概要
ピーコックスパイダー (peacock spider) とは、ハエトリグモ科Salticidaeの中のMaratus属の蜘蛛の英語名。
この属の蜘蛛はオスが胴の背面に煌びやかな色彩を持ち、メスにアピールする際にそれを見せながらダンスをすることで知られる。その行動はクジャク(ピーコック)を彷彿とさせることからこの名が付いた。
日本ではクジャクグモという呼び名もあるが、実は(現時点では)正式に決まった和名ではない。pixivではイラストが多くないものの片方のタグしかついてないこともあるので全部見たい場合はどっちも検索すると良いだろう。
最初の記載は19世紀末まで遡るが、注目を集めるようになったのは新種を多く発見された21世紀(とりわけ2010年代)以降であり、2022年時点では108種まで知られている。確実の記録では全てオーストラリア固有種であり、多くが西オーストラリアの一部に集約する(中国による記録もあるが、情報が乏しく懐疑的とされる)。
形態
ピーコックスパイダーは性的二形によりオスが派手な色合いを持つ。その胴の背面は色素による赤や白と、特定の波長のみを反射することによる青の組み合わせからなり、種ごとに色や模様が異なる。そもそもハエトリグモは蜘蛛の中では珍しく視覚が発達しているのでこの色の違いもわかるというわけである。
一方、メスはどの種も背景の枯れた植生に溶け込めるように地味な茶色の見た目となっている。
サイズは並のハエトリグモよろしく、雌雄とも4~5mm程度の小さな蜘蛛である。
ピーコックスパイダーの特徴として、頭部と胴部を繋ぐ部分が長く柔軟に曲げられ、第三脚は他の脚より発達。これはハエトリグモとしての機動力・跳躍力はもちろん、オスの場合は後述の生態行動で重要な役に立つ。
生態
基本の生態は一般のハエトリグモと同様、網を作らない徘徊性で植生を跳び回り、日中に優れた視力でハエなど小さな虫を見つけて捕食する。
ハエトリグモ自体は求愛行動が発達した蜘蛛であるが、ピーコックスパイダーのそれは更に極めている。多くの場合、オスはメスに交接のアピールをする際に胴を持ち上げてメスに見せつけ、種によっては胴の横のヒラヒラを扇のように開いたり胴を平たく広げたりする。更に多くのピーコックスパイダーのオスは第三脚が大きく派手な毛が生えており、これも持ち上げて広げる(種によっては胴を持ち上げない・別の脚を持ち上げることもある)。この状態から、腰を左右に振ったり脚を振ったりしてダンスをし、これも種ごとに動きが異なる。色彩と振動によりメスにアピールし、メスが気に入れば交接に持ち込める。
だがこのダンスはこの蜘蛛が滅茶苦茶目立つことになる。当然、敵に見つかればその場で襲われて交接に至るまでも無く食べられてしまうだろう。
蜘蛛はその多くの種においてメスがオスを食うことでも知られる。ピーコックスパイダーも例外ではなく、メスが交接に興味が無い状態でこのダンスを行うことは自身を捕食される危険に晒す以外の効果を持たない。このことから、メスはフェロモンにより交接に興味が無いことをオスに伝えており、オスはこれを察知するとダンスを行おうとしない。
まぁ、メスが交接を受け入れる気であってもオスのダンスを気に入らなければ襲うのでどのみち危険ではあるが。
関連タグ
クジャクチョウ、クジャクヤママユ:同様にクジャクの名を持つ節足動物。ただしこちらは翅にある目玉模様がクジャクの尾羽を思わせることからついてる。この目玉模様は敵に襲われても生き延びる為の防御の為にあるので役割からして異なる。