然彼と出会った際に恐怖のあまり卒倒してしまうほど、その存在がトラウマになっている。
一方、復讐を果たしたはずのディオンの胸に残ったのは虚無感であった。
ミーアの首を撥ねたとて戦友たちは戻ってはこない。むしろディオンの戦友の中にはミーアへの忠誠を持っていた者もおり(この時間軸のミーア自身がそれを蔑ろにしていたとはいえ)ディオンは結局それを踏みにじった事になる。
遅まきながら、それに気付いたディオンは、ほどなく革命軍が改組されて成り立った新政府には参画せず、彼らの前から姿を消す。
その後、ティアムーン帝国であった地域は小国が群雄割拠する戦国時代へと突入し、ディオンのような傭兵たちが食うには困らぬ乱世に至る。
しかし、そんな時代になったにもかかわらず、ティアムーン革命軍最強の傭兵であったディオンの名は(各国がその取り込みを図って行方を探し続けたにもかかわらず)杳として知れなかった。
ディオン・アライア。本来の主の首を撥ね、戦友の思いを踏みにじった、その忠誠に自ら泥を塗りし、裏切りの剣士。その運命の行く末は誰も知らない……。
本編の時間軸
元々出世に興味を持たなかったが、自身の抱えていた問題をあっさりと解決してみせたミーアの機智に触れた事で考えが変わり、ルードヴィッヒのスカウトに応えてミーアの側近として腕を振るうことになる。
ルードヴィッヒからは「最終的には将軍(軍の最終統括者)になってほしい」と言われている。その言葉通り、一時期は軍属ではなく、黒月省に所属して武官を目指す道も取っていたが、ミーア自身がそのポストに相応しい人物を見つけ出し味方に引き込んだことでその必要はなくなったため、再び軍属に戻った。
ミーアのトラウマは彼が味方するようになってからも変わらず、微妙に恐怖を抱かれ続けている。とはいえ、その後の展開でミーアが窮地に陥っても大抵のことを「ギロチンやディオン・アライアよりマシ」の一言で済ませられるようになるという好影響も生んでいるのだが。
ガヌドス港湾国との交易路強化を打ち出したミーアの意を受け、ルードヴィッヒと同国に探りを入れる過程で、かつて同国との交渉を担当していたイエロームーン公爵家に潜んでいた不穏な存在を刺激。これが戦狼の暗殺者との幾度となる因縁の対決に繋がり、否応なしに燃え上がる事になる。
イエロームーン騒動が落着してからは「ミーア様とベルちゃんの露払いのため」という名目で、騒動時に一度は剣を向けたシュトリナ・エトワ・イエロームーンに振り回される事が多くなるが、逆に大人の余裕で彼女をやりこめて振り回している(そしてシュトリナが羞恥で赤面する事になる副産物が付いて回る)。
とはいえ、本人の好みはあくまでも「大人の女性」なので別にシュトリナに何か特別な思いを抱く事は無い模様(……なのだが、その態度がまたシュトリナの「女のプライド」を刺激する事になる)。
ミーアベルの時間軸
ルードヴィッヒからの要請の通り将軍まで登り詰めてミーアの改革を支えた(なのでミーアベルからはディオン将軍と呼ばれている)が、ミーアが毒殺されてからは軍を辞め帝国の内戦時にも復帰することはなかった。しかしミーアベルの危難を知りミーアの遺した姫を守るためにかつての部下達と共に参戦する。
プリンセスタウンにてミーアベルを保護した後にルナント大橋のところでミーアベルと別れる。その際にミーアベルにかつての主君の面影を感じながら追撃してくる敵を撃退。しかし味方は全滅しディオン自身も満身創痍になるが、敵がまた近づいてくることを感じ取ると自身の心に叱咤され復活。孤軍奮闘の凄まじい戦いぶりを見せ遂に果てる。
この戦いでディオンを含めた五人に聖瓶軍は二百八十人もの死者を出した。
関連キャラ
- ミーア・ルーナ・ティアムーン
忠誠を誓う主人。先述の通り、前時間軸の因縁から敬遠されているが、仲自体はそこまで悪くはない。
何気にミーアが(周りの勘違いではない)本当の叡智を初めて披露した際に、それを目撃し実力で黙らせた存在であり、そのこともあってか、意外と信頼関係は深かったりする(その後も、彼を前にするとミーアは恐怖心から知恵が働くこともあり、なかなか残念な本性を見抜かれないで済んでいる)。
- ルードヴィッヒ・ヒューイット
ミーア四天王の一角を担う、親友にして盟友。仕事終わりに私室で酒を酌み交わすほどに、仲はいい模様。
- アベル・レムノ
レムノ王国の第二王子…であるが、主君の彼氏にして彼女が女帝に就いた際にその王配に収まるのがほぼ確定事項であるためか、客人というよりは「群ではなく個でミーアを守る存在」同士として師弟関係にも似た関係性となっている。
関連動画
キャラクターボイスドラマ・ディオン編
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※ 以下、ネタバレ
女帝ミーアの時間軸(ネタバレ)
ミーアベルが帰還した歴史改変の行われた「ミーアが帝国初の女帝に即位した時間軸」では、将軍となったのももちろんの事ながら、イエロームーン家に婿入りしている。
なんでも、ミーアやルードヴィッヒと共に修羅場(自身には本来は向いてなかった政治的なモノも含む)を潜りまくった事で、細かいことにはこだわらなくなって(感覚が麻痺した、ないしは眼鏡の曇りがヒドくなった、とも)いって構築されてしまった将軍に相応しい器の広さと、帝国軍内の政治バランスと、シュトリナの手練手管が奇跡的にカッチリと噛み合ってしまって、こうなった模様(……というかディオンのガチ本性を理解してなお、ついて来れる女性自体がそうはいない、と言うべきか)。
ちなみに結婚してもシュトリナから突っかかられてはやり込めて赤面させる(大概は、ほぼシュトリナの自滅)関係性は変わっていない。それをミーア一家(特にベル)がほっこりして(生)温かく見守っている(そしてさらにシュトリナが慌てる)のが常である模様。
あとシュトリナが若返り同然のアンチエイジング技術を極めた事から、その恩恵に預かって妻同様に孫がいる歳、後進に道を譲るようになってもなおいろんな意味で夫婦もろともに全盛期バリバリである(むしろ本編時代よりも若返ってる可能性もある)らしい。
なお子どもたちに対しては、かなり厳しく楽しく仕込みまくったらしく大概の子は「薬より剣」になってしまい、イエロームーンの祖業が疎かになりがちなためシュトリナは軽く頭を抱えており、いっそ孫に期待をかけているとか。
あと余談だが、この夫婦、互いに知らない事とはいえ別の時間軸でミーアに手をかけた者同士のカップリング(ディオンは最初の時間軸での処刑執行人、シュトリナはミーアベルの時間軸での毒殺暗殺者)である。