マクガフィンとは、以下の意味がある。
物語におけるマクガフィン
映画監督のアルフレッド・ヒッチコックが提唱した創作技法。
物語上、登場人物への動機付けや、話を進める為に用いられる仕掛けの事を差す。
主に、重要なものではあるが別のものに差し替えても成立するものに対して使用される。
スパイものにおける機密書類、怪盗ものにおける宝石など、劇中の登場人物たちがスリリングな争奪戦を繰り広げる理由とはなるものの、観客にとってはそれほど重要ではないアイテムがマクガフィンとされる。
ヒッチコックは代替可能性を特に重視しており、「マクガフィンそのものに観客の興味が集まる事は(ストーリーに没入する妨げとなるので)避けるべき」とまで言っている。
『汚名』という作品においてウラン鉱石を奪い合う脚本がスポンサーに不評だった際、「ではダイヤにしましょう」とあっさり変更を提案したエピソードは有名。
それ故に物語において重要な意味を持ち、なおかつ代替不能なアイテムはマクガフィンとは呼ばない。
上記の「怪盗ものの宝石」の例で言うと、宝石がダイヤモンドだろうがルビーだろうが金塊だろうが札束だろうが、その違いが物語の展開に影響しなければ、それはマクガフィンである。
似たポジションのものにJRPGのイベントアイテムがある。
盗賊が盗んだ宝石を主人公が取り返すイベントとかであれば代替可能なものがほとんどである。
ただ、盗賊や怪盗が盗む物品の場合、「金銭的に価値があるもの」という前提で話されているため、金銭的な価値がほとんどない物品ではさすがに代替不能。
また、キャラクター設定によっては価値があるものでも代替できるものが限られてくる。
例えば宝石や装飾品を好む怪盗がいきなり地味な茶碗を盗むとなると、観客の興味は「なぜその茶碗を盗むのか」と動機に向かってしまう。
ひとつなぎの大秘宝は正体不明だが、動機づけや話を進める為の仕掛けではあるのでマクガフィンと呼ばれることもある。
ただ、その正体がストーリーに関わる場合、代替不能になりマクガフィンにならない。
話が進むにつれて、隠された歴史に関連のある品ではないかと考察される様になり、マクガフィンとは見做されなくなっている。
反論
ジョージ・ルーカスは「マクガフィンは観客を虜にするものでなければならない」と語っており、自作『STARWARS』のキャラクター・R2-D2をマクガフィンと評している。
R2-D2は代替の効かないキャラクターなのでヒッチコックの定義したマクガフィンには該当しないようにも思えるが、物語において「要塞の設計図(スパイものにおける機密書類)を隠し持つ」「主人公が故郷から旅立つ理由」という、マクガフィンに相当する機能を果たしている。
実際のところヒッチコック自身もこの定義を徹底していたわけではなく、上述した『汚名』の完成版では、結局変更が提案されたはずのウラン鉱石が登場することとなった。やはりただの宝石では満足できなかったようである。
追い求めるのが世界の軍事バランスに直接敵な影響を与える核物質なのか、どう足掻いても金銭的価値しか持たない宝石かでは、主人公が追い求める切迫感は無視できないほどに変わってくるわけで、ウラン鉱石は代替可能ではないのである。
しかしながら核物質ではなく、某国の情報アドバンテージを支える暗号の解読装置などであれば、これは核物質に匹敵する切迫感を醸し出せるかも知れず、そういう意味ではやっぱりウラン鉱石は代替可能と言えるかも知れない。
結局どの程度代替可能性があればマクガフィンと呼ばれるのか、ヒッチコックは厳密な定義を残しては居ないので、ある作品におけるなにがしかがマクガフィンかどうかというのはあまり建設的な議論とは言えない。
外部リンク
VOCALOIDにおけるマクガフィン
VOCALOIDシリーズを用いて楽曲を発表している制作グループ。
2010年10月2日をもって活動を終了した。
pixivではこの意味のイラストが多い。メイン画像も、こちらに由来する物である。
関連タグ
世にも奇妙な物語のエピソードの一つ。
「すき焼き」を他の料理に置き換えてもストーリーに齟齬が生じないことからマクガフィンの具体例として挙げられる。