バーニングファイト
ばーにんぐふぁいと
NYより熱い街。
1991年にSNKから発売されたベルトスクロールアクションゲーム。
俗に言うファイナルファイト系のフォロワータイトルの1本で、この手の作品としては珍しく日本、それも大阪の歓楽街や名所を舞台としており、
「NYから大阪へと逃亡した巨大シンジケートのボス、キャステローラを追いデューク、リュウ、ビリーら3人の破天荒刑事が大暴れする」
というB級映画風のストーリーが特徴となっている。
1991年にMVS筐体用のゲームとして稼働が開始したが、ゲーム内容が非常に荒削りであったため(後述)アーケードゲーマーからの評価は低く、マイナータイトルとして埋もれていった。
問題点
ゲーム概要としては「ファイナルファイト系」の一言で表せるシンプルなベルトスクロールアクションゲームなのだが、今ひとつファイナルファイトの仕様をパクりきれておらず、そこかしこでプレイヤーが一方的に不利になる理不尽な仕様が多い。
具体的にいくつか例を挙げると本作ではプレイヤーがダメージを受けてくらいモーションになり、復帰するまでの間に無敵時間がない。
なので、普通にプレイするとザコ敵のパンチ連打などでハメられたり起き攻めをされまくる事になる。
「そういう時はメガクラだろ常識的に考えて」と思うところだが、本作のメガクラに当たる「ハイパーアタック」はダメージが高めな代わりに被ダメージ中に入力しても繰り出す事ができないという仕様である。
おまけに、敵のくらいモーション中はしっかり無敵になるうえに何の予備動作もなくこちらの攻撃をガードしてきたり、当たったと思ったら突然くらいキャンセルして攻撃を繰り出してくる事もある。
「プレイヤーが敵をパンチハメする」どころか本作では「敵を殴っていると思ったら急にくらい抜けしてきて逆にハメられ、体力を全部持っていかれる」という凄まじく理不尽な展開が起こりうるのである。
これ以外にもシステム的・難易度的におかしな仕様が多く、細かい仕様を知り尽くしたプレイヤーでさえも油断するとその餌食になるという恐ろしいゲームである。
パロディ元に似すぎている点
ステージ構成やボスのデザイン・挙動、プレイアブルキャラクターの性能があまりにもファイナルファイトである。
「あまりにも似ているため、カプコンに訴えられた事がある」と紹介した書籍などもあるがこれは事実ではなく、ソース不明のデマであることが後に判明している。
実際、とあるユーザーがファイナルファイトの生みの親である西谷亮氏のTwitterで質問したところ、このゲームの存在を知らなかったことと、実際のゲームを見て「模倣とはいえ、ゲームのルールは特許とは認められず、裁判に持ち込むこと自体が難しい」という見解を述べている。
そもそも、現にVCやアケアカNEOGEOでダウンロード配信もされたことから考えればなおさら根拠に乏しいと考えるのが筋であろう。
また、ストーリーは映画『ブラック・レイン』に酷似している。
同作は日米の刑事が協力してヤクザを追い、大阪周辺を奔走するという筋書きであり、本作のストーリーにかなり大きな影響を与えている事が見て取れる。
同時期のアメリカ映画では日本文化の描写がトンチキなものが非常に多かったが、同作ではキャスティング・ロケ地設定は日本のスタッフが行っており、実際に大阪や神戸などでロケを行ったパートが多く、その中で描かれる生活などが欧米の観客に「リアルな」日本像を取り扱った作品として受け取られた(とは言え、映画的な演出を優先した結果アンリアルな表現になっている部分もあるが)。
これ以外にも、ゲーム中で使われている音楽がシルベスター・スタローン主演映画『オーバー・ザ・トップ』の劇伴に似ているのではないか…という意見もあったりする。
評価点
開発元であるSNKが大阪にあった事もあり(実際は大阪市の隣町である吹田市江坂)、大阪周辺の町並みなどの描写は再現度が高い。
序盤のステージ構成もくいだおれ太郎の前を通って戎橋へ、地下街を通って泉の広場で突如として現れるハルク・ホーガンと戦い、動く歩道を経由して電車に乗り、電車を降りて下町の工場地帯へ…と、大阪らしい風景が連続する。
また、作中で阪急梅田駅から電車(の上)に乗るシーンがあるが、壁にかかっている看板は「うめだ」ではなく「うみだ」で、次の駅は「十三(じゅうそう)」ではなく「十二」と書かれているなど細かいお遊び要素も散りばめられている。
なお、「梅田の次は中津では」と思われるかもしれないが、梅田~中津~十三までは阪急京都本線、神戸本線、宝塚本線の3路線が並走しており、神戸本線と宝塚本線では普通列車は中津に停車するが、京都本線のみ中津は全列車がスルーするため、駅名看板も中津ではなく十三が次駅として描かれている。
中津が書かれていない駅名看板があるという、大阪ローカルの交通事情が反映されている地味に細かい点である。
ソープの呼び込みのおっさんをぶっ飛ばせる・コンビニやバーの店内を破壊できるなど、具体的過ぎる日本描写でめちゃくちゃ出来るという点もバカゲーとして評価される。
なおこれらの店やおっさんは無関係な市民ではなく、ヤクザのフロント企業・息のかかった人間であり、ぶっ飛ばしたりぶっ壊したとしても3人の刑事は免職覚悟で大阪に来ているので問題ないらしい。
(ネオジオ版説明書より)
また、ゲーム的に必要があるか疑わしいホームレスの男が登場するステージがあるが、上記の『ブラック・レイン』内にも登場人物が道端に居たホームレスに小銭をあげるというシーンが存在するため、元ネタへのリスペクト精神を発揮した…のかもしれない。
そんなこんなで、稼働当初は「ファイナルファイトのパクリゲー」という程度の評価しか受けなかった本作であるが、2017年に突如として本作のRTA動画が1人の動画投稿者によって投稿され始め、それを発端として連鎖的にRTA走者たちの間でまさかのバーニングファイトブームが到来、走者・非走者含め多くの人の目に触れる事となった。
当然RTAを走るということは徹底的に細かい仕様やバグに至るまでしゃぶり尽くされるという事でもあり、ゲーム中に起こる怪現象の原因まで考察されるなど、まさに「学会」と表現される程の研究・検証が行われる事となった。
また、それまで良いペースで走っていたRTA走者が鎖を持ったザコ敵に翻弄された挙げ句ハメられ1機落とし、数十秒のロスを被り悶絶する…というのもお約束の光景となっており、この鎖を持ったザコ敵(=通称「鎖マン」)を憎悪する走者も少なくない。
また、RTA動画投稿者・視聴者の間でこの鎖マンの害悪っぷりが有名となり、逃げ腰なAIや無敵技、画面外に行ったりして遅延行為を働く他作品の敵キャラがRTA動画内で「鎖マン枠」として紹介される事もある。
一方で、実際にプレイしてみると上述しているように「最弱のザコ敵であるヨシオにすらハメ殺される事がある」など、RTAどころか1コインクリアする難易度が超絶高い事から走者のやりこみっぷりに畏怖する動画視聴者も多い。
レバー | 移動 |
---|---|
Aボタン | 通常攻撃(※1) |
Bボタン | ジャンプ |
Cボタン | キック系の攻撃(※2) |
A+B | 必殺技(体力消費) |
※1 このゲームではプレイヤー側にはコンボは無いので注意(A連打しても割り込まれる事がよくある為)。
※2 ビリー以外、2種類ランダムでどちらか1つが出る。
ネオジオ版
1991年8月発売
「ゲームセンターのゲームを家でプレイできる」がウリだった事もあり、ゲームセンターでプレイできた本作と全く同じ仕様である。但し、家庭用のためクレジット数制限がある。
1994年9月発売
ネオジオの弱点であった価格が高い点(約2万円)を克服するために発売されたハードであるネオジオCD用ソフトとして発売され、価格は約1/4の4800円となった。
このゲームはROMサイズが小さく、最初のローディングでゲームの全内容をオンメモリで格納できるため、
同ハードの弱点である異常に長いロードが挟まるという難点はない。
(100メガショック以前の多くのタイトルはオンメモリ動作となる)
最初のローディング時間もCDZであれば30秒程度である。
SNKアーケードクラシックス Vol.1
2009年5月発売
PSP用のカップリングソフト。
16本のSNKアーケード作品を収録しており、その中に本作がラインナップされている。
価格は5040円で、後にベスト版が発売され2100円とお手頃な価格となった。
2017年9月配信開始
Switch/PS4/Xbox Oneでプレイ可能。現在最も入手しやすいのがこれである。
価格は823円とお得。
前述のRTA動画が投稿されたのが2017年5月~7月だったため、RTAの影響で配信されたのではないかとまことしやかに囁かれている。
プレイアブルキャラクター
本作の主人公。元不良のNY市警刑事で、現在でも「マッド・デューク」として悪党から恐れられている。
ファイナルファイトで言うコーディーのようなバランスタイプのキャラクターだが、本作特有の通常技が数種類からランダムに出るという謎仕様により、キックで発生が遅い回し蹴りが出てしまう場合がありキックはあまり使わないほうが良いという変な性能をしている。
ハイパーアタックは回転しながらアッパーを繰り出す「サブマリンスクリュー」。
本作主人公という事もあり、後のSNK作品にカメオ出演している。
KOF2000ではストライカーキャラとして、ネオジオバトルコロシアムでは背景に登場。
また、ネオジオバトルコロシアムのユウキの強化版サブマリンスクリューで彼のグラフィックになる。
日本の無鉄砲刑事。しかし、デュークとビリーの無鉄砲さはそれを遥かに超えており逆に驚かされているらしい。
ネーミングはそのまま冴羽獠のパロディだが、見た目はファイナルファイトのガイにそっくりである。
おそらくガイのようなスピードタイプのテクニカルキャラにする予定だったと思われるが、リュウの場合はパンチの威力が尋常でなく低く、キックは威力はマシだがデューク同様発生が遅い回し蹴りが紛れ込んでいるため回し蹴りが出ないように祈りながらキックで戦うしかないという事から最弱キャラ扱いされやすい。
ハイパーアタックはこれもガイのものとクリソツの「旋風脚」だが、本家と違いくらい中に繰り出す事ができないうえ威力が非常に低い。
何もかもがガイの劣化版という事でプレイヤーからは「ガイのパチモノ」「チャイガイ(中国製ガイ)」などと蔑称で呼ばれる事も。
元不良のNY刑事。元々は不良チームのリーダーをやっており、ある時デュークとの決闘に破れ更生。
プロアメフト選手としてスカウトされるほどの才能の持ち主だったが、デュークと共に悪党を追うために刑事となった経歴の持ち主である。
ガチムチな見た目の通りパワータイプのキャラ…と思われるが、上記のように他2人がシステム上の欠陥や論外レベルに攻撃力が低いという弱点を持つのに対し、ビリーはパンチの威力が高く、なぜかキックが1種類しか無い為にランダム性に悩まされることは無く、更にその1つしかないキックがリーチ・威力ともに優秀、ハイパーアタックの「ハイパータックル」が抜群の汎用性を持つなど、全部分において強キャラである。
その為バーニングファイト界隈では「初心者はまずビリーでゲームに慣れること」が推奨されている。
敵キャラクター
ボス
ユウジロー・ヘイケ
登場面:1面ボス、5面中ボス
スキンヘッドに入れ墨の肥満体、そして名字は「平家」というトンチキ感満載の男。
1面の前座ボスであるトラックを凌ぐと登場し、トラックを手で押して画面外から退場させるパフォーマンスで怪力アピールをした後襲いかかってくる(登場時の音声が非常にくぐもっており、「俺が相手だ」と言っているはずが「ウリガアイテダ」と聞こえる事から、動画コメントなどでしばしばイジられる)。
戦闘中前転でゴロゴロと転がりながら浴びせ蹴りと空手チョップで攻撃するというわけのわからないファイトスタイルが特徴。
5面では妻のアズサ・ヘイケと共に登場する。こちらではザコ敵の乱入がないため比較的やりやすい。
トム・アンダーソン
登場面:2面中ボス
泉の広場の噴水を粉砕しながら突然現れるハルク・ホーガンのような男。
この時代のゲームにハルク・ホーガンをモデルにしたキャラが出るのは珍しくないが、こいつの場合はセリフも「イッチバーン!」と叫んだり、アックスボンバーとレッグドロップが主力技、トドメに衣装も完全に本人の入場コスチュームで言い逃れできないレベルの再現度になっている。
よくよく考えると何故ハルク・ホーガンがマフィアやヤクザの手下として活動しているのかは謎なうえ、何故泉の広場の噴水を壊すのかも謎である。
アズサ・ヘイケ
登場面:2面中ボス、5面中ボス
ユウジローの妻。うみだ(梅田)駅の改札口で登場する。
ドスを持っており攻撃力は高いが、体力が低くガードもしない。
単体で出る2面ではハイパーアタックを重ねる事ですぐに倒せるが、5面で再登場する際はユウジローと同時に出てくるため非常に厄介である。
マーシャル
登場面:2面ボス、4面中ボス、5面中ボス
ゲーム中3回も登場するライバルキャラ的なポジション。
名前の通りマーシャルアーツを得意とする筋肉モリモリマッチョマンの敵で、多彩な攻撃パターンが特徴。攻撃時に赤くなってから攻撃してくる事があり、アビゲイル扱いされる事がある。
2面ではまだガード率が低いが、4面5面と再登場する事にガード頻度が高くなり、おまけに5面ではボスラッシュの最後、ラスボス直前に登場する上に制限時間が非常に短いためかなり厄介である。
ゲイリー・パウエル
登場面:3面中ボス
工事現場の前で襲いかかってくるモヒカン頭の黒人男。
トム・アンダーソンの使いまわしであり、攻撃パターンは単調になっているなどとりあえず数合わせに出してみただけ感が否めず、影の薄いボス。
ニトウ・リュウジ
登場面:3面ボス
二刀流の使い手だからニトウ・リュウジという安直過ぎるネーミングの男(ちなみに「にとう」と読む名字は「仁藤」など、実在している)。
工事現場のエレベーターに乗っている時に現れ、「マチカネタゾ!」と言ってから襲いかかってくるあたり強者を求めているタイプなのかもしれない。
戦うシチュエーションからしてロレントポジである事はもはや説明の必要はないだろう。
刀を用いた攻撃はリーチ・威力・発生どれをとってもぶっ壊れレベルであり、まともに戦っていると一瞬で体力が蒸発する強敵。
画面外にふっとばすと隙の大きいジャンプ攻撃で復帰してこようとするため、一度なんとかしてふっとばした後はひたすらハメて倒すのが楽である。
マッド・ディリー
登場面:5面中ボス
また登場するトム・アンダーソンの使いまわしキャラ。
攻撃速度が上がっているが、ゲイリー同様影が薄い。
ニトウ・リュウゴ
登場面:5面中ボス
同じく5面ボスラッシュ内で登場するニトウ・リュウジの使いまわしキャラ。
ステージがエレベーターでないため、ロレントのような攻撃を繰り出す事はできずリュウジよりも弱体化しているという声もある(攻撃力は相変わらずだが)。
キャステローラ
登場面:ラスボス
小太りで紫色っぽいズボン、蝶ネクタイというビジュアルのマフィアのボス。
ステッキを持っており、変なポーズでぴょんぴょんジャンプしながらステッキ攻撃や仕込み銃で攻撃してくるというこれもどこかで見たような男。
ふざけたビジュアルとは裏腹にまともに戦おうとするとかなり強いため、残機と体力さえ確保できていれば画面外に吹っ飛ばしてハイパーアタックでハメるのが楽。
ザコ
ヨシオ
全編に渡って登場する一番弱い雑魚キャラ。
とはいえ、本作の仕様上こちらを延々ハメてくる事があるため侮れない。
武器を持って登場する事もあり、攻撃するとその武器を落として非武装ヨシオになる。
ボブ・カトウ
ダイナマイトを投げてくる、エルガドのような敵。
ただし、本家ほど攻撃範囲が広くなく、地面に落ちてから爆発まで猶予があるなど本作のザコの中では比較的良心的な方である。
ゴンザレス/ダフィー
ファイナルファイトで言うデブ系。
突進を多用してくるのが特徴だが、ゴンザレスの攻撃が味方にも当たる性質があるのに対しダフィーは味方をふっとばさないうえ、ザコの癖にガード率の高い難敵。
武器攻撃すらガードされる事があったり、こいつらにダウンさせられると高確率で起き攻めからハメられるため残機を落とす原因になりやすい。
特に後半ステージでは大量のダフィーが出現する鬼のようなエリアがある。
ロバート/ブルース/ハラルド
スーツを着た構成員。ロバートとブルースは44マグナムを持っており、出現した後は射撃で攻撃してくる(攻撃してダウンさせると落とす)。
銃を落とした後は歩き回るか、たまに思い出したようにスライディング攻撃をしてくる。
なおハラルドのみ、ザコ敵としては出現せず5面のボスラッシュでヘイケ夫妻と共に出現し、銃を持っていない、体力が減ると逃げるなど何のために出てくるのか謎である。
暴走族
1面、3面、4面の途中で登場するバイクを駆る暴走族。
この手の敵は軸をずらせば避けられると思いがちだが、うみだの街ではそのような常識は通用せず、鉄パイプを振り回して軸をずらしたプレイヤーを殴りつけてくる。
攻撃して倒そうとしても回避というインチキみたいな能力を発動されるため、ジャンプでやり過ごし、相手をしないのが正解である。
ジョニー/ジャック
本作の理不尽さを体現する敵。手に鎖を持ち、派手な色のシャツを着た男。
1面から散発的に出現する、ファイナルファイトで言うハリウッドのようなポジションの敵。
一定距離を維持しながらぴょんぴょん移動していたかと思うと、突然大ジャンプして鎖を振り下ろして攻撃してくるのだが、このジャンプ攻撃に異常なまでの無敵時間(飛び上がり~上昇中)があり、更に攻撃力自体も一撃で約3割と高く、本作特有のハメは勿論やってくる…と、非常に害悪度の高い敵になっている。
そのため、RTA走者やプレイヤーからは親の仇の如く嫌われており、『鎖マン』という蔑称で呼ばれる。
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