概要
北アメリカ東南部から南米にかけて広く生息するアリ。フタアシアリ亜科。
かなり大型で、全身が赤褐色で最大2㎝にもなる。
アリといえば働き者・力持ちというイメージがあるが、その極致とも言えるのがこの虫。
ハキリアリの働きアリはその巨大な顎で来る日も来る日も周囲の草木をよじ登り、その名に恥じず葉っぱを嚙み千切っては地中に作られた一軒家ほどもある体積の巣に運搬していく。その行列は緑色の千切れた葉っぱがそのまま一列に行進するかのようである。
ではその葉っぱを食べるのかと思いきやそうではなく、千切った葉にアリタケと呼ばれる菌を植えつけて巣の中でキノコを育て、それを食べるのである。
ただしキノコといっても我々がイメージするようなキノコ(子実体という)ではなく、むしろ根元(菌床)。有志が調査のために食べてみたところ、毒はないが腐葉土みたいな香りで土の味がし、どうやっても食用に適さないという事が実証されている。
いずれにせよ、ハキリアリは昆虫では非常に珍しい、狩猟や採集だけではなく「農業」に着手しているマルチな種なのだ。
アリタケは地中の光が差さない湿潤環境で繁殖しやすいため、いわばハキリアリと共生関係にある。
巣の中にはしなびれた枯れ葉を捨てるゴミ置き場があり、死んだアリの墓場も兼ねている。
ハキリアリの生態は森林の維持にも役立っており、いわば天然の植木屋さんといっても過言ではない。
…のだが、植木屋さんでも勝手に人の家の木を切っていいわけではないように、このような生態は同じく農業を営む生物たる我等人類にとっては商売敵に他ならない。ひとたびハキリアリどもに目を点けられればせっかく育てた農作物がズタズタの見るも無残な姿と成り果て、更には巨大な巣により家畜は転んでケガをするわ、畑の土は滅茶苦茶になるわで、不倶戴天の敵のような扱いを受けている。
ハキリアリはその生態の為研究対象などにもされやすいが万が一脱走した場合には取り返しのつかない事態になるため、扱いは厳重になっている。
あとなぜか桜の葉っぱは嫌うらしい。
関連項目
シロアリ:一部の種はハキリアリと同じくキノコを栽培する(キノコシロアリ)。シロアリは黒いアリとは別種の昆虫であり、ハキリアリとも当然ながら関連性は皆無。
ナスビカサガイ:農業をする貝。好きな藻に自らの体液を付着させて育て(肥料)、余計な藻を摘み取る(除草)という習性を有する。