「我がしもべ達よ… ドクロクシーの名の下(もと)に命ずる……」
CV:秋元羊介
概要
プリキュアに敵対する勢力の首領格で、闇の魔法つかい。
世界を闇に包むために「リンクルストーン・エメラルド」を入手しようとしており、手下達を使って探索させている。
しかし、ドクロクシー本人は玉座に座ったまま何も語ることをせず、側近のヤモーが彼の意思代行者として手下達を指揮している。
頭から足先までの全身を包み込む厚手のローブを深くかぶっているため、その外見は全く不明。種族も性別も年齢も窺い知れない。
ただ、ローブの袖先からちらりと見える手先は骸骨のように見える時がある。また、極たまにローブの奥に隠された顔のシルエットが見えることもあるのだが、その陰影の形は髑髏のようでもある。
第15話でプリキュアがリンクルスマホンを所持していることを知ってからは、エメラルドだけでなくスマホンの強奪も目的となる。
本当に動きも喋りもしないので、バッティから「ドクロクシー様とはヤモーの作り事ではないか」と存在そのものを疑われた時期もある。
そのため、第19話でバッティからの疑念に応えるが如く初めて自らの声で命令を下し、彼に自身の力を与えた。ヤモー曰く、喋る事すら体に負担がかかるらしく、大いに彼をあわてさせた。
更に校長は、ドクロクシーが自称する「闇の魔法つかい」という称号から、彼の正体に何か心当たりがあるようである。
正体
第20話で判明したその正体は、既に故人である一人の魔法つかいの強い欲望の念が、死した後もこの世に残り続け、遂には闇の魔法によって仮初の肉体に宿った存在。
ローブに隠されていたその姿は白骨死体そのものであり、アンデッドを敵キャラとして出したのは実はこれがプリキュアシリーズ初である。
素体となった魔法つかいの名はクシィ。かつては校長の親友で、彼と共にいずれ訪れる災厄に備えてエメラルドを探していた同志であるが、禁じられた知識に触れてしまった異端者でもある(詳しくはこちらで)。
ドクロクシーを生み出すことになったクシィの欲望とは「強き力を手にする」という一途な思い。
元々は世界の危機に対抗するための善意から生まれた願いであったのだが、今となっては何を犠牲にしてでも強き力を手に入れることだけを目的に動いている。
実はドクロクシーの目的とされていた「世界を闇に包む」というのは暗喩表現であり、その真の目的は世界にあまねく全ての力と存在を自らが吸収することである。それが成されれば世界そのものが闇の化身であるドクロクシーと同化することになり、結果的に「世界は闇に包まれる」というわけだ。
クシィが生前に持っていた「人としての善なる心」は最早欠片も感じられず、そもそも生前の記憶が残っているかも疑わしい。
ドクロクシーの手下達は、生きている小動物をドクロクシーが闇の魔法で変質させたものなのだが、当のドクロクシー本人は命そのものを持たないアンデッドである。
仮初の肉体を維持するだけでも大量の魔力を消費するようで、それ故に動くことも喋る事も極力避けていた。
しかし、無限の魔力を秘めるリンクルストーン・エメラルドを入手することができれば、自身の存在を完成されたものとして固定することもできるという。
リンクルストーン・エメラルドは非常に強力なものなのだが、エメラルドが持つ光の輝きの本質は闇の力とは正反対のものである。エメラルドの力を取り込むことが目的のドクロクシーだったが、下手をするとエメラルドの光に自分の闇が取り込まれて浄化されてしまうのではないかとも懸念していた。
その対策としてドクロクシーが考えていたのは、エメラルドと深く結びついているリンクルスマホンを媒介とすることで、エメラルドの光を浴びることなく魔力のみを吸収するという方法である。
リンクルスマホンの所在を知ってから、エメラルドだけでなくリンクルスマホンの奪取を手下達に命じたのはそういう理由である。
能力
闇の魔法を研究してきた結果なのか、強大な闇の魔法の力を保有しており、身体から放つ闇のエネルギーで攻撃をしかけることを得意とする他、強風を生み出して相手をひるませることも可能である。
なお、手下達とは異なり、ドクロクシー自身は魔法の杖を持たない。手をかざすだけで闇の魔法を使える。もっとも、かつてのクシィが目指していた闇の魔法の完成形は杖も呪文も不要なものなので、ドクロクシーはそれだけ高度に闇の魔法を使いこなしていたということなのだろう。
最終形態
第20話の終盤でエメラルドの力を自らの物としたドクロクシーが到達した究極の姿。
全身を骨の鎧で包み込んだ巨人の姿をしており、だいたいプリキュアの10倍くらいの大きさ。
ドクロクシーは闇の魔法によって自らがリンクルスマホンと融合することでこの姿になっており、一種のヨクバールだとも言える。
能力としては、闇の魔法を使った攻撃(黒い蛇のような形をした触手状のエネルギー波)や目から破壊光線。腕をロケットパンチの様に飛ばして相手を攻撃したり掴むことも可能。
更に口の中はブラックホール状の異空間になっているようで、飲み込んだ物を何であっても自分のエネルギーとして吸収することができる。
ヤモーは「ドクロクシー様と一つになれる」としてこれを祝福と感じて自ら飲み込まれていった。
このエネルギー吸収能力の恐ろしいところは、世界そのものの生命力まで吸収できるということである。
ドクロクシーが一度口を開けると、その周辺の自然の恵みそのものが失われ、天を暗雲が被い海は荒れ木々は枯れ出す。その影響は魔法界と表裏一体に結びついているナシマホウ界にも及び、津成木町でも不気味な暗雲が空を覆い植物が枯れ出すという異常現象が発生した。そして最後には世界を支える力そのものが失われ、全ては闇に包まれることになる。
ドクロクシーはその恐るべき行為を「全ての力を一つにする」と表現していたが、これにはプリキュアは「みんなの力を無理やり飲み込むなんて、そんなの”力を一つにする”なんて言わない」と激強い怒りを見せていた。
末路
「全てを塗り潰す...我が闇には叶わぬ!」
第20話において、「魔法の水晶」の占いによってドクロクシーの居場所と正体を突き止めた魔法学校の校長と、その校長を追いかけて来たみらいとリコと遂に直接対峙し、みらい達が所有している「リンクルススマホン」を強奪するために最後の対決を開始する。
結果的には、リンクルスマホンを強奪することに成功し、その直後にリンクルストーン・エメラルドの気配を魔法界で感じ取ったことで魔法界に移動。
魔法学校を支える大樹の麓から姿を現したエメラルドだったが、リンクルスマホンを媒介にした闇の魔法によってドクロクシーはエメラルドの光の力を闇に変換して吸収。そして最終形態へと変貌した。
この時点でリンクルスマホンの中でははーちゃんが休眠していたため、即ちはーちゃんがドクロクシーに捕まってしまったのと同じことである。
「我に力を!」
「全ての力を一つに...」
最終形態となった第21話では、魔法界およびナシマホウ界全てを闇に染め、全てのエネルギーを吸収して自分の力にするために行動する。
そして、腹心の配下であるヤモーを取り込み更に力をつけ、キュアミラクルとキュアマジカルを圧倒する程の力を見せつける。
ドクロクシーの力を一つにするという理由が身勝手極まりなく、独り善がりなものであり、はーちゃんだけでなく配下のヤモー、挙句の果てには見境なく吸収しようとするその態度にプリキュア達の逆鱗に触れることになる。
ミラクル「あなたがどんなに強くても...全てを飲み込もうとしても!!」
マジカル「わたし達の力は...絶対に奪わせない!!!」
ミラクル「わたし達の力は大切なものを守る為の力!!!」
ミラクル・マジカル「「大切なはーちゃんを助ける為の力よ!!!!」」
最期は、ドクロクシーに取り込まれたはーちゃんを「助けたい」という想いの力を強めるプリキュア達に応えたはーちゃんのアシストを受け、立ち直ったミラクルとマジカルの「プリキュア・ダイヤモンド・エターナル」を受けて遂に浄化され、ドクロクシーの仮初の肉体の材料であった無数の骨が後に残された。
「エメラルドは渡さん...これは我が力だ!!!!」
それでも、その骨の体を動かしていた「欲望の怨念」は浄化しきれず、物質的な肉体を持たない漆黒の闇のエネルギー体としてプリキュアに襲いかかり、リンクルスマホンを奪わんとする。
だがその瞬間、みらいとリコ2人の絆や思いを受けキラキラ期へと成長を遂げたはーちゃんがリンクルスマホンの中から飛び出してきてエメラルドの浄化光を放つ。するとドクロクシーの怨念体はドロドロに溶けていき断末魔の叫びと共に消滅した。
それと同時に浄化光の中から今は亡きクシィの幻影が現れる。それはかつての同志であった校長に全てを託すような素振りを見せると、はーちゃんに導かれて昇天していった…。
みらいとリコはドクロクシーの正体や事情を知ってからも一貫して「ドクロクシーに取り込まれたはーちゃんの救出」を最優先に行動しており、ドクロクシー=クシィに同情などせずむしろ悪事を行う彼に対して怒りの感情の方が上回っている等、彼女達はあくまで自分達の大切な日常と人を守るために戦っていた。
ただし、魔法学校の校長はかつての旧友として終始ドクロクシー=クシィの説得に動いていた。
残された意思と力
ドクロクシーという意識体がはーちゃんによって完全に消滅したのは第21話。
プリキュアシリーズで悪の組織の首領として登場したキャラの中では最速で倒されたことになる。
しかし、ドクロクシーの仮初の肉体の材料であった骨はそのまま地上に残され、魔法界の海中に沈んでいた。そこにはわずかながらの「闇の力」がこびりついていたままであった……。
そして、第22話で魔人ラブーの気まぐれでドクロクシーの側近であったヤモーが復活されてしまう。
復活後のヤモーには消え去ったはずのドクロクシーの声が聞こえるのだが、残念ながらこれはヤモーのドクロクシーへの狂信が生んだ幻聴に過ぎない。
しかしヤモーは「世界を闇に染める」と言うドクロクシーの野望を継ぐ使命が与えられたのだと信じており、花海ことはが持つエメラルドを奪取するためプリキュアとの闘争が続けられることになった。
そのための先兵に使われたのは5体の「スーパーヨクバール」。これは、闇の力がこびりついたドクロクシーの遺骨から生み出されたものである。
上述したようにもうこの時点ではドクロクシーは完全に存在を消失させており、ヤモーに語りかけることなどはあるわけがない。「ドクロクシー様のお言葉」に従って動いていると主張するヤモーの行動は、実際はただの思い込みによる暴走である。とはいえ、ドクロクシーの魂が消え去った後もその欲望の執念が呪いとして地上に残されたのだと言う見方もできるだろう。
そして26話でスーパーヨクバールの最後の一体が倒され、ヤモー自身も浄化され、ようやくドクロクシーという存在の残滓が完全に消し去られるに至った。
黒の本
第41話からクシィが残した魔道書の存在が明らかになるが、ドクロクシー編でこの魔道書に関する伏線をいくつか貼っている。
ドクロクシーは実はこの魔道書を常に携帯していた。ただし、普段はローブの奥に大切にしまいこんでいるようで、そもそも画面に映ることが滅多にない。
一番確認しやすいのは第16話でスパルダが殉職したことをヤモーから報告を受けるシーン。この時にドクロクシーが魔道書を取り出しており、魔道書がアップに映るカットが挿入されている。
余談
名前の由来は「髑髏の(姿となった)クシィ」及び「毒々しい」だと思われる。名前そのものがネタバレだったようだ。もっと近い名前と言えば「ドロシー」と言う人物が本編に登場しているがそちらとは無関係・ミスリードである。
ちなみにギリシャ文字のクシー(Ξ, ξ)は手書きでは漢字の「王」と似た表記になる。髑髏の顔をした王様だからドクロクシーと読むというシャレも入ってるのかも知れない。
モチーフのみならず『奇跡の魔法!』での魔女ソルシエールの行動から単なる怪物ではなく「かつては人だったのでは?」と予想した人も少なからずいたと思われる。
最終話では生前からかなりの甘党であったことが判明し、甘いものを食べ過ぎて虫歯になったこともあるというなかなかギャップのある姿を見せた。
この虫歯はヤモーによって抜かれてそのまま廃棄されていたが、22話で回収されたドクロクシーの遺骨に闇の力がこびりついたように、放置されていた虫歯にも闇の力が残されていた。
そのことに誰も気づかないまま物語は進み、ついに最終回でとんでもないことを引き起こすことになる。
中の人について
声優はプリキュアシリーズ初登場の秋元洋介氏。
秋元氏はニチアサキッズタイム枠ではボンバーマンビーダマン爆外伝に出演経歴がある。
後に第45話にて生前の姿であるクシィとして声付きで登場したが、クシィ役はドクロクシーの声を当てた秋元氏ではなく中村悠一氏。
アニメのCVは同一人物であれば同じ声優が担当するパターンが多いが、クシィとドクロクシーは別の声優である。