概要
ナムチ(नमुचि, Namuci)とは、古くは『リグ・ヴェーダ』のインドラ神のエピソードの一つに登場するアスラで、後代ではヴリトラと同一視されている。
プラーナ文献『ヴァーユ・プラーナ』においては、ダイティヤ(アスラの一派)王ヒラニヤカシプの娘シンヒカーと、ダーナヴァ(アスラの別の一派)王ヴィプラチッティとの間の子とされる。
ナムチはインドラによって倒されたが、『タイッティリーヤ・ブラーフマナ』では切られた首が恨み言を投げかけたとされ、『ジャイミニーヤ・ブラーフマナ』では友情を結んだのに殺したのは罪であると非難される。
初期の仏教経典『スッタニパータ』では、釈迦の修行を邪魔する悪魔としてその名が言及される。
物語
ナムチはインドラとの戦いの中で親友になることを選び、「昼でも夜でも、乾いたものでも湿ったものでも傷つけられない」または「昼でも夜でも、棒でも弓でも、掌でも拳でも、乾いたものでも湿ったものでも殺されない」という祝福を受け無敵の存在となった。
しかしその友情は、インドラが創造主トヴァシュトリ神の子である三つ頭の怪物ヴィシュヴァルーパを殺したために弱体化の呪いを受けた際に、ナムチの野望のために潰えることになる。
なんとナムチはインドラが弱りきっているところを、追い討ちをかけるようにスラー酒(魔物が飲む悪酒)を飲ませて泥酔させ、彼の持つ力の全てを奪ってしまったのである。
好事魔多し、驕り昂ぶったナムチはアシュヴィン双神とサラスヴァティー女神の助力で回復したインドラによって、昼でも夜でもない夜明け前に、乾いても湿ってもいない泡で首を刎ねられたのであった。
創作での扱い
アクパーラ大陸最東部のウミガメの尻尾にあたる浮島にある「ナムチのす」最深部で待ち受けている長い牙の生えた大口に舌を垂らした巨大竜。
主人公の竜使いが育てている仔竜のウロコを強化し、成竜に育てるために必須な「ルズのいずみ」の水が枯れてしまったために、同じ効果があるというナムチの血を浴びるために戦う中ボスである。
続編の『サンサーラ・ナーガ2』では、同一視されているヴリトラがラストダンジョンに登場する強敵として登場した。
当時のギャグ漫画では良くあった、登場キャラクターが昔話を演じる番外編エピソード「浦島太郎」で、竜宮城のカニ(狩魔無礼)が泡で攻撃してきた際に「インドの神様みたいな奴だな」と言及されている。