はじめに
初夏、ぽかぽかとした陽気の晴れた日。ふと足元を見てみれば、そこには蟻の行列が。
白い卵や幼虫を抱え、えっちらおっちらと一列に並ぶ黒い蟻の群れ。
それを見た人はこう思うに違いない。「アリさんのお引越しか。流石働き者だなあ」と。
だが、その実態は引っ越しなどではない。
永遠に逆らう事の敵わない奴隷を運ぶ、野蛮なる侍たちの血塗られた凱旋なのだから。
概要
働きアリは4~6㎜、女王アリは7㎜ほどの大きさをしており、侍の兜のような顎をしている。
しかしこの顎、相手に噛みつくことはできても物を噛み砕くことができない。実はアリの中でもオスアリは餌を自力で食べることができないのだが、サムライアリは女王アリや働きアリですら、口移しでないと餌を摂取する事すらできない。
こうなったのにも理由がある。なぜならサムライアリの働きアリは全く働かないからである。
ここまで読んで宇宙猫のようになっている読者も多いだろうから解説すると、サムライアリは他のアリを奴隷として扱き使わないと生きていけない性質を有するのである。
サムライアリの姫アリは交尾を行い女王となると翅を切除し、そこらへんにいるクロヤマアリなどの巣を単身で襲撃する。その際にサムライアリ女王は死んだふりをして餌として運ばれ、内部に忍び込んでから起き上がってクロヤマアリの女王を嚙み殺すという、三橋貴志ばりの卑怯ぶりを発揮し、クロヤマアリの巣を乗っ取る。
そしてクロヤマアリ女王の体液を体中に刷り込むと、真っ暗な巣の中では目が効かない働きアリをフェロモンで自分たちの女王と誤認させ、まんまと働きアリを騙してしまう。鬼畜系エロ同人のようである。
こうして巣の中で自分の子を次々と女王アリは産んでいく。そうすると、自分たちの世話をする使い捨ての奴隷アリは、女王クロヤマアリがいなくなったことで寿命を迎えて減っていく。この頃になると最初の頃に生まれたサムライアリの幼虫たちはすっかり羽化して働きアリになっているので、頃合いを見計らって別のクロヤマアリの巣を襲う。
かくしてサムライアリの兵士たちは他のクロヤマアリの働きアリを虐殺し、巣の中を荒らしまわって卵や幼虫、蛹などを掻っ攫い、えっちらおっちら運んでいく。これが冒頭で紹介した「アリさんのお引越し」の正体である。無論、その攫ってきた幼虫を世話するのも奴隷アリである。
このように、進化の果てにサムライアリは奴隷狩りの為だけに特化した特異な身体構造と社会性を有しており、世界一図々しい昆虫とか人類以外で唯一奴隷制を持つ生物などと言われたりしている。
尤も、当人…もとい当蟻にとっては生きるための必然であり、このようにえげつないだの卑怯だのなんだのと言うのも所詮は人間の勝手な判断基準であるが。
余談
SNS上では侵略的外来種「ヒアリ」を奴隷にしてしまうなどという噂があるが、実際に戦わせたところ互いに無視したため、ヒアリ対策にはならない事が判明した。当たり前である。
サムライアリの登場する作品
恐らく日本人がサムライアリを知る原因No.1。45巻収録の『ガラパ星から来た男』にて、22世紀の実験惑星「ガラパ星」にて巨大化したカブトムシやクワガタがブルドーザーのような土木作業をしているのを見たのび太が「働きアリを進化させれば労働力になる」と考えたため、そこら辺にいたアリを捕まえてガラパ星の研究所に運んでいったことがあった。しかし運悪くそのアリはサムライアリだったため、急速に進化し人類並みの知性と体格を得たサムライアリは種の存続の為に何もすることが出来ず、本能的な図々しさが露見したことにより研究所のUFOを強奪して地球に襲来。人類を奴隷としてハントしようとまですることになった。
なお本エピソードは大山ドラ末期のTVSPにおいて『未来を守れ!のび太VSアリ軍団』の題でアニメ化されたが、内容は大きく異なる。
ドラえもん学習ゲームブック③ 昆虫王国大探検
第3章で登場。最初の噛ませ犬的な扱いであり、続く「農業大害虫」ハキリアリ、「悪魔のアリとキリギリス」ことサスライアリ&サバクトビバッタの前座に過ぎない。
サムライアリモンスターというベム怪獣が登場する。サムライアリ要素はあまりない。ならアリモンスターでいいじゃん。
テラフォーマーズ THE OUTER MISSION
サムライアリのM.O.能力者であるヤマバ親子が登場。
アリの持つ怪力に加え、フェロモンでテラフォーマーを操れるが、紅式不完全変態手術を受けたわけではないので、変態が解けると効果が切れる。
関連項目
野武士…名前こそ「サムライ」であれど実際にはこれに近い性質である。